その男、凶暴により

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四章~とある寺の戦い~

傷だらけの頭脳の未

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「泣くな、俺なら大丈夫だ。」
返事もせず、彼は申し訳程度の救急箱の中にあった包帯で患部をぐるぐる巻きにする。
「お前はいつもそうだな…俺達の中で一番年下なのに、全部背負って気丈に振る舞って、自分のせいだと後で、陰で独りで泣くんだ。」

「そんなことない。」
俯いて、潤んだ瞳を隠すように、処置が終わった患部をじっと見つめている彼を見て、小さく息を吐く。

「せめて、ネズミ位、もうちょっと子供らしくならんか?」
「嫌だよ!一つ年上のくせに二言目には『龍さん、龍さん。』って言うんだよ?あいつ。」
ネズミの話をすると、いつもこうやって唇を付き出して文句を言う彼の様子に、思わず笑みが溢れる。

「それだけ憎まれ口叩けるならまだ大丈夫だな?…お前の作戦は間違ってない、俺が保証する。後は我慢比べだ。その為にも…お前の力が必要なんだよ、未。」

鐘の音が小さくなっていく中、自分よりも一回り小さい、尊敬すべき男の肩を抱いた。



Tシャツの中に手を突っ込みボリボリとお腹の辺りを掻き毟り、無遠慮に口を開いて大きな欠伸をする男が石の階段からゆっくり下りてきた。

「さてと…一ヶ月振りだなぁ?二人とも。」

ミリタリージャケットを着たおかっぱの青年と、赤いタンクトップに黒いシャツを羽織った黒髪短髪の壮年の二人が階段の下、広場の様な場所で待ち構えていた。

「本当に諦めないなぁ…お前たちは。俺はもう毎月毎月同じことの繰り返しで飽きてきちゃったよ。」

「なら早く『あの子達』を解放してよ?そうしたら、こんな生活ともおさらばなんじゃない?」
ミリタリージャケットの青年が呆れた様に質問する。

「まぁ、これも仕事だからなぁ…しかも、好きなだけ食べて、いくらでも寝て良くて、一ヶ月に一回お前らの相手をすれば良いだけなんだから、割の良い仕事だよな~。」
「ちなみになんだけどさ。」
「なんだ?」
「俺達の方に寝返る、っていう選択肢はないの?」
青年の言葉に目を見開き数秒後。

とてつもない大声で笑い始めた男。

「ガァッハッハッハッ!面白い事を言うなぁ、未。まぁ、お前達の報酬は気になる所なんだけども。」
そう言うと、口を歪め黒髪短髪の男を見やる。

「俺は、いつ、この午の野郎が、叫び声を上げて、蹲って、子供達を諦めるか、毎月毎月楽しみで仕方ないんだよ。ほら、その段々死んだ魚の様な目になってきた男を見てみろよ?もうすぐだぜ?希望を無くす過程を見られるなんて、こんなに面白い事ないだろ?」

そう言って二人と同じ場所に降り立つ男。
未の1.5倍はありそうな身長と三倍は有りそうな横幅。
未の隣に立つ午は180cmと決して小さくないが、それでも目の前の男は更に一回り大きい。

「さぁ、耳にタコが出来そうだが、恒例のルール説明だ!」

『まもなく【ゲーム】が開始されます。今から開始時と終了時に鐘を鳴らしますので1時間以内に、この巨漢《樺山》を退治してください。なお、鐘がなる前に石段の上の廃寺から1人を残し、全ての子供たちを解放します。《樺山》は解放された子供たちを狙います、1時間以内に一人でも殺されたら[失敗]となり、今回のゲームは終了になります。子供たちが殺されなくても1時間経てば[失敗]となりますので、その場合。』

いつもの様に、一緒の沈黙の後。

『未か午、どちらかの骨一本。もしくは残した子供1人の命を貰います。それでは、はじめてください。』

広場から見える廃寺から子供達が降りてくる。

見慣れた光景だった…広場の端、一目散に木が生い茂っている林の方へ走る子供達。

そして…周辺に鐘の音が鳴り響いた。





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