御伽の国

翔(しょう)の国編

第7話

「人魚姫さん！！」
ガバッと飛び起き、名前を呼んだ。
「アレ？戻ってきたの？」
ポトッとタオルが、黒羽の手の上に落ちた。
「ん…。姫様…？姫様！！」
「は、はい！」
「熱も下がってますし。それに、声も戻ったんですね？」
「声？熱？何の事を…」
「姫様は、翔様の話を聞いて倒れたのですよ？」
「倒れた？私が…？」
そう言えば途中から意識が飛んで、人魚姫に会った。
「人魚姫に会ったのよ！」
「人魚姫に？人魚姫は、泡になられたと聞きましたが」
「夢の中で会えたの！人魚姫さんが、翔さんを助けてあげてって…」
「翔様の事をご存知なのですか！？」
「そう！問題はそこなのよ！」
「翔様に確認してきます！姫様はまだ寝ていて下さい」
「あ、お願いしますっ」
黒羽はタオルを変えて、出て行った。
「翔さんを助けてあげて…か。」
ユズハは、うーんと頭を悩ませてもう一度目を閉じた。


「翔様ー？」
「あ、黒羽。どうしたの。」
「姫様が目を覚ましました。それと、ユズハ様が人魚姫様に会われたと」
「すぐ行く。」
「はいっ」
黒羽は、チラッと翔が出て来た方を見た。
「紅蓮様のお部屋…」
「黒羽、案内して」
「あ、はい！」
黒羽はスタスタと翔の前を歩いた。

ユズハのいる部屋へと到着した。
「こちらです」
「ありがと」
入ると、ユズハは目を閉じていた。
「ユズハ。来たよ」
「あ、翔さん！」
パチッと目を開けると、微笑んだ。
「人魚姫に会ったんだって」
「うん、夢の中でだけど…。」
「何て言ってた」
「最後しか覚えてないんだけど、翔さんを助けてって」
「僕を…」
「うん。心当たりある？」
「無いけど…。ユズハ、ありがと。出発は一週間後ね」
そう言って、部屋から出て行った。
「いっ、一週間後？」
「翔様にも考えがあるらしく、一週間後にして欲しいと」
「分かった！」
「お休みなさい」
「うん！」
黒羽は、ユズハの部屋から出た。