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第1章
どうして優しくするの?①
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「何をしている?」
うずくまっていた私の腕をグッと引き、抱え上げる。
そのままソファーまで運ばれて、膝の上に降ろされた。
「降ろ、してください。」
「嫌だ。それよりなぜ泣いている?」
「何でもありません。」
「そんなわけないだろう。」
男の人は私を心配そうに見つめている。どうして、こんなに優しくしてくれるのだろう…。私に優しくしたって得なんてないのに…。
「シアン。」
そういえば、この人名前あるのかな。
ふと、そんなことが頭に浮かんだ。
私、名前をつけてもらったけど、この人の名前知らない。
聞いてみてもいいかな。
怒られないかな。
「あ、の……。」
「なんだ?」
「お名前…なんて言うんですか?」
目をぎゅっと瞑り、勇気を振り絞って聞いてみる。
「アルガード。」
優しく紡がれる言葉。ちゃんと答えてくれたことに嬉しく思った。
「アルガードさま?」
「様はいらない。アルガードと呼べ。」
と、急に命令するように言われたがこのお城の主人を呼び捨てになんてできるわけがない。そんなことをしたら、ただでさえ嫌われているのに、もっと嫌われてしまう…。
戸惑う私の頭をアルガード様はそっと撫でて、それが無理ならと付け加えた。
「二人きりの時は呼び捨てで呼べ。」
「えっと…」
「返事は、はい以外許さない。」
「………はい。」
返事をすると、よくできたな、と言ってまた頭を撫でてくれた。
アルガード様の手は大きくて、温かくて、とても気持ちのいいものだった。
うずくまっていた私の腕をグッと引き、抱え上げる。
そのままソファーまで運ばれて、膝の上に降ろされた。
「降ろ、してください。」
「嫌だ。それよりなぜ泣いている?」
「何でもありません。」
「そんなわけないだろう。」
男の人は私を心配そうに見つめている。どうして、こんなに優しくしてくれるのだろう…。私に優しくしたって得なんてないのに…。
「シアン。」
そういえば、この人名前あるのかな。
ふと、そんなことが頭に浮かんだ。
私、名前をつけてもらったけど、この人の名前知らない。
聞いてみてもいいかな。
怒られないかな。
「あ、の……。」
「なんだ?」
「お名前…なんて言うんですか?」
目をぎゅっと瞑り、勇気を振り絞って聞いてみる。
「アルガード。」
優しく紡がれる言葉。ちゃんと答えてくれたことに嬉しく思った。
「アルガードさま?」
「様はいらない。アルガードと呼べ。」
と、急に命令するように言われたがこのお城の主人を呼び捨てになんてできるわけがない。そんなことをしたら、ただでさえ嫌われているのに、もっと嫌われてしまう…。
戸惑う私の頭をアルガード様はそっと撫でて、それが無理ならと付け加えた。
「二人きりの時は呼び捨てで呼べ。」
「えっと…」
「返事は、はい以外許さない。」
「………はい。」
返事をすると、よくできたな、と言ってまた頭を撫でてくれた。
アルガード様の手は大きくて、温かくて、とても気持ちのいいものだった。
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