異世界は黒猫と共に

小笠原慎二

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黒猫と共に迷い込む

ドラゴンの里が出来たわけ

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それからうんうん考えて知恵を絞り出して、「黒帝」はどうかと切り出した。
黒はそのままで、帝は一番上に立つ者という意味で。

「ほほほ。一番上に立つ者と。それは私にピッタリですね」
「なんか儂より立派な名前…」
「文句がおありですか? あなた」
「も、もちろんないのじゃ!」

長老を押さえ込む奥さん…。うん、実質一番上かも。
一応、「老」という言葉は知恵者という意味を持つとも言っておく。長く生きた者はそれ程の知識を要しているということで、間違いではないよね?

「知恵者か。なるほど。儂にピッタリじゃのう」
「そういうことにしておきましょう」

奥さん、抑えて。

「今宵は歓迎の宴をするのでな。まあゆっくりしておくれ。それと、彼奴らを呼ばんとのう」

そう言って白爺が手を2回叩くと、すぐに先程のクレナイのご両親が入って来た。
そして、白爺の横に座る。

「此奴らがクレナイ、其方のご両親じゃ。生きて対面出来るとは、幸運なことよ」
「娘の父、ヂヂと申す」
「母のキキと申します」

うーん!セーフ?!アウト?!

「父君、母君。妾はこちらの主に名をもらい、クレナイと名乗っておる。よろしくなのじゃ」
「そちらの人間…」

うう、お父様の視線が、射殺すように怖いんですけど。

「え、えと、今のクレナイの主やらせてもらってます、八重子と申します」
「人間如きが。名など名乗るか」

えええええ。

「ヂヂ。失礼な態度を取るならば、約束は反故にするぞ」

白爺が今までとは違う、怖い声を出した。おお、なんだかんだでやっぱり長老ですな。

「も、申し訳ございません…。つい…」

お父さんが頭を下げた。まあ、子供を人間に攫われたんだから、人間を恨んでも仕方ないよね。

「父君、妾は確かに人間の下僕にされた。幼い頃はそれが何なのかはよく分からなかったが、その意味を知る事になった頃、妾は絶望したこともあったのじゃ。じゃがのう、1人前の主はゲスでどうしようもなく救いようもない駄目人間じゃったが、今の主殿は、妾達の事をよく考えてくれる、とても良い主殿なのじゃ。その証拠に、妾は帰る事が出来ないじゃろうと思っておったこの里に帰って来れた。じゃから、主殿に敵意を持った視線を向けるのは止めて欲しいのじゃ」
「姫…」

お母さんがウルウルとクレナイを見つめている。

「ぬ。長老様から話は聞いておったが…。だが、信じられん。そんな人間殺してしまったほうが早いのではないか?」

お父様の口から物騒な言葉が!

「父君、まかり間違っても主殿に傷など付けおったら、妾が許さぬ…」

クレナイからとても怖い気配がだだだだ漏れになってます。背筋が凍るとはこういうことね!

「しかし…、姫…」
「妾はクレナイじゃ! 主殿から頂いた名じゃ! その名で呼んで頂きたいのじゃ。それに、今ここで主殿を死なせたとしても、妾の従魔紋は消えはせぬ。新たな主を求めて彷徨うことになってしまうのじゃ」
「姫…」

うん、人間が付けた名前なんて嫌だよね。ついでにそれを長老様達に言ってやって欲しいものだ。

「ぬ。分かった。その人間は決して傷つけぬと約束する」
「ヤエコ様という御名があるのじゃ」

様付け!!

「ぬう…。や、ヤエコ、さんを、歓迎するのだ」

さんでいいっす!

「よろしくお願いします」

すんごい苦渋の顔してるけど、まあ危害は加えられないならいいかな。
それから、クレナイだってご両親を積もる話もあろうと、行ってこいと背中を押した。
ちょっと躊躇ったクレナイだったけど、素直に頷いて、ご両親と共に出て行った。
どんな話をするのかな。

「何かあったら儂がどうにかしようとは思っておったが、なんとか治まったようじゃのう」
「ありがとうございます。ご厄介になります」
「うむ。ゆっくりしてくれい」

それから、白爺に、この村の歴史をちょっと教えてもらった。

その昔は、ドラゴンはこんなに固まって住む事はなく、各地に散らばっていたのだそうな。繁殖の為に数年に1度集まる事はあったが、大概番を決めてしまえば、余程の事がなければ相手を変えないらしい。
そして、ドラゴンは1度卵を産むと、その子が成人するまで次の子を作らないのだそうだ。
そして、ドラゴンが成人するのに、約50年かかる。ついでにドラゴン形態のままだと食費、じゃなくて食べる物がそれこそもの凄い量が必要になるわけで。

繁殖し過ぎても生態系を崩すし、かと言って徐々にではあるが個体数が少なくなっていっているのを危惧していたらしい。
増えすぎてもいけない、少なすぎても絶滅してしまう。ドラゴン族がそんな問題に頭を悩ませている時。この地に1人の人間がやって来た。

「本物のドラゴンを1度この目で見たかった」

という、なんとも風変わりな人間で、その時の長老がこの風変わりな人間の相手をした。
その時の人間の提案、人化。人の姿に化けたら良いんじゃない?という案に、面白そうだと長老が人化の術を作り出したそうな。
そして、人化の術で人間の姿になると、色々便利なものだと気付く。

まず、食糧事情が片付いた。それまではオーク1頭では到底足りなかったのが、オークの足を食べただけでそこそこ腹が満たされた。それと、今まで狭いと思っていた居住地が、広々と使えるようになった。
それに何より、その人間が持ってきた調味料。そして料理と言う概念。
焼いた肉に塩コショウを振りかけただけで、今まで食べていた物が何だったのかと思える程の衝撃。

それに、その人間はドラゴン達が知らない物語を語ってくれて、その物語の面白さに嵌まった。
知識に飢えていたドラゴンの長老は飛びついた。
それと繁殖の問題も、その人間の知恵によって片付いた。
今まで離れて暮らしていた一族を纏め、繁殖期の若者が会いやすい環境を作り、ドラゴンの里を作って子供達の成長を皆で助けるようにした。

食糧事情も片付き、繁殖の問題も片付き、子供達も成長しやすい環境が整った。
そして、ドラゴン族は徐々に数を増やしていったそうな。
今ではここ以外にもドラゴンの里が2つほどあるのだそうだ。

「じゃから、ある程度人間に対して好意は持っておるのじゃが…。ただのう…」

ドラゴンの里の事が人に知られるようになると、行商の者が来るようにもなった。ただ、そこに混じってドラゴンの子供や卵を攫う者が出て来た。
見つけ次第そういう者はひねり潰したが、気付かぬうちに攫われていたこともしばしば。
なので、人間に悪感情を抱いている者も少なくないとのこと。

「それは、人間側が悪いんです。私が睨まれてもしょうがないです」

クレナイのように、研究者の手元に渡って、無事に育てられた事例は少ないのだろう。卵ならばどこかで割れてしまったかもしれないし、子ドラゴンならば殺されて素材にされてしまったかもしれない。嫌な話だな。
なので、今は人間は全員立ち入り禁止なのだそうな。私は例外ということで。

「残念じゃ。人間の所には面白い知識も転がっておるのにのう。上手く付き合うには離す方法しかないとはのう」

ドラゴン族は知識に飢えているか。長く生きても知らない事を知るのは楽しいのかもしれない。

「じゃあ、今日は私が知っているお話をいくつかお教えしますよ」
「うむ! それは楽しみなのじゃ! ああ、それとのう、その人間じゃが、迷い人だったらしいぞ」

ここで迷い人の話出るんかい!!

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