異世界は黒猫と共に

小笠原慎二

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黒猫と共に迷い込む

前髪男との交渉

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前髪男はアルダール。
巨乳系プリースト美女はシンカ。
巨乳系魔女っこ美女はウーリィ。
活発系赤毛短髪美少女はチタ。
モジモジ系不思議美少女はイスタ。
所謂ハーレムパーティーでした。しかも全員、前髪男狙い。どこがいいの?こんなの。

それに、言っちゃあ悪いが、雪原に花は咲かねーよ!

ツッコミどころの多いパーティーを目の前に、早く終われと思いながら話を聞く。

「ヤエコ君か、可愛い名前だね。君は、とても腕の良い従魔師だという話を聞いたんだけど、僕達にそのコツを教えてくれないかな?」

ウィンク。

おおお、悪寒が…。

「知りません。じゃあ行こうか」
「そうじゃのう」
「そうであるな」
「あい」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って!!!」

立ち上がりかけた私達を必死の形相で止める。

「だ、だって君、ドラゴンも意のままに操っているんだろう? 何か秘策とか秘訣とか…」
「ありません。じゃあ」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょまーーー!!」

テーブルに身を乗り出して必死の形相で止めに入る。

「た、頼むよ。僕達のパーティーにも従魔師がいるんだけど、先頃使っていたグレーオウルを失ってしまって。仕方なく角ウサギを捕まえて従魔にしたんだけど、これがなかなか言うことを聞かなくて困っているんだよ」

とにかく困っていることは分かった。ちらりとモジモジ系美少女のイスタを見ると、顔を俯かせている。格好からしても、この子が従魔師だろう。

「そう言われても。私は特別な事など何もしてませんよ。ただ普通に接してるだけです」
「いや、何かあるんだろう? 特別な術式とか、特別な言葉とか…」
「(んなもん知るか)ボソリ。知りませんね。」
「いやいや、そんなまさか…」

このままだといつまでも話は平行線のまま終わる気配がない。
クロの尻尾もたしーんたしーんと一定のリズムで私の足を叩いている。不機嫌そう。

そこで閃いた。

「そうですね。私が行っているとあることを、なんなら特別に教えて差し上げてもいいですよ」

ふっかけた。

「本当かい?! ありがとう!」

普通の女の子ならくらりときそうな前歯キラリンイケメンスマイルを浮かべて、礼を言う。
私は鳥肌立ってるけど。
顔は良くても話の通じない人、苦手なんだよね。
クレナイとシロガネがチラチラ見てくる。ふふふ、心配してくれてるのかな?

「あるじ?」
「もうちょっと待っててね、ハヤテ」

話に飽きたのか、足をブラブラさせているハヤテ。大丈夫、私も最初から飽きている。
クロの尻尾もたしーんをやめて、先っちょだけフリフリ動いている。面白がっているのかな?

「で、どんな秘訣なんだい?」

パーティーの面々がワクワクするような顔をしてこちらを見ている。
ついでに言うなら、周りが少し静かになって、こちらに耳を傾けているのが分かる。
皆気になってるのね。

「教えてあげても良いですけど、そこはもちろん冒険者ですもの。ただで、なんて言い出しませんよね?」

にっこり。

「あ、ああ! もちろんだよ。そうだな。金貨10枚で、どうだい?」

ウィンク。

此奴、端で見てれば百面相の面白い奴なのかもしれない。
情報料としてみて、これは妥当な金額なのか? いやしかし、知りたがっているのは向こうだし、ここはふっかけてやらにゃ、私の気が済まない。

「そんな端金で、こんな貴重な情報を教えろと?」

にっこり。

「え? ああ、そうだね…。え~と、き、金貨15枚でどうだろう?」

前髪男に冷や汗が流れるのを見た。

「ふ…。あなた、情報の価値、というものをご存じ?」

ちょっと馬鹿にした風に見下してやる。

「ちょ、何様のつもりだよ!」

赤毛のチタが叫んだ。

「あら、良いんですよ。私は教えるつもりは最初からないんですから。ただ親切心で教えてあげようってのに、そんな金額を提示されても。それじゃ、交渉決裂ということで」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょ待ってーーーーー!!!」

三度立ち上がりかけた私達を、テーブルに乗る勢いで前髪男が止めに入る。

「チタ! 君はそんな短気な所を治せと言ってるだろう!」

前髪男がチタを叱りつけた。

「ごめんなさい…」

しおらしく謝るチタ。

「すまない。うちの者が失礼した。なにせ、僕を思ってくれての事だ。許してやってくれないか?」

冷や汗混じりのイケメンスマイル。
ちらりと見えた背後のギルド内では、一部女性陣と、特に男性陣がニヤニヤしながらこちらを眺めていた。何か面白がっていないか?
仕方ないとまた椅子に座る。ハヤテも降りかけた椅子によじ登る。可愛いな。
再び座した私達に、ちょっとあせりの見える顔で問いかけてきた。

「申し訳ない。どうだろう? そちらの言い値で情報を買わせてくれないだろうか?」

やっとそう来たか。

「そうですね。金貨100枚なら、情報をお売りします」
「「「「「金貨100枚?!!!」」」」」

ギルドの中に声が響き渡った。

「そ、そ、そ、そんな、馬鹿げた金額…」
「あら、長期的に見れば、私の言ったことを実践すればそれ以上の価値があると分かりそうなものですけど?」

にっこり。

「「「「「・・・・・・」」」」」

黙り込んだ面々。
ギルド内も静まりかえっている。
いや、こっちの話聞いてないで、お仕事して下さい。

「分かった。出そう」
「アルダール?!」
「そんな大金!」
「いや、この人の言うとおりだ。長期的に見ればそれだけの価値はある。幸い僕達にはそれだけ出せる財力もある。皆、いいかい?」

不安そうな顔をしていた一同が、頬を染めながら頷いた。
イケメンの一大決心した顔は少しそそるよね。でも、前髪邪魔そう。

ということで、早速ギルドのカウンターで入金の手続き。もちろんお金は前払い。
振り込まれたことを確かめ、再びテーブルに戻る。

「これで、良いんだよね?」

先程のチャラチャラした感じとは違い、真面目な顔。
ああ、この顔ならまあ見ていられる。

「分かりました。では、お教えしましょう。でも、ここでは多数の耳がありますので、そっとお耳元で言わせて頂ければと…」
「主殿、それならシロガネ殿に任せれば良いのじゃ。乙女が滅多な理由で知らぬ男の側になど行ってはいかんのじゃ」
「あら、そうね。シロガネ、私の言ったことをあの人に伝えてあげてくれる?」
「畏まったである」

さすがに金貨100枚も払ってくれたのに、大声でそれを伝えて周りにばらすのはあれなので、耳元で伝える。私もあの前髪男にあまり近づきたくなかったから、クレナイの提案は有り難い。
シロガネに耳元で囁いたら、ニヤリと笑って立ち上がり、前髪男の側に行って耳元で囁いた。

ギルド中がしんとなり、視線を感じる。

「命令しないことだって?! そ、そんなバカな方法があるか!」

前髪男が大声でそれをバラしてしまった。
私知~らない。
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