15 / 296
テルディアス過去編
テルディアスの過去
しおりを挟む
「テルディアスーーーー!」
可愛らしい女の子の声が通りに響いた。
黒髪の目つきの鋭い少年、テルディアスが振り向いた。
右手には剣を携え、左肩から荷物を下げている。
髪を高い位置で二つに結んだ、瞳のパッチリした可愛い女の子が、手を振りながら走ってくる。
「ティアか。何か用か?」
仏頂面のままテルディアスが答えた。
「相変わらずそっけないわね」
毎度のことなのか、ティアと呼ばれた少女も、あきれながら言った。
ティアは幼馴染の女の子で、テルディアスが通っている剣の道場の娘でもある。
テルディアスは今まさにその道場へ行く途中なのだ。
「こ~んな可愛い子が声掛けてやってんのよ」
可愛いという自覚があるらしい。
「少しは嬉しそうな顔を・・・」
聞く耳持たんとばかりにテルディアスは早歩きで歩き出す。
「待ちなさいよーーー!」
怒りながらティアが追いかけてくる。
テルディアスは溜め息をついた。実はティアが少し苦手・・・というか、女が嫌いなのだ。
ぺらぺらとよく喋るわうるさいわ・・・。
「道場まで一緒なんだから手でも引いたりしたらどう?!」
少し赤くなりながらティアがテルディアスに食い下がる。
「生憎俺の両手は荷物でいっぱいだ」
そっけなく答えると、テルディアスはすたすたとティアを置いて歩き出す。
その後ろからは、ティアが膨れっ面になりながら、必死でテルディアスの後を追いかけていく。
この街唯一にして一番でかい剣の道場。
剣の腕を磨くべく、沢山の男達が剣を振るっていた。
その風景を見守っているのが、この道場の息子であり、ティアの兄であるアスティだ。
着替えを済ませたテルディアスとティアがそろって出てくるのを見つけ、アスティはにんまりとする。
「仲がいいなお前ら。また一緒かよ」
軽くからかうように言ったのだが・・・。
「違うぞこいつが勝手にくっついてきたんだ」
テルディアスには通じないらしい。
「来る所は一緒でしょ!!」
ティアが顔を赤くしながらテルディアスに食いつく。
そんなティアの様子をさっぱり気付かない様子で、テルディアスはさっさと練習に励みだす。
「さっぱりだな。テルディアスは」
アスティが呟く。
「兄さん・・・」
兄の独り言を捕らえ、ティアが嫌な顔をしてアスティを睨む。
「お前も大変だな。ティア」
「何の話よ!」
いや、周りの皆にはもうバレバレなのだが・・・。
気付いていないのは当の本人、テルディアスくらいだろう。この唐変木は。
テルディアスが適当に相手を見つけ、打ち合いを始める。
相手は見るからにテルディアスよりも年上なのだが・・・。
何度か打ち合った後、
カーン
という気持の良い音を残し、テルディアスの相手の剣が見事に空高く舞い上がる。
「ま、まいった・・・」
相手に剣先をつきつけ、仕合の終わりを告げる言葉を吐かせる。
そしてクルクルと落ちてきた剣を、器用にその手に受け止めた。
互いに礼をし、テルディアスは新たな相手を探し始める。
しかし、この道場にはすでに、テルディアスの相手をつとめられる者が、アスティと剣の師匠だけとなってしまっていたのだ。
「相変わらずつえ~なぁ」
ぼやくアスティに、
「アスティ、相手してくれ」
テルディアスが頼み込む。
たまには本気で打ち込まねば剣の腕が鈍ってしまう。
「俺は無理さ。剣の才能まったくねーし。一応仕方なくここにいるだけだし。ティアのほうが強いぞ」
(うそつけ。面倒くさいだけだろ)
テルディアスが心の中で突っ込む。
未だにアスティに勝った事はない。だが、追い越してしまうのも時間の問題だった。
先延ばしにしたい気もするが、自分がどこまで強くなれるか試してみたいと思うのも事実だ。
ティアは女でありながら、その剣の腕は男に負けないくらいの実力者だ。
だが、テルディアスはティアには負ける気がしなかった。
「ティアも女だてらに良くやるよな」
アスティが呟く。
その動機は分かってはいるが・・・。
「あと2、3年したら誰も敵わなくなるんじゃね?」
たしかにティアの実力も伸びている。
「それはないな」
テルディアスが自信満々に応える。
打ち合いをするティア。やはり振りが甘いときがある。女という壁を越えるのはやはり難しいものか。
「あいつはいい女剣士になるさ。ただ、お兄さんの希望としては、もう少し女らしくなって欲しいなぁ・・・」
だんだん声のトーンが落ちていく。
そう、アスティも例に漏れず、シスコンである。ただし、認めた男がすでに目の前にいるという点で、世間一般とはちょっとずれたシスコンとでも言おうか。
「そう思わんか? テルディアス! あいつお嫁に行けるかな?!」
是非もらってくれ!
聞く人によってはそうとも聞き取れた。
が。
「知らねーよ」
テルディアスには分からなかった。
「物好きな奴がもらってくれると有難いんだけど・・・」
ちらちらとテルディアスを見ながら言うも・・・。
(妹のことになると途端にアホになるんだから・・・)
頭を抑えて考え込むテルディアスは、やはりさっぱり気付いていないのだった。
日も落ちかけ始めた夕暮れ時。家路に着くテルディアスの影が長く伸びている。
「テルディアスーーーー!!」
またテルディアスを呼ぶ声が響いた。
振り向くと、
「またお前か」
「何よその言い方」
ティアが走ってきた。
手に何か持っている。
「これ、父様からおばさまにどうぞって。北の方の果物でカルパラッツですって」
ティアが差し出した袋の中には、黄緑色の丸い果物が入っていた。
見るからに美味しそうだ。
「ああ、すまないな」
テルディアスの家は決して裕福な方ではない。そのためかこうして差し入れをもらうことがよくある。
「また私行きますからって言っといて」
しょっちゅう用事をつけては、ティアはテルディアスの家に通っていた。
テルディアスにとってはいい迷惑であったが。
「じゃね!」
軽く手を振ると、来た時と同じようにティアが走り去っていった。
その後姿を見送ると、テルディアスはまた歩を進めだした。
テルディアスの家は少し街から離れた丘の上にあった。少し急な上り坂を登り、林の中を進むと、赤い屋根のそれ程大きくはない可愛らしい家が見えてくる。家の周りも木に囲まれていたが、ある一方だけは開け、街がよく見えるようになっていた。
玄関の扉を開け、中に入る。
「ただいま・・・」
「お帰りなさいまし、テルディアス坊ちゃま」
テルディアスを待っていたのか、すぐに声がテルディアスを迎える。
家政婦のマーサだ。
小柄なマーサは背丈だけならば子供に間違えられそう・・・と言ったら本人は傷つくかもしれないが、11歳のテルディアスよりも拳一つ分ほど小さかった。ただ、その笑顔はとても柔らかく、見ているだけで安心できる。
「師匠の所から。カルパラッツとか」
「あらまあ、毎度毎度」
嬉しそうにテルディアスの差し出した袋をマーサが受け取った。
「今度お礼に伺わないとねぇ」
にこにこと袋の中をのぞき、マーサが言った。
「あっちから来ると言ってたぞ」
やはり無愛想にテルディアスが言った。ちょっと迷惑そう?
それを聞いてマーサは思った。
(ティアお嬢様だな・・・)
突っ込まないことにした。
テルディアスが家に帰ると必ずすることがある。
それは、
コンコン
扉をノックした。
「どうぞ」
中から声が応える。
「失礼します」
テルディアスが扉を開けて中に入っていった。
「お帰りなさい。テルディアス」
夕日は既に落ち、部屋の中は温かい灯りで照らされていた。その真ん中にベッドが置かれ、ベッドの上では、テルディアスの母親が座ってテルディアスを迎えた。
テルディアスの母は、昔はとても健康だったと言うが、テルディアスを生んでから体調を崩し、ほぼ寝たきりの生活だった。あまり外に出られないせいか、顔色も青白い。
その手には、紙とペンが握られていた。
それを見て一瞬、テルディアスの顔が曇る。
「ただ今・・・帰りました」
そう言って頭を下げた。
「ご苦労様でした」
帰ったら必ず母に挨拶をしに来ること。これはこの家の決まりごとだった。
「起き上がっていてよろしいのですか?」
少し心配そうにテルディアスが尋ねる。
「ええ。今日は大分いいの。少し散歩もしたのよ」
確かに今日の母の顔はいつもより赤みが差しているようにも見える。
その後、今日起きた出来事などを話し、テルディアスは、
「失礼します」
とまた頭を下げて部屋を出て、扉を閉めた。
(また手紙を書いていたのか・・・)
部屋で着替えを済ませ、いつものように一人で食事を済ませた。
あらかた片付け、部屋に戻るとベッドの上にどさっと横たわる。
「ふうっ」
(いくら手紙を出したって、今までこないもんが今更来るかよ)
いつものように母が書いている手紙に悪態をつく。
宛名は分かっている。
父親だ。
テルディアスが聞いたところによると、テルディアスの父はさる国の豪族、つまりは結構位の高いお貴族様らしい。
ある時母から少し聞いたところによれば、父と母は本当に愛し合っていたとか。
お貴族様の本当というのがどの程度なのか・・・。
結局母はただの愛人だったのだろう。
テルディアスを身篭ったことで国を追われ、この街に来たとか・・・。
詳しくはよく知らなかった。母もあまり話したがらないし、少し事情を知ってそうなマーサにも、何となく聞けない雰囲気だった。
別にそれでもいいと思っていた。今更父親のことを知ってどうしようというのか。
そんなふうに健気に父を愛し続けている母を小さな頃から見続けていたテルディアスは、いつしか馬鹿馬鹿しいと思うようになっていたのである。
『人を愛するなど馬鹿馬鹿しい』と。
可愛らしい女の子の声が通りに響いた。
黒髪の目つきの鋭い少年、テルディアスが振り向いた。
右手には剣を携え、左肩から荷物を下げている。
髪を高い位置で二つに結んだ、瞳のパッチリした可愛い女の子が、手を振りながら走ってくる。
「ティアか。何か用か?」
仏頂面のままテルディアスが答えた。
「相変わらずそっけないわね」
毎度のことなのか、ティアと呼ばれた少女も、あきれながら言った。
ティアは幼馴染の女の子で、テルディアスが通っている剣の道場の娘でもある。
テルディアスは今まさにその道場へ行く途中なのだ。
「こ~んな可愛い子が声掛けてやってんのよ」
可愛いという自覚があるらしい。
「少しは嬉しそうな顔を・・・」
聞く耳持たんとばかりにテルディアスは早歩きで歩き出す。
「待ちなさいよーーー!」
怒りながらティアが追いかけてくる。
テルディアスは溜め息をついた。実はティアが少し苦手・・・というか、女が嫌いなのだ。
ぺらぺらとよく喋るわうるさいわ・・・。
「道場まで一緒なんだから手でも引いたりしたらどう?!」
少し赤くなりながらティアがテルディアスに食い下がる。
「生憎俺の両手は荷物でいっぱいだ」
そっけなく答えると、テルディアスはすたすたとティアを置いて歩き出す。
その後ろからは、ティアが膨れっ面になりながら、必死でテルディアスの後を追いかけていく。
この街唯一にして一番でかい剣の道場。
剣の腕を磨くべく、沢山の男達が剣を振るっていた。
その風景を見守っているのが、この道場の息子であり、ティアの兄であるアスティだ。
着替えを済ませたテルディアスとティアがそろって出てくるのを見つけ、アスティはにんまりとする。
「仲がいいなお前ら。また一緒かよ」
軽くからかうように言ったのだが・・・。
「違うぞこいつが勝手にくっついてきたんだ」
テルディアスには通じないらしい。
「来る所は一緒でしょ!!」
ティアが顔を赤くしながらテルディアスに食いつく。
そんなティアの様子をさっぱり気付かない様子で、テルディアスはさっさと練習に励みだす。
「さっぱりだな。テルディアスは」
アスティが呟く。
「兄さん・・・」
兄の独り言を捕らえ、ティアが嫌な顔をしてアスティを睨む。
「お前も大変だな。ティア」
「何の話よ!」
いや、周りの皆にはもうバレバレなのだが・・・。
気付いていないのは当の本人、テルディアスくらいだろう。この唐変木は。
テルディアスが適当に相手を見つけ、打ち合いを始める。
相手は見るからにテルディアスよりも年上なのだが・・・。
何度か打ち合った後、
カーン
という気持の良い音を残し、テルディアスの相手の剣が見事に空高く舞い上がる。
「ま、まいった・・・」
相手に剣先をつきつけ、仕合の終わりを告げる言葉を吐かせる。
そしてクルクルと落ちてきた剣を、器用にその手に受け止めた。
互いに礼をし、テルディアスは新たな相手を探し始める。
しかし、この道場にはすでに、テルディアスの相手をつとめられる者が、アスティと剣の師匠だけとなってしまっていたのだ。
「相変わらずつえ~なぁ」
ぼやくアスティに、
「アスティ、相手してくれ」
テルディアスが頼み込む。
たまには本気で打ち込まねば剣の腕が鈍ってしまう。
「俺は無理さ。剣の才能まったくねーし。一応仕方なくここにいるだけだし。ティアのほうが強いぞ」
(うそつけ。面倒くさいだけだろ)
テルディアスが心の中で突っ込む。
未だにアスティに勝った事はない。だが、追い越してしまうのも時間の問題だった。
先延ばしにしたい気もするが、自分がどこまで強くなれるか試してみたいと思うのも事実だ。
ティアは女でありながら、その剣の腕は男に負けないくらいの実力者だ。
だが、テルディアスはティアには負ける気がしなかった。
「ティアも女だてらに良くやるよな」
アスティが呟く。
その動機は分かってはいるが・・・。
「あと2、3年したら誰も敵わなくなるんじゃね?」
たしかにティアの実力も伸びている。
「それはないな」
テルディアスが自信満々に応える。
打ち合いをするティア。やはり振りが甘いときがある。女という壁を越えるのはやはり難しいものか。
「あいつはいい女剣士になるさ。ただ、お兄さんの希望としては、もう少し女らしくなって欲しいなぁ・・・」
だんだん声のトーンが落ちていく。
そう、アスティも例に漏れず、シスコンである。ただし、認めた男がすでに目の前にいるという点で、世間一般とはちょっとずれたシスコンとでも言おうか。
「そう思わんか? テルディアス! あいつお嫁に行けるかな?!」
是非もらってくれ!
聞く人によってはそうとも聞き取れた。
が。
「知らねーよ」
テルディアスには分からなかった。
「物好きな奴がもらってくれると有難いんだけど・・・」
ちらちらとテルディアスを見ながら言うも・・・。
(妹のことになると途端にアホになるんだから・・・)
頭を抑えて考え込むテルディアスは、やはりさっぱり気付いていないのだった。
日も落ちかけ始めた夕暮れ時。家路に着くテルディアスの影が長く伸びている。
「テルディアスーーーー!!」
またテルディアスを呼ぶ声が響いた。
振り向くと、
「またお前か」
「何よその言い方」
ティアが走ってきた。
手に何か持っている。
「これ、父様からおばさまにどうぞって。北の方の果物でカルパラッツですって」
ティアが差し出した袋の中には、黄緑色の丸い果物が入っていた。
見るからに美味しそうだ。
「ああ、すまないな」
テルディアスの家は決して裕福な方ではない。そのためかこうして差し入れをもらうことがよくある。
「また私行きますからって言っといて」
しょっちゅう用事をつけては、ティアはテルディアスの家に通っていた。
テルディアスにとってはいい迷惑であったが。
「じゃね!」
軽く手を振ると、来た時と同じようにティアが走り去っていった。
その後姿を見送ると、テルディアスはまた歩を進めだした。
テルディアスの家は少し街から離れた丘の上にあった。少し急な上り坂を登り、林の中を進むと、赤い屋根のそれ程大きくはない可愛らしい家が見えてくる。家の周りも木に囲まれていたが、ある一方だけは開け、街がよく見えるようになっていた。
玄関の扉を開け、中に入る。
「ただいま・・・」
「お帰りなさいまし、テルディアス坊ちゃま」
テルディアスを待っていたのか、すぐに声がテルディアスを迎える。
家政婦のマーサだ。
小柄なマーサは背丈だけならば子供に間違えられそう・・・と言ったら本人は傷つくかもしれないが、11歳のテルディアスよりも拳一つ分ほど小さかった。ただ、その笑顔はとても柔らかく、見ているだけで安心できる。
「師匠の所から。カルパラッツとか」
「あらまあ、毎度毎度」
嬉しそうにテルディアスの差し出した袋をマーサが受け取った。
「今度お礼に伺わないとねぇ」
にこにこと袋の中をのぞき、マーサが言った。
「あっちから来ると言ってたぞ」
やはり無愛想にテルディアスが言った。ちょっと迷惑そう?
それを聞いてマーサは思った。
(ティアお嬢様だな・・・)
突っ込まないことにした。
テルディアスが家に帰ると必ずすることがある。
それは、
コンコン
扉をノックした。
「どうぞ」
中から声が応える。
「失礼します」
テルディアスが扉を開けて中に入っていった。
「お帰りなさい。テルディアス」
夕日は既に落ち、部屋の中は温かい灯りで照らされていた。その真ん中にベッドが置かれ、ベッドの上では、テルディアスの母親が座ってテルディアスを迎えた。
テルディアスの母は、昔はとても健康だったと言うが、テルディアスを生んでから体調を崩し、ほぼ寝たきりの生活だった。あまり外に出られないせいか、顔色も青白い。
その手には、紙とペンが握られていた。
それを見て一瞬、テルディアスの顔が曇る。
「ただ今・・・帰りました」
そう言って頭を下げた。
「ご苦労様でした」
帰ったら必ず母に挨拶をしに来ること。これはこの家の決まりごとだった。
「起き上がっていてよろしいのですか?」
少し心配そうにテルディアスが尋ねる。
「ええ。今日は大分いいの。少し散歩もしたのよ」
確かに今日の母の顔はいつもより赤みが差しているようにも見える。
その後、今日起きた出来事などを話し、テルディアスは、
「失礼します」
とまた頭を下げて部屋を出て、扉を閉めた。
(また手紙を書いていたのか・・・)
部屋で着替えを済ませ、いつものように一人で食事を済ませた。
あらかた片付け、部屋に戻るとベッドの上にどさっと横たわる。
「ふうっ」
(いくら手紙を出したって、今までこないもんが今更来るかよ)
いつものように母が書いている手紙に悪態をつく。
宛名は分かっている。
父親だ。
テルディアスが聞いたところによると、テルディアスの父はさる国の豪族、つまりは結構位の高いお貴族様らしい。
ある時母から少し聞いたところによれば、父と母は本当に愛し合っていたとか。
お貴族様の本当というのがどの程度なのか・・・。
結局母はただの愛人だったのだろう。
テルディアスを身篭ったことで国を追われ、この街に来たとか・・・。
詳しくはよく知らなかった。母もあまり話したがらないし、少し事情を知ってそうなマーサにも、何となく聞けない雰囲気だった。
別にそれでもいいと思っていた。今更父親のことを知ってどうしようというのか。
そんなふうに健気に父を愛し続けている母を小さな頃から見続けていたテルディアスは、いつしか馬鹿馬鹿しいと思うようになっていたのである。
『人を愛するなど馬鹿馬鹿しい』と。
0
あなたにおすすめの小説
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた
黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。
そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。
「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」
前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。
二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。
辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる