キーナの魔法

小笠原慎二

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テルディアス過去編

父親

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一月後。
テルディアスの通う剣道場には、噂を聞きつけた剣士たちが押し寄せて来ていた。
練習相手には困らなくなったテルディアスではあったが、逆に多過ぎて困ってもいた。
一人が終わると、俺も俺もと押し寄せて来る。いくら体力に自信があっても、立て続けに20人も相手をすればやっぱり疲れる。しかし、疲れても次は俺だと立ち上がってくる。
有難いのだか、迷惑なのだか、時々分からなくなった。
まあ、おかげで実力は確実に上がっているが。
そしてその書状は届いたのだった。

「テルディアス!!」

とりあえず向かってきた者すべてを叩き伏せ、一休みしていたテルディアスの元へ、アスティが駆け込んできた。

「大変だ! お前に!」

血相を変えて泡食っている。
何事かと落ち着かせてから、事情を聞き、書状を預かっているティンダーの元へ向かった。
書状は国王からだった。
内容は驚くものであった。

『先の剣技大会での活躍ぶり。その他、数々の大会における最年少記録を塗り替えた成果。現ソードマスターとも互角に打ち合った実力。以上を考慮し、それ相応の称号、ソードマスターの称号を与えるにふさわしいと判断した。』

というものであった。

『ソードマスター』

読んで字の如くである。
剣の道を極めたと認められた者に与えられる。本来テルディアスのような若輩者が手にできるような称号ではない。
しかしテルディアスの実力は秀でるものがあった。
故に認められたのであろう。
そして、この称号があれば、貴族と同じ扱いを受けることができる。すなわち、平民出では兵士から軍士になり、そしてやっと騎士になるというところを、いきなり騎士になることも可能なのだ。

(もしかしたらあのお姫さんも手を出したのかもしれないな・・・)

家への道を走るテルディアスは思った。

(でなけりゃこんな田舎街の一介の剣士に、おいそれとそんな称号を与えるわけがない)

テルディアスは全速力で駆けて行った。
少し街から離れた丘の上。少し急な上り坂を、疲れてもたつく足を何とか急がせ、林の中を駆けて行く。赤い屋根のそれ程大きくはない可愛らしい家が木々の間から見えてきた。
もうすぐだ。

バタン!

いつもよりかなり荒々しく家の扉を引き開ける。

「た、ただいま・・・」

走ってきたせいで呼吸も乱れ、声も大きくなった。
奥からパタパタと足音がしてマーサが小走りに迎えに出てきた。

「あらまあ、坊ちゃま、お早いお帰りで・・・」

いつもは日暮れ近くまで戻らないテルディアスが、まだ暮れ時までいくらか時間のあるのある時に帰ってくるなど珍しい。

「母上は?!」

いつものテルディアスらしくないドタドタした足取りで家の中に上がりこむ。

「お部屋にいらっしゃいますけど・・・」

いつもと違うテルディアスにマーサも戸惑いを隠せない。何かあったのか?
母親の部屋の前に立ち、いつものようにノックをしようとしてテルディアスは我に返る。
落ち着かなければ。
一度深く深呼吸をする。

すって~~~~。はいて~~~~。

気を落ち着かせると、いつものようにノックをした。

トントン。

「どうぞ」

母の穏やかな声が返ってくる。

ガチャリ

静かに扉を開けた。

「失礼します」

はやる気持ちを抑え、テルディアスはいつものように部屋に入っていく。

「お帰りなさい、テルディアス。今日は早かったわね」

いつものように穏やかな笑みを浮かべ、母がテルディアスを出迎える。

「か、母様・・・実は・・・今日・・・先程なんですが・・・」

やはり気持が高ぶっているのか、どもりながら説明をした。

「まあ! ソードマスターに!」
「はい・・・」

母が驚いた顔をし、すぐにその目に涙が溢れた。

「・・・なんとまあ、なんと素晴らしいことなの・・・! きっとあの方もお喜びになるわ・・・」

『あの方』

あの方・・・。

その言葉だけで、テルディアスには分かった。

父だ。

生まれてこのかた会ったこともない、顔さえ知らない父。
母を捨てた父。
自分を捨てた父。
会いたいと思った時期もあった。
だが叶わないと知っていた。
豪族だから。
貴族だから。
平民の自分なんかに会ってくれるわけがない。
会ってくれるならば、すでに向こうから何らかの接触があってもおかしくはない。
だが。
いままでに一度も、そういうことはなかった。
遊んで捨てた女の息子だから。
自分はいらない子供だから。
母のことが、自分のことがばれたら、今の地位が危うくなるから。
だから会いにこない。
会うことはない。
なのに何故?!
何故そんな奴が、ソードマスターになったことを喜ぶのだ?!
俺を捨てた父が!!!

そんな想いがテルディアスの心の中を駆け巡っていることも知らず、母は言葉を続けた。

「よく頑張りましたねテルディアス。しかし、ソードマスターとなったからといって浮かれてはなりませんよ。これからも気を引き締めて、国とあの方のために剣術にお励みなさい」
「はい・・・」

テルディアスの表情が、部屋に入ってきたときとはうって変わって冷ややかになっていることに、母は気付かなかった。










ズムッ!

枕に思い切り拳をめり込ませた。

「あの方だと・・・!」

言いようのない怒り。腹の底から、奥から込み上げる怒り。
それはもう、憎しみとも言える感情だった。
生まれて初めて、これ以上ないくらい、テルディアスは怒りを感じていた。

(俺は誰のためでもない、自分のために剣を振るってきたんだ! 父親だかなんだか知らんような奴のために振るえるか!)

握った拳が怒りで震える。

(何故母様は未だにそんな奴を思い続けているんだ! 遊んで捨てられたのに! 何故?! 体を壊すほどに想い続けて・・・馬鹿馬鹿しい!)

母親の、美しいが、痩せこけて白い顔が浮かぶ。
テルディアスが小さな頃は、少しは外に出て、好きなときに好きなように散歩していた母。だが今は、マーサの補助がないとベッドからさえ出ることも叶わない。
明らかに母は弱ってきていた。
その原因は・・・父であろう。

(俺は母様のような生き方はしない! 愛に溺れるなんて愚かしい! 俺は俺の力でソードマスターになったんだ! 俺の実力で上に上がって、必ず騎士になる! いや、今や将軍だって夢じゃない! そうして、俺は、あいつを越える!)

もはや父と呼ぶことさえ汚らわしかった。

(俺は俺だけの力で上へ行く! 誰の手も借りずに!!)

人を愛することが馬鹿馬鹿しい。
テルディアスがそう思うのは、こうした両親の姿を見ていたからだ。

だが、テルディアスはまだ、子供だった。
愛も知らぬ子供が、愛に飢えて叫んでいるだけに過ぎない。
テルディアスは、いずれ知るだろう。
テルディアスが考えている以上に、愛とは深く、大きいものだと。
そしてその時は、ゆっくりと近づいていた。












数日後、母が死んだ。
ソードマスターの授与式を終え、帰った時にはすでに冷たくなっていた。
マーサが手配し、テルディアスが帰ってくるまでは手をつけずに待ってくれていた。
母の死に顔は、安らかだった。
母の墓は、街を一望できる見晴らしの良い場所に作った。
あまり外出できなかった母は、窓から街を眺めるのが好きだったからだ。
その母の墓の前に、テルディアスは立っていた。

「母様、あなたは幸せでしたか?」

もう答えない母に語りかける。

「手に入らない者を想って・・・、来ない人を待ち続けて・・・」

そこから見える街は、窓から眺めるより、広く感じた。
母が亡くなっても、テルディアスはさほど寂しさや悲しさを感じなかった。
今までも独りで生きてきたようなものだったから。
ただ、・・・。
いつもの、家に帰ってからの母への挨拶がいらなくなった。
そのことが母の死を、実感させた。











それからまた、数日たった頃。
たまたま稽古が早く終わった日、マーサに勧められてテルディアスは母の墓へ行った。
その墓の前で、見知らぬ男が泣いていた。
男がテルディアスに気付いて振り向く。
すぐに分かった。
父親だ。
母は薄茶の入った髪の色。だが、テルディアスは夜の闇のように黒かった。
そして、目の前の男の髪も・・・。

「お、お前は・・・、テルディアスか・・・?」

震える声で男が尋ねる。
溢れ出しそうになる感情を必死に押さえ、テルディアスは唇を噛み締めた。

「テルディアス・・・」

男がテルディアスに向かって手を差し伸べてきた。

「どちらさまですか?」

冷たい声でテルディアスは差し伸べられた手を、目の前の男を否定した。
男は思わず手を引っ込める。

「そ、そうだな・・・。初めて会ったのだものな」

戸惑いながらも男は名のった。

「私の名はクラディウス・マウ・タージェント。お前の父だ」
「俺の父は、とうの昔になくなりました」

やはり冷たい声でテルディアスは男の言うことを否定した。

「な・・・」

男が驚く。

「ずっとそう思ってきました。今更・・・」
「テ・・・」

男が何か言いかけた。

「どの面下げて来たんだ!!!」

テルディアスの怒りがとうとう表に出た。
抑えきれなくなった憤りがどんどん膨れ上がっていく。

「母はあんたを待ってた! ずっとずっとずっと!! 今更会いに来て何のつもりだ!! もう母はいないのに!」 
湧き上がる怒りと共に言葉を一気に吐き出した。

「ち、違うんだ、テルディ・・・」
「話など聞きたくない」

少し冷静さを取り戻し、テルディアスはやはり冷たい声で突き放す。

「あなたを父などと思わない。金輪際関わりたくもない。用が済んだら早くお帰り下さい」

それだけ言い捨てると、テルディアスは男に背を向けてその場を立ち去った。

「テルディアス!!」

男が一度だけテルディアスの名を呼んだが、テルディアスが振り向くことはなかった。














家へ帰り着き、後ろ手に扉を閉める。
色々な感情がごちゃ混ぜに湧き上がり、整理がつかないまま、テルディアスはうつむきながら部屋へ向かって歩き出す。

「お帰りなさいまし、坊ちゃま」

マーサが駆けつけてきた。

「ただいま」

その横を無表情のまま通り過ぎ、足早に部屋へ向かおうとする。

「坊ちゃま」

マーサが声をかけた。

「父上君にはお会いになられましたか?」

その言葉を聞き、テルディアスの感情が再び膨れ上がる。

「ひ・・・」
「知ってたのか!」

マーサの首元を掴み、壁に叩きつける。

「ごほ・・・」
「何故あの男が来ていると俺に言わなかった!」

思いがけず、怒りのこもった瞳に睨みつけられ、マーサは戸惑った。

「ぼ、坊ちゃま?」

こんなに感情を荒立てるテルディアスを見るのは初めてのことだった。

「お、お喜びになられるかと思いまして・・・」

テルディアスが父親に会いたがっていることを、マーサはうすうす感づいていた。
だから初めて父に会ったとなれば、大層喜ぶだろうと思っていたのだ。
だが、違った。

「喜ぶ? 誰が? 俺がか? ハッ! 俺が? 本当に喜ぶと思っていたのか?」

いつも冷静で感情を忘れたのではないかと思えるほど無表情なテルディアスとは思えないほど、怒りの感情が溢れていた。
知らず知らず手に力がこもり、マーサの首を絞めあげる。

「坊ちゃま苦しい!」

思わずマーサが悲鳴を上げた。
テルディアスが乱暴にマーサの首元から手を放した。
解放され、ごほごほとマーサは咳き込む。
振り向いたテルディアスの目に、テーブルに並べられた二組の食器が目に入った。
いつもなら一人で食べるため、一人分しかない食器が、二人分出ている。

つまり・・・。

「おい、なんで二人分あるんだ?」

冷たい声でテルディアスが言った。
少し怯えながらマーサが答える。

「そ、それは、坊ちゃまと父上君の・・・」

テルディアスがマーサを睨みつけた。

「ひ・・・」

とっさにマーサは身を縮めた。

ガシャーン!!!

皿の割れる音が家中に響き渡った。
マーサが目を開けると、テルディアスがテーブルにあった食器をすべて床に落とし、叩き割っていた。

「ぼ、坊ちゃま?!」
「俺は今夜はいらん!」

マーサを睨みつける。

「あいつにも食わせるな! いいな!!!」

それだけ言うと、つかつかと自分の部屋へ行ってしまった。

「坊ちゃま・・・」

マーサにはなにがなんだか分からなかった。
あれだけ待ちわびていた父親に会い、何故あんなにも感情を爆発させたのか・・・。
それよりもなによりも、あんなに感情を表に出したテルディアスを見るのが、マーサにとって初めてのことで、多少心配ながらも、マーサはほっとしていた。

母は病弱、父はいない。そんな環境で育ったテルディアス。
あまりにも感情が表に出ないテルディアスを、マーサは心配していたのだ。
だが、やっぱりテルディアスも人の子である。人並みの感情を持ち合わせていたのだと、マーサはくすりと笑った。
そんな場合ではないとは分かっていたが。













バン!!!

テルディアスは思いっきりベッドを両の拳で叩きつけた。
感情が湧き上がる。
怒りが。憎しみが。
許せなかった。
心の底から憎かった。
自分でもよく分からないほど憎かった。
あいつにだけは負けたくない!
必ず上へ行ってやる!
あいつだけは、絶対に許さない!!
あいつだけは・・・!!!
激情の波がテルディアスを飲み込んでいた。
満月に近い月だけが、その様子を穏やかに見守っていた。













それから二年後。
靴を履き、マントを羽織る。
テルディアスは15歳になっていた。

「坊ちゃま、お気をつけて」

テルディアスがマーサの差し出した荷物を受け取る。

「マーサも体には気をつけろよ。無理はするなよ」
「大丈夫ですって」

マーサはにっこり笑った。
赤い屋根のそれ程大きくはないが可愛らしい家。住み慣れたその家に背を向け、テルディアスは歩き始める。

「試験頑張ってくださいねー!!!」

マーサが大きく手を振って見送った。
兵士の入隊試験を受けられるのは、15歳になってからである。
テルディアスはソードマスターの特権を使い、兵士の上の階級、軍士の試験を受ける手続きを取っていた。しかもただの軍士ではなく、軍士長クラスである。
そしてその上の階級は、テルディアスの目指す、騎士だ。
夢が手の届く所まで近づいている。
テルディアスは自信に満ち溢れていた。
王都まで、試験を受けるために歩く。この時をどんなに待ち焦がれたことか。
はやる気持ちを抑えつつ、足早にテルディアスは街を抜けていく。
街外れの街道に来た頃、

「よっ」

アスティだった。
そばの木の陰には、ティアもいる。

「送別会は昨日やったろ? あれだけ飲んでまだ飲む気か?」

テルディアスの旅立ちを祝い、送別会が開かれた。中でもアスティは尋常ではない量を飲んでいた記憶があるが・・・。

「見送りだ見送り!」

少し青い顔をしながらアスティが苦笑いをする。
二人の身長は、今ではそれ程変わらないほどになっていた。だがまだ少し、アスティの方が高い。

「どうしても一言言いたくてね」

その後ろから、剣の師匠のティンダーが出てきた。

「師匠!」

ティンダーはテルディアスに歩み寄り、

「テルディアス。お前の剣には足りないものがある」

そう告げた。

「え?」
「これからお前が成長する過程で、きっと壁にぶち当たるだろう。その時、お前がその足りないものに気付くことができれば、更なる成長を遂げられるだろう。しかし万が一、気付くことがなければ、お前は道を見失うだろう」

テルディアスにとって衝撃的だった。
自分の剣に足りないものがある?

「それは、なんですか?」
「それは・・・、口で言って分かるものではない。王都へ行く道々考えていくがよい」

テルディアスへの最後の課題だった。

「お前のことは本当の息子のように思ってきた・・・。幸運を祈る」

テルディアスの肩に軽く手を置き、その瞳を見つめた。
その顔はまさに、息子の行く末を案じる父親の顔だった。

「師匠・・・」

三人に別れを告げると、テルディアスは再び歩き出した。
自分に足りないものがある。
その言葉を噛み締めながら。
去り行くテルディアスの背中を見つめ、ティンダーはぼそりと呟いた。

「テルディアスは・・・気付くことができるのだろうか・・・」

テルディアスに足りないもの。
実は、テルディアスが一番に欲しているもの。
そして、テルディアスが一番、憎んでいるもの・・・。
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