キーナの魔法

小笠原慎二

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奴の名はサーガ

水浴び

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気がつくと、朝になっていた。
木々の間から朝日がこぼれ、小鳥たちが目覚めの歌を歌っている。
キーナが体を起こすと、キーナの肩で寝ていたキューちゃんが転げ落ちた。
ぼーっとしたまま、キーナは夢を思い返していた。

(またテルの夢…、今度はダーディンになってた…)

思い返してみれば、なんとなく見慣れたテルではなく、

(今よりもそっと若い感じで…)

ふと目に止まる。
火が消えている。
その向こうで、火の番をしていたはずの、ならず者サーガが完全に寝落ちしていた。
あろうことか、グーグーイビキまでかいている。

スパァン!

朝の爽やかな木立の中に響き渡った。

「って~~…、あにすっだよ…」

寝ぼけ眼でサーガがキーナを見つめる。

「あにすっだじゃない!」

どこから出現させたのか、ハリセン片手にキーナが仁王立ちしていた。

「火は消えてるわ、眠りこけてるわ、火の番も出来んのかあんたはー!」

サーガの目が点になる。

え? 火? 消えてる?

とでもいいたそうに。

「あ~…」

なんとか言い訳を考えるサーガ。
オデコをポリポリとかくと、

「だ~いじょうぶ。20歩以内に何かが近づけば、俺はすぐに起きれんだよ」

と言い放つサーガの後ろから出てきたものは…。
キーナがさっとサーガとの距離を取る。

「じゃ、それは?」

と指を指す。

「へ?」

とサーガが振り返ると、ハローとばかりに一つ目の小さなグールが、サーガに向かって触手を伸ばしているところだった。
蒼白になるサーガ。

「殺!」

の掛け声とともに一刀両断。
頭を抱えたキーナは身支度をさっさと整えると、

「さーなら」

その場を後にした。

「ちょい! まて!」

慌てて追いかけるサーガ。

「た、たまたまだって! いつもは違うんだ本当にもっとしっかりと…」

「聞く耳ありません」

なんとか名誉挽回のために取り繕うとするが、サーガがなんと言おうと前進をやめないキーナ。
追いすがるサーガ。するとサーガは鼻先にとある匂いを感じた。

「ん?」

この匂いは…。

「ちょっと待て! いいもんがあるかも!」

と、キーナの首筋をガシッと掴むと、そのままキーナを引きずり始めた。

「いやー!! 離せー!!」

キーナがいかに暴れようと気にせずに、サーガが茂みをかき分けてどんどん進んでいくと、突如森が開け、大きな湖のほとりに出た。

「ほれ」

サーガが見てみろとばかりにキーナをつまんで湖を見せる。

「綺麗な湖…」

「分かったか?」

やっとサーガの手が首筋から離れた。

「ったく、ギャーギャー騒ぎやがって…」

とブツブツ言いながら何やらゴソゴソ。

「でもこんな所で何をするの?」

とキーナが振り向くと、

「は?」

すでに上半身裸になっているサーガがいた。
早!

「何って、水浴びに決まってんだろ」

と慣れた手つきであっという間に下もポ~イッと脱いでしまう。
もちろんキーナはぐるりと背を向けて見ないことに。
見てもいいことありません。

「お前も早く脱げよ?」

「僕はいい!!」

キーナが赤くなって叫んだ。
ただ、その顔はサーガには見えていないわけで。

「何言ってんだ。体は清潔に保っとかねえと色々大変な事に…」

「いいっての!」

そうです、勘のいい読者様はお気づきですね。
このサーガ、キーナを女の子とは気づいていないのです。

「風呂嫌いか?」

サーガがニヤリと笑った。
明らかにいたずらっ子の笑みだ。

「ちがう!」

キーナが叫び返す。

「いーから脱げー!」

サーガがキーナに踊りかかった!

「ギャー! 何すんのー!!」

必死で抵抗するキーナ!
キーナ危うし!
もつれにもつれて、

むにっ♡

サーガの手がキーナの胸に伸びていた。

「ん?」

ざわり

キーナに悪寒が走った。

「こ、これは?!」

もみもみもみっ

予想外のものに触れてしまい、確かめるかのように揉みしだく。

ぞぞぞぞぞぞぞぞぞ!!!

悪寒が駆け巡るキーナ。

「揉むなーーー!!!!」

ゴッ!!

見事な肘鉄がサーガの顎にヒットした。
かなりいい感じに決まり、頭がクラクラとするのを抑えながら、

「て、ちょっとまて…、おま、え?」

気がつくと、キーナが綺麗に半回転し、遅れて足が飛んできて…、

ドガッ!

これまた綺麗にキーナの足がサーガの頭を捉え、これまた綺麗にサーガは吹っ飛ばされた。

「まったく…。何すんだい」

揉まれた気持ちの悪い感触を払拭するかのように、自分の胸を抱きかかえるキーナ。
そうです。知らない人に揉まれても気持ちの悪いだけなのです。

「う…うぐ…」

かろうじて意識を保っていたサーガが首の辺りを抑える。
頭かと思ったら延髄切りになってたんですね。

「き、きいた…。今のは…」

不意打ちの不意打ちが重なったのだから仕方ない?
油断したサーガが悪いのか? はたまたキーナの攻撃が華麗過ぎたとか?

「つ、つーか…、お前…」

「何?!」

「女、だったんだな…」

言ってはならない一言を言ってしまった…。

ビシッ!

キーナの額に怒りマークが現れた。
それを見てキューちゃんが慌てて避難しだした。
火の力が急速にキーナの手元に集められ…。

ちゅどーん

森に大きな音が響き渡った。

「今度こそ本当にさーなら!」

プンスカと歩き去るキーナ。
その後ろをキューちゃんがオタオタと飛んで付いて行く。
後に残ったのは…、半分黒焦げになった丸裸のサーガだけだった。
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