キーナの魔法

小笠原慎二

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赤い髪の女編

あたしも行くわ!

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「今日こそメリンダさんを見つけるのだっ!」

通りに降り立ったキーナがエイエイオーと気合いを入れる。
その横を静かにテルディアスが通り過ぎる。

「テル、なんか元気ない?」

なんだかいつもより静かな気がしてキーナが声をかける。

「別に」

いつも通りの返事。
だけれどもなんだか醸し出すオーラがいつもより覇気がない。

「ねいねいねいねい、何かあったの~?」
「じゃれるな!」

まとわりつくキーナを引っぺがすが、キーナはめげない。
ねいねいねいねいと歩きながらもテルディアスにまとわりつく。
キーナなりに心配しているのであろうが、遊んでいるようにしか見えない。
いや、ただ遊んでいるだけかもしれない・・・。

奇妙な二人が通りを進む。

その後ろからタタタッと小走りに近づいていく者。
その人物は両腕を大きく広げ、

「キーナちゃんっ!」

とキーナに抱きついた。

「うにゃわあ!!」

いきなり背後から抱きつかれ、キーナもさすがに驚く。
そのままその人物はキーナを抱き上げ頬ずり。
キーナは背の高いその人物に宙にぷらりんと浮かされながら、赤い髪を確認した。
メリンダだ。
メリンダはキーナを地上に降ろすと、

「キーナちゃん、ごめんね。待たせちゃって」
「メ、メリンダさん?」

さすがのキーナもメリンダの食い気味の迫力に押される。
テルディアスはどうすることもできず、ただなりゆきを見守っている。

「とにかく、一番引っかかっていた問題が片付いたから、あたしも一緒に行くわ!」

メリンダがにっこりと笑う。

「!」
「わーい! やったあ」
「ウフフ」

通りの真ん中で手を取り合って喜び合う二人。
そんな二人を余所に、通りの端で一人暗くなるテルディアス。

(キーナだけでも手間がかかるのに・・・。この上厄介な女がついてくるなんて・・・)

人見知りで、特に女は苦手で、その中でも特にメリンダのようなお色気ムンムン系は特に苦手とするテルディアス。
苦行以外のなんでもない。
村の場所を聞けるだけで良かったのに・・・。
と落ち込むが、案内がなければ行きにくいのでもあるし、この際しょうがないと無理矢理納得する。
そのまま支度を整えて、街を出ることになった。

通りを進んで行く三人。
時折街の人が、メリンダに手を振る。
どうやら皆事情を知っているらしい。

「本当にいいの? シュワット一家のこと」
「シュバルティね。ええ、もちろん!昨日その事で悩んでたら、昔の馴染みのお客さんに会ってね、
 その人の通り名が“遊び人のレオちゃん”て言うんだけど・・・」

“遊び人のレオちゃん”

その名はテルディアスも聞いたことがあった。
ただし、その街よりさらに遠い所にいるはずの人の名前・・・。

(・・・まさかな。あの人はミドル王国にいるはずだし・・・)

女好きの謎だらけの師匠の顔を思い浮かべる。
いくら女好きとはいえ、まさかこんな街にまで来ることはないだろう。

「『なあんだ、そんなことなら俺に任せておけ』って、言うが早いか、奴らのアジトをすぐに突き止めてね、あっという間にこてんぱんにしてくれて、『今度この街に手を出したら、ミドル王国の赤の魔導師が黙っちゃいないぞ!』って!」

テルディアスはこけそうになった。

赤の魔導師?
それはあの高名な師匠の通り名でもある・・・。

「知らなかったわ~。レオちゃんてあの女ったらしで有名な赤の魔導師の縁の者だったなんて!」

(あの人に親類縁者なんていたっけか?)

テルディアスは頭を捻る。
確か生涯独身で親兄弟もいなかったはずだけれども・・・。
弟子のうちの誰かなのだろうか?

その時、テルディアスは視線を感じ、後ろを振り返った。
だが、そこには誰もいない。
なんとなく知ったような気配も感じた気がしたが、それも一瞬だけだった。

(気のせいか・・・?)

気にはなったが、それきり気配も視線もなくなってしまった為、テルディアスは楽しそうに会話をする、二人の後を追った。
















物陰からその様子を伺っていた人物が、こっそり溜息を吐いた。

(さすがはテルディアス。俺の気配に気付くかよ)

赤い服を着て、赤茶けた髪を後ろで一つに縛っている、そこそこ端整な顔立ちの青年が、物陰に隠れていた。

(まさか、こんな所で関わることになるとはね)

チラリと通りを進んで行く三人を見やる。
キーナは元気そうに、テルディアスは訝しげに歩いて行く。

(この姿を見たら、驚くだろうな・・・)

この姿を見た二人の表情を想像し、ふふふと笑う。
だが、この姿を見せる時は訪れるのだろうか。
まあそれはどうでもいいことだ。
知ろうが知るまいが、世界が変わる事でもない。

キーナを見つめる。
少年としかやはり一見見えない少女は、今日も元気なようだ。

(その時が来たら、また、話しでもしよう。ミリヤ)

心の中で彼女《・・》に一声告げ、赤い服の人物はその場を立ち去った。


















「?!」

キーナが突然キョロキョロと辺りを見回す。

「どうしたの? キーナちゃん」
「ん、なんか、誰かに呼ばれた気がしたけど・・・」

名を呼ばれたというか、魂に触れられたというか、なんとも奇妙な感じだった。

「気のせいかな?」

その感じは一瞬だけだったし、特に顔見知りの人がいるというわけでもなし。
何か変な物でも食べたのかしら?
などと考えつつも、そこはキーナ、特に気にせず歩を進めた。














なんだかちょっと暗いフードの男。
いつも元気な少年のような少女。
赤い髪の露出度の高いお色気お姉さん。
の一行は火の宝玉を求め、街を出て行った。
街の人達は、少し悲しそうな寂しそうな、それでいて少し嬉しそうな顔をして、一行を見送った。
赤い髪の女は一度だけ振り返り、少し頭を下げた。
そしてそのまま、もう振り向くことはなかった。
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