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テルディアス求婚騒動編
宝玉が、光った!
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じいやさんを先頭に、お嬢様とテルディアスが廊下を歩いて行く。
いよいよ宝玉とご対面となるのだ。
もちろん、テルディアスはそのまま、はいさよならと逃げ出すつもりであるのだが。
長い廊下を歩きながら、テルディアスは先程の事を思い出す。
夕飯の前、準備がてら部屋に戻った時、キーナと廊下で擦れ違った。
「キーナ」
起き上がっていて大丈夫なのかと、キーナに声をかけた。
「大丈夫か? 具合でも悪かったか?」
と近寄るも、
「別にどこも悪くないん!」
そう言って視線を外した。
なんだかむっつりとした顔をしている。
よく分からず、思わずおでこに手を伸ばす。
「どうした? 何かあったか?」
「何もないん!」
その手をキーナが乱暴に振り払った。
そしてそのまま、廊下を走って行ってしまった。まるで逃げるように。
そう、自分から、テルディアスから逃げるように。
(キーナが…、俺の手を…、振り払って…)
悲鳴が聞こえてくる。
『きゃああ! ダーディンよ! 助けて!』
『ダーディンだ! 逃げろ!』
己の姿を認めると、人々は恐れおののき、逃げ出す。
差し出した手を振り払って。
(振り…払って…)
『お願い! 助けて! 食べないで!』
『殺られる前に殺ってやる!』
『死ね! ダーディン!』
憎しみが、殺意が向けられる。
己は何もしていないのに。
ダーディンだというだけで…。
あの少女だけだ。自分の手を握り返してくれたのは…。
「キ…ナ」
我を忘れてその足を踏み出した時、誰かの手が、肩を掴んだ。
ギクリと我に返り、振り向くと、
「メリンダ…」
「は~い」
メリンダがにっこりと笑って立っていた。
少し前から様子のおかしい二人に気付いて見ていたらしい。
「こっちはあたしに任せておきなさいって」
ウィンクを投げ、キーナの後を追う。
「だ…だが…」
「女同士の方が、分かる話もあんのよ」
そして、お前はさっさとお嬢様の元へ行けとばかりに、手をヒラヒラとさせて、廊下に消えていった。
なので、二人がどんな話をしたのかは分からない。
その後食堂などで見かけたキーナは、顔の渋さは取れてはいたが、何故だか、一度たりともテルディアスと目を合わせようとしなかった。
意識的に避けているようだった。
(何があった…? それとも俺が何かしたのか…?)
心当たりはまったくない。
今まで、人に嫌われるなど別に構わないと思っていた。
ダーディンになってからは、人から恨まれる事が当たり前だった。
誰かに好かれようとしたことなどなかった。
なので、はっきり言って、対処の仕方がわからない。
相手が怒るなら怒らせておけ。嫌うなら嫌っていればいいなどと思ってきたものだから、どうして自分に怒りが向けられているのか、知る術全く分からない。
もやもやと考えている内に、
「着きましたわ」
お嬢様の言葉でハッとなる。
「この部屋にございますの」
大きな両開きの立派な扉の両端の壁に、じいやさんとお嬢様が右左に分かれて、鍵穴に鍵をセットする。
「行きますぞ、お嬢様」
「ええ」
呼吸を合わせ、二人が鍵を回す。
ガチャリ
少し大きな音がして、鍵が開いたようだった。
じいやさんが扉を押し開ける。
ギイイイイ…
少し重そうな金属音を立てながら、扉が開いた。
六角形の一段高くなった台の上に、また六角形の台座が備え付けられ、その上で、噂の宝玉が鎮座していた。
暗い部屋に、天窓から月明かりが差し込み、上手い具合に台座を照らし出している。
じいやさんが入り口付近の明かりを灯し、少し部屋が明るくなる。
「あちらが、その宝玉でございます」
じいやさんが恭しくお辞儀をした。
「あれが…」
テルディアスが部屋に足を踏み入れる。
その後ろから、祈るようにお嬢様も入って来た。
テルディアスは迷いなく、真っ直ぐ台座に向かう。
そして、辺りを窺う。
(入り口は一つ。窓は、天窓のみか。嵌め殺しのようだな…。逃げるとなると…、扉か…)
宝玉を手にしたら、二人の間を抜け、入って来た扉から逃げるしかない。
(こいつを抱えて、あとは一気に…)
逃げ出す。
キーナの顔が浮かんできた。
なんとも言えない、機嫌が悪そうな顔。
あんな顔を見たのは、初めてだった。
(何が…、あったんだ?)
キーナがテルディアスの手を振り払うなど、記憶喪失の時だけだった。
いつもなら、しつこいくらいに絡みついてくるのに…。
(何が…)
つい、払われた右手を見てしまう。
しかし、今はそれどころではない。
気を取り直し、宝玉に手を掛けようとしたその時。
パアッ!
宝玉が光った。
(?! 何故?! まだ触れてもいないのに!)
近寄っただけでも光る代物だったのか?
(急いで…!)
慌てて宝玉を掴む。
が、動かない。
(なんだとーー!!)
ぐいぐいと押したり引っ張ったりしてみるが、寸分も動かない。
(台座にガッチリ固定されている! これは、台座を壊すなりしないと…)
取れねーよと考えていたらば、
「テルディアス様!」
台の下から、とてつもなく嬉しそうな顔をしたお嬢様が、声をかけてきた。
テルディアスの顔が引きつった。
「まずいことになった」
キーナ達の部屋で、メリンダ、サーガ、テルディアスがベッドに座り、話し合いを始めようとしている。
肝心の一人がいない。
「キーナは?」
メリンダと同室のはずの、本編の主人公の姿がない。
「さあ?」
「さあ? トイレじゃない?」
サーガとメリンダも知らぬようだ。
「まあいい。後で伝えておいてくれ」
本当なら一緒にいて、説明してしまった方が早いのだが、あの後、「今後に向けて話し合いを」とそのまま別室に引き摺られそうになり、必死に言い訳して、ここに来た。
「宝玉が、光った」
宝玉が光る。
つまり、次代領主適正者、お婿さん候補として認められてしまったのである。
「おめでとー。短い間だったけど楽しかったわー」
「あのなぁ…」
「いいんじゃねーか? ここいらで身を固めちまっても」
「できるわけないだろう!」
分かってて言ってるとよく分かる。
二人の顔はニヤニヤだ。
「下手をすれば、明日の朝には街に伝えられる。それまでにここから逃げ出さないと…」
「そうよねぇ。ダーディンが領主になったって知ったら、街中の人達が恐れおののくでしょうね」
「そういうことじゃないんだが…」
正体がバレるのもまずい事には変わりないのだけれども、なんか論点が違うよな?
「俺はこの後、今後についてあのお嬢様と話し合わにゃならん。だから、お前達で盗み出してくれ」
話し合いで気を反らせている内に、盗み出せという。
鍵はじいやさんが持っているから、それをまずは上手く掠め取らなければならない。
「しゃ~ないわね。やったろうじゃん」
「報酬は高いぜ?」
「何故お前にそんなもの払わにゃならん」
テルディアスはその他の注意事項などを、二人に教え始めた。
いよいよ宝玉とご対面となるのだ。
もちろん、テルディアスはそのまま、はいさよならと逃げ出すつもりであるのだが。
長い廊下を歩きながら、テルディアスは先程の事を思い出す。
夕飯の前、準備がてら部屋に戻った時、キーナと廊下で擦れ違った。
「キーナ」
起き上がっていて大丈夫なのかと、キーナに声をかけた。
「大丈夫か? 具合でも悪かったか?」
と近寄るも、
「別にどこも悪くないん!」
そう言って視線を外した。
なんだかむっつりとした顔をしている。
よく分からず、思わずおでこに手を伸ばす。
「どうした? 何かあったか?」
「何もないん!」
その手をキーナが乱暴に振り払った。
そしてそのまま、廊下を走って行ってしまった。まるで逃げるように。
そう、自分から、テルディアスから逃げるように。
(キーナが…、俺の手を…、振り払って…)
悲鳴が聞こえてくる。
『きゃああ! ダーディンよ! 助けて!』
『ダーディンだ! 逃げろ!』
己の姿を認めると、人々は恐れおののき、逃げ出す。
差し出した手を振り払って。
(振り…払って…)
『お願い! 助けて! 食べないで!』
『殺られる前に殺ってやる!』
『死ね! ダーディン!』
憎しみが、殺意が向けられる。
己は何もしていないのに。
ダーディンだというだけで…。
あの少女だけだ。自分の手を握り返してくれたのは…。
「キ…ナ」
我を忘れてその足を踏み出した時、誰かの手が、肩を掴んだ。
ギクリと我に返り、振り向くと、
「メリンダ…」
「は~い」
メリンダがにっこりと笑って立っていた。
少し前から様子のおかしい二人に気付いて見ていたらしい。
「こっちはあたしに任せておきなさいって」
ウィンクを投げ、キーナの後を追う。
「だ…だが…」
「女同士の方が、分かる話もあんのよ」
そして、お前はさっさとお嬢様の元へ行けとばかりに、手をヒラヒラとさせて、廊下に消えていった。
なので、二人がどんな話をしたのかは分からない。
その後食堂などで見かけたキーナは、顔の渋さは取れてはいたが、何故だか、一度たりともテルディアスと目を合わせようとしなかった。
意識的に避けているようだった。
(何があった…? それとも俺が何かしたのか…?)
心当たりはまったくない。
今まで、人に嫌われるなど別に構わないと思っていた。
ダーディンになってからは、人から恨まれる事が当たり前だった。
誰かに好かれようとしたことなどなかった。
なので、はっきり言って、対処の仕方がわからない。
相手が怒るなら怒らせておけ。嫌うなら嫌っていればいいなどと思ってきたものだから、どうして自分に怒りが向けられているのか、知る術全く分からない。
もやもやと考えている内に、
「着きましたわ」
お嬢様の言葉でハッとなる。
「この部屋にございますの」
大きな両開きの立派な扉の両端の壁に、じいやさんとお嬢様が右左に分かれて、鍵穴に鍵をセットする。
「行きますぞ、お嬢様」
「ええ」
呼吸を合わせ、二人が鍵を回す。
ガチャリ
少し大きな音がして、鍵が開いたようだった。
じいやさんが扉を押し開ける。
ギイイイイ…
少し重そうな金属音を立てながら、扉が開いた。
六角形の一段高くなった台の上に、また六角形の台座が備え付けられ、その上で、噂の宝玉が鎮座していた。
暗い部屋に、天窓から月明かりが差し込み、上手い具合に台座を照らし出している。
じいやさんが入り口付近の明かりを灯し、少し部屋が明るくなる。
「あちらが、その宝玉でございます」
じいやさんが恭しくお辞儀をした。
「あれが…」
テルディアスが部屋に足を踏み入れる。
その後ろから、祈るようにお嬢様も入って来た。
テルディアスは迷いなく、真っ直ぐ台座に向かう。
そして、辺りを窺う。
(入り口は一つ。窓は、天窓のみか。嵌め殺しのようだな…。逃げるとなると…、扉か…)
宝玉を手にしたら、二人の間を抜け、入って来た扉から逃げるしかない。
(こいつを抱えて、あとは一気に…)
逃げ出す。
キーナの顔が浮かんできた。
なんとも言えない、機嫌が悪そうな顔。
あんな顔を見たのは、初めてだった。
(何が…、あったんだ?)
キーナがテルディアスの手を振り払うなど、記憶喪失の時だけだった。
いつもなら、しつこいくらいに絡みついてくるのに…。
(何が…)
つい、払われた右手を見てしまう。
しかし、今はそれどころではない。
気を取り直し、宝玉に手を掛けようとしたその時。
パアッ!
宝玉が光った。
(?! 何故?! まだ触れてもいないのに!)
近寄っただけでも光る代物だったのか?
(急いで…!)
慌てて宝玉を掴む。
が、動かない。
(なんだとーー!!)
ぐいぐいと押したり引っ張ったりしてみるが、寸分も動かない。
(台座にガッチリ固定されている! これは、台座を壊すなりしないと…)
取れねーよと考えていたらば、
「テルディアス様!」
台の下から、とてつもなく嬉しそうな顔をしたお嬢様が、声をかけてきた。
テルディアスの顔が引きつった。
「まずいことになった」
キーナ達の部屋で、メリンダ、サーガ、テルディアスがベッドに座り、話し合いを始めようとしている。
肝心の一人がいない。
「キーナは?」
メリンダと同室のはずの、本編の主人公の姿がない。
「さあ?」
「さあ? トイレじゃない?」
サーガとメリンダも知らぬようだ。
「まあいい。後で伝えておいてくれ」
本当なら一緒にいて、説明してしまった方が早いのだが、あの後、「今後に向けて話し合いを」とそのまま別室に引き摺られそうになり、必死に言い訳して、ここに来た。
「宝玉が、光った」
宝玉が光る。
つまり、次代領主適正者、お婿さん候補として認められてしまったのである。
「おめでとー。短い間だったけど楽しかったわー」
「あのなぁ…」
「いいんじゃねーか? ここいらで身を固めちまっても」
「できるわけないだろう!」
分かってて言ってるとよく分かる。
二人の顔はニヤニヤだ。
「下手をすれば、明日の朝には街に伝えられる。それまでにここから逃げ出さないと…」
「そうよねぇ。ダーディンが領主になったって知ったら、街中の人達が恐れおののくでしょうね」
「そういうことじゃないんだが…」
正体がバレるのもまずい事には変わりないのだけれども、なんか論点が違うよな?
「俺はこの後、今後についてあのお嬢様と話し合わにゃならん。だから、お前達で盗み出してくれ」
話し合いで気を反らせている内に、盗み出せという。
鍵はじいやさんが持っているから、それをまずは上手く掠め取らなければならない。
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