113 / 296
テルディアス求婚騒動編
もやっ
しおりを挟む
今日も爽やかな朝の光が街中を照らし出す。
人々も起きだして、活動を始める。
静かな朝だった。
「とっとと出てけーーー!」
「ふにゃぁ」
そうでもなかった。
「まずは、そのお嬢様の動向を調べるわよ! そしてあの作戦を実行して…」
メリンダが張り切っている。
無理矢理化粧を施されたテルディアスは仏頂面だ。
「あ、誰か困ってる」
キーナが指さす方を見ると、女性が男に絡まれている。
「あらまあ」
がらの悪い男がその女性の手を取り、無理矢理連れて行こうとしている。
「行ってきなさい! 男共!」
メリンダが命令した。
((俺達って一体…))
メリンダの手下というわけではないのに、何故命令されなきゃならんのだ…。
そんな不条理を考えながら、サーガとテルディアスは女性と男に近づいていった。
「その汚い手を放しな」
サーガが声をかける。
「何だと? 誰に向かって物を言って…」
男の言葉が途切れた。
「そのお嬢さんが嫌がってんだろ」
半分渋々といった感じでサーガが言葉を続けるが、男の視線はサーガの後ろ。
見るからに機嫌の悪そうなテルディアスに向いている。
テルディアスの後ろに、(貴様のせいでやりたくもないことをやらにゃあならんだろ~~)という恨み節が見えてきそうである。
その殺気だったテルディアスに男が怯む。
「殺されるー!」
と叫びながら、あっという間に男が逃げていった。
「逃げんの早ぇな」
余程テルディアスが怖かったのだろう。
「大丈夫か? お嬢さん」
サーガが女性に向き合った。
しかし、その女性の視線もサーガの後ろ、テルディアスに向いていた。
「は、はい…」
仄かに顔を赤くして、サーガを押しのけ、テルディアスに迫る。
「あの、困っている所を助けて頂いてありがとうございます。あの…、お礼がしたいので、是非私の屋敷まで…」
見事にサーガの存在は女性の意識から放り出されたようだった。
サーガが「どーせ俺なんかさー!」といじける。
まあまあ、そのうちいい事あるよ…。多分。
テルディアスは女性に寄られて迷惑そうな顔。いつも通りだ。
メリンダは、いい金づるに当たったと、ほくそ笑んでいた。
テルディアスが(頑張って)女性の隣を歩く。
「私、アルティオーネ・ラディスティクと申します。僭越ながら、先日領主の地位をついだばかりでして…」
なんともご都合主義的展開ですけど、ご容赦ください。
あまりに丁度いい展開に、キーナもメリンダも目が点になる。
サーガ、暴漢役やらないですんで良かったね。
「じいやと一緒に買い物に来たのですが、はぐれてしまって…」
とそこへ、
「お嬢様――!!」
本当に丁度いいタイミングで、じいやが駆けつけてきた。
「じいや!」
「心配致しましたぞ! ご無事で良かった」
息を切らせながら、じいやさんがやってきた。
「じいや、困っていた所を、この方に助けて頂いて…」
「おお! それは是非屋敷へお越し頂いて…」
サーガがずっこけた。
「声かけたの俺なんだけど…」
テルディアスはサーガの後ろに立っていただけなのに…。
メリンダが薄く笑いながら、サーガの肩をポンと軽く叩いた。
立派なお屋敷に連れて来られ、おまけの方々、じゃなくて、テルディアス以外の人達はお好きにどうぞと、部屋に案内された。
立派なベッドに転がると、ふわふわで、思わず飛び跳ねたくなってくる。
「夕飯までご自由にって言われたけど…」
特にする事もない。
「することねーし、寝るかな~」
サーガが大欠伸。
「テルは~?」
「今頃お嬢様口説いてる頃でしょ。嫌々」
テルディアスだけ、お嬢様と話をする為に別行動をしている。
可哀相に。
「じゃ、僕お屋敷探検してくる~」
とキーナが意気揚々部屋から出て行った。
「んじゃ、俺達は一発…」
サーガの顔にメリンダの拳がめり込んだ。
広い屋敷は探検する為にある!
というよく分からない自説を説いて、キーナがお屋敷のあちこちを探検する。
廊下に飾ってある高そうな壺とか、うっすら開いている部屋を覗いて見たりだとか、キーナにかかればなんでもかんでも玩具になりそうだ。
「こっちはなんにゃ?」
と曲がり角からひょいと顔を出すと、そこはテラスになっていて、二つの人影。
傍目にはなんだかいい雰囲気の二人。
(お? こっちは現場だったか…)
と慌てて顔を引っ込める。
現場ってなんだ。
(テルうまくやってるのかな?)
こっそり顔を覗かせ、二人の様子を盗み見る。
主にお嬢様が話して、テルディアスが適当に相づちを打っているようだ。
(なんか…、いい雰囲気?)
傍目には、そう見える。
と、お嬢様が階段から足を踏み外した。
「きゃ」
テルディアスが腕を回し、抱き留める。その辺りは何というか、さすがだ。
(フオオオオオオ! 少女漫画的よくあるシチュエーション!)
思わぬ光景にキーナ物陰で興奮。
出歯亀か。
(テルって何気にそつなくそういうのこなすよね~。ビジュアル的にも悪くないしな~)
少女漫画でいう王子様的役がとてつもなく似合うのだろうけど、本人が聞いたらとてつもなく嫌な顔をするに違いない。
(あ~ゆ~のを絵になる人って言うんだろうな~)
とチラリと再び盗み見ると、
「!!」
二人が向かい合い、お嬢様が軽く顔を上げている。
そしてテルディアスの手がその顔にかかり…。
キーナ興奮して頭を引っ込める。
(こ、こ、こ、このシチュエーションは…! チュウ?!)
壁の向こうで行われているであろう事を想像し、キーナは膝を抱えて顔を赤くする。
いや、ゴミを取ってただけだったりするんだけどね…。
(うわ~! しちゃうんだしちゃうんだ! テルッてば大胆!!)
一人興奮するキーナ。
だからしてないっちゅーに。
そしてふと思う。
(誰とでもするのかしら?)
素朴な疑問。
その答えは、考えなくても分かる気もするが、キーナはとことんニブチンであった。
(僕とだって…事故だけど。すでに三回…人工呼吸だけど)
川で、温泉で、水の都で…。
全部人工呼吸だけども。
なんだかキーナ、もやっとしてきた。
何故かは分からないが。
(なんか…、気分悪! お部屋に戻ろ!)
スクッと立ち上がる。
もう一度チラリと二人の様子を見る。
なんだかとっっってもいい雰囲気に見えた。
ぶすっとして、そのまま足早に、キーナはスッタスッタと部屋に戻って行った。
バタンコ!
部屋の扉が乱暴に閉められる。
「あら、お帰りなさい…。キーナちゃん?」
暇を持て余したサーガと、簡単なカードゲームをしながら遊んでいたメリンダが振り返ると、そこには、なんだか異様な雰囲気のキーナ。
手持ちのとっておきの札を出したサーガも、その異様さに顔を上げる。
今までに見た事のない、キーナの暗いオーラ。
「キ、キーナちゃ…ん?」
声を掛けるのもなんだか憚られる。
キーナは返事もせず、スタスタと空いているもう一つのベッドにボフリと転がり、頭に枕を乗っけた。
(なんでこんな…。ムカムカするんだろ…)
そのままキーナは身じろぎしない。
怖くなったメリンダとサーガは、キーナに声を掛けないようにし、大人しくカードゲームを続けた。
「何かあったのかしら?」
「さあ?」
ボソボソとキーナに聞こえないように話す二人。
キーナは聞こえているのかいないのか、でも寝ている雰囲気でもなく、そのまま寝そべっていた。
しばらくすると、コンコンと部屋の戸が叩かれ、
「入るぞ」
とテルディアスが部屋に入ってきた。
その目に、のんびりとカードゲームに勤しむ二人を映し、
「暇そうだな…」
こっちはこんなに苦労してるのにと二人を睨み付ける。
だって暇なんだも~んと言い張る二人。
ベッドにうつ伏せに転がり、頭に枕を乗っけているキーナを見つけ、
「キーナはどうした?」
と聞くが、
「さあ?」
二人共よく分からないといった顔をする。
「さっき、突然帰って来たと思ったら」
「スタスタスタ、バタン!」
二人が身振り手振りで説明する。
だが、そんな説明ではよく分からない。
テルディアスがキーナに近寄り、
「キーナ?」
具合でも悪いのかと声を掛けるが、
ジロリ
枕の下からキーナが睨んだ。
ビクリとなるテルディアス。
そのまま、また枕をバフンと抱え、顔を隠してしまうキーナ。
冷や汗タラリ。
何があった?と二人に視線を向けるが、二人もよく分からないと首を振る。
よく分からないけれども、キーナの機嫌が珍しく悪いという事だけは分かった。
「ま、まあ、そのままでいいから、聞いておけ、キーナ」
テルディアス、恐る恐るベッドの端に座る。
「夕飯の後、俺は、あのお嬢様に案内して貰って、宝玉の所まで行く」
「まあ! あんたも婿候補になったわけ~?」
にやりとメリンダが笑う。
「されたみたいだ…」
憮然とした顔で言い放つテルディアス。
「だから、そのまま俺が宝玉を盗ってくる。夕飯を食べたら、いつでも逃げられるよう準備しておけ。分かったな?」
キーナが枕の下からそっと顔を出す。
夕飯を食べてテルディアスが宝玉を盗ってくれば、そのままここからトンズラだ。
「明日にしない? せめてこのふかふかのベッドで寝たい♡」
メリンダ体をくねらせる。
「あのなぁ…」
キーナが再び、枕の下に顔を隠す。
なんだかちょっぴりすっきりしたような感じがする。
よく分からないけれども。
枕を通して、メリンダとテルディアスの声が聞こえてきた。
「正体がバレたらまずいから、早めに発ちたいんだ!」
「何よー。乙女の体くらい労りなさいよ」
「乙女?」
バキ
最後の音は、テルディアスが殴られた音だろうか?
人々も起きだして、活動を始める。
静かな朝だった。
「とっとと出てけーーー!」
「ふにゃぁ」
そうでもなかった。
「まずは、そのお嬢様の動向を調べるわよ! そしてあの作戦を実行して…」
メリンダが張り切っている。
無理矢理化粧を施されたテルディアスは仏頂面だ。
「あ、誰か困ってる」
キーナが指さす方を見ると、女性が男に絡まれている。
「あらまあ」
がらの悪い男がその女性の手を取り、無理矢理連れて行こうとしている。
「行ってきなさい! 男共!」
メリンダが命令した。
((俺達って一体…))
メリンダの手下というわけではないのに、何故命令されなきゃならんのだ…。
そんな不条理を考えながら、サーガとテルディアスは女性と男に近づいていった。
「その汚い手を放しな」
サーガが声をかける。
「何だと? 誰に向かって物を言って…」
男の言葉が途切れた。
「そのお嬢さんが嫌がってんだろ」
半分渋々といった感じでサーガが言葉を続けるが、男の視線はサーガの後ろ。
見るからに機嫌の悪そうなテルディアスに向いている。
テルディアスの後ろに、(貴様のせいでやりたくもないことをやらにゃあならんだろ~~)という恨み節が見えてきそうである。
その殺気だったテルディアスに男が怯む。
「殺されるー!」
と叫びながら、あっという間に男が逃げていった。
「逃げんの早ぇな」
余程テルディアスが怖かったのだろう。
「大丈夫か? お嬢さん」
サーガが女性に向き合った。
しかし、その女性の視線もサーガの後ろ、テルディアスに向いていた。
「は、はい…」
仄かに顔を赤くして、サーガを押しのけ、テルディアスに迫る。
「あの、困っている所を助けて頂いてありがとうございます。あの…、お礼がしたいので、是非私の屋敷まで…」
見事にサーガの存在は女性の意識から放り出されたようだった。
サーガが「どーせ俺なんかさー!」といじける。
まあまあ、そのうちいい事あるよ…。多分。
テルディアスは女性に寄られて迷惑そうな顔。いつも通りだ。
メリンダは、いい金づるに当たったと、ほくそ笑んでいた。
テルディアスが(頑張って)女性の隣を歩く。
「私、アルティオーネ・ラディスティクと申します。僭越ながら、先日領主の地位をついだばかりでして…」
なんともご都合主義的展開ですけど、ご容赦ください。
あまりに丁度いい展開に、キーナもメリンダも目が点になる。
サーガ、暴漢役やらないですんで良かったね。
「じいやと一緒に買い物に来たのですが、はぐれてしまって…」
とそこへ、
「お嬢様――!!」
本当に丁度いいタイミングで、じいやが駆けつけてきた。
「じいや!」
「心配致しましたぞ! ご無事で良かった」
息を切らせながら、じいやさんがやってきた。
「じいや、困っていた所を、この方に助けて頂いて…」
「おお! それは是非屋敷へお越し頂いて…」
サーガがずっこけた。
「声かけたの俺なんだけど…」
テルディアスはサーガの後ろに立っていただけなのに…。
メリンダが薄く笑いながら、サーガの肩をポンと軽く叩いた。
立派なお屋敷に連れて来られ、おまけの方々、じゃなくて、テルディアス以外の人達はお好きにどうぞと、部屋に案内された。
立派なベッドに転がると、ふわふわで、思わず飛び跳ねたくなってくる。
「夕飯までご自由にって言われたけど…」
特にする事もない。
「することねーし、寝るかな~」
サーガが大欠伸。
「テルは~?」
「今頃お嬢様口説いてる頃でしょ。嫌々」
テルディアスだけ、お嬢様と話をする為に別行動をしている。
可哀相に。
「じゃ、僕お屋敷探検してくる~」
とキーナが意気揚々部屋から出て行った。
「んじゃ、俺達は一発…」
サーガの顔にメリンダの拳がめり込んだ。
広い屋敷は探検する為にある!
というよく分からない自説を説いて、キーナがお屋敷のあちこちを探検する。
廊下に飾ってある高そうな壺とか、うっすら開いている部屋を覗いて見たりだとか、キーナにかかればなんでもかんでも玩具になりそうだ。
「こっちはなんにゃ?」
と曲がり角からひょいと顔を出すと、そこはテラスになっていて、二つの人影。
傍目にはなんだかいい雰囲気の二人。
(お? こっちは現場だったか…)
と慌てて顔を引っ込める。
現場ってなんだ。
(テルうまくやってるのかな?)
こっそり顔を覗かせ、二人の様子を盗み見る。
主にお嬢様が話して、テルディアスが適当に相づちを打っているようだ。
(なんか…、いい雰囲気?)
傍目には、そう見える。
と、お嬢様が階段から足を踏み外した。
「きゃ」
テルディアスが腕を回し、抱き留める。その辺りは何というか、さすがだ。
(フオオオオオオ! 少女漫画的よくあるシチュエーション!)
思わぬ光景にキーナ物陰で興奮。
出歯亀か。
(テルって何気にそつなくそういうのこなすよね~。ビジュアル的にも悪くないしな~)
少女漫画でいう王子様的役がとてつもなく似合うのだろうけど、本人が聞いたらとてつもなく嫌な顔をするに違いない。
(あ~ゆ~のを絵になる人って言うんだろうな~)
とチラリと再び盗み見ると、
「!!」
二人が向かい合い、お嬢様が軽く顔を上げている。
そしてテルディアスの手がその顔にかかり…。
キーナ興奮して頭を引っ込める。
(こ、こ、こ、このシチュエーションは…! チュウ?!)
壁の向こうで行われているであろう事を想像し、キーナは膝を抱えて顔を赤くする。
いや、ゴミを取ってただけだったりするんだけどね…。
(うわ~! しちゃうんだしちゃうんだ! テルッてば大胆!!)
一人興奮するキーナ。
だからしてないっちゅーに。
そしてふと思う。
(誰とでもするのかしら?)
素朴な疑問。
その答えは、考えなくても分かる気もするが、キーナはとことんニブチンであった。
(僕とだって…事故だけど。すでに三回…人工呼吸だけど)
川で、温泉で、水の都で…。
全部人工呼吸だけども。
なんだかキーナ、もやっとしてきた。
何故かは分からないが。
(なんか…、気分悪! お部屋に戻ろ!)
スクッと立ち上がる。
もう一度チラリと二人の様子を見る。
なんだかとっっってもいい雰囲気に見えた。
ぶすっとして、そのまま足早に、キーナはスッタスッタと部屋に戻って行った。
バタンコ!
部屋の扉が乱暴に閉められる。
「あら、お帰りなさい…。キーナちゃん?」
暇を持て余したサーガと、簡単なカードゲームをしながら遊んでいたメリンダが振り返ると、そこには、なんだか異様な雰囲気のキーナ。
手持ちのとっておきの札を出したサーガも、その異様さに顔を上げる。
今までに見た事のない、キーナの暗いオーラ。
「キ、キーナちゃ…ん?」
声を掛けるのもなんだか憚られる。
キーナは返事もせず、スタスタと空いているもう一つのベッドにボフリと転がり、頭に枕を乗っけた。
(なんでこんな…。ムカムカするんだろ…)
そのままキーナは身じろぎしない。
怖くなったメリンダとサーガは、キーナに声を掛けないようにし、大人しくカードゲームを続けた。
「何かあったのかしら?」
「さあ?」
ボソボソとキーナに聞こえないように話す二人。
キーナは聞こえているのかいないのか、でも寝ている雰囲気でもなく、そのまま寝そべっていた。
しばらくすると、コンコンと部屋の戸が叩かれ、
「入るぞ」
とテルディアスが部屋に入ってきた。
その目に、のんびりとカードゲームに勤しむ二人を映し、
「暇そうだな…」
こっちはこんなに苦労してるのにと二人を睨み付ける。
だって暇なんだも~んと言い張る二人。
ベッドにうつ伏せに転がり、頭に枕を乗っけているキーナを見つけ、
「キーナはどうした?」
と聞くが、
「さあ?」
二人共よく分からないといった顔をする。
「さっき、突然帰って来たと思ったら」
「スタスタスタ、バタン!」
二人が身振り手振りで説明する。
だが、そんな説明ではよく分からない。
テルディアスがキーナに近寄り、
「キーナ?」
具合でも悪いのかと声を掛けるが、
ジロリ
枕の下からキーナが睨んだ。
ビクリとなるテルディアス。
そのまま、また枕をバフンと抱え、顔を隠してしまうキーナ。
冷や汗タラリ。
何があった?と二人に視線を向けるが、二人もよく分からないと首を振る。
よく分からないけれども、キーナの機嫌が珍しく悪いという事だけは分かった。
「ま、まあ、そのままでいいから、聞いておけ、キーナ」
テルディアス、恐る恐るベッドの端に座る。
「夕飯の後、俺は、あのお嬢様に案内して貰って、宝玉の所まで行く」
「まあ! あんたも婿候補になったわけ~?」
にやりとメリンダが笑う。
「されたみたいだ…」
憮然とした顔で言い放つテルディアス。
「だから、そのまま俺が宝玉を盗ってくる。夕飯を食べたら、いつでも逃げられるよう準備しておけ。分かったな?」
キーナが枕の下からそっと顔を出す。
夕飯を食べてテルディアスが宝玉を盗ってくれば、そのままここからトンズラだ。
「明日にしない? せめてこのふかふかのベッドで寝たい♡」
メリンダ体をくねらせる。
「あのなぁ…」
キーナが再び、枕の下に顔を隠す。
なんだかちょっぴりすっきりしたような感じがする。
よく分からないけれども。
枕を通して、メリンダとテルディアスの声が聞こえてきた。
「正体がバレたらまずいから、早めに発ちたいんだ!」
「何よー。乙女の体くらい労りなさいよ」
「乙女?」
バキ
最後の音は、テルディアスが殴られた音だろうか?
0
あなたにおすすめの小説
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる