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テルディアス求婚騒動編
領主の宝玉
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窓辺に、美しい黒髪を一つに纏めた、可憐という言葉が似合いそうな女性が座っていた。
「お嬢様。そのままではお風邪をひいてしまいますぞ」
と、その肩に上着を掛ける。
女性が振り向いた。
「ありがとう。じいや」
「いえいえ」
じいやと呼ばれた白髪の老紳士然とした者が、にっこりと笑いかける。
「じいや…」
「はい?」
「お父様は、本当に亡くなってしまったのね…」
「……」
女性が悲しげに視線を落とす。
「お嬢様は、ラディスティク家の新しい当主として、これから頑張っていかれませんと…」
「無理よ!」
女性が激しく否定する。
両手で顔を覆い、肩が震える。
「自信ありません。私にそのようなものが務まるとは…」
「お嬢様…」
儚げなその姿に、じいやが唇を噛みしめる。
(せめて、お父上が亡くなられる前に、ラディスティク家を継ぐに相応しい婿が見つかっていれば…!)
目の前で心細げに震えるお嬢様を慰めることもできず、じいやは黙って立っていることしかできなかった。
「面白ぇ情報手に入れて来たぜ~」
ガチャリとノックもせずに扉を開けると、
「あん? 帰って来たの?」
冷たいメリンダの言葉が出迎えた。
そして、そのメリンダの胸の下、キーナの胸の上に挟まれた男が、じたじたと暴れていた…。
なんだこの光景?
「どーやったらそんなおいしい状態になるんだよ」
やるなら俺にやってくれといった顔をする。
「ちょっとからかってたらね~」
やっとこ身を起こしたメリンダの下から、ワタワタとテルディアスがゴキブリのように這い出してくる。
あまりにも慌てすぎたのか。
ゴ!
おもっくそ壁に正面からぶち当たり、そのまま倒れた。
だからこそメリンダに遊ばれるんだけどな~。
サーガが椅子に座り、側にあった水差しから水を入れる。
キーナもついでに入れて貰い、ベッドの上でメリンダに後ろから抱きつかれながらゆっくりと飲む。
「この街の領主が、希少な宝玉を持ってるって話だぜ」
仕入れてきた情報を早速報告する。
「この街の領主?」
「ああ」
テルディアスも起き上がり、痛む顔面を押さえながら、話を聞き始める。
「んで、その領主ってのが、かなりの美女らしい!」
とサーガが鼻息を荒くした。
(ダメだこりゃ)
キーナとメリンダが白い目でサーガを見る。
「その話なら俺も聞いたぞ」
まだ顔の赤いテルディアスが話に入ってくる。
「前領主の父親を亡くしたばかりらしい」
「ふ~ん」
元々この情報を話す為にこの部屋に来たはずなのに、なんで女に挟まれていたのだろう?
「その父親が亡くなる前に、娘の婿を決めたかったらしいが、その前に死んじまったとさ」
「候補は何人かいたらしいが、領主の婿ともなれば次期領主も同じ。その地位を狙うハイエナばかりで適正者がいなかったらしい」
「んで、その適正者探しに使われたのが、その宝玉!」
「ふう…ん」
メリンダがなんだか考えるような顔をしている。
「じゃ、風の宝玉かもしれないってこともあんのね」
「そーだな」
「じゃ、あんたは用済みね」
用済み…。
「そんなに俺を追い出したい?」
サーガがちょっと悲しそうな困ったような顔をする。
「さあ~ね」
メリンダ不敵に笑う。
とサーガが身をねじりだした。
「あんなに感じてたのに…。あはぁん」
メリンダが慌てて枕をキーナの顔に当てた。
「にゃぶ!」
勢いつきすぎて、キーナの顔が枕に埋まった。
水を零しそうになる。
身悶えしながら、
「あはん、だめん、そこぉん」
とサーガが調子に乗って、気持ち悪い声を出し続ける。
メリンダが拳に火の力を集め、サーガに躍りかかった。
「今度こそ息の根を止めてやるああああああああ!!!!」
「ボエーーーーー!!!」
しばらく、部屋の中で、ガコン!ドカン!ズドゴシャ!と、周りにはた迷惑な音が続いた。
その後ろ?で
「ふにゅう~」
枕に顔を押しつぶされたキーナが、渋い顔をする。
「大丈夫か?」
ちょっと苦しそうなキーナを気遣うテルディアス。
サーガとメリンダのことは見ない事にした。
しばらくすると、パンパンと手を叩き、気の済んだメリンダがキーナの側に帰って来た。
その後ろには、焦げたサーガが転がっていた…。
「じゃ、そのお嬢様に近づいて、宝玉の在処を教えてもらって、盗んでトンズラすればいいのね!」
気を取り直して作戦会議。
「まあ、そうしかないだろうな…」
希少な宝玉など、くれと言ってくれるものでなし。
「だったら簡単じゃない!」
とメリンダゴソゴソ。
その手に出して来たのは、
「あんたがそのお嬢様を、誘惑すればいいのよ!」
じゃん!とばかりに化粧道具。
つまり、化粧して人間に化けて(?)、男らしく女を口説き落としてこい、というわけだ。
テルディアスの顔がひきつる。
「い、いや…、俺は、そういうのは性に合わんから…、そいつに…」
軽い男の代表みたいな男がいるのだ。そいつに任せればいいとテルディアスは言うが…。
「あのねえ! こんなのに女の子が釣れると思う?」
とサーガを指さす。
「こんなのとはひで~なぁ」
こんなの呼ばわりされたサーガが、キーナの肩に手をかけて、いつの間にか当たり前のように座っている。
「馴れ馴れしくキーナちゃんに触ってんじゃないわよ!」
あんたが触ると妊娠する!とばかりに、メリンダがサーガをぶっ飛ばした。
いや、それはさすがに酷いと思う…。
「作戦はこうよ!」
メリンダ気を取り直して作戦を口に出す。
まず、暴漢役のサーガがお嬢様を襲う。
そこへテルディアスが助けに現われる。
「なんてステキな人…」となってお嬢様に宝玉の在処を聞く。
それを盗み出して万々歳でトンズラする。
「完璧でしょ!」
と胸を張るメリンダ。
「ハイハイ! ハイハイ!」
サーガが抗議の手を上げた。
「腑に落ちない事がある!」
「何よ」
「そりゃもちろん、こぉんな素敵な暴漢なんているかぁ?」
とキラリン!とした笑顔を作る。
頑張ってキラキラ効果を顔の周りに飛ばすが。
それを見ていた三人は、シラけた顔でそれを眺めた。
白々とした空気が痛くなってきた頃。
「他に何かある~?」
「ないな」
「ないよ」
作戦会議は終わった。
「せめて、なんか、一言くれよ…」
バカでもアホでもいい。ボケたわけでもないけど、突っ込まれない事も痛くてたまらない。
サーガはしばらく部屋の隅でイジイジしていたが、うるさいとメリンダに部屋を追い出された。
「さあって、今夜はど~すっかな」
自分の部屋に戻り、後は寝るだけとなったサーガが欠伸をする。
「やっぱ女の子欲しいしなぁ」
寝る前に女の子を頂くのは、昔からの習慣だ。
金に余裕がなければ諦めるが、今はそこそこ余裕がある。
巾着の中を覗いて、そこにある金を確認していた時、コンコンと扉を叩く音。
「ん?」
こんな夜更けに誰ぞや?と、一応念のため、剣を持って扉に近づく。
殺気などは感じないし、戦闘の匂いもしない。
「うい~っす。誰だぁ?」
無造作に扉を開けると、少し怖い顔をしたメリンダが立っていた。
「およ? 姐さん?」
「ちょっといい?」
「ああ、もちろん! 大歓迎!」
少しばかりの期待を胸に、メリンダを部屋に招き入れる。
「俺が忘れられなくて来ちゃったとか?」
剣を元の位置に戻す。
「んなわけないでしょ! あんたに一言、言いたくて来たのよ!」
「ん?」
「キーナちゃんの前で、あたしがあんたに抱かれた事を言わないで」
少し怖いくらいの真剣な面持ちで、メリンダが言った。
サーガポリポリと顔をかき、
「ん、分かった」
素直に返事した。
あまりに呆気ない素直な返事に、メリンダが疑いの眼差しを向ける。
「そんな疑いの眼差しで見ないでくれよう」
日頃の行いがたたっているのだ。
「ま、理由は何となく分かっからさ。言わねーよ」
純粋過ぎるキーナの前で、あまりそういう生々しい話はしたくない、というかしにくい雰囲気は、さすがのサーガも感じ取っていた。
しかもキーナ大好きのメリンダならば、尚更であろう。
あまりに素直なサーガの態度に拍子抜けしたメリンダ。
「あ、うん。まあ。言わないってんなら、それでいいから…」
としどろもどろ。
「じゃ」
と一声残し、さっさと部屋を立ち去ろうとする。
「えええ?!」
その素早さに驚き、咄嗟にメリンダの手を掴むサーガ。
「ちょ、ちょっと! 何よ!」
「マジでそれだけ?!」
「当たり前でしょ! 他に何があるのよ!」
「え、だから…、そのう…。それを口実にして…、また俺と一発なんて…」
メリンダの顔が赤くなった。
「あ、あるわけないでしょ! そんなこと!」
と乱暴にサーガの手を振り払う。
「え? マジ? 自信失くすなぁ」
しょんぼりするサーガ。
「昨日の姐さんとの、最高に良かったから…、もう一回したかったんだけど…」
と残念そうに下を向く。
最高に良かった?
その言葉を聞いて、メリンダ立ちすくむ。
「う~ん、惜しいけど、別を当たるかぁ」
サーガすっかり諦めモード。
「最高にって、どういうこと?」
感情を押し殺した声がサーガの耳に届く。
「ん? そりゃぁ、今まで抱いた女の中で、1、2を争う程に良かったっつーことだよ」
と素直に感想を口に出す。
メリンダのプライドがくすぐられた。
元々とある娼館で、1、2を争うほどに人気娼婦であったメリンダ。
ふふん、あたしがいいなんて当たり前じゃない、と心の中で鼻高々。
「ま、まあね。そ、そこまで言われちゃ~ねぇ。あ、相手してあげてもいいわよ」
顔が嬉しそうだよ。
「マジで?! やりぃ!」
サーガが嬉しそうに指を鳴らす。
「や~、なんか怒らせちったから、もう無理かな~って、ちっと諦めてたんだ~」
とさっさと服を脱ぐ。
「い、一回だけだからね!」
一応念を押すメリンダ。
「ほいほ~い」
嬉しそうにサーガがメリンダにのしかかる。
少しすると、また艶めかしい声が聞こえ始めた。
この続きは、お月様だけが知っている…。
「お嬢様。そのままではお風邪をひいてしまいますぞ」
と、その肩に上着を掛ける。
女性が振り向いた。
「ありがとう。じいや」
「いえいえ」
じいやと呼ばれた白髪の老紳士然とした者が、にっこりと笑いかける。
「じいや…」
「はい?」
「お父様は、本当に亡くなってしまったのね…」
「……」
女性が悲しげに視線を落とす。
「お嬢様は、ラディスティク家の新しい当主として、これから頑張っていかれませんと…」
「無理よ!」
女性が激しく否定する。
両手で顔を覆い、肩が震える。
「自信ありません。私にそのようなものが務まるとは…」
「お嬢様…」
儚げなその姿に、じいやが唇を噛みしめる。
(せめて、お父上が亡くなられる前に、ラディスティク家を継ぐに相応しい婿が見つかっていれば…!)
目の前で心細げに震えるお嬢様を慰めることもできず、じいやは黙って立っていることしかできなかった。
「面白ぇ情報手に入れて来たぜ~」
ガチャリとノックもせずに扉を開けると、
「あん? 帰って来たの?」
冷たいメリンダの言葉が出迎えた。
そして、そのメリンダの胸の下、キーナの胸の上に挟まれた男が、じたじたと暴れていた…。
なんだこの光景?
「どーやったらそんなおいしい状態になるんだよ」
やるなら俺にやってくれといった顔をする。
「ちょっとからかってたらね~」
やっとこ身を起こしたメリンダの下から、ワタワタとテルディアスがゴキブリのように這い出してくる。
あまりにも慌てすぎたのか。
ゴ!
おもっくそ壁に正面からぶち当たり、そのまま倒れた。
だからこそメリンダに遊ばれるんだけどな~。
サーガが椅子に座り、側にあった水差しから水を入れる。
キーナもついでに入れて貰い、ベッドの上でメリンダに後ろから抱きつかれながらゆっくりと飲む。
「この街の領主が、希少な宝玉を持ってるって話だぜ」
仕入れてきた情報を早速報告する。
「この街の領主?」
「ああ」
テルディアスも起き上がり、痛む顔面を押さえながら、話を聞き始める。
「んで、その領主ってのが、かなりの美女らしい!」
とサーガが鼻息を荒くした。
(ダメだこりゃ)
キーナとメリンダが白い目でサーガを見る。
「その話なら俺も聞いたぞ」
まだ顔の赤いテルディアスが話に入ってくる。
「前領主の父親を亡くしたばかりらしい」
「ふ~ん」
元々この情報を話す為にこの部屋に来たはずなのに、なんで女に挟まれていたのだろう?
「その父親が亡くなる前に、娘の婿を決めたかったらしいが、その前に死んじまったとさ」
「候補は何人かいたらしいが、領主の婿ともなれば次期領主も同じ。その地位を狙うハイエナばかりで適正者がいなかったらしい」
「んで、その適正者探しに使われたのが、その宝玉!」
「ふう…ん」
メリンダがなんだか考えるような顔をしている。
「じゃ、風の宝玉かもしれないってこともあんのね」
「そーだな」
「じゃ、あんたは用済みね」
用済み…。
「そんなに俺を追い出したい?」
サーガがちょっと悲しそうな困ったような顔をする。
「さあ~ね」
メリンダ不敵に笑う。
とサーガが身をねじりだした。
「あんなに感じてたのに…。あはぁん」
メリンダが慌てて枕をキーナの顔に当てた。
「にゃぶ!」
勢いつきすぎて、キーナの顔が枕に埋まった。
水を零しそうになる。
身悶えしながら、
「あはん、だめん、そこぉん」
とサーガが調子に乗って、気持ち悪い声を出し続ける。
メリンダが拳に火の力を集め、サーガに躍りかかった。
「今度こそ息の根を止めてやるああああああああ!!!!」
「ボエーーーーー!!!」
しばらく、部屋の中で、ガコン!ドカン!ズドゴシャ!と、周りにはた迷惑な音が続いた。
その後ろ?で
「ふにゅう~」
枕に顔を押しつぶされたキーナが、渋い顔をする。
「大丈夫か?」
ちょっと苦しそうなキーナを気遣うテルディアス。
サーガとメリンダのことは見ない事にした。
しばらくすると、パンパンと手を叩き、気の済んだメリンダがキーナの側に帰って来た。
その後ろには、焦げたサーガが転がっていた…。
「じゃ、そのお嬢様に近づいて、宝玉の在処を教えてもらって、盗んでトンズラすればいいのね!」
気を取り直して作戦会議。
「まあ、そうしかないだろうな…」
希少な宝玉など、くれと言ってくれるものでなし。
「だったら簡単じゃない!」
とメリンダゴソゴソ。
その手に出して来たのは、
「あんたがそのお嬢様を、誘惑すればいいのよ!」
じゃん!とばかりに化粧道具。
つまり、化粧して人間に化けて(?)、男らしく女を口説き落としてこい、というわけだ。
テルディアスの顔がひきつる。
「い、いや…、俺は、そういうのは性に合わんから…、そいつに…」
軽い男の代表みたいな男がいるのだ。そいつに任せればいいとテルディアスは言うが…。
「あのねえ! こんなのに女の子が釣れると思う?」
とサーガを指さす。
「こんなのとはひで~なぁ」
こんなの呼ばわりされたサーガが、キーナの肩に手をかけて、いつの間にか当たり前のように座っている。
「馴れ馴れしくキーナちゃんに触ってんじゃないわよ!」
あんたが触ると妊娠する!とばかりに、メリンダがサーガをぶっ飛ばした。
いや、それはさすがに酷いと思う…。
「作戦はこうよ!」
メリンダ気を取り直して作戦を口に出す。
まず、暴漢役のサーガがお嬢様を襲う。
そこへテルディアスが助けに現われる。
「なんてステキな人…」となってお嬢様に宝玉の在処を聞く。
それを盗み出して万々歳でトンズラする。
「完璧でしょ!」
と胸を張るメリンダ。
「ハイハイ! ハイハイ!」
サーガが抗議の手を上げた。
「腑に落ちない事がある!」
「何よ」
「そりゃもちろん、こぉんな素敵な暴漢なんているかぁ?」
とキラリン!とした笑顔を作る。
頑張ってキラキラ効果を顔の周りに飛ばすが。
それを見ていた三人は、シラけた顔でそれを眺めた。
白々とした空気が痛くなってきた頃。
「他に何かある~?」
「ないな」
「ないよ」
作戦会議は終わった。
「せめて、なんか、一言くれよ…」
バカでもアホでもいい。ボケたわけでもないけど、突っ込まれない事も痛くてたまらない。
サーガはしばらく部屋の隅でイジイジしていたが、うるさいとメリンダに部屋を追い出された。
「さあって、今夜はど~すっかな」
自分の部屋に戻り、後は寝るだけとなったサーガが欠伸をする。
「やっぱ女の子欲しいしなぁ」
寝る前に女の子を頂くのは、昔からの習慣だ。
金に余裕がなければ諦めるが、今はそこそこ余裕がある。
巾着の中を覗いて、そこにある金を確認していた時、コンコンと扉を叩く音。
「ん?」
こんな夜更けに誰ぞや?と、一応念のため、剣を持って扉に近づく。
殺気などは感じないし、戦闘の匂いもしない。
「うい~っす。誰だぁ?」
無造作に扉を開けると、少し怖い顔をしたメリンダが立っていた。
「およ? 姐さん?」
「ちょっといい?」
「ああ、もちろん! 大歓迎!」
少しばかりの期待を胸に、メリンダを部屋に招き入れる。
「俺が忘れられなくて来ちゃったとか?」
剣を元の位置に戻す。
「んなわけないでしょ! あんたに一言、言いたくて来たのよ!」
「ん?」
「キーナちゃんの前で、あたしがあんたに抱かれた事を言わないで」
少し怖いくらいの真剣な面持ちで、メリンダが言った。
サーガポリポリと顔をかき、
「ん、分かった」
素直に返事した。
あまりに呆気ない素直な返事に、メリンダが疑いの眼差しを向ける。
「そんな疑いの眼差しで見ないでくれよう」
日頃の行いがたたっているのだ。
「ま、理由は何となく分かっからさ。言わねーよ」
純粋過ぎるキーナの前で、あまりそういう生々しい話はしたくない、というかしにくい雰囲気は、さすがのサーガも感じ取っていた。
しかもキーナ大好きのメリンダならば、尚更であろう。
あまりに素直なサーガの態度に拍子抜けしたメリンダ。
「あ、うん。まあ。言わないってんなら、それでいいから…」
としどろもどろ。
「じゃ」
と一声残し、さっさと部屋を立ち去ろうとする。
「えええ?!」
その素早さに驚き、咄嗟にメリンダの手を掴むサーガ。
「ちょ、ちょっと! 何よ!」
「マジでそれだけ?!」
「当たり前でしょ! 他に何があるのよ!」
「え、だから…、そのう…。それを口実にして…、また俺と一発なんて…」
メリンダの顔が赤くなった。
「あ、あるわけないでしょ! そんなこと!」
と乱暴にサーガの手を振り払う。
「え? マジ? 自信失くすなぁ」
しょんぼりするサーガ。
「昨日の姐さんとの、最高に良かったから…、もう一回したかったんだけど…」
と残念そうに下を向く。
最高に良かった?
その言葉を聞いて、メリンダ立ちすくむ。
「う~ん、惜しいけど、別を当たるかぁ」
サーガすっかり諦めモード。
「最高にって、どういうこと?」
感情を押し殺した声がサーガの耳に届く。
「ん? そりゃぁ、今まで抱いた女の中で、1、2を争う程に良かったっつーことだよ」
と素直に感想を口に出す。
メリンダのプライドがくすぐられた。
元々とある娼館で、1、2を争うほどに人気娼婦であったメリンダ。
ふふん、あたしがいいなんて当たり前じゃない、と心の中で鼻高々。
「ま、まあね。そ、そこまで言われちゃ~ねぇ。あ、相手してあげてもいいわよ」
顔が嬉しそうだよ。
「マジで?! やりぃ!」
サーガが嬉しそうに指を鳴らす。
「や~、なんか怒らせちったから、もう無理かな~って、ちっと諦めてたんだ~」
とさっさと服を脱ぐ。
「い、一回だけだからね!」
一応念を押すメリンダ。
「ほいほ~い」
嬉しそうにサーガがメリンダにのしかかる。
少しすると、また艶めかしい声が聞こえ始めた。
この続きは、お月様だけが知っている…。
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