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光の宮再び
そして朝
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「?!」
空を見上げる。
月が浮かんでいる。
(なんだ…? この…、胸騒ぎは…?!)
テルディアスが胸を押さえた。
その背後に、妖魔がぬうっと現われる。
背を向けたままのテルディアスに近づくが、気付くとテルディアスの姿が消えていた。
「生憎だったな」
背後からテルディアスの声。
振り向けば、いつの間に移動したのか、テルディアスが妖魔の背後にいた。
「今の俺はとことん、虫の居所が悪い」
妖魔がその太い腕を振り上げた。
途端、体のあちこちに亀裂が入り、三つほどに分割されてしまう。
グオオオオ…
妖魔が吠えた。
飛び上がったテルディアスが、妖魔の頭を切り落とす。
ズズン…
妖魔が倒れ伏した。
「フン」
剣を鞘に収め、掌を見る。
そのまま握りしめ、目の前の木に拳を叩きつけた。
メキメキメキ…
それほど太くなかった木には、その衝撃は耐えられなかったらしい。
ズズ~ン…
木が倒れた。
(キーナ…)
テルディアスが拳を見つめた。
その周りでは、丁度テルディアスの肩辺りの高さで折れた木々が、何本か転がっていた。
サーガがすやすやと眠る。
その横で火を見つめながら、メリンダは思案していた。
ふと空を見上げれば、細い月。
テルディアスの光の宮についての説明を思い出すとやりきれない。
今自分が何もできないことにやきもきしてしまう。
メリンダが両手を合わせ、祈るようにおでこをひっつける。
(キーナちゃん…、無事でいて…!)
テルディアスにとって、メリンダにとって、長い夜となった。
「はっ!」
と気付いてガバリと身を起こす。
神殿の中は朝の光で満たされていた。
遠くで小鳥の鳴く声。
「あれ? 僕…?」
キーナがふと首を傾げる。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
どうしてそうなったのだっけ?と昨夜の事を思い出し、鳥肌が立った。
自分の上に覆い被さるように男が乗ってきた。
その光景を思い出し、思わず身をすくめる。
自分の体を掻き抱き、背を丸める。体は自然と震え出す。
恐い。恐い。恐い。
身動きが取れない、逃げる事ができない、自分の意思と関係なく、体を支配されそうになる。
恐怖心に飲み込まれそうになり、思いっきり体を固くした。
そしてふと気付いた。
(ん? え…と)
体に何の異常も見られないし感じない。
着衣の乱れを見るが、脱がされたような形跡もない。
ついでにゴソゴソと下着を確認してみるが、きちんと身に付けている。
そういう時の後って、ちゃんと服を着せるのかしら?と首傾げ。
ついでに本で読んだ記憶によると、初めての時はとてつもなく痛くて血が出るとあったが、特に痛みも感じていないし、出血があったようには見えない。
事後の跡は何も残らないのだろうか?
(う~ん?)
なにぶんそんな経験も無いので、首を捻る事しかできない。
(こ、恐いけど、思い出さなきゃ!)
と顔をパンと叩いて気合いを入れる。
あの後何が起こったか、自分の記憶だけが頼りだ。
思い出す事も恐いけれど、何をされたのか分からないのも嫌だ。
(た、確か…、あの後…)
恐怖に耐えながら、キーナは必死にあの時の状況を思い出す。
「テル――――!!」
追い込まれ、口から出た言葉は、その場にいない、この世界で一番頼りになる存在の名だった。
そして、そのまま、意識が遠のき始めた。
暗闇に飲まれようとしている意識の狭間に、誰かが立っているのが分かった。
白い輝く長い髪を、腰の下辺りで綺麗に切り揃えた女の人。
後ろを向いているので顔は見えない。
着物のような珍しい服を着たその女性が、背を向けたまま言った。
『ここは我に任せられよ』
何を言っているのかキーナには理解できなかった。
背を向けたままだが、女性が微かに笑ったのが分かった。
そして、手に持っていた扇をパン!と綺麗に畳むと、呼んだ。
『漣(さざなみ)』
「漣(さざなみ)」
押さえつけられていたキーナの口から、その言葉が出て来た。
男達が一瞬、訝しんだ。
その時、何かが宙空から現われ、回りながら飛んで来た。
ギュルル!
どかかっ!
「う!」
「あ!」
「が!」
三者三様に悲鳴を上げ、キーナから離れる。
それは回りながら宙を飛び、身を起こしたキーナの手に、それが当たり前であるかのように収まった。
着衣の乱れを直し、その手に収まった扇で口元を隠し、キーナが三人の男達を睨み付ける。
『汚らわしい手で妾に触れるでないわ! ゲス共め!』
突然のキーナの変わり様に、目をパチクリさせる三人。
「み、御子様…?」
『即刻この場から立ち去れ! さもなくば…』
扇で三人を指し示し、
『主らの首を落としてやろうぞ…』
男達は体中の毛が総毛立った。
今までのキーナと何かが違う。
今のキーナならば、首を落とすと言ったら必ずやるだろう。
そんな迫力があった。
『去れ!!』
「ひいい!」
「あわわ…」
顔色を変えた三人が、急いで神殿の扉へと向かう。
「し、失礼しました!!」
バダン!!
と少し大きな音を立て、扉が閉められた。
そして、神殿にはキーナ一人だけとなった。
『フン。悪しき慣習は未だに残っていたか…』
女性は呟くと、ぼーっと事の成り行きを見守っていたキーナを振り見た。
扇で口元を隠しているので、その素顔を全部見る事はできない。
『本来ならば、お主がこのような思いをするはずでは、なかったのにのう…』
「え?」
どういう意味だろう?
尋ねようとした時、その女性が扇をこちらに差し向けた。
すると、キーナはもうそのまま意識を保っていることができなくなり、闇の間へと意識を委ね始める。
『今は眠るがよい。深く、深く…。その間の事は、妾に任せておくがよい』
「あ…?」
何がどうなっているのか分からないまま、キーナの意識は深淵へと落ちて行った。
最後に、女性が寂しそうに呟いた声が、聞こえた。
『あのお方は…、傍らにいないのだな…』
小鳥の声が小さく聞こえてくる。
朝の光が神殿内を優しく照らしている。
台座の側に座りながら、キーナが昨夜の事を思い出していた。
そう、なんだかよく分からないけど、助かったらしい。
(とりあえず、漫画や小説で時々あるような怖い事には、ならなかったんだ!)
小さくガッツポーズ。
恐かったけれども、あれ以上のことがなかったと分かっただけでも良かった。
(それに、あの人は…、何代か前の光の御子様…)
光の気配を纏った、顔はおぼろげで良く覚えていないけど、なんとなく綺麗な人だった。
(助けて…、くれたんだ…)
後ろを振り向く。
台座の上には、光の神をモチーフに作られたかと思われる、置物が置いてあった。
それに向けて、ペコリと頭を下げるキーナ。
(ありがとうございました!)
これでお礼を言えているのかは分からないけれど、やはりお礼が言いたかった。
(ああ、でも…)
ふと、罪悪感がまた押し寄せてくる。
(こんな僕が…、助けられる義理なんて…)
大勢の人を消してしまった。
そんな罪深い自分が助けられる義理などあったのだろうか?
また考えてしまう。
(こんな、僕なんか…、僕なんか…!)
膝を抱え込み、頭を伏せて、また考え込んでしまう。
(歴代の御子様達も、こんな風に苦しむ事があったのかしら…?)
その時、何か記憶の断片が見えた。
ガバリと顔を上げる。
神殿を見回す。
ここは光の御子のために作られた場所。
もし御子がいたならば、その痕跡などが残っているはず…。
(違う! 歴代の御子達は、ここにはいなかった!)
そうだ。御子達はこの場所を嫌っていた。
この場所に留まるわけがない。
それに、
(暴走なんてするはずがないんだ。だって…、あの人が側にいたから!)
未だに正体のよく分からないあの人。
だがしかし、あの人はどんなときも側にいたのだ。
あの人がいたからこそ、御子は力を暴走させる事がなかったのだ。
(ここにいても暴走は止められない。ここは、僕がいるべき場所じゃない!)
光の上位の者の力を、ましてや御子の力を、下位の者が止める事は不可能に近い。
(そうだ、全てはあの人が鍵なんだ! 探さなきゃ! あの人を!こんな所で、立ち止まってる暇はないんだ!)
キーナがゆっくりと立ち上がった。
その瞳には、力強さが戻っていた。
キーナの脳裏に、とある人物が浮かび上がる。
なんだか切なくなって、胸を押さえた。
(なんだか…、無性に、テルに会いたい…)
最後に分かれる時、「さよなら」と言ってしまった。
テルディアスは恐い顔をしながらも、「行くな!」と叫んでいた。
(今更…、無理かな…)
探し出して、共にまた行きたいと言ったら、なんと言うだろう?
伸ばされた手を振り払って離れた自分を、テルディアスは許してくれるだろうか?
無理かもしれない。
受け入れてくれないかもしれない。
でも、自分は前に進まなければいけないのだ。
潤んできた瞳を根性で押し止め、顔を上げる。
最後にもう一度、台座の上の置物を見上げた。
拝む物も無いので、代理でそれに向かって祈りを捧げる。
「光の神様。僕の罪が許されるとは思っていません。どういう形にしろ、僕は大勢の人達の命を奪った。でも、僕は前に進みます。同じ過ちを繰り返さないために。あの人達の命に報いるために」
一度深呼吸する。
「どうか、僕が消してしまった人達が、無事に天国へ行けますように。来世では幸せになれますように…」
そして頭を垂れ、しばし瞑想した。
そして再び顔を上げ、宣言する。
「僕、行きます」
そのまま置物に背を向け、振り向く事無く、キーナは神殿を後にした。
空を見上げる。
月が浮かんでいる。
(なんだ…? この…、胸騒ぎは…?!)
テルディアスが胸を押さえた。
その背後に、妖魔がぬうっと現われる。
背を向けたままのテルディアスに近づくが、気付くとテルディアスの姿が消えていた。
「生憎だったな」
背後からテルディアスの声。
振り向けば、いつの間に移動したのか、テルディアスが妖魔の背後にいた。
「今の俺はとことん、虫の居所が悪い」
妖魔がその太い腕を振り上げた。
途端、体のあちこちに亀裂が入り、三つほどに分割されてしまう。
グオオオオ…
妖魔が吠えた。
飛び上がったテルディアスが、妖魔の頭を切り落とす。
ズズン…
妖魔が倒れ伏した。
「フン」
剣を鞘に収め、掌を見る。
そのまま握りしめ、目の前の木に拳を叩きつけた。
メキメキメキ…
それほど太くなかった木には、その衝撃は耐えられなかったらしい。
ズズ~ン…
木が倒れた。
(キーナ…)
テルディアスが拳を見つめた。
その周りでは、丁度テルディアスの肩辺りの高さで折れた木々が、何本か転がっていた。
サーガがすやすやと眠る。
その横で火を見つめながら、メリンダは思案していた。
ふと空を見上げれば、細い月。
テルディアスの光の宮についての説明を思い出すとやりきれない。
今自分が何もできないことにやきもきしてしまう。
メリンダが両手を合わせ、祈るようにおでこをひっつける。
(キーナちゃん…、無事でいて…!)
テルディアスにとって、メリンダにとって、長い夜となった。
「はっ!」
と気付いてガバリと身を起こす。
神殿の中は朝の光で満たされていた。
遠くで小鳥の鳴く声。
「あれ? 僕…?」
キーナがふと首を傾げる。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
どうしてそうなったのだっけ?と昨夜の事を思い出し、鳥肌が立った。
自分の上に覆い被さるように男が乗ってきた。
その光景を思い出し、思わず身をすくめる。
自分の体を掻き抱き、背を丸める。体は自然と震え出す。
恐い。恐い。恐い。
身動きが取れない、逃げる事ができない、自分の意思と関係なく、体を支配されそうになる。
恐怖心に飲み込まれそうになり、思いっきり体を固くした。
そしてふと気付いた。
(ん? え…と)
体に何の異常も見られないし感じない。
着衣の乱れを見るが、脱がされたような形跡もない。
ついでにゴソゴソと下着を確認してみるが、きちんと身に付けている。
そういう時の後って、ちゃんと服を着せるのかしら?と首傾げ。
ついでに本で読んだ記憶によると、初めての時はとてつもなく痛くて血が出るとあったが、特に痛みも感じていないし、出血があったようには見えない。
事後の跡は何も残らないのだろうか?
(う~ん?)
なにぶんそんな経験も無いので、首を捻る事しかできない。
(こ、恐いけど、思い出さなきゃ!)
と顔をパンと叩いて気合いを入れる。
あの後何が起こったか、自分の記憶だけが頼りだ。
思い出す事も恐いけれど、何をされたのか分からないのも嫌だ。
(た、確か…、あの後…)
恐怖に耐えながら、キーナは必死にあの時の状況を思い出す。
「テル――――!!」
追い込まれ、口から出た言葉は、その場にいない、この世界で一番頼りになる存在の名だった。
そして、そのまま、意識が遠のき始めた。
暗闇に飲まれようとしている意識の狭間に、誰かが立っているのが分かった。
白い輝く長い髪を、腰の下辺りで綺麗に切り揃えた女の人。
後ろを向いているので顔は見えない。
着物のような珍しい服を着たその女性が、背を向けたまま言った。
『ここは我に任せられよ』
何を言っているのかキーナには理解できなかった。
背を向けたままだが、女性が微かに笑ったのが分かった。
そして、手に持っていた扇をパン!と綺麗に畳むと、呼んだ。
『漣(さざなみ)』
「漣(さざなみ)」
押さえつけられていたキーナの口から、その言葉が出て来た。
男達が一瞬、訝しんだ。
その時、何かが宙空から現われ、回りながら飛んで来た。
ギュルル!
どかかっ!
「う!」
「あ!」
「が!」
三者三様に悲鳴を上げ、キーナから離れる。
それは回りながら宙を飛び、身を起こしたキーナの手に、それが当たり前であるかのように収まった。
着衣の乱れを直し、その手に収まった扇で口元を隠し、キーナが三人の男達を睨み付ける。
『汚らわしい手で妾に触れるでないわ! ゲス共め!』
突然のキーナの変わり様に、目をパチクリさせる三人。
「み、御子様…?」
『即刻この場から立ち去れ! さもなくば…』
扇で三人を指し示し、
『主らの首を落としてやろうぞ…』
男達は体中の毛が総毛立った。
今までのキーナと何かが違う。
今のキーナならば、首を落とすと言ったら必ずやるだろう。
そんな迫力があった。
『去れ!!』
「ひいい!」
「あわわ…」
顔色を変えた三人が、急いで神殿の扉へと向かう。
「し、失礼しました!!」
バダン!!
と少し大きな音を立て、扉が閉められた。
そして、神殿にはキーナ一人だけとなった。
『フン。悪しき慣習は未だに残っていたか…』
女性は呟くと、ぼーっと事の成り行きを見守っていたキーナを振り見た。
扇で口元を隠しているので、その素顔を全部見る事はできない。
『本来ならば、お主がこのような思いをするはずでは、なかったのにのう…』
「え?」
どういう意味だろう?
尋ねようとした時、その女性が扇をこちらに差し向けた。
すると、キーナはもうそのまま意識を保っていることができなくなり、闇の間へと意識を委ね始める。
『今は眠るがよい。深く、深く…。その間の事は、妾に任せておくがよい』
「あ…?」
何がどうなっているのか分からないまま、キーナの意識は深淵へと落ちて行った。
最後に、女性が寂しそうに呟いた声が、聞こえた。
『あのお方は…、傍らにいないのだな…』
小鳥の声が小さく聞こえてくる。
朝の光が神殿内を優しく照らしている。
台座の側に座りながら、キーナが昨夜の事を思い出していた。
そう、なんだかよく分からないけど、助かったらしい。
(とりあえず、漫画や小説で時々あるような怖い事には、ならなかったんだ!)
小さくガッツポーズ。
恐かったけれども、あれ以上のことがなかったと分かっただけでも良かった。
(それに、あの人は…、何代か前の光の御子様…)
光の気配を纏った、顔はおぼろげで良く覚えていないけど、なんとなく綺麗な人だった。
(助けて…、くれたんだ…)
後ろを振り向く。
台座の上には、光の神をモチーフに作られたかと思われる、置物が置いてあった。
それに向けて、ペコリと頭を下げるキーナ。
(ありがとうございました!)
これでお礼を言えているのかは分からないけれど、やはりお礼が言いたかった。
(ああ、でも…)
ふと、罪悪感がまた押し寄せてくる。
(こんな僕が…、助けられる義理なんて…)
大勢の人を消してしまった。
そんな罪深い自分が助けられる義理などあったのだろうか?
また考えてしまう。
(こんな、僕なんか…、僕なんか…!)
膝を抱え込み、頭を伏せて、また考え込んでしまう。
(歴代の御子様達も、こんな風に苦しむ事があったのかしら…?)
その時、何か記憶の断片が見えた。
ガバリと顔を上げる。
神殿を見回す。
ここは光の御子のために作られた場所。
もし御子がいたならば、その痕跡などが残っているはず…。
(違う! 歴代の御子達は、ここにはいなかった!)
そうだ。御子達はこの場所を嫌っていた。
この場所に留まるわけがない。
それに、
(暴走なんてするはずがないんだ。だって…、あの人が側にいたから!)
未だに正体のよく分からないあの人。
だがしかし、あの人はどんなときも側にいたのだ。
あの人がいたからこそ、御子は力を暴走させる事がなかったのだ。
(ここにいても暴走は止められない。ここは、僕がいるべき場所じゃない!)
光の上位の者の力を、ましてや御子の力を、下位の者が止める事は不可能に近い。
(そうだ、全てはあの人が鍵なんだ! 探さなきゃ! あの人を!こんな所で、立ち止まってる暇はないんだ!)
キーナがゆっくりと立ち上がった。
その瞳には、力強さが戻っていた。
キーナの脳裏に、とある人物が浮かび上がる。
なんだか切なくなって、胸を押さえた。
(なんだか…、無性に、テルに会いたい…)
最後に分かれる時、「さよなら」と言ってしまった。
テルディアスは恐い顔をしながらも、「行くな!」と叫んでいた。
(今更…、無理かな…)
探し出して、共にまた行きたいと言ったら、なんと言うだろう?
伸ばされた手を振り払って離れた自分を、テルディアスは許してくれるだろうか?
無理かもしれない。
受け入れてくれないかもしれない。
でも、自分は前に進まなければいけないのだ。
潤んできた瞳を根性で押し止め、顔を上げる。
最後にもう一度、台座の上の置物を見上げた。
拝む物も無いので、代理でそれに向かって祈りを捧げる。
「光の神様。僕の罪が許されるとは思っていません。どういう形にしろ、僕は大勢の人達の命を奪った。でも、僕は前に進みます。同じ過ちを繰り返さないために。あの人達の命に報いるために」
一度深呼吸する。
「どうか、僕が消してしまった人達が、無事に天国へ行けますように。来世では幸せになれますように…」
そして頭を垂れ、しばし瞑想した。
そして再び顔を上げ、宣言する。
「僕、行きます」
そのまま置物に背を向け、振り向く事無く、キーナは神殿を後にした。
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