キーナの魔法

小笠原慎二

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緑の男

裏切り?

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暗くなって行く森の中を、黄色い髪の男が走って行く。
その肩には赤い髪の女。どうやら気を失っているらしく、ブラブラと揺れている。両手を縄で縛られていた。
木の葉は落ちて行く陽光を隠し、足元はほとんど見えない。
なのに男は足元に気を使うこともなく、危なげなく走って行く。まるで見えているかのように。
闇が完全に森を支配する直前、男は突然開けた所に出た。
入り口らしき所には篝火が焚かれ、消えて行く光を繋ぎ止めるかのように、周りを明るく照らしている。
男が近寄ると、守衛らしき兵士が、男に向かって槍を向けた。

「何者だ!」

男は臆することもなく近寄ると、

「旅の傭兵のサーガって者だが…。至急ここの責任者に会わせてくれ。この村を襲撃するって話しを仕入れてきた」
「何をバカな!」
「信じなくても別に良いぜ。俺は何も困らない。だが、もし事が起こったら、あんたらの責任も問われることになるんじゃないのか?」

兵士達は顔を見合わせた。
確かに、今ここでこの男を追い返すのは簡単だが、襲撃の話しが本当であったなら、襲撃されるのはもちろん、その話しを持って来た者を追い返したということで、何かしら罰を受ける羽目になってしまうかもしれない。
嘘か誠かは置いといて、とりあえず男を通しておけば問題ないと、兵士の1人が男、サーガを案内することにしたのだった。









この村にやって来て、税金の取り立てに来たその責任者は、村の者が全員出て行ってしまったので、今仮の領主となっていた。
国土の端の、人がほとんど入っていかないような森の中に、村があると発覚し、色々調査を重ね、ギリギリその村は国の領土内にあると、ほとんど無理矢理こじつけた。
辺境の村くらい放っておけば良かったのだが、その村では何故か、他の村に比べ、色々な食物の収穫量が多かった。
食料はどこに行っても重要な課題である。
国民を飢えさせない為に、自分たちがより良い物を食べる為に、上の者達はその村を囲い込むことにしたのだ。

そして派遣されたのが、今回責任者として任命されたグレッドムスである。
法律に詳しく、口も達者な為、如何にもな論法を用いて、村の者達を陥落させる為に来たのだった。
村の者達はやはり、国に囲われる事を反対した。
しかし、グレッドムスはそこを論破し、無理矢理押さえつけた。
これで刃向かう者もいなくなっただろうと思った矢先、村の者達は全員、村を捨てると言って出て行ってしまったのだった。
さすがにそこまでは考えていなかった。
先祖代々の土地を、そんな簡単に捨ててしまうなどと。

まあ、良い土地は手に入ったのだし、移民希望者などを募集して人を来させれば良いかと、グレッドムスは国に報告したのだった。
とりあえず落ち着くまで、この村を統括することになった。

そして、グレッドムスは少なからずとも期待していた。
これで土地が出来た。領地が出来た。そして今自分が仮にではあるが治めている。
自分ももしかしたら、このまま領地を得て、貴族の仲間入り出来るのではないかと。
商家の三男として生まれ、誰よりも努力してここまで這い上がって来た。
その努力がやっと報われる時が来たのだと、グレッドムスは期待に胸を膨らませていたのだった。








そして今、グレッドムスの目の前で、黄色い髪の男が、抱えていた赤い髪の女を床に下ろした所だった。

「お前か。襲撃されるという情報を持って来たというのは」
「ああ。ちょっとした偶然でね。この村の元住人が集まっている所に出くわしたんだ。そしたらそいつら、この村を取り戻そうと決起しようとしてたんでね。この情報を持ち込めば、良い値で買ってくれるかと思って来たんだが。どうだ?」
「ふむ…」

グレッドムスは考えた。
胡散臭い傭兵風情の言うことを信じるか、信じないか。
しかし、男の話は筋が通っている。この村の元住人という、当事者でなければ知らない情報も知っている。信憑性は高いだろう。
そして、傭兵は金に汚いものだ。金になるとなれば仲間も売るとも言われるゲスだ。金になると分かった時点で、その村の者達を売ろうとしているのも頷けるものだ。

「良いだろう。金を払おう。詳細を教えてもらおうか」
「そうこなくちゃな」

サーガは知っている限りの情報を話した。
村の者達は元気に動ける力のある者達だけが来ること。これはこちらの兵士の数がそれほど多くないからであろう。
時間は夜明け。太陽が顔を出すと同時に仕掛ける。確かにその時間帯は、警備がもっとも気が緩む時間帯だ。
そして、村の東側から来ると言うこと。これは単に今集まっている場所が村から見て東にあるからであろう。
そして、武器はほとんど簡素なものであるということ。なので、正規の武器を持つこちら側が圧倒的に有利であると。

「それと、こいつは手土産だ」

床に下ろした女を指さす。
赤くうねった長い髪に、突き出た胸にくびれた腰。手触りの良さそうな臀部にすらりと伸びた長い足。そして、顔は少しきつめだが、かなりの美人である。
その場にいた男達が、思わずゴクリと喉を鳴らした。
女はさも自分の体を主張するかのように、必要最低限の部分しか隠れていないような服を着ている。それが余計に男達の本能をくすぐる。

「味見済みだが、いい女だ。保証するぜ。あんたに献上するよ」
「ふむ。何が望みだ?」

そんなお土産を用意するとは、何か別の目的もあるのかと問いかける。

「そうさな。欲を言えば、俺を正式に雇って欲しいって事かな。いい加減根無し草は疲れたんでね。ここらで落ち着こうかなと」

グレッドムスはニヤリと笑った。

「いいだろう。雇ってやる」

使えるならばそれでいい。使えないならば、そのまま打ち捨ててしまえば良い。
そんなことを考えながら、グレッドムスは転がる女の全身を舐めるように見つめていた。
と、女がその瞳を開いた。赤い燃えるような瞳が、グレッドムスを見つめた。

「ん…。ここ、どこ?」

ぼんやりとしながら、女が部屋を眺め回す。見たこともない場所に連れて来られたことに、少し気が動転しているようだ。

「ああ、姐さん。目覚めちまった?」

その声に女が、後ろに立つ男を見上げた。

「あんた…。まさか、本当に?! この、裏切り者! 卑怯者! バカ! アホ! あんぽんたん! ○○! P! ○P○!!」

女が男を罵り始めた。
聞いていて、男がダメージを負うような悪口ばかり。どこからそんな言葉を仕入れてくるのか…。

「姐さん、ほらほら、ちょっと黙って」
「んんー!!」

慌てて男が女の口を塞いだ。

「いや、じっとしてればただの美人なんですけどね。あははー」

男が取り繕うように乾いた笑いをする。

「ふ…。元気な女も嫌いじゃないぞ」
「そいつは良かった。ちょっと扱いが大変なんで、俺が部屋まで運びますよ」

どこからか取り出した布で、女に猿ぐつわを噛ませる。

「んーーー!!」

女はまだ何か言いたそうだったが、さすがに言葉を発することは出来ない。
男は軽々と女を抱え上げる。

「んで? どちらの部屋に?」

グレッドムスが腰を上げた。













女を寝室のベッドに置かせて、運んで来た黄色い髪の男には、兵士長と警備について相談してこいとさっさと追い出した。
戦略などはグレッドムスには専門外だ。兵士達に任せておけば良い。
そして、朝までにはまだ時間もある。
女の猿ぐつわを外してやる。

「っは…。この、P! P! PPPPP!!」

相変わらず汚い言葉を発する。

「ふふふ、気の強い女も、嫌いでは無いぞ?」

グレッドムスはゆっくりと、自分の服を脱ぎながら、女の足の間に自分の足を入れていく。
一応妻がいる身ではある。
だが、今までにこんないい女に巡り会ったこともなく、そして妻は、抱いていて面白い女では無かった。
これぞ役得とばかりに、グレッドムスは女の足に手を這わせた。
その白さと柔らかさ、手に張り付くような感触に、背筋がゾワリとなる。

「嫌! 来るな! このクソ爺! 禿げ!」

女の悪態も、可愛く思えてくるから不思議なものだ。
両手を縛られ、不自由に藻掻く女は、それこそ男を誘っているかのように見える。
振り上げてくる足を掴み、強引に開かせる。

「いやあ!!」

女が悲鳴を上げた。
それこそが、グレッドムスを最高潮に興奮させるものだった。
久方ぶりに感じる興奮に身を委ね、女の衣服に手を伸ばした。













「いやあ! やめて! いやあああ!」

女の悲鳴が聞こえてくる。
寝室の前で警備することになったダフスは、溜息を吐いた。
チラリと見た女はかなりの美女で、顔もさながら、その肢体も美しい物だった。
出来ることなら、中にいる男と変わってしまいたいと思うが、中にいる男は自分よりも遙かに上の役職に就いている男。
役得だよな、と心の中で悪態を吐く。
羨ましいと思いながらも、しっかり仕事をしなければと気持ちを引き締めるも、

「あん! だめぇ! やめ…、はぁん…」

否応なしにその声は聞こえてくる。
女の声が悲鳴から、だんだんと色っぽい声へと変わっていく。
まだ若いダフスは、どうしても股間に熱が集まって行くことを、止めることが出来なかった。
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