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沈黙の森編
寝惚けたテルディアス
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テルディアスが目を開けた。
(・・・・・・)
薄暗い天井が視界に映った。
ぼんやりとした意識で考える。
自分は森の中にいたはず…。
森の中に落ちた辺りから記憶が曖昧だ。
何故視界に映っているものが、森の木々ではなく、何処かの建物の天井らしきものなのか分からない。
「うむ・・・」
左から声がした。
視線を向けてみれば、見慣れた濃い茶の頭。
だがしかし…。
(・・・・・・)
何故下着姿なのか…。
(夢…?)
ぼんやりした頭では、そうとしか考えられなかった。
気付けば、自分も何故かパンツ一丁である。
(・・・・・・)
頭が働かない。何故こんな夢を見ているのか…。
「にゅぅ…」
キーナが身じろぎする。何か夢でも見ているのだろうか。
しかし、幸せそうに眠る奴である。今までにも何度も、実に嫌になるほどにその寝顔を見ているが、大体が幸せそうな顔をしていた。お気楽極楽な奴だ。
大体、一応女の身で、男にこんなに寄り添って寝るなんぞ、どういう神経をしているのか。
そのことで何度注意をしても、「どうして寝ちゃいけないの?」なんぞと首を傾げる始末。
メリンダでいいからこいつに常識という物を叩き込んで欲しいものである。
(どうして寝ちゃいけないのだと?)
その時の様子を思い出して、無性に腹立たしくなってくる。
考えればこの年齢ならばすぐに考えつくであろうが。
それほどに信用されているということなのでもあろうが、自分も一応男である。そして、男色の趣味はない、健全な成人男性である(この世界では15歳で成人です)。
腕枕にされている腕を引っこ抜き、ふと湧いてきた悪戯心も手伝って、キーナの上に四つん這いになって覆い被さってみる。
真下には幸せそうに眠るキーナの顔。
このまま頭を下ろして行けば、その唇を奪う事も難しくはない。
左手で軽く頬に触れる。温かく、柔らかい。
頭から頬にそって撫でてみる。何故かその曲線にぞくりとなる。
肘を付いて、頭を抱えるような格好になる。近づいたその額に、唇で触れてみる。
味があるわけでもないのに、何故か「美味しい」と思ってしまった。もっと味わってみたい。
そのまま、目の横、頬、顎までのラインを、唇でなぞってみた。思った以上に「美味しい」。
背筋がぞわりとなった。
すぐそこに唇がある。
そのまま唇を重ね、吸ってみたら、どんな味がするのだろう。これ以上に「美味しい」と感じるのだろうか。
「ん…」
キーナが顔を背けた。
一瞬ギクリとなるが、眼を覚ます様子はない。どこまでお気楽なのか。
顔を背けたことにより、首筋がよく見える。そこにまた唇を這わせてみる。「美味しい」。
衝動的に吸いたくなってくる。しかしまだ早い気もする。もう少し味わってから。
鎖骨にそって唇を這わせる。「美味しい」。堪らなくなって、舌でもう一度なぞってみる。なんと舌触りのいい肌なのか。
目の前に耳があった。とても「美味しそう」に見える。まず唇で触れてみた。今までと違う柔らかさと温かさ。舌でなぞってみる。ここも「美味しい」。
耳たぶを口に含んでみた。不思議な弾力。
「んん…」
キーナがピクリと動いた。だが起きる様子はない。
そのまま耳たぶを口の中で転がしたりしゃぶったりしてみる。とても「美味しい」。
「んっ…」
キーナがくすぐったそうに身を捩らせた。なんだかちょっと面白い。
小さくて白い肩に触れてみる。手で覆うとすっぽり隠れてしまうほどに小さい。そこにも唇を這わせてみる。「美味しい」。
そのまま二の腕の方へと降りて行く。なんと柔らかな腕なのか。歯を立てず、唇でその腕を食んでみる。その弾力が面白くて気持ちよくて、少し吸ってみた。
なんだかくすぐったくて目が覚めた。
右腕の辺りがもぞもぞしている。
目の前に、見慣れた銀髪の頭が動いていた。
「・・・・・・」
いろいろフリーズ。
ナンカ、スワレテマスヨ?
軽く吸って離して、軽く吸って離してを繰り返している。
赤ちゃんのおしゃぶりじゃあるまいし。
「テ…、テル…?」
なんだか掠れた声が出た。でも、何故かそれ以上言葉が出てこない。
テルが顔を上げ、こちらを見た。
なんだかぼんやりしていて虚ろな瞳。
ぞわり。
何故か背筋が寒くなる。
とてつもなく逃げ出したくなったのだが、何故か身体が動かない。
「キーナ…」
テルの顔が近づいて来る。
怖い。
ああそうだ、今恐怖を感じてるんだ。
やっと自分の状態に気付く。今恐怖で身体が固まってしまっているんだ。
しかし、気付いた所で何ができよう。
テルの顔が近づいて来る。
怖い。怖い。怖い。
何が起きているのか、何が起きるのか、とにかく怖い。
テルの手が頬に触れた。
ビクリとなって目を瞑ってしまう。
「キーナ…?」
テルの声が少し不安気に揺れたように聞こえた。
「キーナちゃん!!!」
バン!!
メリンダの叫び声と共に、その小屋の扉が開け放たれた。
そして、メリンダは見た。
下着姿のキーナとテルディアス。そしてそのテルディアスがキーナの上に跨がっている…。
テルディアスがぼんやりとした頭でこちらを見た。
キーナも驚いたようにこちらを見た。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
メリンダは静かに扉を閉めた。
扉を背にして、メリンダは考え込んだ。
今見た物は一体なんであったのか…。
ショックで現実を考えられない状態になっている。
普通に考えれば、あれがあれでこうなっているわけで…。
だがしかし、あの2人からするとそれはどうで考えられないというか考えたくないというか…。
扉の前でうんうん唸っていると、2つの駆け足が聞こえて来た。
「お~い。姐さん、どうした? 2人はいたんか~?」
間延びしたサーガの声。
「あんたは、余計に、来るな―――――!!」
「なじぇ――――――!」
メリンダの振るったスイングで、特大ホームランとなったサーガが空の彼方へと消えて行った。
それをダンは呆然と見送り、肩で息をするメリンダを怖々見つめたのだった。
扉越しにそんなやりとりが聞こえてきて、テルディアスは改めてキーナを見下ろした。
キーナは怯えた目で、テルディアスを見上げている。
テルディアスの顔が青くなった。
ぼんやりした頭がここに来て、ようやっと覚醒して来た。
「どわあああああああああああああ!!!!!」
悲鳴を上げて、テルディアスが飛び上がり、壁際まで勢いよく後退した。
「あ…、あわ…、あ…」
テルディアスが言葉にならない言葉を紡ぎ出そうと必死になる。
キーナはそんなテルディアスの変わりように驚きながらも、身体を起こした。
「の、すまん! 違う! いや、すまん! そのだから、違うんだ! いや、すまんは違わなくて…」
大分混乱している。
「…テル?」
キーナが不安そうにテルディアスを見つめる。
「いや! 違う! その! 寝ぼけて! だから! 違う! すまん!」
同じ事を繰り返すそのテルディアスの頭に、テルディアスが壁にぶつかった衝撃でバランスを崩したのか、タライが良い感じで落ちてきた。
ガン!
いい音を立ててテルディアスの頭にヒットしたタライが、床に転がった。
「つぉ…」
天罰。
痛がるテルディアスの姿に、どこかのコントを思い出すキーナ。
「ぶ…」
あまりに綺麗にヒットしたその様子がおかしくなって、キーナは笑い出した。
「ぶふ、ふふ、あはは、あはははは…」
「キ、キーナ?」
「あはは、あはははは…」
そのままキーナはしばらく笑い続けたのだった。
小屋の外でその笑い声を耳にし、メリンダとダンも首を傾げるのだった。
(・・・・・・)
薄暗い天井が視界に映った。
ぼんやりとした意識で考える。
自分は森の中にいたはず…。
森の中に落ちた辺りから記憶が曖昧だ。
何故視界に映っているものが、森の木々ではなく、何処かの建物の天井らしきものなのか分からない。
「うむ・・・」
左から声がした。
視線を向けてみれば、見慣れた濃い茶の頭。
だがしかし…。
(・・・・・・)
何故下着姿なのか…。
(夢…?)
ぼんやりした頭では、そうとしか考えられなかった。
気付けば、自分も何故かパンツ一丁である。
(・・・・・・)
頭が働かない。何故こんな夢を見ているのか…。
「にゅぅ…」
キーナが身じろぎする。何か夢でも見ているのだろうか。
しかし、幸せそうに眠る奴である。今までにも何度も、実に嫌になるほどにその寝顔を見ているが、大体が幸せそうな顔をしていた。お気楽極楽な奴だ。
大体、一応女の身で、男にこんなに寄り添って寝るなんぞ、どういう神経をしているのか。
そのことで何度注意をしても、「どうして寝ちゃいけないの?」なんぞと首を傾げる始末。
メリンダでいいからこいつに常識という物を叩き込んで欲しいものである。
(どうして寝ちゃいけないのだと?)
その時の様子を思い出して、無性に腹立たしくなってくる。
考えればこの年齢ならばすぐに考えつくであろうが。
それほどに信用されているということなのでもあろうが、自分も一応男である。そして、男色の趣味はない、健全な成人男性である(この世界では15歳で成人です)。
腕枕にされている腕を引っこ抜き、ふと湧いてきた悪戯心も手伝って、キーナの上に四つん這いになって覆い被さってみる。
真下には幸せそうに眠るキーナの顔。
このまま頭を下ろして行けば、その唇を奪う事も難しくはない。
左手で軽く頬に触れる。温かく、柔らかい。
頭から頬にそって撫でてみる。何故かその曲線にぞくりとなる。
肘を付いて、頭を抱えるような格好になる。近づいたその額に、唇で触れてみる。
味があるわけでもないのに、何故か「美味しい」と思ってしまった。もっと味わってみたい。
そのまま、目の横、頬、顎までのラインを、唇でなぞってみた。思った以上に「美味しい」。
背筋がぞわりとなった。
すぐそこに唇がある。
そのまま唇を重ね、吸ってみたら、どんな味がするのだろう。これ以上に「美味しい」と感じるのだろうか。
「ん…」
キーナが顔を背けた。
一瞬ギクリとなるが、眼を覚ます様子はない。どこまでお気楽なのか。
顔を背けたことにより、首筋がよく見える。そこにまた唇を這わせてみる。「美味しい」。
衝動的に吸いたくなってくる。しかしまだ早い気もする。もう少し味わってから。
鎖骨にそって唇を這わせる。「美味しい」。堪らなくなって、舌でもう一度なぞってみる。なんと舌触りのいい肌なのか。
目の前に耳があった。とても「美味しそう」に見える。まず唇で触れてみた。今までと違う柔らかさと温かさ。舌でなぞってみる。ここも「美味しい」。
耳たぶを口に含んでみた。不思議な弾力。
「んん…」
キーナがピクリと動いた。だが起きる様子はない。
そのまま耳たぶを口の中で転がしたりしゃぶったりしてみる。とても「美味しい」。
「んっ…」
キーナがくすぐったそうに身を捩らせた。なんだかちょっと面白い。
小さくて白い肩に触れてみる。手で覆うとすっぽり隠れてしまうほどに小さい。そこにも唇を這わせてみる。「美味しい」。
そのまま二の腕の方へと降りて行く。なんと柔らかな腕なのか。歯を立てず、唇でその腕を食んでみる。その弾力が面白くて気持ちよくて、少し吸ってみた。
なんだかくすぐったくて目が覚めた。
右腕の辺りがもぞもぞしている。
目の前に、見慣れた銀髪の頭が動いていた。
「・・・・・・」
いろいろフリーズ。
ナンカ、スワレテマスヨ?
軽く吸って離して、軽く吸って離してを繰り返している。
赤ちゃんのおしゃぶりじゃあるまいし。
「テ…、テル…?」
なんだか掠れた声が出た。でも、何故かそれ以上言葉が出てこない。
テルが顔を上げ、こちらを見た。
なんだかぼんやりしていて虚ろな瞳。
ぞわり。
何故か背筋が寒くなる。
とてつもなく逃げ出したくなったのだが、何故か身体が動かない。
「キーナ…」
テルの顔が近づいて来る。
怖い。
ああそうだ、今恐怖を感じてるんだ。
やっと自分の状態に気付く。今恐怖で身体が固まってしまっているんだ。
しかし、気付いた所で何ができよう。
テルの顔が近づいて来る。
怖い。怖い。怖い。
何が起きているのか、何が起きるのか、とにかく怖い。
テルの手が頬に触れた。
ビクリとなって目を瞑ってしまう。
「キーナ…?」
テルの声が少し不安気に揺れたように聞こえた。
「キーナちゃん!!!」
バン!!
メリンダの叫び声と共に、その小屋の扉が開け放たれた。
そして、メリンダは見た。
下着姿のキーナとテルディアス。そしてそのテルディアスがキーナの上に跨がっている…。
テルディアスがぼんやりとした頭でこちらを見た。
キーナも驚いたようにこちらを見た。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
メリンダは静かに扉を閉めた。
扉を背にして、メリンダは考え込んだ。
今見た物は一体なんであったのか…。
ショックで現実を考えられない状態になっている。
普通に考えれば、あれがあれでこうなっているわけで…。
だがしかし、あの2人からするとそれはどうで考えられないというか考えたくないというか…。
扉の前でうんうん唸っていると、2つの駆け足が聞こえて来た。
「お~い。姐さん、どうした? 2人はいたんか~?」
間延びしたサーガの声。
「あんたは、余計に、来るな―――――!!」
「なじぇ――――――!」
メリンダの振るったスイングで、特大ホームランとなったサーガが空の彼方へと消えて行った。
それをダンは呆然と見送り、肩で息をするメリンダを怖々見つめたのだった。
扉越しにそんなやりとりが聞こえてきて、テルディアスは改めてキーナを見下ろした。
キーナは怯えた目で、テルディアスを見上げている。
テルディアスの顔が青くなった。
ぼんやりした頭がここに来て、ようやっと覚醒して来た。
「どわあああああああああああああ!!!!!」
悲鳴を上げて、テルディアスが飛び上がり、壁際まで勢いよく後退した。
「あ…、あわ…、あ…」
テルディアスが言葉にならない言葉を紡ぎ出そうと必死になる。
キーナはそんなテルディアスの変わりように驚きながらも、身体を起こした。
「の、すまん! 違う! いや、すまん! そのだから、違うんだ! いや、すまんは違わなくて…」
大分混乱している。
「…テル?」
キーナが不安そうにテルディアスを見つめる。
「いや! 違う! その! 寝ぼけて! だから! 違う! すまん!」
同じ事を繰り返すそのテルディアスの頭に、テルディアスが壁にぶつかった衝撃でバランスを崩したのか、タライが良い感じで落ちてきた。
ガン!
いい音を立ててテルディアスの頭にヒットしたタライが、床に転がった。
「つぉ…」
天罰。
痛がるテルディアスの姿に、どこかのコントを思い出すキーナ。
「ぶ…」
あまりに綺麗にヒットしたその様子がおかしくなって、キーナは笑い出した。
「ぶふ、ふふ、あはは、あはははは…」
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