211 / 296
闇の宮編
閑話~これまでの道程~
しおりを挟む
闇の宮を出て、また森の中を歩いて行く。
街道、つまりきちんと整備された道に出るにはまだ時間がかかるらしく、途中で陽が暮れだした。
しかしキーナ達一行にはそんなことお構いなし。今日も今日とてダン無双が始まる。
なんと便利なダン君でしょう。是非一家に一人、標準装備。
とアホな事は置いてといて、いつものように食事を取り、いつものように地下の部屋へと入っていく。
今日はテルディアスとサーガも中に入るらしい。
「んで、この先の予定だけど」
どうやら話し合いをするようだ。
「とりあえず北西の方で戦があるかもしれないっつーからそこへ向かうんで良いな?」
「はいな」
「ああ」
「分かったわ」
頷き。
いや、喋れよ!
「しっかし、眉唾もんだった宝玉を本当に3つも集めちまうとはな~」
噂、伝説、言い伝え。本当にあるかどうかも分からない伝説のような物が、今現在この場所に3つも揃っている。
「いろいろあったねぇ…」
「そうだな…」
キーナとテルディアスが揃って遠い目をする。
一番最初の水の宝玉も、簡単には手に入らなかった。
「水の宝玉のこと教えてくれたのはサーガだったよね」
「ふふん、俺に感謝してくれ」
「してるよ、もちろん」
ド直球に微笑まれ、赤面するサーガ。いつもアホな冗談で返されているので、素直に喜ばれるとなんだかむず痒い。
「水の宝玉も大変だったよね、テル」
「そうだな…」
「どんなことがあったの?」
メリンダが興味津々で聞いてくる。
キーナが語り始めた。
水の都に着いてから、その情報を集めたこと。宝玉は男が触ることができないので、キーナも行かなければならなかったこと(実はガセだったが)。内部の図面を手に入れて、二人で侵入したこと。なんとか宝玉の間に辿り着いたと思ったら落とし穴に落ち、暗い穴の底でテルディアスと力を合わせて脱出したこと。
途中何故かキーナが赤面したが、メリンダはテルディアスを軽く睨むだけで特になにも突っ込まなかった。
脱出したと思ったらすぐに捕まってしまい、キーナが水巫女の試練を受けなければならなくなったこと。
「酷い水着だった…」
「そうだな…」
キーナが遠い目をし、テルディアスが赤面する。
どんな水着だったのだろうとメリンダとサーガはいろいろ妄想した。
結果は大成功。きちんと試練をクリアして、宝玉を快く水の王国から借り受けられたこと。
「終わったらちゃんと返しに行くって、約束したの」
「そうなのね」
メリンダにっこり微笑む。
「そうなると、火の宝玉も簡単じゃなかったんだろ?」
サーガが尋ねる。
「うん。そもそも火の村の噂もほとんど聞けなくて」
「情報を集めることに苦労したな」
火の村がどこかにある。という話しは聞けたものの、その村がどこにあるか、という話しは全く出てこない。
何か手掛かりはないかと探していたところで、メリンダと出会った。
「あの頃のあたしはすぐには一緒に行けなかったのよね」
しみじみとメリンダが思い出しながら言う。
街を狙っていたシュバルティー一家に睨みをきかせるために、メリンダは街を離れることができなかった。かといってメリンダの案内がなければ火の村へは辿り着けなかっただろう。
「殺されかけたしな…」
ボソリとテルディアスが呟いた。
「あ、あれは、だって…!」
ダーディンの姿を見たメリンダは、テルディアスがキーナを食い殺そうとしていると早合点。キーナを助けるためと、テルディアスを殺そうとしたのだった。
「でもそこで、キーナちゃんが、あの御子の姿になってね…。なんか、ときめいちゃった」
両手を頬に当て、赤くなるメリンダ。
あの時、キーナに一目惚れしてしまったのだ。いや、恋愛感情ではなくてね…。
その後、遊び人のレオちゃんが現われ、メリンダの問題も解決。火の村へと共に行くことになったのだった。
「でもあたし、実は掟を破って村落ちしてたのよね…」
火の一族は戦争の為に狩られた時代があった。その為に人里遠く離れた山の中で暮らしていた。
火の一族を守るため、村から出ることは一部の行商に出る者以外は禁じられていた。もちろん、場所が知れたらまた狩られるからだ。
しかしメリンダは幼い頃から村から出たがっていた。そしてある時迷い込んで来た旅人と連れ立って、村落ちしたのである。
「なかなかいい男でね。あたしの初めての人だったんだけど…」
優しい男だった。村の外を知らないメリンダに色々な事を教えてくれた。だがしかし、ある日突然消えた。
「【ごめん。君が重い】っていう置き手紙を残して、宿から消えちゃったの」
用事が済んで宿へ戻ってみると、男は置き手紙を残して消えていた。メリンダは慌てて男を捜し回るも、男は見つからなかった。
「途方に暮れてたあたしの前に、ちょっと軽そうな男が近づいて来てね」
傷ついていたメリンダは、その男の優しい言葉に縋り付いてしまった。誘われるままに男の後を着いていった。
「後から知ったんだけど、あいつ女衒だったのよね。で、品定めされて、娼館に売られたの」
そこは高級娼館だった。そこで働くに相応しいと見定められたらしい。
実際にメキメキと力をつけたメリンダは、1番を争う程の売れっ子になっていった。
「そんなら、娼館にいたほうが安全でもっと稼げたんじゃ…」
サーガが首を傾げる。
低級な娼館では下手をすれば使い捨てのような扱いもされるが、高級娼館ならばお客は皆太客である。しかもメリンダは年齢的にもまだまだ稼げる。何故そんなところを出たのかとサーガは疑問に思った。
「それがねぇ…」
メリンダが困ったように笑った。
「焼いちゃったの。とあるお客さんの、ア・レ」
男共が青ざめた。
キーナは首を傾げている。
「嫌な客がいてさ~。サドの奴でね。入りたての大人しい子がそいつに選ばれちゃったのよ。で、最中に女の子がたまらず部屋の外に逃げて来て、たまたまあたしが居合わせちゃったのよね」
大人しい女の子も我慢ならないプレイを強制され、思わず部屋を飛び出してしまった。そして飛び込んだのが目の前をたまたま歩いていたメリンダの腕の中。
「で、そいつが結構身分がいい奴で」
大人しくそいつを渡せだの、ここは教育がなっとらんだの、むちゃくちゃを言って難癖をつけてくる。元々そいつにムカついていたメリンダ。そのあまりにも奢った発言を聞いて、ぷっちんしてしまった。
「気付いたら、そいつが炎に包まれてたわ」
てへぺろ。で済む問題ではない。
サーガが無意識に手を合わせた。
「いや、殺してないから」
死んではいない。
ただし全身に軽いヤケドを負い、ついで一番酷かったあそこは使い物にならなくなってしまったらしい。
で、メリンダの身の安全と娼館を助けるため、メリンダはこっそり(という名目で)娼館から(形式的には)逃げ出したのだった。
実際は静かではあったが手厚い見送りがあったりする。
「そして国をまたいで辿り着いたのが、キーナちゃん達と出会ったあの街なのよ」
「メリンダさんもいろいろあったんだねぇ」
どこまで理解出来ているのか、キーナがうんうんと頷いている。
「客を燃やすとか…。怖。俺も気をつけよう」
「そうね、あんたは特に気をつけた方が良いわね」
実際何度か焼かれてるしね。
ダンも青ざめている。いや、ダンは余程の事がなければ燃やされることはないと思うよ。
「そして火の村に一緒に行ったんだよね」
「そうね! あたしもまさか里帰りできるとは思ってなかったわ」
村落ちしたメリンダを、火の一族は苦笑いしながら受け入れた。元々脱走癖のあったメリンダが外に出たと知って、皆はやっぱりな、と思ったらしい。帰って来たのは流石に想定外だったらしいが。
その頃火の一族の宝玉の力を操る今代の巫女の体調がすこぶる悪く、時代の巫女を見付けなければならなかったのだが、村の中に適正者はいなかった。
そこへのこのこ帰って来たメリンダは、まさに丁度良いところだったわけだ。
「火の巫女の試練を受けるんで、丁度良いから二人と一緒に入ったのよね」
「中は凄かったよ!」
キーナがマグマの海やマグマの飛沫が飛んでくる一本道のことを嬉々として語る。
聞いている方は青ざめている。
「まさか宝玉にあたしが選ばれるとは思ってもみなかったけどね~」
結局、メリンダは宝玉に選ばれ、宝玉はその姿を現わした。
「そのまま黙って二人に逃げて貰うつもりだったんだけど…」
洞から出たら二人に飛んで逃げて貰うつもりだった。空を飛ぶのが苦手な火の一族ならば追いつくことはできないだろうし、メリンダも二人を逃がすためにいろいろする覚悟ではいた。
「でも、大婆様にはバレてたみたいで」
洞を出てすぐにメリンダはとっ捕まり、二人は攻撃を受けた。
「で、またキーナちゃんが奇跡を起こして~」
火の女神がキーナに降り、顕現。村の者達を説得してなんとか丸く収まった。
「火の宝玉も借り物だから、ちゃんと返しに行くよ」
「ありがとう、キーナちゃん」
メリンダがキーナに微笑みかける。
「で、メリンダさんは帰るの?」
「う~ん…。どうしようかしらね…」
火の巫女に選ばれたメリンダは、本当ならば村から出ることはできない。掟をいきなり変えることも難しいため、メリンダは逃走したという形になっている。
「まあ、いつかは帰らなきゃとは思ってるわ」
それがいつになるかは分からないが。
「うん。いいんじゃないかな」
キーナの笑顔にメリンダもほっこりする。
「姐さんらしいや…」
「なんか言った?」
「イイエ、ナニモイッテマセンワ」
サーガの呟きはメリンダの耳にきちんと届かなかったようである。
「その後、サーガにまた会ったんだよね」
古代遺跡の魔獣の街で、ばったり出会ったサーガ。しかもお互いの依頼主がいがみ合っている状態で。
「なんか出会い頭にテルディアスに斬りかかられたしなぁ」
とサーガがテルディアスを睨むも、テルディアスはそっぽを向いている。
「あの時はあんた、風の一族って自覚なかったわよね」
「はい。知りませんでした」
そういう一族がいるということはサーガも耳にしてはいた。しかし実際に自分がそうとは思ってもいなかった。
「風の習得だけやたら得意だったんだよな」
「その時点で気付いて欲しかったわね」
1度キーナとテルディアスと別れ、改めて修行に身を入れたサーガ。ある時呪文を使わずに風の力を使えることに気付いた。
「俺天才なんだって思ってたのに」
「風の一族ならそれくらいは当たり前にできるわよね」
今では呼吸をするように風の力を操ることができる。いや、自覚していなかっただけで昔から使えていたのかも知れない。
そして一行にサーガが加わり、何処にあるとも知れないサーガの村を探すことになったのだった。
「なんとなく、だけど、北西のいざこざは当たりな気がするんだよ」
「なんで?」
「なんつーか、臭い?」
風を操るサーガは臭いにも敏感だ。
「懐かしい臭いがする気がする」
確信はないらしい。
「まあでも、ここまで来たらもうその場所しか残ってないんだけどね」
「そーねー」
大体ではあるが、この大陸の南西から南東は横断してしまった。あとは北、特に北西の方を見ていないだけだ。
ちなみに北東の方は未開地が広がっているのであまり関係ないはずだ。
「サーガが加わってからもいろいろあったねぇ」
キーナが何を思いだしたのか、溜息を一つ。
(((その諸々はキーナ(ちゃん)が原因だけど…)))
保護者3人は同じ事を思った。
宝玉に関わることももちろんあったが、ナトとアディのことやら、男娼の館のことやら、首を突っ込むまたは無理矢理引き摺り込まれるなどの原因は大体がキーナだ。
3人は小さく溜息を吐いた。
「ああ、そういえば、地底宮で見付けたアレ」
メリンダがサーガを見る。
「これ?」
サーガがあの黒い球を取り出す。重いのでサーガに持たせていたのだ。
荷物持ち要員か。
「ダン、これ元々地の一族の物になるのかしら? だったら返しておいた方がいい?」
地の村ではすっかり忘れてしまっていた。まあ、いろいろあったからね。いろいろ。
サーガがダンに差し出す。ダンがそれを掴み上げ、しげしげと観察する。
「…宝玉の代わりに置いておいた物。特に意味はない」
ほい、とばかりにサーガに返そうとする。
「いや、それ持ってても売れねーし」
あまりにも質が良すぎるうえに、あまりにも大きすぎるので何処も買い取ってくれない代物。となるとただの邪魔な石である。
ダンは訳が分からず首を傾げる。
「そのままだと大きすぎて買い取りしてくれないのよ。せめて小さくできないかしら?」
割ってみようという話しになったことはあったのだが、下手に割るのも怖くて微妙に手が出せなかったのである。値打ち物あるある。
と、ダンがこくりと頷いた。
球の天辺に指を乗せる。
何をするのかと皆が注視すると、なんと球がぱっかり8等分に割れた。
「これ?」
キレイな半月型になった黒い石をメリンダに差し出す。
思わず手に取るメリンダ。
「な、なんでこんなにキレイに割れるのよーーー!!」
キーナ達が思っていたことを、メリンダが代わりに叫んだ。
「地。簡単」
地の一族の者ならば、それくらい簡単に出来る、と言いたいらしい。
「地の力って便利だね…」
キーナぼそりと呟く。
この言葉にメリンダとサーガがちょっと傷ついた。
(どうせ、あたしは暖めることとか、燃やすことしか出来ないもん!)
(俺は探索系の力に優れてるからいいもん!)
心の中で負け惜しみを呟く二人。
「そういえば、テルの故郷にも行ったよね」
キーナがテルディアスを振り見た。
テルディアスが渋い顔をする。
「そうだな~、くまちゃんとかくまちゃんとかくまちゃんとか…」
「貴様、切られたいか…」
「面白い話しいっぱい聞けたわよね」
「そうだね~」
ダンにも分かるように、キーナが事細かに説明し始める。
顔を両手で覆って項垂れるテルディアス。もうやめたげて。
アスティの話しになって、キーナがちょっとまごついた。
「あの人は…、なんだか不思議な人だったねぇ」
「そう? 普通に良い人だったけど」
「あんにゃろ…、俺結局勝負してないんだよな…」
三者三様である。
そしてテルディアスの故郷を後にし、またいろいろあって、東の果ての都に辿り着いた。
「あそこは…まあ…」
「うん、まあね」
キーナもメリンダも歯切れが悪い。
「そしてすぐに森に入って~…」
誤魔化した。
「そういえば、おかしな木の家に住む女の人がいたね」
「ああ、あの人ね。どうしてあんな辺鄙なところに住んでたのかしら?」
二人が首を傾げる。
テルディアスの顔が少し曇っているのはそっとしておいてあげよう。
「風の、賢者」
ダンが呟いた。
「え?」
「ええ?」
「はい?」
キーナ、メリンダ、サーガがダンの顔を見る。テルディアスも驚いたようにダンを見つめた。
「風の賢者。時折物資運んでた」
衝撃の事実。
「いや、賢者って、そんな、簡単に会えるものか?」
サーガが疑問を口に出す。
いや、ただ一人火の賢者と呼ばれる者だけはミドル王国で謁見の申し込みをすれば会えることはあるよ?
だがしかし、その他の3賢者は居所が知れていない。
「賢者とは…」
テルディアス、何故頭を抱えるのか…。
まあ、テルディアスが知っている賢者の一人は女たらし、新たに賢者と知った者は己を襲おうとして来た者(下ネタ的に)…。無理もないか。
「知れる、うるさい、森の中、静」
居所が知れるといろいろうるさいので、森の中で静に暮らしているのだそうだ。確かに、出会った時も何かの実験をしていたようだった。
「まあ、師匠もいろいろ客が来てうるさがってはいたな…」
火の賢者と呼ばれていたレオナルド・ラオシャス。この人の所にも実は会いたいとひっきりなしに人が訪れていた。
しかしそこは王宮という場所と立場を利用して、殆どをお断りしていたのだった。
のわりには街に出て遊んでいたようだが…。
考えないでおこう。
森の中だけでは物資が足りなくなるので、時折地の一族が行商などに回っていたらしい。
あの看板はその為だったのかと4人は納得したのだった。
「そして、ダンに会ったんだよね!」
頷くダン。
「俺はまたしても襲われたがな」
根に持っているのだろうか。
しかし考えてみると、サーガにも出会い頭に剣を抜かれ、メリンダにも炎で焼かれそうになり、ダンにも鉈で頭をかち割られそうになったのだ。
改めて魔女への憎しみが湧き出すテルディアス。どうどう。
「まあでも、すぐに引っ込めてくれたじゃない」
キーナが慰める。
助けようとした子供が反対にダーディンを庇い始めたので、ダンは訳が分からなくなったのだった。ついでにやって来たメリンダとサーガにも驚いた。
「…!」
ダンがテルディアスに頭を下げる。
「いや、もういい」
もう諦めている。いろいろ。
なにせ初見で信じてくれたのはキーナだけだ。
信じてくれないことが当たり前になってしまっている。
改めて魔女への憎しみが…。
「まあまあ、テル」
キーナが慰める。
「でも、ダンが加わってくれたのは、かなり有り難いわね」
「そうだよね」
メリンダとキーナが頷き合う。
それまでの旅路とは打って変わって快適な旅路。なにせ野宿もへいへいのちゃらちゃらだ。
毎日温かくて美味しい物が食べられて、寝る時もふっわふわのベッド。お風呂にも入れてトイレも完備。なんという贅沢。
「「野宿じゃない…」」
男達の呟きは聞こえなかったことにされたようだ。
「宝玉4つ揃えたら、テルは元の姿に戻れるんだよね!」
「ああ、そう聞いてはいる…」
本当に元の姿に戻れるのだろうか。しかし確かに宝玉からは凄い力を感じる。
あと1つ。あと1つを手に入れたら、元の姿に戻れるかも知れないのだ。
そして、その時は多分、近い。
「ちょっと楽しみだな~テルの人間姿」
「化粧したのとはやっぱり違うのよね?」
あーだこーだと話し合う女性達。
「んなことは別にどーでもいーんだが…」
ぼそりと呟き、キーナをちらりと見るサーガ。
この少女が自分の幸せの鍵を握っているはずなのだが、いまだに何の進展もない。メリンダとの進展はありすぎるほどにあるのだが。
そして、テルディアスが元に戻ったら、その先はどうなるのだろうともちょっと思う。
テルディアスもサーガと同じように、元の姿に戻ったらどうなるのかと思う。
(元の姿に戻ったら…)
一抹の不安を残しつつも、やはり元の姿の戻りたいと願うのだった。
就寝後、仄かな明かりが灯る中、キーナもベッドの中で考える。
(テルが元の姿に戻ったら…。もう一緒に旅は出来なくなっちゃうのかな…)
テルディアスが元の姿に戻るのはやはりキーナも嬉しい。しかし、その先は?
キーナは頭を振って、その先は考えないようにした。
今から不安がっていてもしょうがないのだ。
まだ風の宝玉は手に入れていないのだから。
しかし、その時は近いのかも知れない・・。
街道、つまりきちんと整備された道に出るにはまだ時間がかかるらしく、途中で陽が暮れだした。
しかしキーナ達一行にはそんなことお構いなし。今日も今日とてダン無双が始まる。
なんと便利なダン君でしょう。是非一家に一人、標準装備。
とアホな事は置いてといて、いつものように食事を取り、いつものように地下の部屋へと入っていく。
今日はテルディアスとサーガも中に入るらしい。
「んで、この先の予定だけど」
どうやら話し合いをするようだ。
「とりあえず北西の方で戦があるかもしれないっつーからそこへ向かうんで良いな?」
「はいな」
「ああ」
「分かったわ」
頷き。
いや、喋れよ!
「しっかし、眉唾もんだった宝玉を本当に3つも集めちまうとはな~」
噂、伝説、言い伝え。本当にあるかどうかも分からない伝説のような物が、今現在この場所に3つも揃っている。
「いろいろあったねぇ…」
「そうだな…」
キーナとテルディアスが揃って遠い目をする。
一番最初の水の宝玉も、簡単には手に入らなかった。
「水の宝玉のこと教えてくれたのはサーガだったよね」
「ふふん、俺に感謝してくれ」
「してるよ、もちろん」
ド直球に微笑まれ、赤面するサーガ。いつもアホな冗談で返されているので、素直に喜ばれるとなんだかむず痒い。
「水の宝玉も大変だったよね、テル」
「そうだな…」
「どんなことがあったの?」
メリンダが興味津々で聞いてくる。
キーナが語り始めた。
水の都に着いてから、その情報を集めたこと。宝玉は男が触ることができないので、キーナも行かなければならなかったこと(実はガセだったが)。内部の図面を手に入れて、二人で侵入したこと。なんとか宝玉の間に辿り着いたと思ったら落とし穴に落ち、暗い穴の底でテルディアスと力を合わせて脱出したこと。
途中何故かキーナが赤面したが、メリンダはテルディアスを軽く睨むだけで特になにも突っ込まなかった。
脱出したと思ったらすぐに捕まってしまい、キーナが水巫女の試練を受けなければならなくなったこと。
「酷い水着だった…」
「そうだな…」
キーナが遠い目をし、テルディアスが赤面する。
どんな水着だったのだろうとメリンダとサーガはいろいろ妄想した。
結果は大成功。きちんと試練をクリアして、宝玉を快く水の王国から借り受けられたこと。
「終わったらちゃんと返しに行くって、約束したの」
「そうなのね」
メリンダにっこり微笑む。
「そうなると、火の宝玉も簡単じゃなかったんだろ?」
サーガが尋ねる。
「うん。そもそも火の村の噂もほとんど聞けなくて」
「情報を集めることに苦労したな」
火の村がどこかにある。という話しは聞けたものの、その村がどこにあるか、という話しは全く出てこない。
何か手掛かりはないかと探していたところで、メリンダと出会った。
「あの頃のあたしはすぐには一緒に行けなかったのよね」
しみじみとメリンダが思い出しながら言う。
街を狙っていたシュバルティー一家に睨みをきかせるために、メリンダは街を離れることができなかった。かといってメリンダの案内がなければ火の村へは辿り着けなかっただろう。
「殺されかけたしな…」
ボソリとテルディアスが呟いた。
「あ、あれは、だって…!」
ダーディンの姿を見たメリンダは、テルディアスがキーナを食い殺そうとしていると早合点。キーナを助けるためと、テルディアスを殺そうとしたのだった。
「でもそこで、キーナちゃんが、あの御子の姿になってね…。なんか、ときめいちゃった」
両手を頬に当て、赤くなるメリンダ。
あの時、キーナに一目惚れしてしまったのだ。いや、恋愛感情ではなくてね…。
その後、遊び人のレオちゃんが現われ、メリンダの問題も解決。火の村へと共に行くことになったのだった。
「でもあたし、実は掟を破って村落ちしてたのよね…」
火の一族は戦争の為に狩られた時代があった。その為に人里遠く離れた山の中で暮らしていた。
火の一族を守るため、村から出ることは一部の行商に出る者以外は禁じられていた。もちろん、場所が知れたらまた狩られるからだ。
しかしメリンダは幼い頃から村から出たがっていた。そしてある時迷い込んで来た旅人と連れ立って、村落ちしたのである。
「なかなかいい男でね。あたしの初めての人だったんだけど…」
優しい男だった。村の外を知らないメリンダに色々な事を教えてくれた。だがしかし、ある日突然消えた。
「【ごめん。君が重い】っていう置き手紙を残して、宿から消えちゃったの」
用事が済んで宿へ戻ってみると、男は置き手紙を残して消えていた。メリンダは慌てて男を捜し回るも、男は見つからなかった。
「途方に暮れてたあたしの前に、ちょっと軽そうな男が近づいて来てね」
傷ついていたメリンダは、その男の優しい言葉に縋り付いてしまった。誘われるままに男の後を着いていった。
「後から知ったんだけど、あいつ女衒だったのよね。で、品定めされて、娼館に売られたの」
そこは高級娼館だった。そこで働くに相応しいと見定められたらしい。
実際にメキメキと力をつけたメリンダは、1番を争う程の売れっ子になっていった。
「そんなら、娼館にいたほうが安全でもっと稼げたんじゃ…」
サーガが首を傾げる。
低級な娼館では下手をすれば使い捨てのような扱いもされるが、高級娼館ならばお客は皆太客である。しかもメリンダは年齢的にもまだまだ稼げる。何故そんなところを出たのかとサーガは疑問に思った。
「それがねぇ…」
メリンダが困ったように笑った。
「焼いちゃったの。とあるお客さんの、ア・レ」
男共が青ざめた。
キーナは首を傾げている。
「嫌な客がいてさ~。サドの奴でね。入りたての大人しい子がそいつに選ばれちゃったのよ。で、最中に女の子がたまらず部屋の外に逃げて来て、たまたまあたしが居合わせちゃったのよね」
大人しい女の子も我慢ならないプレイを強制され、思わず部屋を飛び出してしまった。そして飛び込んだのが目の前をたまたま歩いていたメリンダの腕の中。
「で、そいつが結構身分がいい奴で」
大人しくそいつを渡せだの、ここは教育がなっとらんだの、むちゃくちゃを言って難癖をつけてくる。元々そいつにムカついていたメリンダ。そのあまりにも奢った発言を聞いて、ぷっちんしてしまった。
「気付いたら、そいつが炎に包まれてたわ」
てへぺろ。で済む問題ではない。
サーガが無意識に手を合わせた。
「いや、殺してないから」
死んではいない。
ただし全身に軽いヤケドを負い、ついで一番酷かったあそこは使い物にならなくなってしまったらしい。
で、メリンダの身の安全と娼館を助けるため、メリンダはこっそり(という名目で)娼館から(形式的には)逃げ出したのだった。
実際は静かではあったが手厚い見送りがあったりする。
「そして国をまたいで辿り着いたのが、キーナちゃん達と出会ったあの街なのよ」
「メリンダさんもいろいろあったんだねぇ」
どこまで理解出来ているのか、キーナがうんうんと頷いている。
「客を燃やすとか…。怖。俺も気をつけよう」
「そうね、あんたは特に気をつけた方が良いわね」
実際何度か焼かれてるしね。
ダンも青ざめている。いや、ダンは余程の事がなければ燃やされることはないと思うよ。
「そして火の村に一緒に行ったんだよね」
「そうね! あたしもまさか里帰りできるとは思ってなかったわ」
村落ちしたメリンダを、火の一族は苦笑いしながら受け入れた。元々脱走癖のあったメリンダが外に出たと知って、皆はやっぱりな、と思ったらしい。帰って来たのは流石に想定外だったらしいが。
その頃火の一族の宝玉の力を操る今代の巫女の体調がすこぶる悪く、時代の巫女を見付けなければならなかったのだが、村の中に適正者はいなかった。
そこへのこのこ帰って来たメリンダは、まさに丁度良いところだったわけだ。
「火の巫女の試練を受けるんで、丁度良いから二人と一緒に入ったのよね」
「中は凄かったよ!」
キーナがマグマの海やマグマの飛沫が飛んでくる一本道のことを嬉々として語る。
聞いている方は青ざめている。
「まさか宝玉にあたしが選ばれるとは思ってもみなかったけどね~」
結局、メリンダは宝玉に選ばれ、宝玉はその姿を現わした。
「そのまま黙って二人に逃げて貰うつもりだったんだけど…」
洞から出たら二人に飛んで逃げて貰うつもりだった。空を飛ぶのが苦手な火の一族ならば追いつくことはできないだろうし、メリンダも二人を逃がすためにいろいろする覚悟ではいた。
「でも、大婆様にはバレてたみたいで」
洞を出てすぐにメリンダはとっ捕まり、二人は攻撃を受けた。
「で、またキーナちゃんが奇跡を起こして~」
火の女神がキーナに降り、顕現。村の者達を説得してなんとか丸く収まった。
「火の宝玉も借り物だから、ちゃんと返しに行くよ」
「ありがとう、キーナちゃん」
メリンダがキーナに微笑みかける。
「で、メリンダさんは帰るの?」
「う~ん…。どうしようかしらね…」
火の巫女に選ばれたメリンダは、本当ならば村から出ることはできない。掟をいきなり変えることも難しいため、メリンダは逃走したという形になっている。
「まあ、いつかは帰らなきゃとは思ってるわ」
それがいつになるかは分からないが。
「うん。いいんじゃないかな」
キーナの笑顔にメリンダもほっこりする。
「姐さんらしいや…」
「なんか言った?」
「イイエ、ナニモイッテマセンワ」
サーガの呟きはメリンダの耳にきちんと届かなかったようである。
「その後、サーガにまた会ったんだよね」
古代遺跡の魔獣の街で、ばったり出会ったサーガ。しかもお互いの依頼主がいがみ合っている状態で。
「なんか出会い頭にテルディアスに斬りかかられたしなぁ」
とサーガがテルディアスを睨むも、テルディアスはそっぽを向いている。
「あの時はあんた、風の一族って自覚なかったわよね」
「はい。知りませんでした」
そういう一族がいるということはサーガも耳にしてはいた。しかし実際に自分がそうとは思ってもいなかった。
「風の習得だけやたら得意だったんだよな」
「その時点で気付いて欲しかったわね」
1度キーナとテルディアスと別れ、改めて修行に身を入れたサーガ。ある時呪文を使わずに風の力を使えることに気付いた。
「俺天才なんだって思ってたのに」
「風の一族ならそれくらいは当たり前にできるわよね」
今では呼吸をするように風の力を操ることができる。いや、自覚していなかっただけで昔から使えていたのかも知れない。
そして一行にサーガが加わり、何処にあるとも知れないサーガの村を探すことになったのだった。
「なんとなく、だけど、北西のいざこざは当たりな気がするんだよ」
「なんで?」
「なんつーか、臭い?」
風を操るサーガは臭いにも敏感だ。
「懐かしい臭いがする気がする」
確信はないらしい。
「まあでも、ここまで来たらもうその場所しか残ってないんだけどね」
「そーねー」
大体ではあるが、この大陸の南西から南東は横断してしまった。あとは北、特に北西の方を見ていないだけだ。
ちなみに北東の方は未開地が広がっているのであまり関係ないはずだ。
「サーガが加わってからもいろいろあったねぇ」
キーナが何を思いだしたのか、溜息を一つ。
(((その諸々はキーナ(ちゃん)が原因だけど…)))
保護者3人は同じ事を思った。
宝玉に関わることももちろんあったが、ナトとアディのことやら、男娼の館のことやら、首を突っ込むまたは無理矢理引き摺り込まれるなどの原因は大体がキーナだ。
3人は小さく溜息を吐いた。
「ああ、そういえば、地底宮で見付けたアレ」
メリンダがサーガを見る。
「これ?」
サーガがあの黒い球を取り出す。重いのでサーガに持たせていたのだ。
荷物持ち要員か。
「ダン、これ元々地の一族の物になるのかしら? だったら返しておいた方がいい?」
地の村ではすっかり忘れてしまっていた。まあ、いろいろあったからね。いろいろ。
サーガがダンに差し出す。ダンがそれを掴み上げ、しげしげと観察する。
「…宝玉の代わりに置いておいた物。特に意味はない」
ほい、とばかりにサーガに返そうとする。
「いや、それ持ってても売れねーし」
あまりにも質が良すぎるうえに、あまりにも大きすぎるので何処も買い取ってくれない代物。となるとただの邪魔な石である。
ダンは訳が分からず首を傾げる。
「そのままだと大きすぎて買い取りしてくれないのよ。せめて小さくできないかしら?」
割ってみようという話しになったことはあったのだが、下手に割るのも怖くて微妙に手が出せなかったのである。値打ち物あるある。
と、ダンがこくりと頷いた。
球の天辺に指を乗せる。
何をするのかと皆が注視すると、なんと球がぱっかり8等分に割れた。
「これ?」
キレイな半月型になった黒い石をメリンダに差し出す。
思わず手に取るメリンダ。
「な、なんでこんなにキレイに割れるのよーーー!!」
キーナ達が思っていたことを、メリンダが代わりに叫んだ。
「地。簡単」
地の一族の者ならば、それくらい簡単に出来る、と言いたいらしい。
「地の力って便利だね…」
キーナぼそりと呟く。
この言葉にメリンダとサーガがちょっと傷ついた。
(どうせ、あたしは暖めることとか、燃やすことしか出来ないもん!)
(俺は探索系の力に優れてるからいいもん!)
心の中で負け惜しみを呟く二人。
「そういえば、テルの故郷にも行ったよね」
キーナがテルディアスを振り見た。
テルディアスが渋い顔をする。
「そうだな~、くまちゃんとかくまちゃんとかくまちゃんとか…」
「貴様、切られたいか…」
「面白い話しいっぱい聞けたわよね」
「そうだね~」
ダンにも分かるように、キーナが事細かに説明し始める。
顔を両手で覆って項垂れるテルディアス。もうやめたげて。
アスティの話しになって、キーナがちょっとまごついた。
「あの人は…、なんだか不思議な人だったねぇ」
「そう? 普通に良い人だったけど」
「あんにゃろ…、俺結局勝負してないんだよな…」
三者三様である。
そしてテルディアスの故郷を後にし、またいろいろあって、東の果ての都に辿り着いた。
「あそこは…まあ…」
「うん、まあね」
キーナもメリンダも歯切れが悪い。
「そしてすぐに森に入って~…」
誤魔化した。
「そういえば、おかしな木の家に住む女の人がいたね」
「ああ、あの人ね。どうしてあんな辺鄙なところに住んでたのかしら?」
二人が首を傾げる。
テルディアスの顔が少し曇っているのはそっとしておいてあげよう。
「風の、賢者」
ダンが呟いた。
「え?」
「ええ?」
「はい?」
キーナ、メリンダ、サーガがダンの顔を見る。テルディアスも驚いたようにダンを見つめた。
「風の賢者。時折物資運んでた」
衝撃の事実。
「いや、賢者って、そんな、簡単に会えるものか?」
サーガが疑問を口に出す。
いや、ただ一人火の賢者と呼ばれる者だけはミドル王国で謁見の申し込みをすれば会えることはあるよ?
だがしかし、その他の3賢者は居所が知れていない。
「賢者とは…」
テルディアス、何故頭を抱えるのか…。
まあ、テルディアスが知っている賢者の一人は女たらし、新たに賢者と知った者は己を襲おうとして来た者(下ネタ的に)…。無理もないか。
「知れる、うるさい、森の中、静」
居所が知れるといろいろうるさいので、森の中で静に暮らしているのだそうだ。確かに、出会った時も何かの実験をしていたようだった。
「まあ、師匠もいろいろ客が来てうるさがってはいたな…」
火の賢者と呼ばれていたレオナルド・ラオシャス。この人の所にも実は会いたいとひっきりなしに人が訪れていた。
しかしそこは王宮という場所と立場を利用して、殆どをお断りしていたのだった。
のわりには街に出て遊んでいたようだが…。
考えないでおこう。
森の中だけでは物資が足りなくなるので、時折地の一族が行商などに回っていたらしい。
あの看板はその為だったのかと4人は納得したのだった。
「そして、ダンに会ったんだよね!」
頷くダン。
「俺はまたしても襲われたがな」
根に持っているのだろうか。
しかし考えてみると、サーガにも出会い頭に剣を抜かれ、メリンダにも炎で焼かれそうになり、ダンにも鉈で頭をかち割られそうになったのだ。
改めて魔女への憎しみが湧き出すテルディアス。どうどう。
「まあでも、すぐに引っ込めてくれたじゃない」
キーナが慰める。
助けようとした子供が反対にダーディンを庇い始めたので、ダンは訳が分からなくなったのだった。ついでにやって来たメリンダとサーガにも驚いた。
「…!」
ダンがテルディアスに頭を下げる。
「いや、もういい」
もう諦めている。いろいろ。
なにせ初見で信じてくれたのはキーナだけだ。
信じてくれないことが当たり前になってしまっている。
改めて魔女への憎しみが…。
「まあまあ、テル」
キーナが慰める。
「でも、ダンが加わってくれたのは、かなり有り難いわね」
「そうだよね」
メリンダとキーナが頷き合う。
それまでの旅路とは打って変わって快適な旅路。なにせ野宿もへいへいのちゃらちゃらだ。
毎日温かくて美味しい物が食べられて、寝る時もふっわふわのベッド。お風呂にも入れてトイレも完備。なんという贅沢。
「「野宿じゃない…」」
男達の呟きは聞こえなかったことにされたようだ。
「宝玉4つ揃えたら、テルは元の姿に戻れるんだよね!」
「ああ、そう聞いてはいる…」
本当に元の姿に戻れるのだろうか。しかし確かに宝玉からは凄い力を感じる。
あと1つ。あと1つを手に入れたら、元の姿に戻れるかも知れないのだ。
そして、その時は多分、近い。
「ちょっと楽しみだな~テルの人間姿」
「化粧したのとはやっぱり違うのよね?」
あーだこーだと話し合う女性達。
「んなことは別にどーでもいーんだが…」
ぼそりと呟き、キーナをちらりと見るサーガ。
この少女が自分の幸せの鍵を握っているはずなのだが、いまだに何の進展もない。メリンダとの進展はありすぎるほどにあるのだが。
そして、テルディアスが元に戻ったら、その先はどうなるのだろうともちょっと思う。
テルディアスもサーガと同じように、元の姿に戻ったらどうなるのかと思う。
(元の姿に戻ったら…)
一抹の不安を残しつつも、やはり元の姿の戻りたいと願うのだった。
就寝後、仄かな明かりが灯る中、キーナもベッドの中で考える。
(テルが元の姿に戻ったら…。もう一緒に旅は出来なくなっちゃうのかな…)
テルディアスが元の姿に戻るのはやはりキーナも嬉しい。しかし、その先は?
キーナは頭を振って、その先は考えないようにした。
今から不安がっていてもしょうがないのだ。
まだ風の宝玉は手に入れていないのだから。
しかし、その時は近いのかも知れない・・。
0
あなたにおすすめの小説
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる