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シゲール襲来編
ルイスの疑問
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シゲールの領域を探し当て、そこへ繋がる穴を開けようとした。
しかしかなり凝った造りになっており、その解析に苦労した。
開けたら開けたですぐさま閉じようとするその穴の保持に努めた。中に入るわけにはいかなかった。
シゲールとルイスではルイスの方が上位ではある。通常空間で戦うならばルイスが負けることはないだろう。しかしこれが相手の領域に入り込むと、下位の者でも敵わない時がある。
それほど領域とは警戒すべきものなのだ。
シゲールの空間内に入り込む4人を、本当は止めたかった。明らかに分が悪い。
唯一の対抗手段になりそうな光の御子はその力を制御出来ておらず、発動もままならない。
そして、4大精霊の力では、2神精霊には敵わないのが常識だ。
光と闇はこの世の基礎となる力。地、水、風、火はその2つの力から生まれたものだと言われている。
2神精霊は4大精霊の力を支配することが出来るので、相手が4大精霊の力を使っても、その制御権を奪うことが出来る。
つまり、攻撃しようと放ったものをそのまま返されてしまったり、防御壁を張っても無効化されてしまう。
魔法が使えないなら肉弾戦、と言いたいところだが、それは闇の力で防がれてしまう。
つまり八方塞がりだ。
だからこそルイスは「逃げてこい」と言った。
うまくシゲールを通常空間に引っ張り出すことが出来れば、あとは自分がなんとかできる。そう思ったからだ。
渋い顔をしていたが、戦えばすぐに分かるだろうと、ルイスは送り出した。無事に逃げて来ることを願って。
しかし、穴の維持に努めていたルイスの予想は裏切られる。
途中風が勢いを増して穴に吸い込まれて行くのは分かった。誰かが、まあ大方黄色い髪のボウヤ、サーガが風の力を使っているのだろうと思った。
すぐに制御権を奪われて何もできなくなって逃げて来るだろう。そう思っていた。
しかしいっこうに誰もやって来ない。まさか全員?と思って多少中の様子を探ったが、そうでもないらしい。そして、風が巻いていることだけは分かった。
そしてその瞬間、ガクリと手応えがあった。
突然シゲールの力が消えたのだ。
あまりに突然の事で、対応しきれなかった。
シゲールの力で形を保っていたその空間が歪み始める。
ルイスが空間を維持しようにも時間が足りない。慌てて中にいた皆を呼ぶ。
出て来たのは最初に入って行った4人と、赤髪の女性。シゲールの姿はなかった。
穴を維持出来なくなり、ルイスは穴を閉じた。中にいただろうシゲールがどうなったかは分からない。
しかしあの瞬間の手応えからして、生きてはいないのだろうとは思った。
サーガに尋ねたが、
「殺した」
と簡潔な答えが返ってきただけだった。
ルイスは考え続けていた。
どうやってサーガはシゲールを倒したのか。風の力が巻き起こっていたことを考えて、サーガが風の魔法を使ったことは明白だ。しかし、ならばシゲールはその制御権を何故奪わなかったのか。
そして、シゲールの最期は…。
性格は歪みすぎていけ好かない奴ではあったが、元はぐれ闇の仲間。その最期は気になる。
(本当なら、俺達がどうにかしなきゃならないことだったんだ…)
1度闇に呑まれてしまった者を救い出すことは闇の者には出来ない。しかし出来ないなら出来ないなりに、何かするべきだったのではないか。
ルイスは焚き火の炎を見ながら、考え込んでいた。
キーナが眼を覚ました。
「ほよ?」
ベッドの上で寝ていた。
「起きたか?」
体を起こすと、隣のベッドに座っていたテルディアスが近づいて来た。
「気分はどうだ? 可笑しな所はないか?」
「何も…」
寝起きのポヤンとした頭で、どうしてここにいるのかと考える。そして思い出す。
「テル! メリンダさんは?!」
「落ち着け。ゆっくり説明する。腹は? 減ってないか?」
グウ
キーナのお腹は素直だった。
テルディアスが持って来てくれた食事を頬張りながら、大人しくテルディアスの話しを聞くキーナ。
メリンダが無事に助け出されたと聞いて喜ぶ。
(良かった…。メリンダさん…)
キーナの代わりに攫われて行ったメリンダ。最後に見たのはあの空間内でぐったりとした感じのメリンダの姿。
で、何故今キーナが宿屋にいるのか。テルディアスが説明しだす。
「メリンダは、その、今錯乱状態にあって…。側にいると危ないというかなんというか…。だから、今はサーガが離れた所で看病をしている…。そのうちに症状が落ち着いたら、キーナに会わせると」
「お見舞いには行っちゃ駄目なの?」
「駄目だ」
キーナがふくれっ面をする。
「僕も手伝いたい。サーガ一人じゃ大変でしょ?」
「駄目だ」
余計にふくれっ面になる。
「落ち着くまで待て。何より、メリンダが多分、今の状態をキーナに見られたくないだろうと…。あいつが言っていた」
あいつとは多分サーガの事だろう。
キーナは考え込む。
出来るならば自分も手伝いに行きたい。しかし、キーナはあまりそっちの事には詳しくない。
ちらりと見たあの空間内でのメリンダの姿。鈍すぎるキーナでさえ、何があったかは想像が出来る。まさに筆舌に尽くしがたいことがあったはずだ。
そしてキーナはそういうことが分からない。
分からない者が側にいるというだけで傷つけてしまうことがあると言うことは、キーナも分かる。
味わったこともないのに「その辛さは分かる」などと軽々と口には出来ない。
その点サーガはそちらの事情にはかなり詳しい。まあ立場は違うのではあるが、キーナよりはメリンダの苦しみが分かるのかもしれない。何よりキーナと違って経験者である。
経験者でしか分からない何かがあるのかもしれないし、何よりサーガはメリンダと仲良しだ。メリンダの事を任せるには適任であろう。
「分かった。サーガに任せて待つ」
テルディアスがほっとした顔をした。どうやってキーナを説き伏せようかと悩んでいたのだろう。
「サーガはメリンダの看病。ダンは必要な物資を運ぶ。俺は滞在中の資金を稼いだりするつもりだ。キーナは…、大人しくしてろ」
「僕だけ何もなし?」
「・・・・・・」
はっきり言ってしまえば、勝手に放り出したら何が起こるか分からないので何もしないでいて貰いたいのが正直な所だ。
しかしこの娘が大人しくなどしていないだろうことは想像出来る。
「じゃあ、僕もまた何かアルバイトするよ」
「アルバイト?」
「お金稼げればサーガのお手伝いにもなるでしょう? 滞在費も必要なんだし! どこかでまた給仕の仕事とかないかな?」
できれば宿屋で大人しく…というのは無理なのは分かっていた。
何よりメリンダの看病がどれくらいの期間になるのか分からない。
「あとで…、仕事斡旋所にでも行くか?」
「うん!」
キーナが良い笑顔で頷いた。
キーナが薬の影響で眠っていた頃、メリンダが朝、1度目を覚ました。
しかし、
「あーーーーーーーーーーーーーーー!」
周りを見渡すと、突然奇声を上げ、逃げ出した。
「「「?!」」」
「姐さん!!」
突然の反応に男3人は固まってしまい、サーガだけがメリンダをすぐに追った。
裸で逃げるメリンダの腕を捕まえるが、もの凄い力で振りほどこうとする。
「姐さん!!」
「あーーーーーーーーーーーーーーー!」
後ろから慌てて追って来たダンが、手に持っていた薬をメリンダに投げつけた。
「あーーーーーーーーーーーーーーー!」
しかし振り払われて地面に落ちてしまう。
「いやいや、魔法の方がいいでしょこの場合」
とルイスが手を翳すと、メリンダが抵抗をやめ、崩れ落ちた。
「地系にあるでしょ、眠らす魔法」
長らく製薬の技術を磨いていたせいか、うっかり魔法を忘れていたダン。顔を赤くする。
サーガがメリンダを抱きかかえ、元の場所に戻る。
「思った以上に重症かもな」
ルイスが心配そうにメリンダを見た。
「これは、闇の力でもどうにもならないか?」
サーガの問いに、ルイスが首を振った。
「多少なんとかならんこともないが、一時的なものだ。それが過ぎたらまた同じようになるだろう。自分で乗り越えてもらうしかない」
皆の顔が暗くなる。
「この状態の姐さんを連れて行くわけにも行かないだろう。このままここで俺が落ち着くまで面倒をみる」
サーガが告げた。
「一人でか?」
「テルディアスはまず、姐さんの体を直視できないだろ。ダンも女の扱いに慣れてない」
二人が俯いた。まさにその通りだ。
「キーナは論外。俺しかいないだろ」
「しかし、食事とか、その他物資とか入り用だろ」
「あ~ま~そうだな~」
ルイスの問いにサーガが頭を抱え込む。
「近くの街からテルディアスに飛んで貰って運んで貰うとか?」
「だったら俺が街の近くまで運んでやるよ。街が近ければ物資の調達も楽になるだろ?」
ルイスの言葉に目をパチクリさせる一行。
「忘れてるかもしれんけど、俺上位の闇の者よ。ここにいる奴等運ぶくらい朝飯前よ?」
この提案に素直に甘えることにした。
近くの街を探し出し、その側までルイスが空間を繋げる。そして一瞬で移動してしまった。
「こうしてみると闇の力ってすげー便利」
「到達地点がきちんと分かってないと怖いことになるけどね」
怖いことってどういうことだろう。
そしてテルディアスとダンは街に入って行った。
テルディアスはキーナを宿屋に一先ず運び込む。ダンは必要と思われる物資の買い出しだ。
ルイスはもちろんのこと、闇の宮へ帰らなければならない。
「すまんね、あまり力になれなくて」
「いや、助かったよ」
立ち去ろうとするルイスだが、何かモジモジしているように見える。
「なんだよ。なんか聞きたい事でもあるのか?」
その様子にサーガが一応尋ねてやった。
「その…、シゲールの最期のことで…」
まだ悩んでいたようだ。
「ああ…。まあ詳しく聞きたいなら聞かせてやるけど。気持ちの良いもんじゃないぜ?」
戦場などでも命を落とした仲間の最期の様子を聞きたがる者はいた。それと同じ事なのだろう。
「す、すまん。どうしても分からない事があって…」
ルイスがサーガの前に腰を下ろし、話しを聞き始めた。
一通り聞き終えたところで、青ざめた顔のルイスがサーガに質問する。
「あいつは、制御権を奪おうとはしてこなかったのかい?」
「制御権?」
ルイスが説明する。
「ふーん。闇の者ってそーゆーもんなんだ。なーるへそ」
何か納得している。
「以前にも戦った闇の者もそんなこと言ってたなぁ。どうして風が言うことを聞かないとかなんとか。何ほざいてるのかと思ってたけど、そういうことだったのか」
「え? 以前?」
「あー、キーナ達と最初に出会って別れた後に…」
テルディアスとキーナが合流した後、お役御免とばかりにサーガは1度二人の元から去った。
その後とある仕事で闇の者と戦うことになったことがあるのだ。
「そういや、なんか引っ張られるような感覚はあったけど、別になんともなかったぜ?」
サーガの答えにポカンとなるルイス。謎が謎を呼んだだけのようだった。
考えるのを諦めたような顔になったルイスが立ち上がる。
「無理に聞いて済まなかったな。ありがとう」
「いや。おかげで姐さんを助けられた」
そしてルイスは目の前から消えた。
「…その移動能力は便利だな…」
ルイスが消えた目の前の空間を見つめていた。
しかしかなり凝った造りになっており、その解析に苦労した。
開けたら開けたですぐさま閉じようとするその穴の保持に努めた。中に入るわけにはいかなかった。
シゲールとルイスではルイスの方が上位ではある。通常空間で戦うならばルイスが負けることはないだろう。しかしこれが相手の領域に入り込むと、下位の者でも敵わない時がある。
それほど領域とは警戒すべきものなのだ。
シゲールの空間内に入り込む4人を、本当は止めたかった。明らかに分が悪い。
唯一の対抗手段になりそうな光の御子はその力を制御出来ておらず、発動もままならない。
そして、4大精霊の力では、2神精霊には敵わないのが常識だ。
光と闇はこの世の基礎となる力。地、水、風、火はその2つの力から生まれたものだと言われている。
2神精霊は4大精霊の力を支配することが出来るので、相手が4大精霊の力を使っても、その制御権を奪うことが出来る。
つまり、攻撃しようと放ったものをそのまま返されてしまったり、防御壁を張っても無効化されてしまう。
魔法が使えないなら肉弾戦、と言いたいところだが、それは闇の力で防がれてしまう。
つまり八方塞がりだ。
だからこそルイスは「逃げてこい」と言った。
うまくシゲールを通常空間に引っ張り出すことが出来れば、あとは自分がなんとかできる。そう思ったからだ。
渋い顔をしていたが、戦えばすぐに分かるだろうと、ルイスは送り出した。無事に逃げて来ることを願って。
しかし、穴の維持に努めていたルイスの予想は裏切られる。
途中風が勢いを増して穴に吸い込まれて行くのは分かった。誰かが、まあ大方黄色い髪のボウヤ、サーガが風の力を使っているのだろうと思った。
すぐに制御権を奪われて何もできなくなって逃げて来るだろう。そう思っていた。
しかしいっこうに誰もやって来ない。まさか全員?と思って多少中の様子を探ったが、そうでもないらしい。そして、風が巻いていることだけは分かった。
そしてその瞬間、ガクリと手応えがあった。
突然シゲールの力が消えたのだ。
あまりに突然の事で、対応しきれなかった。
シゲールの力で形を保っていたその空間が歪み始める。
ルイスが空間を維持しようにも時間が足りない。慌てて中にいた皆を呼ぶ。
出て来たのは最初に入って行った4人と、赤髪の女性。シゲールの姿はなかった。
穴を維持出来なくなり、ルイスは穴を閉じた。中にいただろうシゲールがどうなったかは分からない。
しかしあの瞬間の手応えからして、生きてはいないのだろうとは思った。
サーガに尋ねたが、
「殺した」
と簡潔な答えが返ってきただけだった。
ルイスは考え続けていた。
どうやってサーガはシゲールを倒したのか。風の力が巻き起こっていたことを考えて、サーガが風の魔法を使ったことは明白だ。しかし、ならばシゲールはその制御権を何故奪わなかったのか。
そして、シゲールの最期は…。
性格は歪みすぎていけ好かない奴ではあったが、元はぐれ闇の仲間。その最期は気になる。
(本当なら、俺達がどうにかしなきゃならないことだったんだ…)
1度闇に呑まれてしまった者を救い出すことは闇の者には出来ない。しかし出来ないなら出来ないなりに、何かするべきだったのではないか。
ルイスは焚き火の炎を見ながら、考え込んでいた。
キーナが眼を覚ました。
「ほよ?」
ベッドの上で寝ていた。
「起きたか?」
体を起こすと、隣のベッドに座っていたテルディアスが近づいて来た。
「気分はどうだ? 可笑しな所はないか?」
「何も…」
寝起きのポヤンとした頭で、どうしてここにいるのかと考える。そして思い出す。
「テル! メリンダさんは?!」
「落ち着け。ゆっくり説明する。腹は? 減ってないか?」
グウ
キーナのお腹は素直だった。
テルディアスが持って来てくれた食事を頬張りながら、大人しくテルディアスの話しを聞くキーナ。
メリンダが無事に助け出されたと聞いて喜ぶ。
(良かった…。メリンダさん…)
キーナの代わりに攫われて行ったメリンダ。最後に見たのはあの空間内でぐったりとした感じのメリンダの姿。
で、何故今キーナが宿屋にいるのか。テルディアスが説明しだす。
「メリンダは、その、今錯乱状態にあって…。側にいると危ないというかなんというか…。だから、今はサーガが離れた所で看病をしている…。そのうちに症状が落ち着いたら、キーナに会わせると」
「お見舞いには行っちゃ駄目なの?」
「駄目だ」
キーナがふくれっ面をする。
「僕も手伝いたい。サーガ一人じゃ大変でしょ?」
「駄目だ」
余計にふくれっ面になる。
「落ち着くまで待て。何より、メリンダが多分、今の状態をキーナに見られたくないだろうと…。あいつが言っていた」
あいつとは多分サーガの事だろう。
キーナは考え込む。
出来るならば自分も手伝いに行きたい。しかし、キーナはあまりそっちの事には詳しくない。
ちらりと見たあの空間内でのメリンダの姿。鈍すぎるキーナでさえ、何があったかは想像が出来る。まさに筆舌に尽くしがたいことがあったはずだ。
そしてキーナはそういうことが分からない。
分からない者が側にいるというだけで傷つけてしまうことがあると言うことは、キーナも分かる。
味わったこともないのに「その辛さは分かる」などと軽々と口には出来ない。
その点サーガはそちらの事情にはかなり詳しい。まあ立場は違うのではあるが、キーナよりはメリンダの苦しみが分かるのかもしれない。何よりキーナと違って経験者である。
経験者でしか分からない何かがあるのかもしれないし、何よりサーガはメリンダと仲良しだ。メリンダの事を任せるには適任であろう。
「分かった。サーガに任せて待つ」
テルディアスがほっとした顔をした。どうやってキーナを説き伏せようかと悩んでいたのだろう。
「サーガはメリンダの看病。ダンは必要な物資を運ぶ。俺は滞在中の資金を稼いだりするつもりだ。キーナは…、大人しくしてろ」
「僕だけ何もなし?」
「・・・・・・」
はっきり言ってしまえば、勝手に放り出したら何が起こるか分からないので何もしないでいて貰いたいのが正直な所だ。
しかしこの娘が大人しくなどしていないだろうことは想像出来る。
「じゃあ、僕もまた何かアルバイトするよ」
「アルバイト?」
「お金稼げればサーガのお手伝いにもなるでしょう? 滞在費も必要なんだし! どこかでまた給仕の仕事とかないかな?」
できれば宿屋で大人しく…というのは無理なのは分かっていた。
何よりメリンダの看病がどれくらいの期間になるのか分からない。
「あとで…、仕事斡旋所にでも行くか?」
「うん!」
キーナが良い笑顔で頷いた。
キーナが薬の影響で眠っていた頃、メリンダが朝、1度目を覚ました。
しかし、
「あーーーーーーーーーーーーーーー!」
周りを見渡すと、突然奇声を上げ、逃げ出した。
「「「?!」」」
「姐さん!!」
突然の反応に男3人は固まってしまい、サーガだけがメリンダをすぐに追った。
裸で逃げるメリンダの腕を捕まえるが、もの凄い力で振りほどこうとする。
「姐さん!!」
「あーーーーーーーーーーーーーーー!」
後ろから慌てて追って来たダンが、手に持っていた薬をメリンダに投げつけた。
「あーーーーーーーーーーーーーーー!」
しかし振り払われて地面に落ちてしまう。
「いやいや、魔法の方がいいでしょこの場合」
とルイスが手を翳すと、メリンダが抵抗をやめ、崩れ落ちた。
「地系にあるでしょ、眠らす魔法」
長らく製薬の技術を磨いていたせいか、うっかり魔法を忘れていたダン。顔を赤くする。
サーガがメリンダを抱きかかえ、元の場所に戻る。
「思った以上に重症かもな」
ルイスが心配そうにメリンダを見た。
「これは、闇の力でもどうにもならないか?」
サーガの問いに、ルイスが首を振った。
「多少なんとかならんこともないが、一時的なものだ。それが過ぎたらまた同じようになるだろう。自分で乗り越えてもらうしかない」
皆の顔が暗くなる。
「この状態の姐さんを連れて行くわけにも行かないだろう。このままここで俺が落ち着くまで面倒をみる」
サーガが告げた。
「一人でか?」
「テルディアスはまず、姐さんの体を直視できないだろ。ダンも女の扱いに慣れてない」
二人が俯いた。まさにその通りだ。
「キーナは論外。俺しかいないだろ」
「しかし、食事とか、その他物資とか入り用だろ」
「あ~ま~そうだな~」
ルイスの問いにサーガが頭を抱え込む。
「近くの街からテルディアスに飛んで貰って運んで貰うとか?」
「だったら俺が街の近くまで運んでやるよ。街が近ければ物資の調達も楽になるだろ?」
ルイスの言葉に目をパチクリさせる一行。
「忘れてるかもしれんけど、俺上位の闇の者よ。ここにいる奴等運ぶくらい朝飯前よ?」
この提案に素直に甘えることにした。
近くの街を探し出し、その側までルイスが空間を繋げる。そして一瞬で移動してしまった。
「こうしてみると闇の力ってすげー便利」
「到達地点がきちんと分かってないと怖いことになるけどね」
怖いことってどういうことだろう。
そしてテルディアスとダンは街に入って行った。
テルディアスはキーナを宿屋に一先ず運び込む。ダンは必要と思われる物資の買い出しだ。
ルイスはもちろんのこと、闇の宮へ帰らなければならない。
「すまんね、あまり力になれなくて」
「いや、助かったよ」
立ち去ろうとするルイスだが、何かモジモジしているように見える。
「なんだよ。なんか聞きたい事でもあるのか?」
その様子にサーガが一応尋ねてやった。
「その…、シゲールの最期のことで…」
まだ悩んでいたようだ。
「ああ…。まあ詳しく聞きたいなら聞かせてやるけど。気持ちの良いもんじゃないぜ?」
戦場などでも命を落とした仲間の最期の様子を聞きたがる者はいた。それと同じ事なのだろう。
「す、すまん。どうしても分からない事があって…」
ルイスがサーガの前に腰を下ろし、話しを聞き始めた。
一通り聞き終えたところで、青ざめた顔のルイスがサーガに質問する。
「あいつは、制御権を奪おうとはしてこなかったのかい?」
「制御権?」
ルイスが説明する。
「ふーん。闇の者ってそーゆーもんなんだ。なーるへそ」
何か納得している。
「以前にも戦った闇の者もそんなこと言ってたなぁ。どうして風が言うことを聞かないとかなんとか。何ほざいてるのかと思ってたけど、そういうことだったのか」
「え? 以前?」
「あー、キーナ達と最初に出会って別れた後に…」
テルディアスとキーナが合流した後、お役御免とばかりにサーガは1度二人の元から去った。
その後とある仕事で闇の者と戦うことになったことがあるのだ。
「そういや、なんか引っ張られるような感覚はあったけど、別になんともなかったぜ?」
サーガの答えにポカンとなるルイス。謎が謎を呼んだだけのようだった。
考えるのを諦めたような顔になったルイスが立ち上がる。
「無理に聞いて済まなかったな。ありがとう」
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