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はぐれ闇オルト編
輸血
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「輸血とは、他人の血を入れる事ですわ」
シアが簡潔に話し出す。
「今のように大量に血を流された時などに用いられる技ですわ。とても難しいので巫女の中でも一部の者しか出来ません。私はもちろん出来ますけれど」
無い胸を張る。
「人が血を流しすぎると死ぬことはご存じですよね? ですからそれを他人の血で補うのですわ」
「あたしの! あたしの血を取って!」
「お待ち下さい」
前のめりになるメリンダを制する。
「血には型があることが分かっております。下手に他人の血を入れてもそれが原因で死んでしまうことがあるのです。ですからまずは血を調べさせて下さいませ」
「分かったわ。早くして」
早く調べろとメリンダが急かす。
「分かりましたわ。では指を出して下さいませ」
メリンダが右手を上にして差し出した。シアが水で針を作り、メリンダの人差し指をちくりと刺す。すぐにぷくりと赤い血が沸き出してきた。それをシアはペロリと舐めた。
ちょっとビクリとなったメリンダだったが、動かずに大人しくしている。
「次は念の為テルディアス様もよろしいですか?」
ちょっと渋々という感じではあったが、テルディアスも大人しく手を出した。同じようにしてシアが血を舐める。
「次はキーナさんを」
キーナの側に移動し、また血を舐める。
「ダンも見て来ますわ」
そう言ってダンの元へ走って行き、すぐに帰って来た。
再びサーガの側に座り込む。
「分かりましたわ。私とテルディアス様が同じ1型。メリンダさんが2型。キーナさんとダンが0型。そして、サーガさんが複合型となります」
「つまり、サーガと同じ型の人はいないってこと?」
メリンダの顔色がますます悪くなる。
「はい。同じ型の人はいらっしゃいませんが、幸運なことに複合型の方はこの場にいる全員から輸血することも可能です」
「そうなの?」
「はい。サーガさんの血液の型は少し特殊なのです。ですから、メリンダさんからも輸血することができ…」
「早くやって!」
メリンダが両手をシアに向かって突き出してきた。その迫力に少し仰け反るシア。
「わ、分かりましたわ…。ではそこに横になって下さいませ。血を抜くと貧血状態になりますので、起きたままですと危ないので…」
言っている途中ですでに横になるメリンダ。
「いいわよ!」
準備は万端である。
「わ、分かりましたわ…」
シアが水を操作し始めた。
テルディアスも見たことがない魔法なので、食い入るようにその動きを見つめている。
「楽にしていて下さいませ。動くと危ないですから」
「分かったわ」
メリンダが目を閉じた。
シアが立ち上がり、メリンダの側へと寄ると腕を確かめ始めた。
「ここがよろしそうですね。少し痛いと思いますがしばらく我慢して下さいませ」
「分かったわ」
メリンダが答えるが早いか、水の針がメリンダの腕に突き刺さった。
針の中心に赤い線が走る。針の尻の部分が徐々に膨らんでいき、赤い液体がその中に溜まっていく。
不思議な光景にテルディアスも目を離せない。
「これくらいかしら? メリンダさん、気分はどうです?」
「…大丈夫よ」
「無理はなさらないで下さいませ。貴女が倒れても誰も輸血出来ませんですのよ」
メリンダが黙り込んだ。
「このくらいでよろしいですわね」
そうシアが言うと、水の張りがメリンダの腕から抜けた。すぐにシアが回復魔法を掛ける。
「ここからは繊細な作業になりますから。静かにしていて下さいまし」
シアがサーガの側へと移動する。メリンダが起き上がろうとするが、やはり血を抜かれたせいか頭がふらついている。珍しくテルディアスがその体を支えてやった。
「悪いわね…」
「いや…」
テルディアスも気遣いというものを覚えたのだろうか。それともサーガに対する贖罪の気持ちだろうか。
メリンダとテルディアスが見つめる中、シアが集中し始める。そして、宙に浮かんだ血液を内包した水の球から、細く管のような水が伸びていく。それが傷口を覆っていた水と結合。そしてその水の管の中を、血液がするすると流れ始めた。
ゆっくりとゆっくりと、血液が流れていく。
唾を飲みこむのも躊躇われるようなその雰囲気に、知らず知らず2人も息を潜める。
ジリジリと、本当に流れているのかと疑いたくなるような長い時間をかけ、少しずつ少しずつ血液の球は小さくなっていった。
そして球が萎み、最後の一滴を追うように水の管も短くなっていく。それが傷口を覆う水と結合すると、シアが思い切り息を吐いた。
「っはあああああああ! 疲れましたわ!!」
両手を地面に突き、肩で息をするシア。
「こ、これで、大丈夫、なの?」
「完全に傷が癒えたわけではありませんが、血液が補充されましたし、少しは保つと思いますわ。まだ予断は許しませんが、あとはダンが目覚めるのを待つだけですわ」
「ダンが…」
ダンの方へ頭を向け、メリンダがよろめく。
「メリンダさんも横になっていて下さいませ。しばらくは貧血状態が続きますから」
「そうなのね…。じゃあ、お言葉に甘えて横にならせて貰うわ…」
メリンダが素直に体を横たえた。固い地面の上だが贅沢は言っていられない。
「ダンを担いでくるか…」
ダンだけ離れた所で倒れているのもあまりよろしくない。テルディアスも多少体力が復活したので、巨体のダンを運んでこようと腰を上げた。
「よろしくお願いしますわ。私、まだしばらくサーガさんから離れられませんの」
今のサーガの状態を保つのに気が抜けないらしい。
シアの状態を少し心配に思いつつ、テルディアスはダンの元へと向かった。ふと思いついて闇の者のオルト達の方へ視線をやると、いつの間にかその姿は消え去っていた。どうやら多少戻った魔力か体力か、開けっぴろげのこの場から移動したらしい。すぐに危害を加えてくることもないだろう。テルディアスはダンの元へと行き、その大きな体を担ぎ上げた。
重かった。
日が暮れかけてきた頃、ダンが眼を覚ました。
「良かったですわ。早く、サーガさんを…」
言いかけてふらつくシア。ずっと集中を保っていたので疲れているのだろう。
ダンが慌ててシアを支え、すぐにサーガの治療に専念し始める。さすがは治療のエキスパート。みるみる傷口が塞がっていく。それを見てほっとした顔になったメリンダ。多少顔色は悪いものの、メリンダも大丈夫そうだ。
しかし、ダンはまだ回復しきっていなかったようで、治療が終わるとすぐにまた倒れ込んだ。
「荷物…、野営…」
「分かった。取ってくる」
念の為ダンが昨日野営した所の近くに荷物を隠してきたのだ。その詳細な場所を聞き、テルディアスが取りに行った。
さすがに皆まともに動けなかったのでそのまま携帯食料で腹を誤魔化す。眠っているサーガとキーナはそのままに、いや、サーガは俯せで苦しそうだったので、治療も終わったことだしと仰向けにしてやった。いずれ眼を覚ますだろう。
比較的元気?なテルディアスが見張りを一手に引き受け、皆を休ませた。メリンダは貧血、ダンとシアは魔力欠乏、サーガとキーナは眠ったまま。どう考えてもテルディアスしかいない。
簡単に薪を集め、乏しいながらも焚き火を焚いた。しかし場の異様な雰囲気を感じたのか、開けっ広げのその場所に妖魔はおろか、獣さえ姿を見せなかったのだった。
夜明け前、眼を覚ましたキーナ。
体を起こすとテルディアスだけが起きていた。
「起きたか?」
いつもの優しい瞳で心配そうにキーナを見て来た。
「テル…」
ぼんやりした頭でいろいろ考える。どうして自分は眠っていたのだろうと。そして思い起こされる記憶。
「…! サーガは?!」
「大丈夫だ」
テルディアスが顎で示した方を見ると、穏やかな顔をして眠るサーガいた。
ほっと胸をなで下ろすキーナ。他の面々も疲れたような顔をして眠っていた。起こさないようにそっとテルディアスの側ににじり寄る。
「テルも、大丈夫なの?」
「ああ。すまなかったな。俺が不甲斐ないばかりに」
「そんなことないよ。闇の者でしょ。いくらテルでも敵わないでしょう」
テルディアスの胸にグサリと見えない矢が突き刺さった。知らず人の気にしていることをぐりぐりと抉るキーナ。
「でも、皆無事で良かった…」
キーナが嬉しそうに皆の顔を見回す。
「そうだな…」
テルディアスもぽつりと呟いた。
それから、キーナがテルディアスが攫われた後から、自分が暴走するまでの経緯を語り、テルディアスがその後の経緯を語った。
シアが簡潔に話し出す。
「今のように大量に血を流された時などに用いられる技ですわ。とても難しいので巫女の中でも一部の者しか出来ません。私はもちろん出来ますけれど」
無い胸を張る。
「人が血を流しすぎると死ぬことはご存じですよね? ですからそれを他人の血で補うのですわ」
「あたしの! あたしの血を取って!」
「お待ち下さい」
前のめりになるメリンダを制する。
「血には型があることが分かっております。下手に他人の血を入れてもそれが原因で死んでしまうことがあるのです。ですからまずは血を調べさせて下さいませ」
「分かったわ。早くして」
早く調べろとメリンダが急かす。
「分かりましたわ。では指を出して下さいませ」
メリンダが右手を上にして差し出した。シアが水で針を作り、メリンダの人差し指をちくりと刺す。すぐにぷくりと赤い血が沸き出してきた。それをシアはペロリと舐めた。
ちょっとビクリとなったメリンダだったが、動かずに大人しくしている。
「次は念の為テルディアス様もよろしいですか?」
ちょっと渋々という感じではあったが、テルディアスも大人しく手を出した。同じようにしてシアが血を舐める。
「次はキーナさんを」
キーナの側に移動し、また血を舐める。
「ダンも見て来ますわ」
そう言ってダンの元へ走って行き、すぐに帰って来た。
再びサーガの側に座り込む。
「分かりましたわ。私とテルディアス様が同じ1型。メリンダさんが2型。キーナさんとダンが0型。そして、サーガさんが複合型となります」
「つまり、サーガと同じ型の人はいないってこと?」
メリンダの顔色がますます悪くなる。
「はい。同じ型の人はいらっしゃいませんが、幸運なことに複合型の方はこの場にいる全員から輸血することも可能です」
「そうなの?」
「はい。サーガさんの血液の型は少し特殊なのです。ですから、メリンダさんからも輸血することができ…」
「早くやって!」
メリンダが両手をシアに向かって突き出してきた。その迫力に少し仰け反るシア。
「わ、分かりましたわ…。ではそこに横になって下さいませ。血を抜くと貧血状態になりますので、起きたままですと危ないので…」
言っている途中ですでに横になるメリンダ。
「いいわよ!」
準備は万端である。
「わ、分かりましたわ…」
シアが水を操作し始めた。
テルディアスも見たことがない魔法なので、食い入るようにその動きを見つめている。
「楽にしていて下さいませ。動くと危ないですから」
「分かったわ」
メリンダが目を閉じた。
シアが立ち上がり、メリンダの側へと寄ると腕を確かめ始めた。
「ここがよろしそうですね。少し痛いと思いますがしばらく我慢して下さいませ」
「分かったわ」
メリンダが答えるが早いか、水の針がメリンダの腕に突き刺さった。
針の中心に赤い線が走る。針の尻の部分が徐々に膨らんでいき、赤い液体がその中に溜まっていく。
不思議な光景にテルディアスも目を離せない。
「これくらいかしら? メリンダさん、気分はどうです?」
「…大丈夫よ」
「無理はなさらないで下さいませ。貴女が倒れても誰も輸血出来ませんですのよ」
メリンダが黙り込んだ。
「このくらいでよろしいですわね」
そうシアが言うと、水の張りがメリンダの腕から抜けた。すぐにシアが回復魔法を掛ける。
「ここからは繊細な作業になりますから。静かにしていて下さいまし」
シアがサーガの側へと移動する。メリンダが起き上がろうとするが、やはり血を抜かれたせいか頭がふらついている。珍しくテルディアスがその体を支えてやった。
「悪いわね…」
「いや…」
テルディアスも気遣いというものを覚えたのだろうか。それともサーガに対する贖罪の気持ちだろうか。
メリンダとテルディアスが見つめる中、シアが集中し始める。そして、宙に浮かんだ血液を内包した水の球から、細く管のような水が伸びていく。それが傷口を覆っていた水と結合。そしてその水の管の中を、血液がするすると流れ始めた。
ゆっくりとゆっくりと、血液が流れていく。
唾を飲みこむのも躊躇われるようなその雰囲気に、知らず知らず2人も息を潜める。
ジリジリと、本当に流れているのかと疑いたくなるような長い時間をかけ、少しずつ少しずつ血液の球は小さくなっていった。
そして球が萎み、最後の一滴を追うように水の管も短くなっていく。それが傷口を覆う水と結合すると、シアが思い切り息を吐いた。
「っはあああああああ! 疲れましたわ!!」
両手を地面に突き、肩で息をするシア。
「こ、これで、大丈夫、なの?」
「完全に傷が癒えたわけではありませんが、血液が補充されましたし、少しは保つと思いますわ。まだ予断は許しませんが、あとはダンが目覚めるのを待つだけですわ」
「ダンが…」
ダンの方へ頭を向け、メリンダがよろめく。
「メリンダさんも横になっていて下さいませ。しばらくは貧血状態が続きますから」
「そうなのね…。じゃあ、お言葉に甘えて横にならせて貰うわ…」
メリンダが素直に体を横たえた。固い地面の上だが贅沢は言っていられない。
「ダンを担いでくるか…」
ダンだけ離れた所で倒れているのもあまりよろしくない。テルディアスも多少体力が復活したので、巨体のダンを運んでこようと腰を上げた。
「よろしくお願いしますわ。私、まだしばらくサーガさんから離れられませんの」
今のサーガの状態を保つのに気が抜けないらしい。
シアの状態を少し心配に思いつつ、テルディアスはダンの元へと向かった。ふと思いついて闇の者のオルト達の方へ視線をやると、いつの間にかその姿は消え去っていた。どうやら多少戻った魔力か体力か、開けっぴろげのこの場から移動したらしい。すぐに危害を加えてくることもないだろう。テルディアスはダンの元へと行き、その大きな体を担ぎ上げた。
重かった。
日が暮れかけてきた頃、ダンが眼を覚ました。
「良かったですわ。早く、サーガさんを…」
言いかけてふらつくシア。ずっと集中を保っていたので疲れているのだろう。
ダンが慌ててシアを支え、すぐにサーガの治療に専念し始める。さすがは治療のエキスパート。みるみる傷口が塞がっていく。それを見てほっとした顔になったメリンダ。多少顔色は悪いものの、メリンダも大丈夫そうだ。
しかし、ダンはまだ回復しきっていなかったようで、治療が終わるとすぐにまた倒れ込んだ。
「荷物…、野営…」
「分かった。取ってくる」
念の為ダンが昨日野営した所の近くに荷物を隠してきたのだ。その詳細な場所を聞き、テルディアスが取りに行った。
さすがに皆まともに動けなかったのでそのまま携帯食料で腹を誤魔化す。眠っているサーガとキーナはそのままに、いや、サーガは俯せで苦しそうだったので、治療も終わったことだしと仰向けにしてやった。いずれ眼を覚ますだろう。
比較的元気?なテルディアスが見張りを一手に引き受け、皆を休ませた。メリンダは貧血、ダンとシアは魔力欠乏、サーガとキーナは眠ったまま。どう考えてもテルディアスしかいない。
簡単に薪を集め、乏しいながらも焚き火を焚いた。しかし場の異様な雰囲気を感じたのか、開けっ広げのその場所に妖魔はおろか、獣さえ姿を見せなかったのだった。
夜明け前、眼を覚ましたキーナ。
体を起こすとテルディアスだけが起きていた。
「起きたか?」
いつもの優しい瞳で心配そうにキーナを見て来た。
「テル…」
ぼんやりした頭でいろいろ考える。どうして自分は眠っていたのだろうと。そして思い起こされる記憶。
「…! サーガは?!」
「大丈夫だ」
テルディアスが顎で示した方を見ると、穏やかな顔をして眠るサーガいた。
ほっと胸をなで下ろすキーナ。他の面々も疲れたような顔をして眠っていた。起こさないようにそっとテルディアスの側ににじり寄る。
「テルも、大丈夫なの?」
「ああ。すまなかったな。俺が不甲斐ないばかりに」
「そんなことないよ。闇の者でしょ。いくらテルでも敵わないでしょう」
テルディアスの胸にグサリと見えない矢が突き刺さった。知らず人の気にしていることをぐりぐりと抉るキーナ。
「でも、皆無事で良かった…」
キーナが嬉しそうに皆の顔を見回す。
「そうだな…」
テルディアスもぽつりと呟いた。
それから、キーナがテルディアスが攫われた後から、自分が暴走するまでの経緯を語り、テルディアスがその後の経緯を語った。
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