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最終章~光の御子と闇の御子~
エピローグ
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「あき、早く早く!」
「ちょちょちょちょっと待って…あった!」
鞄の中から受験票を取りだし、番号を確認する。何度も何度も見ているので覚えてはいるのに、手に持っていないと番号を忘れてしまう気がする。
(それと、これ!)
お守り代わりに持っている片耳だけのイヤリング。赤い涙の形をしたそれも握り締める。
最後のあの夜に、お互いの持っていたイヤリングを交換した。この先に必ず会えるようにと願いを込めて。
あちらとこちらは数多にある平行世界の1つだ。向こうで出会う運命ならば、こちらの世界でも出会える可能性がある。お互いの世界でお互いを見付け合おうと約束した。例え何年かかろうとも。
(テル! 合格してますように!)
あれから時が経ち、秋菜もめでたく受験生となっていた。
祈りを込め、合格者の番号が張り出されている所へ押し入る。皆早く自分の番号を見ようと、押し合いへし合いになっている。
「あ、あった!」
隣に立っていた親友のみっちーが声を上げた。すでに確認してしまったようだ。
「あたしもあった!」
その向こうで番号を探し当てたもう1人の親友のよっしーも声を上げた。
2人が手を取りあって喜ぶ。
「あきは?!」
期待半分心配半分の顔でこちらを見る2人。秋菜も必死に自分の番号を探す。
「え~とえ~と…」
順に番号を追っていけば…、
「あ、あった! あったあった!」
見事に自分の番号も掲示してあった。
「やったー!」
「また3年間よろしくー!」
「良かったー!」
3人で抱き合う。しかし後ろから人も来ているので、さっさとその場を離れようと3人は動き出した。
「やー良かった。あとは学校に伝えに行くんだっけ?」
「その前にあっちに行くみたいよ」
「え、どこどこ?」
少し離れた場所で「合格者の方は~」と何か説明をしている。3人はそちらに足を向けた。
「あ」
人が多いせいもあり、肩がぶつかった。その拍子に秋菜の手の中から大事なイヤリングが飛んだ。
「待って!」
慌てて追いかける。地にチリンと音を立てて落ちたイヤリング。人を掻き分け拾おうとするが、誰かが気付かず蹴り飛ばす。
「あ!」
秋菜とは離れた方へ飛ばされたイヤリング。必死に追いかける。
(やだ…。テルが…、テルがいなくなっちゃう!)
この世界に帰って来て、テルディアスのいない日常が戻って来て、寂しくて寂しくて心が挫けそうになった。あのイヤリングが唯一テルディアスとキーナを繋ぐ物。あの記憶が、経験が、冒険の日々が嘘ではないと教えてくれる物だ。そして、このイヤリングがいつかテルディアスと引き合わせてくれる、そんな気がしていた。失くしてしまったらきっと心が折れてしまう。
「テル!」
イヤリングを追いかける。誰かの足元で止まった。また蹴られでもしたらどうしようかと思ったが、その人物はそのイヤリングに気付いたようだった。イヤリングが拾われる。
「す、すいません! それ、僕の…」
イヤリングを拾った人物の顔を見て、秋菜は息を止める。
繁々と拾ったイヤリングを見つめて、その少年が秋菜の顔を見た。
その顔は、テルディアスを少し若返らせたもの。
似ている、だけではない。テルディアスだと確信できた。この世界のテルディアスだ。
驚きすぎて固まってしまった秋菜の前に、その少年がイヤリングを差し出す。
「お前のか?」
久しぶりに聞いたその声に、一瞬涙が溢れそうになる。
「あ、はい。その、ありがとう…」
両手を差し出すと、その真ん中にイヤリングが置かれた。少し触れた手に、心臓がドキリと音を立てる。
テル、と呼びたい衝動に駆られるも、この世界では初対面。向こうはこちらのことなど何も知らない。それに加えて、この世界での彼の名前を知らない。
「おーい、あきー! 何してるのー」
よっしーの呼ぶ声で我に返る。
「あ…ども…」
ぺこりと軽く頭を下げ、よっしー達の元へと急ぐ。
(わー! きゃー! いきなり過ぎてびっくりしたー! てかどうしよう! どうしたらいいんだろう! え、僕変じゃなかったかしら?!)
あまりのことに軽くパニックになりながら、秋菜は2人の元へと戻った。
去って行く秋菜の後ろ姿を見つめながら、少年は呟いた。
「見付けた…」
その言葉は秋菜の耳には届かなかった。
「ちょちょちょちょっと待って…あった!」
鞄の中から受験票を取りだし、番号を確認する。何度も何度も見ているので覚えてはいるのに、手に持っていないと番号を忘れてしまう気がする。
(それと、これ!)
お守り代わりに持っている片耳だけのイヤリング。赤い涙の形をしたそれも握り締める。
最後のあの夜に、お互いの持っていたイヤリングを交換した。この先に必ず会えるようにと願いを込めて。
あちらとこちらは数多にある平行世界の1つだ。向こうで出会う運命ならば、こちらの世界でも出会える可能性がある。お互いの世界でお互いを見付け合おうと約束した。例え何年かかろうとも。
(テル! 合格してますように!)
あれから時が経ち、秋菜もめでたく受験生となっていた。
祈りを込め、合格者の番号が張り出されている所へ押し入る。皆早く自分の番号を見ようと、押し合いへし合いになっている。
「あ、あった!」
隣に立っていた親友のみっちーが声を上げた。すでに確認してしまったようだ。
「あたしもあった!」
その向こうで番号を探し当てたもう1人の親友のよっしーも声を上げた。
2人が手を取りあって喜ぶ。
「あきは?!」
期待半分心配半分の顔でこちらを見る2人。秋菜も必死に自分の番号を探す。
「え~とえ~と…」
順に番号を追っていけば…、
「あ、あった! あったあった!」
見事に自分の番号も掲示してあった。
「やったー!」
「また3年間よろしくー!」
「良かったー!」
3人で抱き合う。しかし後ろから人も来ているので、さっさとその場を離れようと3人は動き出した。
「やー良かった。あとは学校に伝えに行くんだっけ?」
「その前にあっちに行くみたいよ」
「え、どこどこ?」
少し離れた場所で「合格者の方は~」と何か説明をしている。3人はそちらに足を向けた。
「あ」
人が多いせいもあり、肩がぶつかった。その拍子に秋菜の手の中から大事なイヤリングが飛んだ。
「待って!」
慌てて追いかける。地にチリンと音を立てて落ちたイヤリング。人を掻き分け拾おうとするが、誰かが気付かず蹴り飛ばす。
「あ!」
秋菜とは離れた方へ飛ばされたイヤリング。必死に追いかける。
(やだ…。テルが…、テルがいなくなっちゃう!)
この世界に帰って来て、テルディアスのいない日常が戻って来て、寂しくて寂しくて心が挫けそうになった。あのイヤリングが唯一テルディアスとキーナを繋ぐ物。あの記憶が、経験が、冒険の日々が嘘ではないと教えてくれる物だ。そして、このイヤリングがいつかテルディアスと引き合わせてくれる、そんな気がしていた。失くしてしまったらきっと心が折れてしまう。
「テル!」
イヤリングを追いかける。誰かの足元で止まった。また蹴られでもしたらどうしようかと思ったが、その人物はそのイヤリングに気付いたようだった。イヤリングが拾われる。
「す、すいません! それ、僕の…」
イヤリングを拾った人物の顔を見て、秋菜は息を止める。
繁々と拾ったイヤリングを見つめて、その少年が秋菜の顔を見た。
その顔は、テルディアスを少し若返らせたもの。
似ている、だけではない。テルディアスだと確信できた。この世界のテルディアスだ。
驚きすぎて固まってしまった秋菜の前に、その少年がイヤリングを差し出す。
「お前のか?」
久しぶりに聞いたその声に、一瞬涙が溢れそうになる。
「あ、はい。その、ありがとう…」
両手を差し出すと、その真ん中にイヤリングが置かれた。少し触れた手に、心臓がドキリと音を立てる。
テル、と呼びたい衝動に駆られるも、この世界では初対面。向こうはこちらのことなど何も知らない。それに加えて、この世界での彼の名前を知らない。
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「見付けた…」
その言葉は秋菜の耳には届かなかった。
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