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満華楼アオイ編
風の力
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1時間程経った頃。
「ただいま~。ね、も1つくらいこういうのない?」
サーガがギルドに帰って来た。
「お帰りなさい。もう一つ依頼を受ける気ですか? あまり重複で持たない方が良いですよ?」
「うんにゃ。これ終わったから、次」
と先程の依頼書を出してくる。
「終わった? え、でも、さっき出てから1時間くらいしか経ってませんけど?」
「うん。行ってきた。まあ歯ごたえのある奴が1匹いてそれなりに楽しかったかな」
「は?」
「あ、討伐証明ね。ちゃんと取って来たよ。はい」
サーガが腰の収納袋から、生き物の左耳をバサバサ出し始める。
「ちょ、これはあっちでやってください!!」
受付に出されても困る。
出した物を回収し、改めて査定カウンターで出して貰う。査定の係のお姉さんが数を数えていく。
「ゴブリンが32…、そしてこれ、もしかしてホブゴブリン?」
1つだけ異様に大きく色が黒っぽいものがあった。
「ホブゴブリン? ていうのか? 1匹だけ体が大きくて力が強い奴がいたんだ。こんくらい大きな棍棒振り回してさ。ちょっと厄介だったよ」
ちっとも厄介そうに聞こえない声でサーガが説明する。
査定のお姉さんがポカンとサーガを見る。
「ホブを? お一人で?」
「うん。それがどうかした?」
話しが聞こえたのか、サララが足早にやって来た。
「とにかく、査定をお願い。早めにお金も用意して。サーガさん、こちらへ」
「え? 何?」
口をあんぐり開けているお姉さんを置いて、サララはサーガを連れてギルマスの執務室へ向かった。
何故かゴルドも呼び出され、ヤン、ゴルド、サララ、サーガとギルマスの執務室に集まっていた。
「ゴブリン32体にホブゴブリン1体…。それを1時間…」
ゴルドが遠い目をしている。
「サーガ君、聞きたいのだけれども」
「なん?」
「この場所へは乗合馬車を使っても3時間以上かかるはずなんだけど。どうして1時間で帰って来られたのかな?」
ヤンの暗い笑みに、思わずサーガは目を逸らす。
「そそそ、そうだっけ?」
やっちまった自覚が今さら芽生えたのか、サーガの目が泳ぎ出す。
「しかも今日は雨だよね。全く濡れているようにも見えないけれど?」
「まあそこは、風だから」
「きちんと説明してくれるかな?」
面倒臭いという顔をしながらも、サーガが説明をし始める。
「俺の周りに風の精霊がいるのは分かってんだろ? そいつらが勝手に水を弾いてくれるんだよ。もちろん風呂とか水浴びとかの時はちゃんと空気を読むけどな。あと飛んで来た矢とかも弾いてくれるからかなり便利」
「ほ~。そんなこともできるのかい」
「まあね」
「他にも説明してないことはあるかな?」
ヤンの笑みが暗さを増している気がする。
「説明してないと言われても、風、空気全般を操れるとしか言えねーな」
「空気を操る、だと?」
「分かりやすい所だと音、とか? 防音、無音にすることも出来るし、反対に音を大きく届ける事も出来る。あんましやらねーけど、手を叩くだけで相手を吹っ飛ばす風を起こす事も出来る」
ゴルドの目が死んだように遠くを見つめている。
ヤンも頭を抱えている。
サララも話しについていけていないのか、シラけた顔をしている。いや、現実逃避しているのかもしれない。
「そういう大事な事は…、もっと早めに言おうね…」
ヤンが声を絞り出す。
「え? 言わなきゃいけないこと?」
自分から手の内を明かすなど、そんな危険なこと軽々しく出来ない。
「今回も! 空を飛んで行ったんだろう! でなければこんな短時間で往復なんて出来ないだろう!」
「う…」
いろいろ溜まっているし、雨で視界も悪い。人がいても空など見上げないだろうと、門から離れた所で空に飛び上がったのだった。
片道3時間かかる距離を10分ほどで到着。雨なので臭いが辿りづらかったが、ゴブリンは臭い生き物だったのが功を奏した。巣を見付けたならば風で巣の中を探り、あとは一気に風の刃で切り裂いた。1匹だけそれで倒れなかったものがいたので、嬉々として飛びかかっていったのだった。
そして巣を殲滅した後、風の力で耳を回収。1匹1匹そぎ落とすなぞせず、風の刃でシュパン! 落ちたそれを風で収納袋に集めて完了である。そして再び空を飛び、街に帰ってきた。
最速記録である。
「ギルドとしても君の力のことを知っていないと対処出来なくなってしまうこともある。もう隠していることはないね?!」
「え~と、臭いに敏感、とか?」
「それも風か…」
雨などで流れてしまうとさすがに難しいものはあるが、犬と違い空気中に漂う臭いも敏感に嗅ぎ分けられる能力があったりする。犬以上である。
「もうないね?」
「多分…」
自分では当たり前すぎて何が特別な事かよく分かっていない。音と臭いについては周りから指摘されたのでかなり敏感なのだということは自覚していた。
ヤンが溜息を吐く。
「まあ、今日は雨だし、空を飛んでも見る人も滅多にいないだろう。それは多めに見るけれど、普段は気をつけておくれよ?!」
「わ、分かってるよ…」
サーガとしても面倒なところから横槍を入れられるようなことになったらかなわない。そのあたりはきちんと理解している。
「はあ…。しかし、1時間でゴブリンの中規模程度の群れを殲滅、しかもホブに単独で…。サララ君、サーガ君をCに上げる手続きを」
「は、はい!」
サララが慌てて部屋を出て行く。
「え? C? そんな早く上がるもの?」
「もう実績早く積んでSになって欲しいくらいだよ。君のようなものを野放しにしておく方が怖い」
「え? Sになるとなんか縛りとかあるの?」
「いや、特別依頼とかが増えるくらいかな。冒険者は基本何処の国にも属さないと決まっているからね」
「あ、良かった」
冒険者という縛りはあるが、冒険者は基本自由だ。サーガが目に見えてほっとする。
サララが書類を抱えて戻って来る。それをヤンに手渡し、ヤンが書類にサラサラとサインをしていく。
「サーガさん、カードをお出し下さい」
「ん? はいはい」
カードをサララに手渡すと、ヤンからも書類を受け取る。
「では、ご一緒に来て頂けますか?」
「はいはい」
サララがサーガを連れて部屋から出て行った。
「ゴルド、そろそろ正気に戻ったかい?」
ヤンがゴルドを見上げると、ゴルドが頭を振った。
「もう…。訳が分からん…」
「今日が雨なのが幸いというか…、あまり聞いている人はいないと思うが…。噂になると面倒そうだねぇ」
「酒場の方にもいくらか人はいた気がするが…。話しが聞こえているかどうかだな。まあ、聞こえていても信じられるかどうか…」
「Dランクのパーティーならともかく、単独だしね。眉唾物だと笑ってくれていたらいいけど…」
「争奪戦が始まるんじゃないか?」
「監視役を兼ねて誰か付けてみてもいいかもね」
2人はどうにかサーガに手綱を付けられないかと画策するが、まさかこの後にまた頭を抱えることになるとは思ってもいなかった。
「こちら、新しいカードになります。が! 決して自分からランクを言ったりしないように!」
「わ、分かりました」
サララの謎の迫力に押され、サーガが大人しくカードを受け取る。
「お、ホントだ。変わってる」
今回はランクは言わなかった。きちんとCに上がっているのを確認する。
「それから、依頼達成の報酬と、ゴブリン討伐の報酬が用意出来ております。あと説明し忘れておりましたが、ホブくらいの強い魔物になると胸の辺りに魔石があったりするので、調べるのをお忘れにならないで下さいね? 魔石も取って来て頂ければ買い取ります」
「へ~、そんなのもあるのね」
「報酬はこのまま銀行へお預けになりますか?」
収納袋に入れてしまっても良いが、収納袋とて限界はある。素直に銀行に入れて貰うことにした。
「ねえねえ、他になんか面白そうな依頼ってある?」
「ええ? 雨なのにまた出掛けるつもりですか?」
「今日しか自由な時間取れないかもしれないんだもん。もうちょっと発散しておかないとまたすぐにムズムズしちゃうかもだし。もそっと手応えのありそうな奴、ない?」
自由な時間が取れないというのはどういうことかとも思ったが、下手にまた暴れられて問題を起こされても困ると依頼書を捲る。
「ああ、面倒といえば、コルドラが出たと目撃情報がありました」
「コルドラ?」
「氷の魔法を使う虎の魔物です。近づくと地面を凍らせるので足元がままならなくなる上に、氷の壁を作って防御してしまうので火魔法を持っていないとかなり面倒くさい魔物です。サーガさんは風しか使えないんでしたよね?」
「面白そう。やる」
「いやだから、火魔法が使えないと…」
「氷って水系統の魔法っしょ? なんとかなるんじゃないかな?」
なんと楽観的なのかとサララは溜息を吐く。
「失敗すると違約金が発生しますよ?」
「俺が失敗すると思う?」
思う。とはさすがに口に出来なかった。
まあここで失敗するのもある意味勉強かと、サララは契約の準備に入る。
「違約金は依頼料の半額ですよ? 分かってます?」
「分かってます分かってます」
分かってねーだろとも思うが口にしなかった。
Cランクで討伐依頼。しかも手強い魔物となると依頼料は数十万単位に及ぶ。そしてそれはCランクのパーティーで挑むことが前提の依頼になっている。
「じゃ、行ってきまーす!」
手配が済むとサーガは嬉しそうにまた雨の中を出掛けていった。
濡れない謎は解けた。しかし雨や防水服がいらないのはちょっと便利だなと思いつつ、サララは通常業務に戻るのだった。
「ただいま~。ね、も1つくらいこういうのない?」
サーガがギルドに帰って来た。
「お帰りなさい。もう一つ依頼を受ける気ですか? あまり重複で持たない方が良いですよ?」
「うんにゃ。これ終わったから、次」
と先程の依頼書を出してくる。
「終わった? え、でも、さっき出てから1時間くらいしか経ってませんけど?」
「うん。行ってきた。まあ歯ごたえのある奴が1匹いてそれなりに楽しかったかな」
「は?」
「あ、討伐証明ね。ちゃんと取って来たよ。はい」
サーガが腰の収納袋から、生き物の左耳をバサバサ出し始める。
「ちょ、これはあっちでやってください!!」
受付に出されても困る。
出した物を回収し、改めて査定カウンターで出して貰う。査定の係のお姉さんが数を数えていく。
「ゴブリンが32…、そしてこれ、もしかしてホブゴブリン?」
1つだけ異様に大きく色が黒っぽいものがあった。
「ホブゴブリン? ていうのか? 1匹だけ体が大きくて力が強い奴がいたんだ。こんくらい大きな棍棒振り回してさ。ちょっと厄介だったよ」
ちっとも厄介そうに聞こえない声でサーガが説明する。
査定のお姉さんがポカンとサーガを見る。
「ホブを? お一人で?」
「うん。それがどうかした?」
話しが聞こえたのか、サララが足早にやって来た。
「とにかく、査定をお願い。早めにお金も用意して。サーガさん、こちらへ」
「え? 何?」
口をあんぐり開けているお姉さんを置いて、サララはサーガを連れてギルマスの執務室へ向かった。
何故かゴルドも呼び出され、ヤン、ゴルド、サララ、サーガとギルマスの執務室に集まっていた。
「ゴブリン32体にホブゴブリン1体…。それを1時間…」
ゴルドが遠い目をしている。
「サーガ君、聞きたいのだけれども」
「なん?」
「この場所へは乗合馬車を使っても3時間以上かかるはずなんだけど。どうして1時間で帰って来られたのかな?」
ヤンの暗い笑みに、思わずサーガは目を逸らす。
「そそそ、そうだっけ?」
やっちまった自覚が今さら芽生えたのか、サーガの目が泳ぎ出す。
「しかも今日は雨だよね。全く濡れているようにも見えないけれど?」
「まあそこは、風だから」
「きちんと説明してくれるかな?」
面倒臭いという顔をしながらも、サーガが説明をし始める。
「俺の周りに風の精霊がいるのは分かってんだろ? そいつらが勝手に水を弾いてくれるんだよ。もちろん風呂とか水浴びとかの時はちゃんと空気を読むけどな。あと飛んで来た矢とかも弾いてくれるからかなり便利」
「ほ~。そんなこともできるのかい」
「まあね」
「他にも説明してないことはあるかな?」
ヤンの笑みが暗さを増している気がする。
「説明してないと言われても、風、空気全般を操れるとしか言えねーな」
「空気を操る、だと?」
「分かりやすい所だと音、とか? 防音、無音にすることも出来るし、反対に音を大きく届ける事も出来る。あんましやらねーけど、手を叩くだけで相手を吹っ飛ばす風を起こす事も出来る」
ゴルドの目が死んだように遠くを見つめている。
ヤンも頭を抱えている。
サララも話しについていけていないのか、シラけた顔をしている。いや、現実逃避しているのかもしれない。
「そういう大事な事は…、もっと早めに言おうね…」
ヤンが声を絞り出す。
「え? 言わなきゃいけないこと?」
自分から手の内を明かすなど、そんな危険なこと軽々しく出来ない。
「今回も! 空を飛んで行ったんだろう! でなければこんな短時間で往復なんて出来ないだろう!」
「う…」
いろいろ溜まっているし、雨で視界も悪い。人がいても空など見上げないだろうと、門から離れた所で空に飛び上がったのだった。
片道3時間かかる距離を10分ほどで到着。雨なので臭いが辿りづらかったが、ゴブリンは臭い生き物だったのが功を奏した。巣を見付けたならば風で巣の中を探り、あとは一気に風の刃で切り裂いた。1匹だけそれで倒れなかったものがいたので、嬉々として飛びかかっていったのだった。
そして巣を殲滅した後、風の力で耳を回収。1匹1匹そぎ落とすなぞせず、風の刃でシュパン! 落ちたそれを風で収納袋に集めて完了である。そして再び空を飛び、街に帰ってきた。
最速記録である。
「ギルドとしても君の力のことを知っていないと対処出来なくなってしまうこともある。もう隠していることはないね?!」
「え~と、臭いに敏感、とか?」
「それも風か…」
雨などで流れてしまうとさすがに難しいものはあるが、犬と違い空気中に漂う臭いも敏感に嗅ぎ分けられる能力があったりする。犬以上である。
「もうないね?」
「多分…」
自分では当たり前すぎて何が特別な事かよく分かっていない。音と臭いについては周りから指摘されたのでかなり敏感なのだということは自覚していた。
ヤンが溜息を吐く。
「まあ、今日は雨だし、空を飛んでも見る人も滅多にいないだろう。それは多めに見るけれど、普段は気をつけておくれよ?!」
「わ、分かってるよ…」
サーガとしても面倒なところから横槍を入れられるようなことになったらかなわない。そのあたりはきちんと理解している。
「はあ…。しかし、1時間でゴブリンの中規模程度の群れを殲滅、しかもホブに単独で…。サララ君、サーガ君をCに上げる手続きを」
「は、はい!」
サララが慌てて部屋を出て行く。
「え? C? そんな早く上がるもの?」
「もう実績早く積んでSになって欲しいくらいだよ。君のようなものを野放しにしておく方が怖い」
「え? Sになるとなんか縛りとかあるの?」
「いや、特別依頼とかが増えるくらいかな。冒険者は基本何処の国にも属さないと決まっているからね」
「あ、良かった」
冒険者という縛りはあるが、冒険者は基本自由だ。サーガが目に見えてほっとする。
サララが書類を抱えて戻って来る。それをヤンに手渡し、ヤンが書類にサラサラとサインをしていく。
「サーガさん、カードをお出し下さい」
「ん? はいはい」
カードをサララに手渡すと、ヤンからも書類を受け取る。
「では、ご一緒に来て頂けますか?」
「はいはい」
サララがサーガを連れて部屋から出て行った。
「ゴルド、そろそろ正気に戻ったかい?」
ヤンがゴルドを見上げると、ゴルドが頭を振った。
「もう…。訳が分からん…」
「今日が雨なのが幸いというか…、あまり聞いている人はいないと思うが…。噂になると面倒そうだねぇ」
「酒場の方にもいくらか人はいた気がするが…。話しが聞こえているかどうかだな。まあ、聞こえていても信じられるかどうか…」
「Dランクのパーティーならともかく、単独だしね。眉唾物だと笑ってくれていたらいいけど…」
「争奪戦が始まるんじゃないか?」
「監視役を兼ねて誰か付けてみてもいいかもね」
2人はどうにかサーガに手綱を付けられないかと画策するが、まさかこの後にまた頭を抱えることになるとは思ってもいなかった。
「こちら、新しいカードになります。が! 決して自分からランクを言ったりしないように!」
「わ、分かりました」
サララの謎の迫力に押され、サーガが大人しくカードを受け取る。
「お、ホントだ。変わってる」
今回はランクは言わなかった。きちんとCに上がっているのを確認する。
「それから、依頼達成の報酬と、ゴブリン討伐の報酬が用意出来ております。あと説明し忘れておりましたが、ホブくらいの強い魔物になると胸の辺りに魔石があったりするので、調べるのをお忘れにならないで下さいね? 魔石も取って来て頂ければ買い取ります」
「へ~、そんなのもあるのね」
「報酬はこのまま銀行へお預けになりますか?」
収納袋に入れてしまっても良いが、収納袋とて限界はある。素直に銀行に入れて貰うことにした。
「ねえねえ、他になんか面白そうな依頼ってある?」
「ええ? 雨なのにまた出掛けるつもりですか?」
「今日しか自由な時間取れないかもしれないんだもん。もうちょっと発散しておかないとまたすぐにムズムズしちゃうかもだし。もそっと手応えのありそうな奴、ない?」
自由な時間が取れないというのはどういうことかとも思ったが、下手にまた暴れられて問題を起こされても困ると依頼書を捲る。
「ああ、面倒といえば、コルドラが出たと目撃情報がありました」
「コルドラ?」
「氷の魔法を使う虎の魔物です。近づくと地面を凍らせるので足元がままならなくなる上に、氷の壁を作って防御してしまうので火魔法を持っていないとかなり面倒くさい魔物です。サーガさんは風しか使えないんでしたよね?」
「面白そう。やる」
「いやだから、火魔法が使えないと…」
「氷って水系統の魔法っしょ? なんとかなるんじゃないかな?」
なんと楽観的なのかとサララは溜息を吐く。
「失敗すると違約金が発生しますよ?」
「俺が失敗すると思う?」
思う。とはさすがに口に出来なかった。
まあここで失敗するのもある意味勉強かと、サララは契約の準備に入る。
「違約金は依頼料の半額ですよ? 分かってます?」
「分かってます分かってます」
分かってねーだろとも思うが口にしなかった。
Cランクで討伐依頼。しかも手強い魔物となると依頼料は数十万単位に及ぶ。そしてそれはCランクのパーティーで挑むことが前提の依頼になっている。
「じゃ、行ってきまーす!」
手配が済むとサーガは嬉しそうにまた雨の中を出掛けていった。
濡れない謎は解けた。しかし雨や防水服がいらないのはちょっと便利だなと思いつつ、サララは通常業務に戻るのだった。
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