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おまけ小話 同居初日の独り言
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同居初日・ホルの独り言―――
……え、えっと……。
ほんとに、ほんとに……ここ、悠人の家、だよね。
ホルはリビングの真ん中で立ち止まって、きょろきょろと見回す。
ソファ。テーブル。少し生活感のある棚。
全部、悠人の匂いがする気がして、胸がきゅっとなる。
(ど、どうしよう……住むって言っちゃった……)
でも、後悔はぜんぜんない。
むしろ、嬉しさが先に来て、心臓が落ち着かない。
(だって……一緒にいられるんだよ?)
夢じゃない。
……たぶん。
ホルは自分の手を見つめて、ぎゅっと握る。
さっきまで悠人の手を握っていた、その感触がまだ残っている。
(あ、まずは……何するんだっけ)
荷物。
……ない。
着替え?
……ない。
寝る場所?
……え、寝る……?
そこまで考えて、ぶんぶんと首を振る。
(だめだめだめ! 早すぎる! びっくりさせちゃう!)
悠人は優しいけど、まだちょっと緊張してた。
それくらい、わかる。
たぶん。きっと。うん。
(じゃあ……まずは、いい同居人っぽく……)
掃除?
料理?
でも、キッチン勝手に使ったら怒られるかな。
ホルはキッチンの前で立ち止まり、しばらく悩む。
(……あ!)
思いついた、という顔で小さく手を叩く。
(とりあえず、邪魔しない!)
……でも、それって同居人として正解なのか、ちょっと自信がない。
ソファにそっと腰を下ろして、背もたれに体を預ける。
ふわ、と息を吐く。
(悠人と一緒の空間……)
それだけで、胸がじんわり温かくなる。
(これから毎日、会えるのかな)
(朝も……夜も……)
そこまで考えて、また慌てる。
(あ、だめだめ! 先のこと考えすぎ!)
でも、止まらない。
(ごはん、一緒に食べて……)
(お仕事行く時、見送って……)
(疲れてたら、ぎゅってして……)
想像だけで、顔が熱くなる。
(……あれ?)
ここまで考えて、ようやく一瞬だけ疑問が浮かぶ。
(これ……現実、だよね?)
でも次の瞬間には、その考えも溶けていった。
だって、悠人がそこにいる。
声がして、足音がして、同じ家にいる。
それだけで十分だった。
ホルは小さく笑う。
「……えへ」
同居初日。
サキュバスの彼女はまだ、自分たちの状況がどれほど現実離れしているのかに、まったく気づいていなかった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
ここから先は2025/12/25クリスマスまでは毎日18時投稿投稿
それ以降は毎週日曜6時前に投稿予定ですのでよければお気に入りブックマークお願いします。
……え、えっと……。
ほんとに、ほんとに……ここ、悠人の家、だよね。
ホルはリビングの真ん中で立ち止まって、きょろきょろと見回す。
ソファ。テーブル。少し生活感のある棚。
全部、悠人の匂いがする気がして、胸がきゅっとなる。
(ど、どうしよう……住むって言っちゃった……)
でも、後悔はぜんぜんない。
むしろ、嬉しさが先に来て、心臓が落ち着かない。
(だって……一緒にいられるんだよ?)
夢じゃない。
……たぶん。
ホルは自分の手を見つめて、ぎゅっと握る。
さっきまで悠人の手を握っていた、その感触がまだ残っている。
(あ、まずは……何するんだっけ)
荷物。
……ない。
着替え?
……ない。
寝る場所?
……え、寝る……?
そこまで考えて、ぶんぶんと首を振る。
(だめだめだめ! 早すぎる! びっくりさせちゃう!)
悠人は優しいけど、まだちょっと緊張してた。
それくらい、わかる。
たぶん。きっと。うん。
(じゃあ……まずは、いい同居人っぽく……)
掃除?
料理?
でも、キッチン勝手に使ったら怒られるかな。
ホルはキッチンの前で立ち止まり、しばらく悩む。
(……あ!)
思いついた、という顔で小さく手を叩く。
(とりあえず、邪魔しない!)
……でも、それって同居人として正解なのか、ちょっと自信がない。
ソファにそっと腰を下ろして、背もたれに体を預ける。
ふわ、と息を吐く。
(悠人と一緒の空間……)
それだけで、胸がじんわり温かくなる。
(これから毎日、会えるのかな)
(朝も……夜も……)
そこまで考えて、また慌てる。
(あ、だめだめ! 先のこと考えすぎ!)
でも、止まらない。
(ごはん、一緒に食べて……)
(お仕事行く時、見送って……)
(疲れてたら、ぎゅってして……)
想像だけで、顔が熱くなる。
(……あれ?)
ここまで考えて、ようやく一瞬だけ疑問が浮かぶ。
(これ……現実、だよね?)
でも次の瞬間には、その考えも溶けていった。
だって、悠人がそこにいる。
声がして、足音がして、同じ家にいる。
それだけで十分だった。
ホルは小さく笑う。
「……えへ」
同居初日。
サキュバスの彼女はまだ、自分たちの状況がどれほど現実離れしているのかに、まったく気づいていなかった。
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