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1 ただの幼馴染ですから!
「ジャジャーン」
仕事をしていると一枚の名刺が目の前を遮った。
もしもし?
書類が見えないんですが……
しかも、なにその効果音。
会社の忘年会でやった手品の時と同じ効果音よ、それ。
「ちょっとこれ見て、奏花!」
名刺から視線を外し、ドヤ顔で笑う同じ課の同期を見上げた。
ショートヘアにキリッとした美人の同期、安西寿実。
サバサバした性格で狙った獲物は逃がさない肉食女子にして自称恋愛ハンター。
休みの日はデートがなければ、自分磨きでエステかジム。
私の休み?
私は昼寝です(キッパリ)
寿実のアクティブさを見習いたいくらい。
「いや、見てって……こんな目の前に置かれたら、嫌でも見えるからね?」
邪魔な名刺を手で横にどかした。
「今日の飲み会相手なの。行かない?」
「イベント会社の営業ね」
「そっ!イケメンが多いので有名なイベント会社さん」
企業的な知名度じゃないの?そこは?
まあいいけど。
確かにイケメンが多いことで有名は有名なのよね。
うちの取引先の中でのイケメンランクはS級クラス。
「行かねばなるまい……」
「は?なんなの、武士?」
違うわっ!
仕事になりそうになかったので、ちょっと休憩しようと立ち上がった。
私の職場は大きなビルの中にあるオシャレなオフィス。
壁面はグリーンで覆われ、フロアはウッド調。
カフェスペースには社員がいつでも飲めるようにコーヒーやココア、紅茶などのドリンク類やちょっとしたお菓子などが木の蔓で編まれたカゴに入っている。
すべて自社製品。
カルダモンとジンジャーの香りが際立つチャイを選んだ。
さすが我が社の製品。
うーん、おいしい。
「癒される……」
ガラス張りの窓からは近くの公園の緑や池が見えて、景観一つにも社長のこだわりが感じられる。
オフィスも素敵だけど、衣料品から食品まで素材にこだわるこの会社に就職したくて物凄く頑張った。
自然派の商品開発に力を入れる会社でシンプルな商品が売りだ。
しかも、念願の商品開発部。
大手小売店のプライベートブランドの商品開発も手掛ける商品開発部で働いて三年。
商品化された物もあり充実した生活を送っている。
「ねぇ、奏花。仕事が充実してるのはいいわよ?」
カウンターテーブルに肘をつき、寿実がコーヒーを飲む。
「でもね、プライベートも大事だから」
そう言った寿実は真顔だった―――腹の底からの本心ね、これは。
「それに関して異論はないわよ」
「奏花には幼馴染君がいるから、紹介しなくてもいいかなって思ったんだけどね」
げほっとチャイを吐きかけて手で押さえた。
「ただの幼馴染だしっ!それに今はまだ留学中よ」
「音楽院を卒業したんじゃないかったの?」
「卒業したけど、師匠について勉強中って言ってたから」
チェロの偉い先生に師事しているとかなんとか。
「連絡とってるの?」
「連絡というより生存確認よ」
毎日、電話がかかってくる。
自己管理を忘れるタイプの人間だから無視もできない。
「生存確認って……」
「自分のことに無頓着なのよ。ホームシックになって私が留学先まで行く羽目になったんだから」
チェロの勉強のためとはいえ、寂しいならどうして留学するのよ……
額に手をあてた。
私にはチェロ奏者の幼馴染がいる。
名前は深月逢生。
歳は私の二つ下で手のかかる弟のような存在。
逢生は音楽院を卒業し、今はドイツのオーケストラにいると言っていた。
日報かってくらい毎日欠かさず電話がかかってくる。
今のところ帰ってくるとは聞いていない。
「本当にいいの?幼馴染君」
「別にいいのよ、別にっ!」
「よくないわよ。休暇だとか言って、また急に現れないでしょうね?」
「だ、大丈夫だと思う。今はまだドイツにいるはずだし」
「本当に?」
「う、うん」
たぶんね……
こくこくとうなずいた。
なぜか私の幼馴染は野生の勘なのかなんなのかしらないけど、昔から私に彼氏ができそう!やった!みたいな流れになると必ず奴がやってくるのよ。
ホラー映画かってくらいのレベルでね。
思わず、名刺を手にしたまま周囲をきょろきょろと見渡してしまった。
大丈夫よね?
忍者とか雇ってないわよね。
「じゃあ、奏花は出席ね」
「もちろん!」
飲み終わるといそいそと席に戻る。
今日の服、適当じゃなくてよかったー!
自社製品の商品を試すべく、オール自社製品の衣料品をいつも身に着けている。
今日のコーデはモノトーンで統一したジャケットとブラウス、パンツコーデ。
パンプスをはいて、バッグは誕生日に逢生からもらったグッチのバッグ……
まじまじと黒のミディアムトートバッグを見た。
何色のバッグがいいって聞かれたから適当に使いやすさを重視し、黒って言ったらグッチがやってきました―――ってどんなチョイスよ。
逢生の誕生日なんて私がケーキを焼くらいだっていうのに。
ぼんやりした逢生の顔が思い浮かんだ。
いやいや!
なに後ろめたいなんて思ってるのよ。
逢生と私は幼馴染ってだけ。
「今年こそ彼氏をゲットするんだから!」
ガッツポーズを決めた。
そう―――彼氏いない歴年齢に終止符を打つために!
仕事をしていると一枚の名刺が目の前を遮った。
もしもし?
書類が見えないんですが……
しかも、なにその効果音。
会社の忘年会でやった手品の時と同じ効果音よ、それ。
「ちょっとこれ見て、奏花!」
名刺から視線を外し、ドヤ顔で笑う同じ課の同期を見上げた。
ショートヘアにキリッとした美人の同期、安西寿実。
サバサバした性格で狙った獲物は逃がさない肉食女子にして自称恋愛ハンター。
休みの日はデートがなければ、自分磨きでエステかジム。
私の休み?
私は昼寝です(キッパリ)
寿実のアクティブさを見習いたいくらい。
「いや、見てって……こんな目の前に置かれたら、嫌でも見えるからね?」
邪魔な名刺を手で横にどかした。
「今日の飲み会相手なの。行かない?」
「イベント会社の営業ね」
「そっ!イケメンが多いので有名なイベント会社さん」
企業的な知名度じゃないの?そこは?
まあいいけど。
確かにイケメンが多いことで有名は有名なのよね。
うちの取引先の中でのイケメンランクはS級クラス。
「行かねばなるまい……」
「は?なんなの、武士?」
違うわっ!
仕事になりそうになかったので、ちょっと休憩しようと立ち上がった。
私の職場は大きなビルの中にあるオシャレなオフィス。
壁面はグリーンで覆われ、フロアはウッド調。
カフェスペースには社員がいつでも飲めるようにコーヒーやココア、紅茶などのドリンク類やちょっとしたお菓子などが木の蔓で編まれたカゴに入っている。
すべて自社製品。
カルダモンとジンジャーの香りが際立つチャイを選んだ。
さすが我が社の製品。
うーん、おいしい。
「癒される……」
ガラス張りの窓からは近くの公園の緑や池が見えて、景観一つにも社長のこだわりが感じられる。
オフィスも素敵だけど、衣料品から食品まで素材にこだわるこの会社に就職したくて物凄く頑張った。
自然派の商品開発に力を入れる会社でシンプルな商品が売りだ。
しかも、念願の商品開発部。
大手小売店のプライベートブランドの商品開発も手掛ける商品開発部で働いて三年。
商品化された物もあり充実した生活を送っている。
「ねぇ、奏花。仕事が充実してるのはいいわよ?」
カウンターテーブルに肘をつき、寿実がコーヒーを飲む。
「でもね、プライベートも大事だから」
そう言った寿実は真顔だった―――腹の底からの本心ね、これは。
「それに関して異論はないわよ」
「奏花には幼馴染君がいるから、紹介しなくてもいいかなって思ったんだけどね」
げほっとチャイを吐きかけて手で押さえた。
「ただの幼馴染だしっ!それに今はまだ留学中よ」
「音楽院を卒業したんじゃないかったの?」
「卒業したけど、師匠について勉強中って言ってたから」
チェロの偉い先生に師事しているとかなんとか。
「連絡とってるの?」
「連絡というより生存確認よ」
毎日、電話がかかってくる。
自己管理を忘れるタイプの人間だから無視もできない。
「生存確認って……」
「自分のことに無頓着なのよ。ホームシックになって私が留学先まで行く羽目になったんだから」
チェロの勉強のためとはいえ、寂しいならどうして留学するのよ……
額に手をあてた。
私にはチェロ奏者の幼馴染がいる。
名前は深月逢生。
歳は私の二つ下で手のかかる弟のような存在。
逢生は音楽院を卒業し、今はドイツのオーケストラにいると言っていた。
日報かってくらい毎日欠かさず電話がかかってくる。
今のところ帰ってくるとは聞いていない。
「本当にいいの?幼馴染君」
「別にいいのよ、別にっ!」
「よくないわよ。休暇だとか言って、また急に現れないでしょうね?」
「だ、大丈夫だと思う。今はまだドイツにいるはずだし」
「本当に?」
「う、うん」
たぶんね……
こくこくとうなずいた。
なぜか私の幼馴染は野生の勘なのかなんなのかしらないけど、昔から私に彼氏ができそう!やった!みたいな流れになると必ず奴がやってくるのよ。
ホラー映画かってくらいのレベルでね。
思わず、名刺を手にしたまま周囲をきょろきょろと見渡してしまった。
大丈夫よね?
忍者とか雇ってないわよね。
「じゃあ、奏花は出席ね」
「もちろん!」
飲み終わるといそいそと席に戻る。
今日の服、適当じゃなくてよかったー!
自社製品の商品を試すべく、オール自社製品の衣料品をいつも身に着けている。
今日のコーデはモノトーンで統一したジャケットとブラウス、パンツコーデ。
パンプスをはいて、バッグは誕生日に逢生からもらったグッチのバッグ……
まじまじと黒のミディアムトートバッグを見た。
何色のバッグがいいって聞かれたから適当に使いやすさを重視し、黒って言ったらグッチがやってきました―――ってどんなチョイスよ。
逢生の誕生日なんて私がケーキを焼くらいだっていうのに。
ぼんやりした逢生の顔が思い浮かんだ。
いやいや!
なに後ろめたいなんて思ってるのよ。
逢生と私は幼馴染ってだけ。
「今年こそ彼氏をゲットするんだから!」
ガッツポーズを決めた。
そう―――彼氏いない歴年齢に終止符を打つために!
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