31 / 39
31 浮気!?
梶井さんの言ったとおり、インターホン連打の訪問者は逢生だった。
「これは浮気だよ」
「お邪魔しますくらい言えよ」
「お邪魔されたのはこっちのほう」
「二人の仲をって?」
梶井さんの言葉に逢生はうなずいた。
鍵はかけていなかったから、逢生はなんの障害もなく部屋に入ってきた。
そして、不機嫌そうな顔で仁王立ちしたあげくの浮気認定。
すっと手を上げた。
「あのー……逢生。いいわけしてもいい?」
「だめ」
問答無用!?
怒っている逢生と笑っている梶井さん。
「帰るよ、奏花」
「待て。子犬」
逢生が私の腕をつかみ、部屋から出ようとしたのを梶井さんが止めた。
「奏花ちゃんは仕事でここにきて看病をしてくれただけだ」
「……わかってる。けど、相手がお前だっていうのが気に入らない」
「気に入らないのはこっちも同じだ」
どうしよおおおと思っていると梶井さんが挑発するように逢生に言った。
「彼氏になったんだって?その割に余裕がないな。奏花ちゃんを信じてないってことか」
「そんなことない」
「ああ、そうか。お前は自分に自信がないんだな」
逢生の目が細められた。
「俺の方が男として上だから焦ってる?まあ、それは間違いじゃないか。俺の方がチェロもうまいし?」
「誰が。俺はお前に負けない」
初めて見る逢生の闘争心。
梶井さんはそれを楽しそうに眺めていた。
気のせいじゃなかったら、梶井さんは逢生といる時が一番楽しそうに見える。
「コンサートが楽しみだな。俺に負けるなよ。子犬」
「それはこっちのセリフだ」
コンサート?
コンサートって、そんな戦いの場じゃないでしょ。
私がなにか聞く前に逢生が強い力で引っ張った。
慌てて自分のバッグを手にして逢生についていく。
「看病、ありがとう。奏花ちゃん。深月が嫌になったら、いつでもこの部屋にきていいよ」
逢生は梶井さんの部屋を出ると無言でドアを閉めた。
部屋にも寄らずにすぐここにきたらしく、鍵がかかったままだった。
「ご、ごめんね。でも、梶井さんは床に転がっていて……」
「浮気してないのはわかってる」
「もちろんよ!」
うんうんっと頷いたけど、逢生は納得いかない顔をしていた。
「でも、奏花は情にもろいところがあるから」
最後の最後まで信じなさいよ……そこは。
結局疑っているじゃないと思いながら、玄関のドアを開けて中に入った。
でも、浮気していないってことをわかってくれているのならまあいいかと、ほっと胸をなでおろした。
誤解されるのは嫌だし。
よかった。
そう思っていると。逢生が部屋に入るなり、唇をふさいだ。
「んむっ!?」
「わかっているのと赦すのは別」
唇を一瞬だけ離して、そんなこと言った。
どういう意味よっー!!
噛みつくようなキスをして、逢生は壁に体を押しあてた。
深く絡みつく舌が言葉を奪い、口内を蹂躙していく。
唇は柔らかな感触なのにされるキスは荒々しい。
「逢生っ……!」
苦しくてもがいても赦してはくれない。
逃げようとしても追われて塞がれ、今までのキスは逢生は手加減していたのだと知った。
自分の感情を抑えたキスだったんだと―――
「ん……」
チリっとした痛みに顔をしかめても逢生は容赦なく痕をつけていく。
赤い痕を残されてもだめとは言えなかった。
いくつかの痕を残すと、やっと唇を私の体から離してくれた。
「俺は独占欲が強いよ」
鋭い目と低い声―――やっぱり怒っている。
「し、知ってる」
「今日はここまでにしておく」
「う、うん……そ、そう」
ぼうっと熱っぽい頭でうなずいた。
「練習しないと」
なんの?と聞くまでもない。
チェロの練習に決まっている。
次のコンサートは梶井さんとのデュオがあるという話だ。
つまり二人で演奏する。
この仲の悪い二人で演奏なんて、事務所もよく許したと思う。
どんな演奏になるんだろうか。
いつもの穏やかな凪のような目はなく、鋭い獣のような目をして逢生は言った。
「梶井には絶対に負けない」
初めて私は逢生の『負けない』という言葉を聞いた。
それは梶井さんが逢生に一番言わせたかった言葉だったのかもしれない―――と、この時になって気づいた。
逢生は私を見ずにチェロがある自分の部屋に入って行った。
多分、次のコンサート、逢生は本気でチェロを弾く。
それを梶井さんは聴きたかったんじゃないだろうか。
逢生の音を引き出すために怒らせて。
練習する逢生はいつもより真剣な顔をしていた。
多分、逢生は梶井さんと一緒に演奏することで成長する。
今までよりずっと素敵な音を奏でるようになるだろう。
そんな予感がした。
「これは浮気だよ」
「お邪魔しますくらい言えよ」
「お邪魔されたのはこっちのほう」
「二人の仲をって?」
梶井さんの言葉に逢生はうなずいた。
鍵はかけていなかったから、逢生はなんの障害もなく部屋に入ってきた。
そして、不機嫌そうな顔で仁王立ちしたあげくの浮気認定。
すっと手を上げた。
「あのー……逢生。いいわけしてもいい?」
「だめ」
問答無用!?
怒っている逢生と笑っている梶井さん。
「帰るよ、奏花」
「待て。子犬」
逢生が私の腕をつかみ、部屋から出ようとしたのを梶井さんが止めた。
「奏花ちゃんは仕事でここにきて看病をしてくれただけだ」
「……わかってる。けど、相手がお前だっていうのが気に入らない」
「気に入らないのはこっちも同じだ」
どうしよおおおと思っていると梶井さんが挑発するように逢生に言った。
「彼氏になったんだって?その割に余裕がないな。奏花ちゃんを信じてないってことか」
「そんなことない」
「ああ、そうか。お前は自分に自信がないんだな」
逢生の目が細められた。
「俺の方が男として上だから焦ってる?まあ、それは間違いじゃないか。俺の方がチェロもうまいし?」
「誰が。俺はお前に負けない」
初めて見る逢生の闘争心。
梶井さんはそれを楽しそうに眺めていた。
気のせいじゃなかったら、梶井さんは逢生といる時が一番楽しそうに見える。
「コンサートが楽しみだな。俺に負けるなよ。子犬」
「それはこっちのセリフだ」
コンサート?
コンサートって、そんな戦いの場じゃないでしょ。
私がなにか聞く前に逢生が強い力で引っ張った。
慌てて自分のバッグを手にして逢生についていく。
「看病、ありがとう。奏花ちゃん。深月が嫌になったら、いつでもこの部屋にきていいよ」
逢生は梶井さんの部屋を出ると無言でドアを閉めた。
部屋にも寄らずにすぐここにきたらしく、鍵がかかったままだった。
「ご、ごめんね。でも、梶井さんは床に転がっていて……」
「浮気してないのはわかってる」
「もちろんよ!」
うんうんっと頷いたけど、逢生は納得いかない顔をしていた。
「でも、奏花は情にもろいところがあるから」
最後の最後まで信じなさいよ……そこは。
結局疑っているじゃないと思いながら、玄関のドアを開けて中に入った。
でも、浮気していないってことをわかってくれているのならまあいいかと、ほっと胸をなでおろした。
誤解されるのは嫌だし。
よかった。
そう思っていると。逢生が部屋に入るなり、唇をふさいだ。
「んむっ!?」
「わかっているのと赦すのは別」
唇を一瞬だけ離して、そんなこと言った。
どういう意味よっー!!
噛みつくようなキスをして、逢生は壁に体を押しあてた。
深く絡みつく舌が言葉を奪い、口内を蹂躙していく。
唇は柔らかな感触なのにされるキスは荒々しい。
「逢生っ……!」
苦しくてもがいても赦してはくれない。
逃げようとしても追われて塞がれ、今までのキスは逢生は手加減していたのだと知った。
自分の感情を抑えたキスだったんだと―――
「ん……」
チリっとした痛みに顔をしかめても逢生は容赦なく痕をつけていく。
赤い痕を残されてもだめとは言えなかった。
いくつかの痕を残すと、やっと唇を私の体から離してくれた。
「俺は独占欲が強いよ」
鋭い目と低い声―――やっぱり怒っている。
「し、知ってる」
「今日はここまでにしておく」
「う、うん……そ、そう」
ぼうっと熱っぽい頭でうなずいた。
「練習しないと」
なんの?と聞くまでもない。
チェロの練習に決まっている。
次のコンサートは梶井さんとのデュオがあるという話だ。
つまり二人で演奏する。
この仲の悪い二人で演奏なんて、事務所もよく許したと思う。
どんな演奏になるんだろうか。
いつもの穏やかな凪のような目はなく、鋭い獣のような目をして逢生は言った。
「梶井には絶対に負けない」
初めて私は逢生の『負けない』という言葉を聞いた。
それは梶井さんが逢生に一番言わせたかった言葉だったのかもしれない―――と、この時になって気づいた。
逢生は私を見ずにチェロがある自分の部屋に入って行った。
多分、次のコンサート、逢生は本気でチェロを弾く。
それを梶井さんは聴きたかったんじゃないだろうか。
逢生の音を引き出すために怒らせて。
練習する逢生はいつもより真剣な顔をしていた。
多分、逢生は梶井さんと一緒に演奏することで成長する。
今までよりずっと素敵な音を奏でるようになるだろう。
そんな予感がした。
あなたにおすすめの小説
触れられないはずの私が、ただ一人の彼にだけ心も体も許してしまいました
由香
恋愛
男性に触れられると体調を崩す令嬢リリア。
そんな彼女にとって唯一“触れられる”存在は――幼なじみの公爵令息レオンだけだった。
手を取られ、抱き寄せられ、当たり前のように触れられる日々。
それがどれほど特別なことなのか、彼女はまだ知らない。
やがて政略結婚の話が持ち上がり、“触れられない相手との結婚”か、“彼に触れられる人生”かを選ぶことに。
「お前に触れていいのは俺だけだ」
逃げ場のない独占と、甘すぎる溺愛。
これは、触れられないはずの少女が、ただ一人にだけすべてを許していく物語。
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
年下で可愛い旦那様は、実は独占欲強めでした
由香
恋愛
政略結婚で嫁いだ相手は――
年下で、可愛くて、なぜか距離が近すぎる旦那様でした。
「ねえ、奥さん。もうちょっと近く来て?」
人懐っこく甘えてくるくせに、他の男が話しかけただけで不機嫌になる彼。
最初は“かわいい弟みたい”と思っていたのに――
「俺、もう子供じゃないよ。……ちゃんと男として見て」
不意に見せる大人の顔と、独占欲に心が揺れていく。
これは、年下旦那様にじわじわ包囲されて、気づいたら溺愛されていた話。
番探しにやって来た王子様に見初められました。逃げたらだめですか?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はスミレ・デラウェア。伯爵令嬢だけど秘密がある。長閑なぶどう畑が広がる我がデラウェア領地で自警団に入っているのだ。騎士団に入れないのでコッソリと盗賊から領地を守ってます。
そんな領地に王都から番探しに王子がやって来るらしい。人が集まって来ると盗賊も来るから勘弁して欲しい。
お転婆令嬢が番から逃げ回るお話しです。
愛の花シリーズ第3弾です。
仮面王の花嫁
松雪
恋愛
婚約者を腹違いの妹に奪われ、新しい相手も見つからず修道院に行く覚悟を決めたルチア。修道女となるため髪を切った日の夜、王城から「国王がルチアを妻に望んでいる」という書簡を持った使者がやって来た。
しかし、従兄弟であり恋仲だったニールが国王のせいで死に至った過去を持つルチアは、国王からの求婚を喜べずーー。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】
まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と…
「Ninagawa Queen's Hotel」
若きホテル王 蜷川朱鷺
妹 蜷川美鳥
人気美容家 佐井友理奈
「オークワイナリー」
国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介
血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…?
華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。
溺愛のフリから2年後は。
橘しづき
恋愛
岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。
そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。
でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?