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12 宮ノ入の企み
ゲーセンから帰るといつものホームウェアに着替え、夕飯のお皿を並べていると、ちょうど直真さんの車の音がした。
「おかえりなさーい」
リビングのドアが開くのと同時に明るい声で出迎えた。
「―――だだいま」
私の声とは裏腹に直真さんは見るからにどす黒いオーラを放ち、イライラしていた。
これは機嫌が悪い。
まさか、私がゲーセンで豪遊したのがバレた?
「あの、直真さん?あれはですねー」
「悪い。有里」
ん?直真さんが謝った?
「クソ生意気な男に会ったせいで気分が悪い」
「例の班目さんですか?」
「そうだ」
スーツの上着を脱ぎ、ネクタイを緩めていた。
ハッ!!!これは!
慌ててスマホを手にして、パシャリと一枚撮影した。
うむ。
いいかんじ。
タイトルは『仕事終わりのイライラ直真さん』
レアスチルゲットー!
「おい。有里。なにしてるんだ」
「直真さんフォルダの充実のために撮影をしてました」
「まだそんなもの持っていたのか?消せよ!」
「嫌ですよ!どれだけ私が(隠し撮り)がんばって集めたか!」
「……ったく、しょうがない奴だな」
そんなこと言いながら、まんざらでもないくせに。
どうせ『俺のこと、本当に好きなんだな』なんて思ってるに違いない。
甘い、甘いよ。
この画像は直真さんのおじいちゃんである宮ノ入会長との取引材料になるからね?
可愛い孫の様子を知りたいおじいちゃんに時々、画像を送ってあげている。
私とやり取りするためにおじいちゃん、わざわざスマホにしたんだよ?
直真さんにキツイことを言ってるけど、本当はおじいちゃん、心配してるんだからね。
まあ、画像のお礼におじいちゃんがいろいろ私に便宜を図ってくれるっていうのもあるけど。
「まあまあ。直真さん。夕飯にしましょうよ。なにか飲みます?ワイン?ビール?」
ゲーセンに行ったことがバレてないみたいだし、今のうちに心を落ち着けてもらわねば!
「珍しくサービスがいいな」
う、うわあ。
勘が良すぎ。
直真さん、探偵みたいなとこあるからなー。
「そんなことないです!疲れてる直真さんに優しくしたいだけです」
「ますます怪しいな」
なんでだよ!?
「もー、疑心暗鬼はやめてくださいよー。こっちまで人間不信になるじゃないですか」
「誰が人間不信だ」
「違うんなら、夕飯にしましょうよ」
まだ納得いってないみたいだったけど、直真さんは疲れたのか、おとなしく椅子に座った。
「ビールどうぞー」
冷蔵庫から缶ビールを出してあげた。
まだ疑惑の目をしているし。
浮気なんか(しないけど)した日には殺される気がする。
ほんっとガラが悪いんだから―――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ゲーセンで取ったお菓子を内密に処分するべく、ロッカーに隠しておいたお菓子を取り出し、会社の工場エリアに持って行った。
直真さんからの書類を色々な場所に届けるため、社内の至る所に出入りしているので、顔見知りになっていた。
向こうも直真さんと話すより、私の方が話しやすいらしく、けっこう気軽に話しかけてくる。
工場長ではなく、工場で働くおばちゃん達にお菓子を渡した。
休憩室には時間差で休憩をとっている人達がいて、顔を出すと必ず誰かいる。
「これ、休憩時間にどうぞー!」
「おやー!有里ちゃん、気が利くね」
直真さんに隠して持ってくるのが大変だった。
「有里ちゃん、あのイケメン旦那とどこで知り合ったんだい」
「会社です」
「ほうほう」
自分の情報を少しだすことで相手に信用させ、聞きたいこと聞く。
特におばちゃん相手だと有効だ。
商店街で生まれ育った私の処世術よ。
「そういえば、私達が挨拶した時、どうして、あんなに冷たいかんじだったんですか?歓迎されてないっていう雰囲気を感じたんですけど」
「ききたいかい?宮ノ入のあんたが聞いても面白い話じゃないと思うけどねぇ」
そんなことを言いながらおばちゃんは『私は知ってるけどね』という顔をして、喋りたそうだった。
「そんなー。教えてくださいよ。聞きたいなー」
仕方ないねぇとおばちゃんは嬉しげな顔を見せた。
「昔から、この会社は社長を中心に自由にやってきた会社だったんだよ。宮ノ入に買収されてからは何もかもが宮ノ入に管理されてしまって面白くないのさ」
「なるほど。買収されたのが、結局、気に入らないんですね」
「資金援助ならよかったらしいけど。私らみたいな下っ端は宮ノ入に感謝しているよ。誰もリストラはされなかったからね。けど、好き勝手やってきた社長一族や上層部は面白くないわけさ」
「そうなりますよね」
確かに宮ノ入って、ただ大きい会社じゃないんだよね。
直真さんも私にはまあまあ優しいけど、敵には容赦ないし。
弟の瑞生さんもぼんやりしているようで、淡々とやることやって利益だしてくるような人だからね……。
おじいちゃんに至ってはもう覇王だよ。覇王。
「今回もなにを企みに来たんだって工場長達は言ってるんだよ。それで冷たいわけさ」
「はー、なるほどー」
「けどね!私らは有里ちゃんのことは好きだよ?挨拶はきちんとするし、気も利くし」
「いやー、あははは、こちらこそありがとうございます」
ゲーセンで取ったお菓子ですみません。
そう思いながら、頭を下げて工場エリアを出た。
ふーん。
何かを企んでるか。
直真さん、肝心なことは教えてくれないからなー。
いったい何をしようとしているんだろう。
残念ながら、私にはさっぱりわからなかった。
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