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16 言い訳は?

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「―――で、早く帰って、こっそりゲーセンに行ったところに班目まだらめがいたと?」

「そうです。あの、なんだか納得いかないんですけど」

「なにが?」

「直真さんはふんぞり返って座ってるのに私が正座って?私、何も悪いことしてませんよ!?」

小学生が叱られるみたいにさっきから、ソファーの上に正座させられていた。
床じゃなかっただけ、まだマシかもしれない。
直真さんの怒りをみれば。

「俺に黙って陰でこそこそしているのが悪い!なにがゲーセンだ!わざわざ変装までしやがって!」

「ゲーセン行っただけなのに」

「それだけで、あんなに懐くか?」

「犬や猫みたいに言わないで下さい」

はあっとため息をついて言った。

「私がこんなに罪作りな女だとは思いもよりませんでした」

「調子に乗るな」

怖い顔で睨まれた。
冗談なのに。
心が狭いよ。直真さん。

「私が考えるには多分、これは恋愛アドベンチャーゲームにありがちな恋愛フラグってやつですよ」

「なんだそれは?」

「もー、わかんないですか?」

「腹立つな。その言い方」

「つまりですね。私がカッコよく景品をとってあげたことで、恋愛フラグを立ててしまったわけですよ。これは運命?次に会えば、わかる!そう思っていたところに偶然にも二回目の出会い。会話で正解パートを選んだばっかりにハートの個数が増えたわけです。そして、直真さんという存在(ライバルイベント)でさらに火がついたってことですよ。いわゆるイベントブースト的なやつです」

「なるほど。まったくわからん。真面目に聞いて損したな」

「ちょっとー!」

説明させといて、なんてひどい。

「でも、私が浮気してなかったことはわかってくれましたよね?」

「は?わかったのはお前のドヤ顔は腹が立つってことくらいだ」

「ひどっっ!」

「だいたいお前は―――」

ううっ!
いつまで続くんだよー。
このお説教っ!
そう思っていると、コンコンとドアがノックされる音が聞こえた。

た、た、助かったー!

ドアの方を見ると入ってきたのは姫愛ひめちゃんだった。
この際、誰でもいい。
ありがとう!姫愛ちゃん!
そう思っていると、直真さんが苛立った顔のまま、無言でバンッとドアを閉めた。
おいおい!?

「直真さんっ!冷静にっ!キャラ壊れてますよ!」

ドアの向こうで姫愛ちゃんが ―――

「直真お兄様?どうなさったの?なにかありまして?」

「申し訳ありません。有里と話し合い中ですので、お引き取りください」

えええっ!!
話し合いって二人で会話することだよ。
いわば、ターン制。
一方的な直真ターンでこっちにターンが回ってきてないのにそれはない。
ガチャッと鍵までかけた。
ひ、ひえー!!

「直真さんっっ!!心の底から、私は直真さんにオンリーラブですよ!?」

「何がオンリーラブだ。ふざけんな!」

「大真面目ですって」

「わかっている」

「それなら」

「けど、ずいぶん仲が良かったからな。なあ??」

機嫌が悪い理由がわかった。
確かに直真さんが姫愛ちゃんを姫愛なんて呼んでたら、私も面白くはない。
ちょっと反省した。

「向こうが姓を名乗らなかったから、こっちも名前しか言わなかっただけです!」

「だから、竜成か」

「そうです。深い意味はないです」

「こんな目にあったのは初めてだ。俺の目の前で他の男と仲良くされたことは一度もない」

そうだろうなー。
いつも魔王みたいに自信たっぷりだもんね。

「直真さん、ご機嫌直して下さいよ。だいたい自分だって、よく女の人に言い寄られてるじゃないですか。私なんて、始めてですよ」

「俺は仕事の兼ね合いもあるからだ」

そんな正々堂々と色仕掛けして人を利用してます宣言されてもね。
拗ねると長いんだから。
よいしょとソファーから降りて、直真さんを抱き締めた。

「私が好きなのは直真さんだけですよ?」

「どうだか」

そう言いながら、私から直真さんにキスをした。
目を細めて直真さんはそれを黙って受け入れた。
本当は女の方からキスされるのが、嫌いなくせに私には許している。
よかった―――怒ってないとホッとしていると、なかなか体を離してもらえなかった。

「んっ…あっ」

息苦しいほどにキスされて、肩にしがみつくと耳元で直真さんが言った。

「―――盗聴器、一つだけスイッチをいれたやったぞ」

「んんっ!?」

そう言うと、唇を深く貪った。
直真さんは息を乱して体が崩れ落ちるまで、キスを繰り返すと体を支えて悪い顔をして言った。

「班目にしっかり聞こえたな」

手のひらで小型の盗聴器を弄び、床に落とすと靴底で踏みつぶした。
盗聴器はバラバラになって、残骸が床に散らばった。

「しばらくゲーセンは禁止だからな」

「……っ…わかってます…」

迫力ありすぎだからね!?
きっと私じゃなかったら、泣いてるよ。
直真さんは本当に嫉妬深くて、独占欲が強い面倒な男だから困る―――
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