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20 スキャンダル
「たいした話じゃなかったな」
姫愛ちゃんと食事を終えた直真さんがそんなことを言っていた。
まあ、姫愛ちゃんが知ってるレベルのようなことは人の弱みを握るのがうまい直真さんにしたら、きっと朝飯前なんじゃないかなー……。
今日も朝から淡々と仕事をこなしてるけど、頭の中じゃなにを考えているやら。
もう次の手を打ちだそうとしているに違いない。
やれやれと思いながら、書類のコピーに出かけて行くと、機嫌のいい姫愛ちゃんと出会った。
「おはようございます。有里さん」
私と面と向かって、姫愛ちゃんから初めて口をきいた!?
「お、おはよう?」
思わず、疑問形で返してしまった。
まるでスキップしているかのような足取りの軽さで姫愛ちゃんは歩いて行った。
なんだ、なんだー?
コピーをして、役員室に戻ると、姫愛ちゃんが直真さんに雑誌を見せていた。
険しい顔で直真さんはそれを見ている。
会議資料を作ろうと、並べていると声をかけられた。
「有里」
「はい?」
「これはなんだ?」
机の上に雑誌がばさっと放り投げられた。
開いていたページを眺めると『班目社長に新しい恋人!?』という見出しの記事があった。
コンビニで偶然会った時の写真がドーンッと載っている。
私の顔には犯罪者みたいにモザイクがかかってるけど、見る人が見れば、私だとわかる。
「これはコンビニに行ったら、たまたま出会って……」
「本当ですか?有里さん、ずいぶん親し気な写真ですけど?」
親し気?
どこをどうみたらそうなる?
「まるで恋人同士みたいですね」
竜成の顔は確かに笑ってるけど、私の表情はモザイクのせいでよくわからない。
それを都合のいいように解釈してとられたのか、姫愛ちゃんは嬉しそうに笑っていた。
待て待て!
これで私の弱みを握ったとでも!?
「うまいこと見せてますけど、手にコーラとポテチのレジ袋があるのわかります?これ、私がただコンビニに寄っただけの写真じゃないですか。浮気現場を押さえたみたいに言わないでくださいよ」
まったく、冷静にみたらすぐわかるのに―――直真さんが微笑んでいた。
だよねえ。
こんな記事に誰も騙されない。
「姫愛さん、部屋から出てもらえますか?」
「直真お兄様、待って―――」
突き飛ばすように部屋の外に姫愛ちゃんを追い出すと、鍵をかけた。
外からドアをガチャガチャさせながら、姫愛ちゃんがなにか言っていたけど、直真さんは完全無視で雑誌をゴミ箱に投げ捨てた。
「有里。こいつに近寄らない約束じゃなかったか?」
「そうは言っても偶然に出会ったものは回避のしようがないっていうか」
無茶ぶりにもほどがある。
電話が鳴り響き、それを無視して直真さんは言った。
「宮ノ入からだ」
「でないとわからないですよ?」
「わかる」
直真さんはなんとも言えない複雑な表情を浮かべた。
「宮ノ入のババア共もさぞかし、愉快だろうな。俺が妻に浮気されたと今頃、噂が飛び交っていることだろうよ」
「浮気なんてしてませんよ!」
「そうだな」
ふいっと直真さんは視線をそらした。
「挨拶しかしてませんし……その」
「それくらいわかってる」
「え?」
「雑誌の写真を見ろよ。こいつ、カメラ目線だぞ。わざと書かせたに決まってるだろう」
「なんでそんなことを」
「本気だからだろうな」
直真さんは滅多に見せることのない苦々しい表情をしていた。
「つまり、私と直真さんを別れさせるためにでっちあげた!?」
「そういうことだな」
「そこまでわかってるのに怒らなくたっていいじゃないですか」
「は?怒ってねえよ」
「怒ってますよ」
「怒ってねえ!」
「口調がヤクザな時はマジ切れしてんですよっっ」
しかも、目が怖いし。
感情を抑えようとしているけれど、空気もピリピリして怒っているのが伝わってくる。
「なにがデートだ」
「やきもちですか?ちゃんと帰りましたって―――」
ダンッと壁に体を押し付けられた。
「い、いたっ」
「わかってんのか?宮ノ入のババアどもに言われて嫌な思いをするのはお前だぞ」
「仲の良いところを見せておけば、黙りますって」
本気で怒っているのが、わかった。
「な、なんなら、ほら、子どもを作ればいいんですよ!」
「子どもはいらない」
そんな気はしていたけど、改めて言われるとさすがに動揺した。
「いらないって、どうしてですか?」
直真さんは険しい表情をしたまま、無言だった。
「あの、妻として理由を聞く権利はありますよね?」
一瞬、腕の力が緩んだ。
「理由を聞いたら、俺と一緒にいるのが、面倒で嫌になるかもな。そうなったら、お前はあの男の所にでも行けばいい―――」
直真さんの顔を思いっきり、パンッと平手打ちした。
「っ!お前っ」
「グーじゃなかったことを感謝してくださいね!最近、おかしいですよ!余裕なさすぎなんです!」
するっと腕からすり抜け、自分の机まで逃げた。
「はあ?俺のどこが余裕ないって?お前こそ、俺の目が届かない所で男とこそこそ会いやがって!」
「だから、偶然って言ってるじゃないですか」
「こんな都合のいい偶然があるか!」
「私を疑ってるんですか?」
そう聞くと、否定の言葉が返ってこなかった。
本当に何もないのに信じてもらえないなんて酷すぎる!
「もういいです。実家に帰らせてもらいますっ!」
こんな台詞を直真さんに言うことになるなんて、思いもしなかった。
泣きたい気持ちでバッグを手にすると部屋から飛び出したけれど、背後からは私を追う声も足音すら聞こえなかった。
姫愛ちゃんと食事を終えた直真さんがそんなことを言っていた。
まあ、姫愛ちゃんが知ってるレベルのようなことは人の弱みを握るのがうまい直真さんにしたら、きっと朝飯前なんじゃないかなー……。
今日も朝から淡々と仕事をこなしてるけど、頭の中じゃなにを考えているやら。
もう次の手を打ちだそうとしているに違いない。
やれやれと思いながら、書類のコピーに出かけて行くと、機嫌のいい姫愛ちゃんと出会った。
「おはようございます。有里さん」
私と面と向かって、姫愛ちゃんから初めて口をきいた!?
「お、おはよう?」
思わず、疑問形で返してしまった。
まるでスキップしているかのような足取りの軽さで姫愛ちゃんは歩いて行った。
なんだ、なんだー?
コピーをして、役員室に戻ると、姫愛ちゃんが直真さんに雑誌を見せていた。
険しい顔で直真さんはそれを見ている。
会議資料を作ろうと、並べていると声をかけられた。
「有里」
「はい?」
「これはなんだ?」
机の上に雑誌がばさっと放り投げられた。
開いていたページを眺めると『班目社長に新しい恋人!?』という見出しの記事があった。
コンビニで偶然会った時の写真がドーンッと載っている。
私の顔には犯罪者みたいにモザイクがかかってるけど、見る人が見れば、私だとわかる。
「これはコンビニに行ったら、たまたま出会って……」
「本当ですか?有里さん、ずいぶん親し気な写真ですけど?」
親し気?
どこをどうみたらそうなる?
「まるで恋人同士みたいですね」
竜成の顔は確かに笑ってるけど、私の表情はモザイクのせいでよくわからない。
それを都合のいいように解釈してとられたのか、姫愛ちゃんは嬉しそうに笑っていた。
待て待て!
これで私の弱みを握ったとでも!?
「うまいこと見せてますけど、手にコーラとポテチのレジ袋があるのわかります?これ、私がただコンビニに寄っただけの写真じゃないですか。浮気現場を押さえたみたいに言わないでくださいよ」
まったく、冷静にみたらすぐわかるのに―――直真さんが微笑んでいた。
だよねえ。
こんな記事に誰も騙されない。
「姫愛さん、部屋から出てもらえますか?」
「直真お兄様、待って―――」
突き飛ばすように部屋の外に姫愛ちゃんを追い出すと、鍵をかけた。
外からドアをガチャガチャさせながら、姫愛ちゃんがなにか言っていたけど、直真さんは完全無視で雑誌をゴミ箱に投げ捨てた。
「有里。こいつに近寄らない約束じゃなかったか?」
「そうは言っても偶然に出会ったものは回避のしようがないっていうか」
無茶ぶりにもほどがある。
電話が鳴り響き、それを無視して直真さんは言った。
「宮ノ入からだ」
「でないとわからないですよ?」
「わかる」
直真さんはなんとも言えない複雑な表情を浮かべた。
「宮ノ入のババア共もさぞかし、愉快だろうな。俺が妻に浮気されたと今頃、噂が飛び交っていることだろうよ」
「浮気なんてしてませんよ!」
「そうだな」
ふいっと直真さんは視線をそらした。
「挨拶しかしてませんし……その」
「それくらいわかってる」
「え?」
「雑誌の写真を見ろよ。こいつ、カメラ目線だぞ。わざと書かせたに決まってるだろう」
「なんでそんなことを」
「本気だからだろうな」
直真さんは滅多に見せることのない苦々しい表情をしていた。
「つまり、私と直真さんを別れさせるためにでっちあげた!?」
「そういうことだな」
「そこまでわかってるのに怒らなくたっていいじゃないですか」
「は?怒ってねえよ」
「怒ってますよ」
「怒ってねえ!」
「口調がヤクザな時はマジ切れしてんですよっっ」
しかも、目が怖いし。
感情を抑えようとしているけれど、空気もピリピリして怒っているのが伝わってくる。
「なにがデートだ」
「やきもちですか?ちゃんと帰りましたって―――」
ダンッと壁に体を押し付けられた。
「い、いたっ」
「わかってんのか?宮ノ入のババアどもに言われて嫌な思いをするのはお前だぞ」
「仲の良いところを見せておけば、黙りますって」
本気で怒っているのが、わかった。
「な、なんなら、ほら、子どもを作ればいいんですよ!」
「子どもはいらない」
そんな気はしていたけど、改めて言われるとさすがに動揺した。
「いらないって、どうしてですか?」
直真さんは険しい表情をしたまま、無言だった。
「あの、妻として理由を聞く権利はありますよね?」
一瞬、腕の力が緩んだ。
「理由を聞いたら、俺と一緒にいるのが、面倒で嫌になるかもな。そうなったら、お前はあの男の所にでも行けばいい―――」
直真さんの顔を思いっきり、パンッと平手打ちした。
「っ!お前っ」
「グーじゃなかったことを感謝してくださいね!最近、おかしいですよ!余裕なさすぎなんです!」
するっと腕からすり抜け、自分の机まで逃げた。
「はあ?俺のどこが余裕ないって?お前こそ、俺の目が届かない所で男とこそこそ会いやがって!」
「だから、偶然って言ってるじゃないですか」
「こんな都合のいい偶然があるか!」
「私を疑ってるんですか?」
そう聞くと、否定の言葉が返ってこなかった。
本当に何もないのに信じてもらえないなんて酷すぎる!
「もういいです。実家に帰らせてもらいますっ!」
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泣きたい気持ちでバッグを手にすると部屋から飛び出したけれど、背後からは私を追う声も足音すら聞こえなかった。
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