19 / 36
19 興味【竜成 視点】
しおりを挟む
「班目社長。あんな普通を絵に描いたような女性のどこがいいんです?」
秘書の清川が呆れていた。
それもそうだ。
わざわざ住所を調べて、近所まできたんだからな。
八木沢専務と瀧平の娘が食事をしているのを見て、有里が一人だとわかり、気になった。
偶然、会えないかと思っていたら、たまたまコンビニで買い物をする有里に出会った。
厳しい顔でシュークリームを手に取っていた。
きっと有里は悩んでいたに違いない。
自分の夫が他の女と二人で食事をすることを知っていて―――
「どう思う?清川。俺の記事を読んでいたから、興味は持ってもらえてるよな!?」
「恋愛感情だとは限りませんよ。あんな仕事もできて、顔もいい、愛人の子とはいえ、実質は宮ノ入の長子ですよ?女性にしたら、かなり魅力的でしょう」
「そうか?有里はそんな肩書きなんかで、男を選ばない奴だと思うんだけどなー」
俺の正体がわかっても以前と同じ態度で媚びる様子もない。
何度誘ってもなびかない。
「あんな女は初めてだ」
「社長。やめてくださいよ。宮ノ入と一戦やらかすつもりじゃないでしょうね」
「そのつもりだが?」
「仕事でなら、ともかく。女はやめてください」
「俺は有里を救いたい。可哀想だとは思わないのか?他の女と二人でいるのを知っていて、耐えているんだぞ!」
あれが有里の言っていた『わざと嫉妬させる』というやつか?
いや、しかしだ。
あの八木沢直真のことだ。
『わざと』だと、有里に思い込ませ、言い寄ってくる女とうまく浮気をしているんじゃないのか!?
八木沢直真め―――噂通りの曲者だ。
あの男はかなりの悪人だ。
少なくとも、善人ではない。
なぜ、有里があんなヤクザのような男に捕まったんだ。
「けど、班目社長も女性から断られるんですね」
「有里はきっと特別なんだ」
「人妻じゃなければ、応援しますけどね」
「もう手は打った」
「はあ!?」
「俺の長所は行動が早いところだろ?」
清川は動揺していた。
「まだ宮ノ入と事を構えるのは早いですよ!瀧平の株を過半数取得できてないんですからね!」
しばらく、清川のお説教が続いたが、有里のためと思えば、まったく気にならなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「しゃ、社長!!これはっ!」
週刊誌を片手に清川が血相を変えて飛び込んできた。
「やっと記事になったか」
「ま、まさか?狙って!?」
「そうだ」
週刊誌には俺と有里がコンビニで楽しそうに話している姿が写真に収められていた。
うん、なかなかいいな!
「班目社長の新しいお相手は一般女性のYさんで秘書のお仕事をしているって、そのまんまじゃないですか!記者に書かせたのバレバレですよ。まずいですって」
「八木沢専務の顔がみたいな」
楽しそうに笑っていると、清川は怒っていた。
「知りませんよ!宮ノ入を敵に回すようなことをして!今回の瀧平の件でかなり、警戒されてるのに」
「宮ノ入と取引しているわけじゃないし、いいだろう?」
「まあ、そうですけど。相手は経済界の重鎮ですからね」
そんなことは百も承知だ。
週刊誌の記事を見ると
『二人は打ち解けた様子で仲良く話している。これから、どちらかの家でデートだろうか』
これを読んだ八木沢専務はきっと心中穏やかではない。
浮気をしているのは十中八九、八木沢専務だろうが、これを機に有里と別れて浮気相手と結婚すると言いだしてくれれば、もうけものだ。
「盗聴器の仕返しだ」
ぎりっと拳を握った。
可哀想に―――有里はきっと酷い目にあったに違いない。
あの男はわざと盗聴器のスイッチを入れた。
有里の声を聞かせるために。
こんな悔しい思いをしたのは初めてだった。
あれは俺に対するけん制だということはわかっている。
俺はこんなことくらいじゃ、負けないからな―――有里!
「八木沢専務には有里と別れてもらう」
なぜなら、有里を幸せにできるのは俺だけだからだ―――!
起爆剤となるであろう週刊誌を机の上に放り投げた。
まるで、決闘を申し込むように。
秘書の清川が呆れていた。
それもそうだ。
わざわざ住所を調べて、近所まできたんだからな。
八木沢専務と瀧平の娘が食事をしているのを見て、有里が一人だとわかり、気になった。
偶然、会えないかと思っていたら、たまたまコンビニで買い物をする有里に出会った。
厳しい顔でシュークリームを手に取っていた。
きっと有里は悩んでいたに違いない。
自分の夫が他の女と二人で食事をすることを知っていて―――
「どう思う?清川。俺の記事を読んでいたから、興味は持ってもらえてるよな!?」
「恋愛感情だとは限りませんよ。あんな仕事もできて、顔もいい、愛人の子とはいえ、実質は宮ノ入の長子ですよ?女性にしたら、かなり魅力的でしょう」
「そうか?有里はそんな肩書きなんかで、男を選ばない奴だと思うんだけどなー」
俺の正体がわかっても以前と同じ態度で媚びる様子もない。
何度誘ってもなびかない。
「あんな女は初めてだ」
「社長。やめてくださいよ。宮ノ入と一戦やらかすつもりじゃないでしょうね」
「そのつもりだが?」
「仕事でなら、ともかく。女はやめてください」
「俺は有里を救いたい。可哀想だとは思わないのか?他の女と二人でいるのを知っていて、耐えているんだぞ!」
あれが有里の言っていた『わざと嫉妬させる』というやつか?
いや、しかしだ。
あの八木沢直真のことだ。
『わざと』だと、有里に思い込ませ、言い寄ってくる女とうまく浮気をしているんじゃないのか!?
八木沢直真め―――噂通りの曲者だ。
あの男はかなりの悪人だ。
少なくとも、善人ではない。
なぜ、有里があんなヤクザのような男に捕まったんだ。
「けど、班目社長も女性から断られるんですね」
「有里はきっと特別なんだ」
「人妻じゃなければ、応援しますけどね」
「もう手は打った」
「はあ!?」
「俺の長所は行動が早いところだろ?」
清川は動揺していた。
「まだ宮ノ入と事を構えるのは早いですよ!瀧平の株を過半数取得できてないんですからね!」
しばらく、清川のお説教が続いたが、有里のためと思えば、まったく気にならなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「しゃ、社長!!これはっ!」
週刊誌を片手に清川が血相を変えて飛び込んできた。
「やっと記事になったか」
「ま、まさか?狙って!?」
「そうだ」
週刊誌には俺と有里がコンビニで楽しそうに話している姿が写真に収められていた。
うん、なかなかいいな!
「班目社長の新しいお相手は一般女性のYさんで秘書のお仕事をしているって、そのまんまじゃないですか!記者に書かせたのバレバレですよ。まずいですって」
「八木沢専務の顔がみたいな」
楽しそうに笑っていると、清川は怒っていた。
「知りませんよ!宮ノ入を敵に回すようなことをして!今回の瀧平の件でかなり、警戒されてるのに」
「宮ノ入と取引しているわけじゃないし、いいだろう?」
「まあ、そうですけど。相手は経済界の重鎮ですからね」
そんなことは百も承知だ。
週刊誌の記事を見ると
『二人は打ち解けた様子で仲良く話している。これから、どちらかの家でデートだろうか』
これを読んだ八木沢専務はきっと心中穏やかではない。
浮気をしているのは十中八九、八木沢専務だろうが、これを機に有里と別れて浮気相手と結婚すると言いだしてくれれば、もうけものだ。
「盗聴器の仕返しだ」
ぎりっと拳を握った。
可哀想に―――有里はきっと酷い目にあったに違いない。
あの男はわざと盗聴器のスイッチを入れた。
有里の声を聞かせるために。
こんな悔しい思いをしたのは初めてだった。
あれは俺に対するけん制だということはわかっている。
俺はこんなことくらいじゃ、負けないからな―――有里!
「八木沢専務には有里と別れてもらう」
なぜなら、有里を幸せにできるのは俺だけだからだ―――!
起爆剤となるであろう週刊誌を机の上に放り投げた。
まるで、決闘を申し込むように。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,133
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる