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27 拉致!?
「バージョンアップ!バージョンアップ!」
ウキウキしながら、コンビニに寄り、来るべきメンテ開けに備えるため、コーラとポテチを買った。
「直真さんが理解ある旦那様でよかった!」
ああみえて寛大だし、優しいとこあるよね。
敵には容赦ないけど、味方には甘いっていうか。
コンビニを出て、家に向かおうとした所を黒塗りの車が横にとまり、ドアが開いた。
「ん?」
ぐいっと腕を掴まれたかと思ったら、車に引きずり込まれて後部座席に体を打ち付けていた。
「い、いたっ」
なんなの?
今、一体何が?
「久しぶりだな。有里」
ドアが自動で閉まり、振り返った時には車が動き出していた。
「竜成!?」
「元気だったか?」
「ま、まあね。それより、車から降ろして欲しいんだけど」
運転席には清川さんがいた。
「申し訳ありません。班目社長に少しだけ付き合って差し上げてください」
「断るっ!」
二人は断られるとは思っていなかったのか、えっ!?と私を見た。
「有里。お前の好きなアクセサリーでも服でもなんでも買ってやる。だから、今日だけでいい。しばらく、付き合ってくれ」
「そんなものっ!いるかっ!!」
コーラとポテチの袋を見つけると、竜成はサッと取り上げた。
「またこんなもの食べているのか」
「返してよ!」
私のコーラとポテチがっ!
手を伸ばしたけど、届かず、前の席にポイッと投げられた。
なんてことを。
ポテチが崩れたに違いない。
危うく、泣きそうになった。
直真さんに助けてもらうしかないと、バッグからスマホを取り出すと、竜成は素早くそれも取り上げて、投げ捨てた。
「有里。頼む。今日だけでいい。一緒にいてくれ」
「断るって言ってるでしょうが!冗談じゃないっ!竜成がやったことは拉致よ!?犯罪!わかってんの!?」
ブチギレそうになりながら、拳を震わせた。
とうとうグーで殴る日が来たのかもしれない。
「コーラとポテチの恨みを思い知れ!」
シュッとパンチを繰り出すとその手を掴まれて、抱き締められた。
「有里」
「は、はなせーっ!」
もがいても力が強くて抜け出せない。
ならば。
がつっと顎に頭突きをかました。
「っつ!」
痛みで腕の力が緩んだのを見逃さず、逃げるとドアを開けようとしたけど、鍵がかかっていた。
なんて卑怯な!
直真さんが正しかった!
今なら言える。
いきすぎたピュアはただの害でしかないってね!
こいつは羊の皮をかぶった狼だよ。
「近づいたら、ただじゃおかないからねっー!」
元ヤンなめんな!?
「落ちついてくれ。俺はただ最後の思い出に有里と過ごしたかっただけなんだ」
「こんな誘拐まがいなことされて、落ち着けるかっ!次は噛みついてやるっ!」
身構えたまま、言うと清川さんがハラハラとした様子でバックミラー越しにこっちを見た。
「社長。お互い冷静になるまで離れて座っていてください。気になって、運転できませんから」
「ああ、悪い。そうだよな」
車から降ろしてくれる気はないらしく、車の窓から見える外の景色は見覚えのない景色だった。
今日は新エリアの解放だったけど、リアルの新エリア解放してどうするんだよって話よ!
こんな冒険する予定はない。
本当なら今頃、リビングでふかふかクッションを置き、コーラとポテチを横にメンテ明けを待っていたはずだ。
それを考えると泣きそうになる。
にらみつけたけど、竜成は動じてない。
車は川沿いにある高級店が並ぶショッピングエリアに来ると、ようやく車から降ろしてくれた。
「行こう。有里」
何が行こうだよ!
イラッとしたけど、また車に乗せられては困る。
隙を見て逃げ出すしかないけれど、自分がどこにいるか、わからないんじゃ、どうしようもない。
こんな時、インドア趣味な自分を恨みたくなる。
「有里。この服はどうだ?」
竜成は楽しそうに服を選び、アクセサリーを買ってるけど、この有里様を甘くみるんじゃないわよ!?
「試着してみないとわからないかも」
「確かにな」
試着室には女性しか入れない。
一番奥の試着室に入った。
「よし!」
ゲーマーなめんな!
試着するふりをして、首にかけてあったゲーム用のスマホを取り出した。
「直真さーん!!」
こっちは最後の手段、魔王を召還してやる!
「有里?」
スマホの向こうで直真さんの声が聞こえてきて、なんだかホッとして泣きそうになった―――
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