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第3章
44 再会を願って(1)
リュザール王国――大陸の南に位置し、砂漠と険しい山岳がある厳しい土地だ。
その土地で育った人々は、砂漠や山岳地での行動に慣れており、他国がリュザール王国を侵略するのは難しいという。
人が暮らすには不向きな山岳地や砂漠の地に、水を引き、緑を増やしたのが、リュザール一族である。
リュザール一族は古い砂漠の民で、水の青を聖なる色としており、青い布や宝石をお守りに服の一部に身につけているのが特徴だ。
そのため、シャルク・ホジャでもリュザールの民はすぐに見分けることができた。
シャルク・ホジャからリュザール王国の都までは船を使う。
運河から海を目指し、海路からリュザール王国の港に入り、さらに港から馬車で、整備された道を移動をする。
整備される前はラクダで移動していたらしい。
リュザール王国は砂漠ばかりなのかと思っていたけれど、山岳地もあるし、緑も多く想像と違っていた。
「ジグルズ様。リュザール王国は緑豊かな国なんですね。意外でした」
「山岳地帯では茶葉の生産に力を入れている。それから、港のほうは漁業が盛んだ。果物もうまい。リュザール王家が長年、井戸やため池を推奨し、緑化に取り組んだ結果だ」
「香炉や織物も素敵ですね。ドーヴハルク王国では見たことがありませんでした」
ジグルズ様は王宮がある王都へ向かう前に、船が着いた港町の市場に寄ってくれた。
カラフルな魚、スパイスが山積みになった計り売り店、羊肉を焼いている屋台、薄いパンを重ねて売っている店などが並んでいる。
「おや、珍しい! 銀髪の女性だよ」
「ドーヴハルク王国から来たのかい? この国にドーヴハルク王国の王女様が嫁いできたんだけどねぇ」
「残念なことに、お妃様は病気で亡くなってしまってね」
「気候が違いすぎたのかも……」
どうやら、リュザール王家は国民に『若い騎士と逃げた』ではなく、『病気で亡くなった』と発表したらしい。
「遠いところから、よく来てくれたね。ほら、これはサービスだよ!」
ナイフで手際よくフルーツをむき、私にスッと差し出した。
「いただいてもよろしいのですか?」
「もちろん! この国を好きになってほしいからね。いい国だよ」
「ありがとうございます」
誰もが明るく、元気が良くて楽しそうだ。
「リュザール国民はおおらかな性格なんだ」
「びっくりしました」
「ジグルズ様、レフィカ様。そろそろ馬車へ」
他国に行っていたゼリヤが戻り、護衛としてついてきた。
少数の護衛でと、ジグルズ様は言ったけれど、それは叶わなかった。
私たちが乗った馬車の周りには、ゼリヤが選んだ腕利きの護衛たちがいて、さらにリュザール王家が追加で護衛を寄越してきた。
ジグルズ様もさすがに、刺されたばかりなので『減らしてくれ』とは言えなかったようである。
しっかり守られた馬車は、市場を出て王宮へ向かう。
道の両側が砂漠という光景に、思わず身を乗り出した。
「ジグルズ様! あれはラクダですか?」
「そうだ。ラクダに乗った商隊だな」
「あれが……ラクダ……」
ラクダが見れるかしらと、イレーネお姉様と話していた頃が懐かしく感じた。
あの頃の私に、『あなたはラクダを見るわよ』と言っても信じないと思う。
「どうした? なにか面白いことがあったか?」
私がラクダを見て笑っていたからか、ジグルズ様も同じように窓の外を眺めた。
「私、ジグルズ様と出会い、こうして過ごせたことがよかったと思っています。たくさん珍しいものを見れて、こんな遠くまで来たなんて夢みたいです」
「これからも過ごす。そのためにここへ来た」
自分の意思で未来を選べるように――それは夢よりも、もっと夢のように感じた。
「……はい」
うなずいて返事をし、ラクダの隊列を目で追っていると、その先に現れたのは巨大なオアシスの町だった。
砂漠の中に広い湖があり、強い日差しを受けて輝いている。
「あれがリュザール王宮ですか?」
「そうだ。王都だ。あのオアシスの町が、リュザール一族の始まりの地だ。大陸のさらに南部へ行くには、このオアシスの町を経由するか、あの高い山を回るかどちらかしかない」
「どちらも大変そうですね」
「安全を考えたら、砂漠のほうがいい。しっかり整備された道があるからな」
ジグルズ様の部屋で見た地図によると、大陸南部には小さな島々が多く点在していた。
「リュザール王国で栄えているのは王都だけじゃない。大勢の王子や王女が地方を管理し、国の隅々まで発展しているんだ。カリムも地方長官として働いている」
「王女も地方長官を務めるんですか?」
「そうだ。嫁ぐ王女もいるが、どちらかというと、国に残る王女のほうが多い」
私が生まれたドーヴハルク王家とかなり違う。
グランツエルデ王国では共通するものがあったのに、ここでは目に映るもののほとんどが、初めて見るものばかりだ。
ドーヴハルク王国ともグランツエルデ王国とも違う建物と葉の大きな植物。
私たちが到着すると、ラクダが先に到着していて、湖で水を飲んでいた。
「今は道が整備されて、馬車でも来れるが、前はラクダでしか、来れなかったらしいぞ」
「ラクダでしか……」
ラクダに乗れたら、それはそれで楽しい気がする。
「カリムに頼んで、ラクダを手配しよう」
「えっ!?」
「ラクダに乗ってみたいと、顔に書いてある。ハリルがもっと幼い頃、ラクダに乗せてもらっていたから、大丈夫だろう」
――あっ! ハリルと同じ扱いですね……
複雑な心境だったけど、ラクダには乗りたかったので黙っていた。
きっと私だけでなく、イレーネお姉様だってラクダに乗ったに違いない。
「ジグルズ、レフィカ。ようこそ、リュザール王国へ」
「カリム様!」
「カリムが出迎え役か」
「俺意外、この出迎えにふさわしい王子はいないだろう」
ジグルズ様はカリム様にお礼を言った。
「リュザール王家の助けに感謝する」
「ジグルズ、命拾いしたな。俺がいなかったら、お前は危なかったぞ。少しはあの弟に剣を教えろ」
「俺は王にならないと決めた代わりに、イーザックを守るのが、俺の役目だと思っている」
「弟を甘やかすな。ジグルズの命は、お前が考えているほど安くない。もっと自分の身を大切にしろ」
少しだけカリム様は怒っているように見えた。
ジグルズ様が倒れた時、カリム様は平気なように見えたけれど、本当は心配していたのだ。
「悪かった」
「まったくだ。父上もお前がいるから、グランツエルデ王国を信用している。お前の父親がなんと言っていたが知らないが、ジグルズはリュザール王家にとって大切な存在で友人だ。それを忘れるな」
ジグルズ様は驚いた顔をして、それから笑った。
「死ぬつもりはないのだが、これからは気をつけよう」
カリム様はうなずいた。
ジグルズ様は父親から死を望まれていたからか、無意識に自分の命を軽く考えてしまっていたようだ。
ゼリヤは遠くからカリム様に一礼した。
カリム様はゼリヤに目だけで挨拶をする。
――ジグルズ様とゼリヤの出会いは戦場だったと聞いたわ。
リュザール王国がゼリヤの故郷だとすると、元々、グランツエルデ王国とリュザール王国は、友好国ではなかったということだ。
ジグルズ様が両国を繋いでいる。
そして、私の心臓に刻まれた【契約】が、他国からの侵略を防いでいる。
――私の【契約】が消えたら、お父様はどうするの?
グランツエルデ王国へ攻めこむつもりだろうか。
さすがにリュザール王国は遠くて、お父様が戦うには難しい相手だ。
イレーネお姉様の生死を疑ったとしても確かめるために、人をやるのも大変な場所である。
砂漠に囲まれ、町と町を繋ぐ整備された広い道は一本だけ。
そう思うと、お父様がイレーネお姉様の生死をわざわざ確かめずに、リュザール王家から聞いて済ませたのは、調べたところで、ドーヴハルク王国の利にならないと判断したからだろう。
――でも、私の場合は?
グランツエルデ王家に嫁ぐと決まった時のお父様の喜びようが目に浮かぶ。
私がお姉様のように、『騎士と逃げて死んだ』と発表しても人をやり、徹底的に調べるだろう。
グランツエルデとドーヴハルクは隣国同士。
私が生きていると知ったら、お父様は私を――
「レフィカ?」
「はっ、はい!」
「王宮に入ったら、俺は国王に挨拶をするが、レフィカはあちらの入り口から後宮へ行くんだ」
後宮――それは懐かしい響きだった。
「……イレーネお姉様がいるんですね」
「ああ。そうだ」
ジグルズ様は私に微笑んだ。
「今は【契約】のことよりも再会を楽しめ。難しい話は俺が聞く」
「はい」
イレーネお姉様の話を聞いて、私が絶望しないように、ジグルズ様は言ってくれたのだ。
私とイレーネお姉様の【契約】は違うだろうと、カリム様は言った。
リュザール王国の国王陛下は、嫁いでくる王女を救うため、五つ目の【契約】を変えたという。
「ゼリヤ、レフィカの護衛を。他の者は俺についてこい」
ジグルズ様が宮廷へ向かい、ゼリヤが私のそばに立つ。
「レフィカ様、安心してください。私がしっかり護衛します。リュザール王国は故郷ですから、なにがあっても大丈夫ですよ」
「ゼリヤ、ありがとう。心強いわ」
初めて訪れた国。
ドーヴハルク王国とは、景色も雰囲気もまったく違う国に嫁いだ時、イレーネお姉様はどう思ったのだろう。
後宮の回廊を女官が先導し、私とゼリヤを案内する。
中庭の噴水には女性が集まり、美しい柄のショールに身を包んでいた。
女性たちはおしゃべりを止め、その中の一人がこちらへ歩いてくる。
顔を布で隠し、見えないけれど、私にはわかる。
「イレーネお姉様……!」
イレーネお姉様が私に別れを告げ、ドーヴハルク王国を去ってから、約二年。
私は異国の地で、イレーネお姉様と再会を果たした。
その土地で育った人々は、砂漠や山岳地での行動に慣れており、他国がリュザール王国を侵略するのは難しいという。
人が暮らすには不向きな山岳地や砂漠の地に、水を引き、緑を増やしたのが、リュザール一族である。
リュザール一族は古い砂漠の民で、水の青を聖なる色としており、青い布や宝石をお守りに服の一部に身につけているのが特徴だ。
そのため、シャルク・ホジャでもリュザールの民はすぐに見分けることができた。
シャルク・ホジャからリュザール王国の都までは船を使う。
運河から海を目指し、海路からリュザール王国の港に入り、さらに港から馬車で、整備された道を移動をする。
整備される前はラクダで移動していたらしい。
リュザール王国は砂漠ばかりなのかと思っていたけれど、山岳地もあるし、緑も多く想像と違っていた。
「ジグルズ様。リュザール王国は緑豊かな国なんですね。意外でした」
「山岳地帯では茶葉の生産に力を入れている。それから、港のほうは漁業が盛んだ。果物もうまい。リュザール王家が長年、井戸やため池を推奨し、緑化に取り組んだ結果だ」
「香炉や織物も素敵ですね。ドーヴハルク王国では見たことがありませんでした」
ジグルズ様は王宮がある王都へ向かう前に、船が着いた港町の市場に寄ってくれた。
カラフルな魚、スパイスが山積みになった計り売り店、羊肉を焼いている屋台、薄いパンを重ねて売っている店などが並んでいる。
「おや、珍しい! 銀髪の女性だよ」
「ドーヴハルク王国から来たのかい? この国にドーヴハルク王国の王女様が嫁いできたんだけどねぇ」
「残念なことに、お妃様は病気で亡くなってしまってね」
「気候が違いすぎたのかも……」
どうやら、リュザール王家は国民に『若い騎士と逃げた』ではなく、『病気で亡くなった』と発表したらしい。
「遠いところから、よく来てくれたね。ほら、これはサービスだよ!」
ナイフで手際よくフルーツをむき、私にスッと差し出した。
「いただいてもよろしいのですか?」
「もちろん! この国を好きになってほしいからね。いい国だよ」
「ありがとうございます」
誰もが明るく、元気が良くて楽しそうだ。
「リュザール国民はおおらかな性格なんだ」
「びっくりしました」
「ジグルズ様、レフィカ様。そろそろ馬車へ」
他国に行っていたゼリヤが戻り、護衛としてついてきた。
少数の護衛でと、ジグルズ様は言ったけれど、それは叶わなかった。
私たちが乗った馬車の周りには、ゼリヤが選んだ腕利きの護衛たちがいて、さらにリュザール王家が追加で護衛を寄越してきた。
ジグルズ様もさすがに、刺されたばかりなので『減らしてくれ』とは言えなかったようである。
しっかり守られた馬車は、市場を出て王宮へ向かう。
道の両側が砂漠という光景に、思わず身を乗り出した。
「ジグルズ様! あれはラクダですか?」
「そうだ。ラクダに乗った商隊だな」
「あれが……ラクダ……」
ラクダが見れるかしらと、イレーネお姉様と話していた頃が懐かしく感じた。
あの頃の私に、『あなたはラクダを見るわよ』と言っても信じないと思う。
「どうした? なにか面白いことがあったか?」
私がラクダを見て笑っていたからか、ジグルズ様も同じように窓の外を眺めた。
「私、ジグルズ様と出会い、こうして過ごせたことがよかったと思っています。たくさん珍しいものを見れて、こんな遠くまで来たなんて夢みたいです」
「これからも過ごす。そのためにここへ来た」
自分の意思で未来を選べるように――それは夢よりも、もっと夢のように感じた。
「……はい」
うなずいて返事をし、ラクダの隊列を目で追っていると、その先に現れたのは巨大なオアシスの町だった。
砂漠の中に広い湖があり、強い日差しを受けて輝いている。
「あれがリュザール王宮ですか?」
「そうだ。王都だ。あのオアシスの町が、リュザール一族の始まりの地だ。大陸のさらに南部へ行くには、このオアシスの町を経由するか、あの高い山を回るかどちらかしかない」
「どちらも大変そうですね」
「安全を考えたら、砂漠のほうがいい。しっかり整備された道があるからな」
ジグルズ様の部屋で見た地図によると、大陸南部には小さな島々が多く点在していた。
「リュザール王国で栄えているのは王都だけじゃない。大勢の王子や王女が地方を管理し、国の隅々まで発展しているんだ。カリムも地方長官として働いている」
「王女も地方長官を務めるんですか?」
「そうだ。嫁ぐ王女もいるが、どちらかというと、国に残る王女のほうが多い」
私が生まれたドーヴハルク王家とかなり違う。
グランツエルデ王国では共通するものがあったのに、ここでは目に映るもののほとんどが、初めて見るものばかりだ。
ドーヴハルク王国ともグランツエルデ王国とも違う建物と葉の大きな植物。
私たちが到着すると、ラクダが先に到着していて、湖で水を飲んでいた。
「今は道が整備されて、馬車でも来れるが、前はラクダでしか、来れなかったらしいぞ」
「ラクダでしか……」
ラクダに乗れたら、それはそれで楽しい気がする。
「カリムに頼んで、ラクダを手配しよう」
「えっ!?」
「ラクダに乗ってみたいと、顔に書いてある。ハリルがもっと幼い頃、ラクダに乗せてもらっていたから、大丈夫だろう」
――あっ! ハリルと同じ扱いですね……
複雑な心境だったけど、ラクダには乗りたかったので黙っていた。
きっと私だけでなく、イレーネお姉様だってラクダに乗ったに違いない。
「ジグルズ、レフィカ。ようこそ、リュザール王国へ」
「カリム様!」
「カリムが出迎え役か」
「俺意外、この出迎えにふさわしい王子はいないだろう」
ジグルズ様はカリム様にお礼を言った。
「リュザール王家の助けに感謝する」
「ジグルズ、命拾いしたな。俺がいなかったら、お前は危なかったぞ。少しはあの弟に剣を教えろ」
「俺は王にならないと決めた代わりに、イーザックを守るのが、俺の役目だと思っている」
「弟を甘やかすな。ジグルズの命は、お前が考えているほど安くない。もっと自分の身を大切にしろ」
少しだけカリム様は怒っているように見えた。
ジグルズ様が倒れた時、カリム様は平気なように見えたけれど、本当は心配していたのだ。
「悪かった」
「まったくだ。父上もお前がいるから、グランツエルデ王国を信用している。お前の父親がなんと言っていたが知らないが、ジグルズはリュザール王家にとって大切な存在で友人だ。それを忘れるな」
ジグルズ様は驚いた顔をして、それから笑った。
「死ぬつもりはないのだが、これからは気をつけよう」
カリム様はうなずいた。
ジグルズ様は父親から死を望まれていたからか、無意識に自分の命を軽く考えてしまっていたようだ。
ゼリヤは遠くからカリム様に一礼した。
カリム様はゼリヤに目だけで挨拶をする。
――ジグルズ様とゼリヤの出会いは戦場だったと聞いたわ。
リュザール王国がゼリヤの故郷だとすると、元々、グランツエルデ王国とリュザール王国は、友好国ではなかったということだ。
ジグルズ様が両国を繋いでいる。
そして、私の心臓に刻まれた【契約】が、他国からの侵略を防いでいる。
――私の【契約】が消えたら、お父様はどうするの?
グランツエルデ王国へ攻めこむつもりだろうか。
さすがにリュザール王国は遠くて、お父様が戦うには難しい相手だ。
イレーネお姉様の生死を疑ったとしても確かめるために、人をやるのも大変な場所である。
砂漠に囲まれ、町と町を繋ぐ整備された広い道は一本だけ。
そう思うと、お父様がイレーネお姉様の生死をわざわざ確かめずに、リュザール王家から聞いて済ませたのは、調べたところで、ドーヴハルク王国の利にならないと判断したからだろう。
――でも、私の場合は?
グランツエルデ王家に嫁ぐと決まった時のお父様の喜びようが目に浮かぶ。
私がお姉様のように、『騎士と逃げて死んだ』と発表しても人をやり、徹底的に調べるだろう。
グランツエルデとドーヴハルクは隣国同士。
私が生きていると知ったら、お父様は私を――
「レフィカ?」
「はっ、はい!」
「王宮に入ったら、俺は国王に挨拶をするが、レフィカはあちらの入り口から後宮へ行くんだ」
後宮――それは懐かしい響きだった。
「……イレーネお姉様がいるんですね」
「ああ。そうだ」
ジグルズ様は私に微笑んだ。
「今は【契約】のことよりも再会を楽しめ。難しい話は俺が聞く」
「はい」
イレーネお姉様の話を聞いて、私が絶望しないように、ジグルズ様は言ってくれたのだ。
私とイレーネお姉様の【契約】は違うだろうと、カリム様は言った。
リュザール王国の国王陛下は、嫁いでくる王女を救うため、五つ目の【契約】を変えたという。
「ゼリヤ、レフィカの護衛を。他の者は俺についてこい」
ジグルズ様が宮廷へ向かい、ゼリヤが私のそばに立つ。
「レフィカ様、安心してください。私がしっかり護衛します。リュザール王国は故郷ですから、なにがあっても大丈夫ですよ」
「ゼリヤ、ありがとう。心強いわ」
初めて訪れた国。
ドーヴハルク王国とは、景色も雰囲気もまったく違う国に嫁いだ時、イレーネお姉様はどう思ったのだろう。
後宮の回廊を女官が先導し、私とゼリヤを案内する。
中庭の噴水には女性が集まり、美しい柄のショールに身を包んでいた。
女性たちはおしゃべりを止め、その中の一人がこちらへ歩いてくる。
顔を布で隠し、見えないけれど、私にはわかる。
「イレーネお姉様……!」
イレーネお姉様が私に別れを告げ、ドーヴハルク王国を去ってから、約二年。
私は異国の地で、イレーネお姉様と再会を果たした。
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