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4 朝
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「おはよう」
私の朝は『ときラブ』から始まる。
龍空様の『おはよう』ボイスが優しく私を起こしてくれるのだ。
この『ときラブ』目覚まし時計のためにけっこうな枚数の応募券を必要とした。
メーカーが発売している乙女ゲームひとつに付き一枚の応募券がついてくる。
ファンの中では『ときラブ』愛が試されると話題になった。
だけど、保存用、観賞用、プレイ用をがっつり購入する私にとっては応募券を集めるのは容易いこと!
ハガキには感想を添え、シールでデコって、色つきペンで華やかに飾りつけをして、一枚一枚、丁寧に書いたおかげか、目覚まし時計をゲットできた(感無量)。
「そろそろ起きて欲しいな。俺、身動きとれないし」
新しいセリフかな?
あれ、待って?おはよう以外にセリフはないわよ。
―――ないよっ!!
カッと目を開けた。
「あ、起きた」
目覚めた私は腕まくらされて、胸に抱き抱えられていた。
スチルのタイトルは【彼の腕まくら】といったところでしょうか。
いやいやいやいや!?
彼氏いない歴年齢の私には刺激が強すぎ、思考停止―――の後の大混乱。
な、な、な、なにこれえぇぇっ!!
天清さんのはだけたパジャマからは肌が見え、がっしりとした胸筋が見えた。
「ぎゃあああああ!!」
ガバッと起き上がり、脱兎のごとく押し入れに逃げた。
「な、な、何、境界線から入ってきてるんですか!約束が違います」
「俺は入ってないよ。ちゃんと見て」
確かに天清さんは絶対防衛ラインを越えてない。
ほらね?と線を指さした。
「……そうみたいです」
この人は誠実だ。
むしろ、私の寝相が悪かった!?
申し訳ない気持ちで、もそもそと押し入れから這い出た。
「約束は守るよ」
うーんっと天清さんは体を伸ばした。
「俺は今日から出勤するけど、月子は?」
「私も仕事に行きますけど……も……天清さんはどこに出勤を……?」
「うん?俺は婿なんだから、楠野本社に出勤だよ。新崎にはもう行かない」
「お、同じ会社っ!?」
「え?嫌だった?」
嫌も何も。
私の働く姿を見られる。
そう。
私は働いている。
親は私が女子大卒業後、部屋から出ないで、ずっとこもっているのを見て不安になったらしく、会社に私の居場所を作ってくれた。
地下にある資料室に私は出勤し、一人で作業をする気楽な日々。
そんな私の仕事は主に新しいメニューの開発や新聞や雑誌を切り抜いて、レシピをスクラップする仕事をしている。
スクラップは得意中の得意。
なぜなら、『ときラブ』ファイルを作っているから。
仕事内容はともかくよ?
地下室に一人で働く姿を見られたら、さすがの天清さんもドン引きよ。
間違いない。
人とうまくやれない私。
会社で仲のいい人も友達もいない私。
飲み会への参加はゼロ。
家(部屋)と会社の往復のみの日々しか送ってこなかった。
こんな暗い女、離婚したいって絶対に思われる……。
「月子。早く会社に行く準備をして一緒に朝ごはん食べよう?」
ううっ……!その笑顔、眩しすぎる。
朝の光が似合う天清さんは私の不安も知らず、ほらっと手を差し伸べた。
その手をとると、別れがつらくなる。
俯いたまま『どうぞお先に』と言って押入れの中に閉じこもった。
「月子ー?」
「……着替えるので」
「わかった」
やっと顔を見て、私と話をしてくれる人を見つけたと思ったけど。
それは長くない。
結婚式も終わり、一晩たった時、私は夢から醒めて現実を思い出した。
きっと天清さんは後悔する。
こんな私を妻にしたことを。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
両親の手先である通いのお手伝いさんが朝早くから、やってきて朝食を作ってくれた。
手先とわかっていても家事全般をやって頂いていることを考えると、むしろお手伝いさんの方が上位。
お手伝いさんもわかっているのか―――
「月子お嬢さん。首尾はどうでした?」
なんて、お手伝いさんが聞いてきたから両親の手先疑惑は確信に変わった。
―――間違いない。
両親に報告するつもりだ。
冗談じゃないっ!
お手伝いさんから、無言で逃げた。
天清さんのそばにいれば、おおっぴらに聞けないはず!!
そう考えて、ある程度の距離をとりつつ、一人にならないようにした。
作戦は成功したらしく、悔しそうにチラチラと私を見ていた。
昔から、楠野のお手伝いさん達は私を見下していたし、陰で悪口を言ってるのも知っていた。
わざと妹と比べて私を貶すことも―――
朝食を終えて玄関から外に出ると黒塗りの車がとまっていた。
あれ?いつもの車じゃない?
そう思って、眺めていると車のドアの前に生地のいいスーツを着たメガネをかけた神経質そうな男の人が立っていた。
乙女ゲームで言うと王道キャラではないけど、ツンデレキャラでイケメン、学年トップで主人公ちゃんに勉強を教えて急接近みたいなポジションになりそうなクール系タイプだった。
心の声が聴こえるわけがないのにその人は冷たい目で私を一瞥すると、天清さんに挨拶をした。
「天清様。おはようございます」
「あ、おはよー。月子、こいつは俺の秘書で遠堂っていうんだ」
「はあ……」
じろりと私を見て、遠堂さんは車のドアを開けた。
「どうぞ」
なんでこの人、私を睨み付けてるんだろう。
手に持っていたバッグでガードしながら、じりじりと車に乗った。
睨んでるけど、悪意とは違う。
私を嫌っているというよりは天清さんを守るため。
警戒心丸出しの番犬みたいだった。
とりあえず、目は合わせないでおこうと、下を向いて黙ったまま気配をなるべく殺していた。
いつものように―――
私の朝は『ときラブ』から始まる。
龍空様の『おはよう』ボイスが優しく私を起こしてくれるのだ。
この『ときラブ』目覚まし時計のためにけっこうな枚数の応募券を必要とした。
メーカーが発売している乙女ゲームひとつに付き一枚の応募券がついてくる。
ファンの中では『ときラブ』愛が試されると話題になった。
だけど、保存用、観賞用、プレイ用をがっつり購入する私にとっては応募券を集めるのは容易いこと!
ハガキには感想を添え、シールでデコって、色つきペンで華やかに飾りつけをして、一枚一枚、丁寧に書いたおかげか、目覚まし時計をゲットできた(感無量)。
「そろそろ起きて欲しいな。俺、身動きとれないし」
新しいセリフかな?
あれ、待って?おはよう以外にセリフはないわよ。
―――ないよっ!!
カッと目を開けた。
「あ、起きた」
目覚めた私は腕まくらされて、胸に抱き抱えられていた。
スチルのタイトルは【彼の腕まくら】といったところでしょうか。
いやいやいやいや!?
彼氏いない歴年齢の私には刺激が強すぎ、思考停止―――の後の大混乱。
な、な、な、なにこれえぇぇっ!!
天清さんのはだけたパジャマからは肌が見え、がっしりとした胸筋が見えた。
「ぎゃあああああ!!」
ガバッと起き上がり、脱兎のごとく押し入れに逃げた。
「な、な、何、境界線から入ってきてるんですか!約束が違います」
「俺は入ってないよ。ちゃんと見て」
確かに天清さんは絶対防衛ラインを越えてない。
ほらね?と線を指さした。
「……そうみたいです」
この人は誠実だ。
むしろ、私の寝相が悪かった!?
申し訳ない気持ちで、もそもそと押し入れから這い出た。
「約束は守るよ」
うーんっと天清さんは体を伸ばした。
「俺は今日から出勤するけど、月子は?」
「私も仕事に行きますけど……も……天清さんはどこに出勤を……?」
「うん?俺は婿なんだから、楠野本社に出勤だよ。新崎にはもう行かない」
「お、同じ会社っ!?」
「え?嫌だった?」
嫌も何も。
私の働く姿を見られる。
そう。
私は働いている。
親は私が女子大卒業後、部屋から出ないで、ずっとこもっているのを見て不安になったらしく、会社に私の居場所を作ってくれた。
地下にある資料室に私は出勤し、一人で作業をする気楽な日々。
そんな私の仕事は主に新しいメニューの開発や新聞や雑誌を切り抜いて、レシピをスクラップする仕事をしている。
スクラップは得意中の得意。
なぜなら、『ときラブ』ファイルを作っているから。
仕事内容はともかくよ?
地下室に一人で働く姿を見られたら、さすがの天清さんもドン引きよ。
間違いない。
人とうまくやれない私。
会社で仲のいい人も友達もいない私。
飲み会への参加はゼロ。
家(部屋)と会社の往復のみの日々しか送ってこなかった。
こんな暗い女、離婚したいって絶対に思われる……。
「月子。早く会社に行く準備をして一緒に朝ごはん食べよう?」
ううっ……!その笑顔、眩しすぎる。
朝の光が似合う天清さんは私の不安も知らず、ほらっと手を差し伸べた。
その手をとると、別れがつらくなる。
俯いたまま『どうぞお先に』と言って押入れの中に閉じこもった。
「月子ー?」
「……着替えるので」
「わかった」
やっと顔を見て、私と話をしてくれる人を見つけたと思ったけど。
それは長くない。
結婚式も終わり、一晩たった時、私は夢から醒めて現実を思い出した。
きっと天清さんは後悔する。
こんな私を妻にしたことを。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
両親の手先である通いのお手伝いさんが朝早くから、やってきて朝食を作ってくれた。
手先とわかっていても家事全般をやって頂いていることを考えると、むしろお手伝いさんの方が上位。
お手伝いさんもわかっているのか―――
「月子お嬢さん。首尾はどうでした?」
なんて、お手伝いさんが聞いてきたから両親の手先疑惑は確信に変わった。
―――間違いない。
両親に報告するつもりだ。
冗談じゃないっ!
お手伝いさんから、無言で逃げた。
天清さんのそばにいれば、おおっぴらに聞けないはず!!
そう考えて、ある程度の距離をとりつつ、一人にならないようにした。
作戦は成功したらしく、悔しそうにチラチラと私を見ていた。
昔から、楠野のお手伝いさん達は私を見下していたし、陰で悪口を言ってるのも知っていた。
わざと妹と比べて私を貶すことも―――
朝食を終えて玄関から外に出ると黒塗りの車がとまっていた。
あれ?いつもの車じゃない?
そう思って、眺めていると車のドアの前に生地のいいスーツを着たメガネをかけた神経質そうな男の人が立っていた。
乙女ゲームで言うと王道キャラではないけど、ツンデレキャラでイケメン、学年トップで主人公ちゃんに勉強を教えて急接近みたいなポジションになりそうなクール系タイプだった。
心の声が聴こえるわけがないのにその人は冷たい目で私を一瞥すると、天清さんに挨拶をした。
「天清様。おはようございます」
「あ、おはよー。月子、こいつは俺の秘書で遠堂っていうんだ」
「はあ……」
じろりと私を見て、遠堂さんは車のドアを開けた。
「どうぞ」
なんでこの人、私を睨み付けてるんだろう。
手に持っていたバッグでガードしながら、じりじりと車に乗った。
睨んでるけど、悪意とは違う。
私を嫌っているというよりは天清さんを守るため。
警戒心丸出しの番犬みたいだった。
とりあえず、目は合わせないでおこうと、下を向いて黙ったまま気配をなるべく殺していた。
いつものように―――
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