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番外編 (朗久 高校生)
1 社長は高校生
「時任、大学に行かないのか?」
「はい。仕事が忙しいので」
担任の教師は渋い顔をし、学年主任の教師まで隣にいて、説得を試みようとしている。
迷惑な。
高校は全寮制の男子校に入学した。
実家から離れたかったために全寮制を選んだだけなのだが、進学しないという選択をした俺の希望は進学校として、有名な高校にとっては大問題のようだった。
海外の大学とは言わないが、最低でも国立大にでも行って欲しいのだろう。
既に起業し、仕事をする身としては進学の必要はない。
仕事を犠牲にして、大学に進学するメリットはあるか?―――ない。
よし、決まった。
「話は以上でしょうか。忙しいので、失礼します」
「お、おう」
「あ、ああ。忙しいところ悪かったな」
間違いなく、高校の教師よりは稼いでいる。
それを面白く思わない教師も当然ながらいた。
下らない嫌がらせをしたり、嫌味を言う奴もいたが、気にしていない。
なぜなら、相手にしているヒマがないからだ。
「あ、時任先輩じゃない、社長!今週の日曜、みんなでスーツ買いに行きませんか?」
一学年下の後輩の真辺、一応役職は専務と言葉数の少ない同級生の副社長、倉永夏向―――まだ何人かいるが、二人が呼びにきた。
ちなみに社長以外の役職はアミダくじで決めた。
「スーツなんかいるか?」
「あー、ダメダメ。いりますって。こないだ学生服で交渉したら、全然相手にしてもらえなかったじゃないですか」
「絶対にいる」
副社長がボソッと呟いた。
まだ何か言っていたが、聞こえなかった。
声がデカイのも困りものだが、小さいのも困る。
専務となった後輩は社交的な性格のせいか、大人相手にも物怖じせず、うまくやり過ごすが、やはりそこは高校生で外見だけで話を聞く前に断れることが多い。
「わかった」
後輩の気持ちを汲んで、スーツの購入を承諾したのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
日曜日、寮に外出届けを提出し、学生服で町に出た。
そのせいか、年齢がバレて、行く店、行く店でからかわれたり、馬鹿にしたような態度をとられ、購買意欲はがた落ちだった。
「高校生がスーツ?うちの店は高いよ。無理しないほうがいい」
「何に使うんだ?文化祭なら、安いのを買ったらいい」
「成人式にはまだ早いぞ」
買う気が失せて、ファーストフード店に逃げ込んだ。
「俺はこれから、ジャージで暮らしてやる!!」
ハンバーガーをにぎりしめ、誓った。
「世間の風が冷たい」
「人間不信になりそうだね」
いや、副社長。すでにお前はちょっと人間不信ぎみだけどな。と、心の中で思いながら、バニラシェイクのストローをイライラとかんだ。
「せめて、社長がその鬱陶しい前髪をあげて、コンタクトにしてきたら、マシだったと思いますよ」
「はあ?なんでだ」
「美意識が低い奴はこれだから」
「人生損していますよ」
「神様も無駄なことをしたと、悔やんでいるだろうな」
なぜ、俺が全員から責められているか、わからない。
「あの詰め襟の制服って、超進学校の男子校じゃない?」
「本当だー!話しかける?」
「えー!無理だよー」
きゃあきゃあと騒がしい声に社交的な後輩がひらひらと手を振った。
きゃーと甲高い声がした。
「同じ年頃なら、ウケはいいんですけどねー」
はあ、と全員がため息をついた。
「どうします?諦めて安いスーツにしますか?」
後輩が悲しい顔でフライドポテトをつまんで、口に入れた。
「それこそ、馬鹿にされる」
副社長は砂糖をいくつ入れるのか、何本もスティックシュガーを持ってきていた。
大量に砂糖を入れたホットコーヒーを飲み干すのを無言で眺めてしまった。
常識から一番遠い副社長が正論を言ったが、正直めんどい。
二階席からスクランブル交差点を眺めていると、『絹山百貨店』の紙袋を持った人が見えた。
「なあ。百貨店はどうだ?」
「あー、ラストに行ってみますか」
「百貨店なら、幅広い客が来るだろうから、入店と同時にじろじろ見られないだろうしな」
「よし!決まりだ!」
ハンバーガーを包んであった紙をくしゃくしゃにして丸め、トレイにポイッと捨て、立ち上がったのだった。
「はい。仕事が忙しいので」
担任の教師は渋い顔をし、学年主任の教師まで隣にいて、説得を試みようとしている。
迷惑な。
高校は全寮制の男子校に入学した。
実家から離れたかったために全寮制を選んだだけなのだが、進学しないという選択をした俺の希望は進学校として、有名な高校にとっては大問題のようだった。
海外の大学とは言わないが、最低でも国立大にでも行って欲しいのだろう。
既に起業し、仕事をする身としては進学の必要はない。
仕事を犠牲にして、大学に進学するメリットはあるか?―――ない。
よし、決まった。
「話は以上でしょうか。忙しいので、失礼します」
「お、おう」
「あ、ああ。忙しいところ悪かったな」
間違いなく、高校の教師よりは稼いでいる。
それを面白く思わない教師も当然ながらいた。
下らない嫌がらせをしたり、嫌味を言う奴もいたが、気にしていない。
なぜなら、相手にしているヒマがないからだ。
「あ、時任先輩じゃない、社長!今週の日曜、みんなでスーツ買いに行きませんか?」
一学年下の後輩の真辺、一応役職は専務と言葉数の少ない同級生の副社長、倉永夏向―――まだ何人かいるが、二人が呼びにきた。
ちなみに社長以外の役職はアミダくじで決めた。
「スーツなんかいるか?」
「あー、ダメダメ。いりますって。こないだ学生服で交渉したら、全然相手にしてもらえなかったじゃないですか」
「絶対にいる」
副社長がボソッと呟いた。
まだ何か言っていたが、聞こえなかった。
声がデカイのも困りものだが、小さいのも困る。
専務となった後輩は社交的な性格のせいか、大人相手にも物怖じせず、うまくやり過ごすが、やはりそこは高校生で外見だけで話を聞く前に断れることが多い。
「わかった」
後輩の気持ちを汲んで、スーツの購入を承諾したのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
日曜日、寮に外出届けを提出し、学生服で町に出た。
そのせいか、年齢がバレて、行く店、行く店でからかわれたり、馬鹿にしたような態度をとられ、購買意欲はがた落ちだった。
「高校生がスーツ?うちの店は高いよ。無理しないほうがいい」
「何に使うんだ?文化祭なら、安いのを買ったらいい」
「成人式にはまだ早いぞ」
買う気が失せて、ファーストフード店に逃げ込んだ。
「俺はこれから、ジャージで暮らしてやる!!」
ハンバーガーをにぎりしめ、誓った。
「世間の風が冷たい」
「人間不信になりそうだね」
いや、副社長。すでにお前はちょっと人間不信ぎみだけどな。と、心の中で思いながら、バニラシェイクのストローをイライラとかんだ。
「せめて、社長がその鬱陶しい前髪をあげて、コンタクトにしてきたら、マシだったと思いますよ」
「はあ?なんでだ」
「美意識が低い奴はこれだから」
「人生損していますよ」
「神様も無駄なことをしたと、悔やんでいるだろうな」
なぜ、俺が全員から責められているか、わからない。
「あの詰め襟の制服って、超進学校の男子校じゃない?」
「本当だー!話しかける?」
「えー!無理だよー」
きゃあきゃあと騒がしい声に社交的な後輩がひらひらと手を振った。
きゃーと甲高い声がした。
「同じ年頃なら、ウケはいいんですけどねー」
はあ、と全員がため息をついた。
「どうします?諦めて安いスーツにしますか?」
後輩が悲しい顔でフライドポテトをつまんで、口に入れた。
「それこそ、馬鹿にされる」
副社長は砂糖をいくつ入れるのか、何本もスティックシュガーを持ってきていた。
大量に砂糖を入れたホットコーヒーを飲み干すのを無言で眺めてしまった。
常識から一番遠い副社長が正論を言ったが、正直めんどい。
二階席からスクランブル交差点を眺めていると、『絹山百貨店』の紙袋を持った人が見えた。
「なあ。百貨店はどうだ?」
「あー、ラストに行ってみますか」
「百貨店なら、幅広い客が来るだろうから、入店と同時にじろじろ見られないだろうしな」
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