善人が歩む悪逆無道 〜悪魔と交わす契約のキスは復讐の味〜

なんちゃってアルゴン

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悪逆無道の第一歩

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 無事に二頭のチャルロックサウルスを倒した俺達は、森から脱出する為に足を進めている。
 リリスの案内やウンチクを適当に聞き流しながら、俺はチャルロックサウルス達にトドメを刺した時の事を思い出していた。

 飛び散る真っ赤な体液。裂けてグチャグチャになった肉。砕けてめちゃくちゃになった骨。
 そして、そんなグロテスクな筈の惨状を自分で作り出すのが、途中からたまらなく興奮して楽しくなっていた事。

 いくら裏切られた復讐の為とは言え、あんな残酷な行為を復讐相手にする事は許されるのか? そんな行為に、これから慣れていってしまうのは良いのか? 

 そんな考えが、頭の奥にこびりついて離れなかった。

「ほらヨシヒト! 森を抜けたよ、見て見て!」
「お、おお。ホントだ……すごいな」
「ね? ボクの案内に間違いはなかったでしょー♪」

 リリスの声に我に帰ると、目の前にはThe.大自然! って表現じゃ物足りないくらい青々とした草原が一面に広がっていた。

「どうどう? 『キュリティシャス地方』は秘境の大森林だけじゃなくて、大草原だってすごいんだから! こんな景色、他じゃ中々見れないよー!」

 リリスのウンチクによると、秘境の大森林のマナの影響を強く受けている土地を「キュリティシャス地方」と言うらしく、この草原は「キュリティシャスの大草原」と言うそうだ。
 大森林だったり大草原だったり、何かとスケールが大きいな。

「無事に森を抜けられたのはよかったけど、この後はどうするんだ? もうすぐ日も沈んじまいそうだけど、テントでも張って野宿か?」
「んー、ボクはそれでも別に良いけど……あ♪ 確かこの近くに村があったから、そこに行こうよ!」
「お、村か! ……いやでも、今は俺とか魔人種だしリリスは悪魔だし、厄介事とかにならないか……? 俺チャルロックサウルス関係で、もうクタクタなんだけど……」
「だいじょーぶだいじょーぶ! 中央地方ならともかく、それ以外の場所なら種族で差別なんて滅多にされないから! ボク達みたいな魔族の悪魔だって、例外じゃないよ♪」
「……そうなのか?」
「そうそう♪ それに、その村は亜人種とか魔人種とかも住んでた筈だから、心配ないよ! さ、行こ行こ♪」

 色々と気になるワードはあったが、そう言う事ならまあ良いか、と二人でその村に歩き出した。



 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




「うっそ!? 大変! あの村、今襲われちゃってるみたい!」
「なにぃ?!」
「あの旗印、中央の人間達だ! でも、何でこんな所まで……?!」
「ッ!」
「あ! 危ないよ! ヨシヒトッ!」

 目に付いた家に片っ端から入って、生存者がいないか確認していく。
 一軒、二軒、三軒……四軒目でようやく見つけられたと思ったが、それもすぐに死体に変わる。

「あれ? コイツで最後だと思ったのに、まだ生き残りがいたのかよ」

 うつ伏せに倒れた死体から剣を引き抜きながら、男が話しかけてくる。

「……何で、殺した? この村の人達が、お前らに何かしたのか?」
「ハァ? 人じゃねぇだろ『ヒトモドキ』だろうが。人間がお前らみたいな『人の形をした化け物』を駆除してやって何が悪いってんだ」

 目の前にいる男の言葉で、少しずつ意識が遠くなっていく。
 拳を握り締めながら、身体に魔力が怒りと共に満ちていく。
 魔力を目に集めて、鑑定魔眼を発動させようとした。





「ん? てかお前のその顔……もしかしてお前、後藤じゃね?」
「! ……ならお前は……長谷川三太で、合ってるか……?」
「おー! 合ってる合ってる! いや、今は『テオ・サンダーソニア』って名前だけどな! ……いやぁ、マジかよ。お前『ヒトモドキ』に転生してんのかよ! 転生しても、ツイテねぇんだな!」

 今すぐにでも、嘲笑ってくるコイツをぶん殴ってやりたい気分だが、それはもう少しの辛抱だ。
 おそらく、やっと出会えた復讐相手の内の一人だ。
 少しでもコイツから、復讐相手達に関わる情報を聞き出さないと……。

「ハハハッ! 超ウケる! 栄子の事と言い、今と言い、ホントついてねぇな! 真面目しか取り柄の無い真面目チャンよぉ!」
「……本当にな。あと……転生する前に、栄子から純一の方がよかったって散々言われたよ。三太は二人と一緒に3Pか? それとも、純一と順番こか?」
「はぁ? んな訳ねぇだろ。あの二人に俺と健二、女は椎奈と楓も入れて、大乱痴気パーティよ! この世界でだってヤリまくってるんだぜ! ホント良い女達だわ、アイツらの身体はマジでたまんねぇのよ!」
「……………………そっか」

 俺達の結婚を祝ってくれた、友人だと思ってた奴らがほぼ全員か……。

「で? それ知ってどうするよ? 悔しかったらやり返してみるか? 寝取られザコ野郎!」

 そう吠えると三太の身体が、凄まじい電気を帯びる。

「これが俺の転生特典の『雷帝』だ! 『ヒトモドキ』のザコ野郎共なんざ、これで全員消し炭にしてやる!」

 電撃を警戒しながら鑑定魔眼を発動して、奴のステータスの鑑定を試みる。

『種族「人間」 名前「テオ・サンダーソニア」(ハセガワ サンタ) LV27
 スキル 「雷帝LV10」
 他のステータス鑑定に失敗しました』

 一部ステータスで分からないところはあるけど、まず間違いなく格上と言う事は分かった。
 チャルロックサウルスの時みたいに真正面からぶん殴ってやりたいが、奴が帯電している所為で迂闊に近付けない。

「来ないなら、こっちからいくぞ! 黒焦げで済むと良いなぁ!」

 三太が纏っていた凄まじい電撃が、俺目掛けて殺到する。
 咄嗟に魔紋様のスキルで電撃をガードするが、完全には防ぎきれずに痛みと痺れが襲ってくる。

「う、ぐっ……!」
「おらおらどうしたー! まだ半分のパワーも出してねぇぞー!」

 そう言って三太は言葉通り、電撃のパワーを上げてくる。
 くそっ! このままじゃ、何もできない……。
 いや! 何もできないままで、終わってたまるかっ!! 

 魔紋様に限界まで、魔力を流し込んで自分を強化していく。
 気合いと、根性と、意地で、一歩一歩踏み締めていきながら、足を前に進めていく。
 三太の顔色が、変わったのが見えた。

「このっ『雷帝』フルパワーだ! くたばれ化け物ー!!!」

 目の前が真っ白になるが、引いてやらない! 
 絶対に、引いてやるもんか!!! 

 もっとだ! もっと魔力を魔紋様に! 

 もっと よこせ ! 












『魔紋様に、所定以上の魔力量が蓄積されました。これより、スキルの開放を行ないます』

 『スキル「強欲LV1」が開放されました』

『以上のスキルが開放された事で、スキル「魔王候補者」を習得しました』











 視界が開けて辺りを見回すと、俺達のいた家は全壊してほぼ炭の様になっていた。
 そして、三太は尻もちをつきながら恐ろしいモノを見るように、俺に顔を向けている。

 ステータスに何かしらあったのは辛うじて分かったから、ふらつく目て自分のステータスを鑑定して見る。

『種族「魔人種」 名前「ゴトウ・ヨシヒト」 LV1
 スキル 「魔紋様LV3」「鑑定魔眼LV1」「「強欲LV1」「大悪魔の眷属LV1」「魔王候補者LV1」
 HP7/35 MP1/30 SP2/30』

 は? ナニコレ? 
 新しいスキルの名前的に……七つの大罪関係のスキル!? マジか! 

「こ、この化け物がぁー!!」

 三太が足元に落ちていた剣を掴んで切り掛かってきた……! 
 ! こっちは丸腰なんだぞ! 

「ひっ! お、俺の剣が!」

 その瞬間、右手にズッシリとした重さと一緒に、三太の持っていた剣が握られていた。
 え、これもスキルの力? 

 三太の方を見ると震えて立ち上がれない様で、スキルを使ってくる様子もない。
 ゆっくりと近寄ると真っ青だった三太の顔が、さらに青くなったのがわかった。

「ま、待ってくれ。悪かった、俺達が悪かった!」

 もう一歩近づく。

「もう帰る! これ以上ここの奴らに何もしない! もちろん金だって払う!」

 三太の首元に、剣先を優しく当てる。

「栄子との事もあやま」

 思ってたよりずっと力を込めて握っていた剣を、ゆっくりと手離す。
 そして突き刺した剣ごと、三太の遺体を思いきり蹴り飛ばす。
 糸の切れた大きな人形の様に、ヘンテコな形でドシャリと地面に転がった。

 すると、その音に釣られてか十数人ほどの人間達が集まってきた。
 おそらく、三太と共にこの村を襲撃した奴らだろう。
 三太の遺体を見て状況を把握したらしい面々は、それぞれ油断無く武器を構えてくる。

 俺も同じく、戦う為の構えをとる。

「スキル『雷帝』発動」

 今度は左手に、三太がやっていた様に電撃を纏わせる。

 各々が驚愕に顔を歪める中、俺は高揚感からニヤリと口元を歪める。


「…………黒焦げで済むと良いな」


 
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