BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

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4章 二つの指輪

36.過去との決別と告白

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「俺と来てくれ。そうすれば刑が軽くなる」
アラン様が兄様に話しかける。
 リオネス兄様は、片方の腕を掴んだまま下を見ている。

「兄様、怪我の手当をしよう? 一緒に行こう?」
僕は兄様に魔法を使ってしまった。加減ができなくて兄様に怪我をさせた。

「相変わらず、攻撃系魔法は加減が出来ないのだな」
 ふ……、と兄様は顔を歪ませた。
「でも私より、魔法威力は上だ。何もかも、お前に敵わなかった」
話し終えて、指を下側に向けた。
「……ぇ、よ」
 
「えっ!? アラン様、伏せて!」
 リオネス兄様は、僕達と兄様の衝撃波を床に叩きつけた。

 バン!
「くっ……! 凄い威力だ! 土煙が舞う……」
 なぜ僕達に向けて、魔法を撃たなかったのだろう?
腕でほこりを防御した。

「あっ! 兄様、待って!」
「……もう二度と合わない」

 リオネス兄様は片手をかばうようにして、壊れた勝手口から出て行ってしまった。
「リオネス兄様!」
土煙が、兄様の姿を隠していく。
 
 たった一人の兄弟だったのに……。
僕は溢れる涙がとまらなかった。

「ルカ……。こんなに痛めつけられて」
アラン様が僕の頬を優しく両手で掴んだ。僕は床にペタンと座っていた。
「アラ、ン様」
 ポタポタと流れる涙を、アラン様はハンカチで拭いてくれたけれど、とまらない。

 
「俺は15歳の、新人騎士の時。後悔したことがあった」
アラン様は悲痛な表情で、僕に話しかけてきた。ハンカチで涙を拭いてくれている。
  
「初任務で、さらわれた子供達を騎士団の皆で救出した。俺は、偶然見つけたルカを助けた」
他にもさらわれた子供達がいた……?
 
「そして最重要救出人を要請した、依頼主の屋敷に行くと君の両親がいた」
頬をさする、アラン様の大きな手のひら。
  
「え……。アラン様が、両親と会っていたなんて、知らない」
「ルカは俺の腕に抱かれて、気を失っていたからな」
 アラン様の瞳を見て、話の続きを待つ。

「当時、急に代わった団長と副団長。そいつらは貴族の都合のよいように仕事をして、金をもらっていた」
賃金は国から出ているはず。……それは。
 
賄賂わいろとかだな。腐りきった騎士団に15の俺は、何も出来なかった。しようとしたら脅された」

「正確には、君を助けられなかったんだ」
アラン様は悲痛な顔をして、僕をまっすぐ見ている。
「だから俺はそのあと無我夢中で鍛錬して、手柄をあげ力をつけて、腐りきった騎士団を一掃した。何年もかかった」
 アラン様が異例の早さで、騎士団団長になったのは話題になった。
 
「英雄騎士と呼ばれる男は。情けないことに15歳のときに救えなかった子供を、次は必ず助けるために我武者羅がむしゃらに戦ってきた男なんだ」
 アラン様は僕から目を反らさず、話をしてくれた。

「情けないなんて、思いません! 15歳のアラン様にさらわれた場所から助けてもらって、売られずに済んだのですから……!」
 またポタポタと涙が溢れる。
「みんなのために、傷だらけになって戦って平和になったのに、そんなことを言わないで下さい……」

 僕は知っている。先陣を切って敵に向かって行ったということを。
「仲間をかばい、幾度も傷ついたと、お城の騎士さん達に聞きました……」

 もう涙がとまらない。
「僕を助けてくれました……。もう3度も、助けてもらいました。ありがとう、御座います」

 わっ……! と泣き声をあげて、アラン様の胸に飛び込んた。

「ルカ……」
アラン様は僕を、大きな腕と体で抱きしめてくれた。
少し高い体温と、薫り高いムスクのような香り。安心する……。

「……10も年が上だが」
「10? はい?」
 僕はアラン様が話しかけたので、顔を上げた。アラン様は今年28歳のはず。僕より10歳、年上だけど?

 ジッと僕の瞳を見て話す、アラン様。
「ルカが好きだ」


 ……え? るかがすきだ。ルカが好きだ?
「僕が、好き……!?」
 まちがい、なんだろうか。アラン様が僕を好きと言った?

「そうだ。ルカが好きだ」
迷いのない、告白。まっすぐに伝えてくれた。僕はボロボロ涙をこぼした。

 土煙がおさまり、部屋の中はぐちゃぐちゃだろう。でも構わず、お互いに目を合わせていた。

「……ルカは、誰か他に好きな人がいるのか?」
僕はあまりにも、驚きすぎて返事をしてなかった。アラン様は僕の返事を待っている。
「いません! アラン様が一番、好きです!」

 かぁぁぁぁ! と顔が真っ赤になった。本人に言ってしまった。

「そうか。良かった」
アラン様はそう言って、僕の頭を撫でた。
「なぜこんなに髪の毛が切られている? あの男にやられたのか?」
 ギッ! とアラン様は奥歯を噛み締めたのが分かった。

「ち、違います。前髪を掴まれてしまったので、自分で切りました……わっ!」
 ぼふっ! と、アラン様の胸に抱き込まれた。鍛えたアラン様の胸板は厚い。

 大きな手のひらで頭を撫でて、短くなった前髪にチュッとキスをした。
 わ……。前髪にキスされた。僕はアラン様の胸に顔をうずめながら真っ赤になっていた。
「前髪は切ってそろえよう。ああでも、その緑の綺麗な瞳が見れるのは嬉しい」


 そっと背中に両腕をまわしてギュッと力を入れた。アラン様の体温と呼吸を、近くに感じて嬉しかった。
 
  
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