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4章 二つの指輪

49.伝説級の指輪

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  王様や臣下の方達、貴族の人々とアラン。たくさんの人々に見守られて僕は、この国を守る魔法陣を展開した。

「どうか、この国をお守り下さい」
真上に腕を伸ばして、力を放出する。
 おお――――っ! と周りから驚きの声があがった。

 空高く光る輪っかが現れて、それがだんだんと大きく広がっていく……。

「綺麗だ……」
 キラキラと光る、光の粒が雨のように降ってくる。
あともう少し、全体を覆わなければいけない。
 
「くっ……!」
力が一気に抜けていく。
「私も手伝いましょう!」
リヴァイさんが、手伝うと言って隣に来てくれた。ありがたい。
 リヴァイさんも魔法を唱えた。

「ルカ」
アランが僕に話しかけてきた。僕は顔だけアランの方へ向いた。
 
「すべてが終わったら。ゆっくりと、旅行にでも行こう」
 アランは僕を見て微笑んだ。周りの人達はアランの笑顔に見惚れていた。
 ほら。やっぱりアランは素敵な人なんだから。

 僕はにっこりと笑って頷いた。
「約束ですよ! 絶対に行きましょうね!」
アランも頷いて、指輪をしている手を挙げて僕に見せた。
 指輪はキラキラと光って、周囲に光の雨が降った。

 あれ? 少し楽になった。……もしかしてアランが?

「ルカさん! もう少しです!」
「はいっ!」
 ありったけの力を込めて、祈った。

 キィィ――――ン!
「で、出来た……」
 はぁ……。初めてやってみた、大きな結界だったけど出来た。理屈は同じだから失敗はしないと思ったけど、大変だった。

「リヴァイさん、あなたの手助けがあったので出来ました。ありがとう……、御座います」
 ガクッ……と、力が抜けて両膝をついてしまった。
「私は手助けしただけです。初めてにしては上出来です。素晴らしい」
 リヴァイさんが褒めてくれた。完成させて良かった。

「アラン様、騎士団の準備が出来ました! 出立できます!」
 ニールさんが走って準備が出来たと知らせにきた。
「分かった。すぐに出立しよう」

 空を見れば。
虹色に輝く、国を半円形に覆った結界があった。

「国境付近の町や村の人々は避難を。王都の者達は家の中や、教会などに。外に出ないよう、指示を!」
アランの指示で、慌ただしく騎士達は動いた。

「ルカ、行ってくる」
 アランが僕の腕を取り、立たせてくれた。
「気をつけて。行ってらっしゃい」
 いつものように送り出す。
 
 少しフラフラしている僕に気がついた、獣人の王が歩み寄ってきた。
「大丈夫か? 我が支えてやろう」
 ニコニコと笑い、僕の手を取ろうとしたがアランが僕の前に出て遮った。

「けっこうだ。リヴァイ、頼むぞ」
「かしこまりました。私が責任を持ってルカ君を守ります」
 側にいたリヴァイさんが、僕を支えてくれた。

「ふむ。つけ入る隙がないな。まあ今の所は、我慢するか……」
 今の? 悪い人じゃないと思うけど、強引だ。気をつけよう。

「王も中に。獣人の王もご一緒に」
「うむ。結界があれば安心だ。皆の者も城の中へ!」
 ニールさんが二人の王様を安全な場所に案内した。

 僕とリヴァイさんは最後に残って、結界の様子を見ることにした。
あとはアランと騎士団の方達が、魔物達を討伐してくれれば……!

 お城の見張り台から、アランと騎士団の人達が出立して行くのを見送った。
 どうか皆が無事に戻れますように。この国の人達が守れますように。
 僕は両手を重ねて祈った。

「アランなら大丈夫でしょう。彼は加護の指輪が、守ってくれてますから」
リヴァイさんが僕に話しかけてくれた。リヴァイさんとの会話は、アランとまた違った安心感がある。

「……加護の指輪って」
僕が加護を付けた指輪だろうか?
「ああ。アランがつけている指輪です。誰がその加護をつけたのか教えてくれませんでしたが、あれは伝説級の指輪ですよ。英雄騎士が持つにふさわしい、指輪です」

 ……伝説級の指輪? え――と……。
僕は、冷や汗をダラダラ流すような気持ちになった。
「値段はつけられません。後世に大事に伝えなければならない、貴重な宝物ですよ」

 まさかそんなにすごい加護をつけてしまったなんて。ただ、アランの無事(その他)を祈っただけなのに。

「もちろんその指輪ばかりではなく、アラン本人の功績です」
そうだ。僕はアランの功績の、手伝いが出来たんだ。

 リヴァイさんに色々話を聞けた。リヴァイさんもニールさんも騎士団の多くの者達も、アランに命を助けられたと聞いた。
 
 争いが集結しても、亡くなった騎士の家族を気にかけて援助したり、孤児になった子供達が暮らす孤児院を建設したりと表には知らされないアランの優しさを聞けた。
 大恩ある者が、アランを支えていきたいと密かに同盟を組んでいるとのこと。
 
 本人はまったく知らないらしい。アランらしくて頬がゆるむ。

「あっ? ルカさん、私の弟子から連絡がきました」
「えっ! な、なんて!?」
リヴァイさんが指差す方へ、視線を向けた。

 アランと騎士団の人達が向かった方向に、真っすぐ空に放たれた青い光の柱が見えた。
 ナルン国の青い色。
「勝利の色、です!」
リヴァイさんの「勝利の色」と聞いたとたん、ぶわっ! と涙が溢れた。

 この国は守れた。良かった……。

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