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「ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました」
10 これからもずっと END
しおりを挟むそれから一週間くらい、兄さまのお屋敷でお世話になった。
和平に反対する一派と王様は、話し合いの場を設けて解決に至った。
獣人に対する差別や例の誘拐事件の事は忘れず、両国でお互いに友好的にやって行こうと僕も話し合いの場にて伝えた。
僕が半獣人だとわかると逆に同情された。どちらでもない僕。
「ルカ殿が和平大使なら」と言ってくれた。――少しは役に立てたようだ。
「ルカは、どちらでもないのではない。どちらでも、あるのだ」とアランが言ってくれた。
僕はそっとアランの、大きな剣だこのある手を握った。嬉しかった。
ずっと隠していた僕の秘密。心優しい人達を騙しているようでつらかった。
でも「もう何も、隠さなくていい」と心が軽くなった。
兄さまの屋敷にいる間、兄さまと話が出来た。母様の話をたくさんした。僕の知らなかった事や兄さまの事。視点が違うと色々見えてきた。やってはいけなかったことは変えられないけれど、どうしてそうなってしまったのか見えてくることもある。
「だからと言っても罪は罪だ。罪滅ぼしではないが、一生この獣人の国で自分の身を捧げたい」
兄さまは遠い目をしていった。一生、獣人の国の ネスト・ゴールデンとして生きて行く。
「では僕は。和平大使として、時々お仕事としてこの国に来ますので顔を見せにおじゃましますね!」
にっこりと兄さまに微笑んだ。
「なっ……、お前っ!」
兄さまはもう僕が帰ったら、会わないつもりだったのだろう。驚いた顔をしていた。
「ルカらしい……」
アランは笑っていた。
獣人の国の生活や文化。流行の物。
これから獣人さん達を受け入れて、両国の発展のために僕は動こうと思う。
そして僕は、ゴールデン公爵様とも仲良くなった。
「ネスト様に、アクセサリーを贈られてはいかがですか?」
兄さまはアクセサリー類をあまり付けてなかった。聞くとやっぱりこの国にアクセサリーショップはなく、輸入品か家に代々受け継がれた物が多いらしい。かなり高価な贅沢品だということだ。
何気なく公爵様に聞いたら喜んでくださって、僕の加護付きのアクセサリーを気に入って下さった。
「私が出資金を出すから、この国にお店を出してくれないか?」とお願いされた。
公爵様が力になってもらえるのならば心強い。
「良いのでしょうか? 実は王様にアクセサリーショップとカフェが無いと聞きまして、出店を考えてたところだったのです」
僕とアランは顔を見合わせ頷いた。
「それはちょうどよかった。ふむ……お酒を飲む店は多いのだが……。若者も行けるカフェ……、というものが出来ると良いと思う」
公爵様は僕を見て言った。
「ナルン王国の僕達のお店で、カフェとアクセサリー屋の修行を少人数ですが受け入れていて獣人の人達も働いてもらっています」
「おお! そうなのか。それは凄いな」
僕が獣人の子たちの事を説明すると、喜んでくれた。
僕が望んでいた、獣人と人間が仲良く暮らしていくこと。アランと僕、そしてナルン国の人々と獣人の国の人々と手を取り合って実現できそうだ。
「もし反対する者がいたら、俺に知らせろ。弱みを握って脅してやるからな」
ニッ……と笑った兄さまは、本気なのか冗談なのか分からなかった。
「そ、その時はよろしくお願いします……」
たぶん兄さんなりの優しさだろうと、思った。
和平大使として獣人の国の見学などし、無事に両国の和平の橋渡しができた。ホッとしていたところ、ウサギの国の王子 クー殿下がやってきた。
「僕も明日、自分の国へ帰るんだ。ルカも一緒に来ない?」
ニコニコとクー殿下に誘われた。一瞬、何を言われたのか分からなかった。
「あの、それは……?」
僕が戸惑っていると、クー殿下は言った。
「だって、ぼくに腕輪をくれたでしょう? 腕輪を相手に贈るのは求婚の意味だよ。だからルカは、ぼくと一緒に来るんだよ?」
クー殿下は無邪気に言った。そういえばクー殿下に腕輪を渡してはいたけど……。でもそれは二つ渡していて、番の人に渡してねと言ったはず。
「失礼。クー殿下、それは無効です」
アランが僕を見かねて割り込んできてくれた。
「ええっ!? 無効ってどういうこと!?」
クー殿下は足をジタバタしながらアランに言った。まだ幼いから、そのしぐさも可愛いけれど。
「それは……」
「え……? アラン」
グイッと抱き寄せられてアランにキスされた。後頭部を持たれて離れられなかった。
「おお――!」
周りの獣人さん達が歓声を上げた。ピー! ピー! と音を鳴らされた。
長くアランに唇を塞がれていたので苦しかった。クー殿下は泣きそうな顔をしていた。
「……わかったよ。ルカはアラン殿の伴侶、番なんだね」
あきらかに、がっかりした様子で項垂れた。
「そうです。私の番ですので、ダメです」
ハッキリとアランは、クー殿下に伝えた。
「わかったよ。アラン殿に負けた……」
そう言い、元気がなくなった。
「クー殿下はまだお若いのですから、きっと素敵な番さんに出会えますよ。その時は僕に紹介して下さいね」
助けてくれた人に、好意を持ってしまうのは分かる。ただそれが、本当の恋かは本当かあやしい。僕はクー殿下に言った。
「そうだね……。ぼくは王子だから、しっかりしないといけない。ありがとう。ルカ、アラン殿」
そう言い、お辞儀をした。きっといい人に出会えるよ……と、心の中でクー殿下に言った。
この国での僕の仕事は終わり、ナルン国へ帰る日が来た。
「また来るのだろう? アクセサリーショップなどの相談もあるだろうから公爵家泊まるといい。この国では俺のおかげで、一番ここが安全だ」
兄さまが断言して言った。そうだろうなと思った。
「またお世話になりますね」
僕は公爵様と兄さまにお願いした。二人は頷き、笑ってくれた。
「さあ帰ろうか、ルカ」
「かえりましょうか。アラン」
王様や獣人の皆さま、公爵様と兄さま。たくさんの人に見送られて獣人の国から帰国の途についた。
帰りの馬車の中。またアランと一緒に色々な話をした。
「アラン、ありがとう」
僕はアランにお礼を言った。
「何のお礼か、分からないが……」
アランは僕の顔を見て返事をした。何のことか分からないようだった。
「僕が危ない目にあった時に助けてくれたり、かばってくれたりしてくれた」
数えきれないほどアランは僕を、助けてくれている。
「いや、当たり前だろう?」
当然という言い方をアランはした。
「当たり前じゃないよ。本当に助かったし。アランに何かお礼がしたい」
あまりアランは、人にこうして欲しいと言わない。何が欲しいか僕は分からない時があるのでアランに聞いてみた。
「お礼などいい」
僕は、う――んと考えた。
「あ、じゃあ何でもするよ。何かして欲しいことあればするよ」と言った。
「……ルカ。『何でもする』は、俺しか言ってはいけない。約束できるか?」
「ん? 約束できるけど、なに?」
アランは、はぁ……とため息をついた。そして真向いに座っていた僕を引き寄せてアランの膝の上に乗せた。
「俺のして欲しい事をしてもらおうか、ルカ」
「アラン」
息が届くくらい顔を近づけてアランは言った。僕を見るアランは、視線を外してくれずジッと見つめている。そのアランの瞳の奥に揺らぐものが見えた。
「……いいよ、アランになら。何でもするし、して欲しい」
もう覚えてしまったアランの唇。優しく触れたと思ったら、噛みつくように唇が塞がれた。
「ん……。アラン、大好き」
優しく僕を見るアラン。
「ルカ」
ギュッと抱きしめられた。
大好きなアラン。
僕は、あなたと会えて幸せ。
END
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