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34 二の塔へ向かう途中で
しおりを挟む「ルビー、今日は小鳥の姿で行くのかい?」
「ピ!」
次の塔へ向けて準備をしていた。遅くまでにぎやかだった昨日と違い、静かだ。町は平凡な一日に戻ったのだろう。
宿屋を出て町の中を歩いて行くと、横断幕や花で飾っていたものがなくなっていてきれいに掃除がされていた。
『お早う御座います。お気をつけて行ってらっしゃいませ』
入り口にいた人が笑顔で俺達を送り出してくれた。
「ありがとう!」
町から出発してしばらく歩いたとき、周りに誰もいないのを確かめてから昨日作った地図付き腕時計を袖から出した。
「どの方向へ行けばいいのかな?」
「北です。それは腕時計ですか?」
レミさんは俺の腕時計を見て、話しかけてきた。
「北か。これは俺が作りました」
『すごいピ!』
ルビーは俺の肩にとまって言った。今日は小鳥の姿だ。もっとモフモフしたい。魔物しかいないのか、理想のモフモフの動物は出会っていない。
「モフモフの生き物、いないかな――?」
モフモフ不足だ。そういえばまだこの世界の、猫とか犬のような生き物は見てないな。魔物とは戦ったけれど……。
「次に行く二の塔は、もふもふの……」
「えっ!? モフモフの動物いるの!? 早く行こうよ!」
俺は次の塔に早く着きたくて速足で急いだ。
一時間ほど早歩きで進んだら、さすがに疲れてしまった。
「そろそろ、休憩にしましょうか?」
レミさんは疲れてきた俺を察して、休憩を取ろうと言ってくれた。ありがたい。
「うん。ごめんな? ちょっと急ぎすぎた」
俺は反省してレミさんに謝った。
「いいえ。だいぶ予定より先に進めたので、良かったです」
レミさんは優しい。ちょっとした気遣いを自然にしてくれる。
「もう少ししたら、二の塔が見えてくるはずです。この辺で休憩しましょう」
目の前には坂道が見える。ここを上る前に休憩だ。
「ちょっと甘酸っぱいハーブの水出し茶があるから飲んで。疲労回復にいいよ」
ローゼルのガク(ハイビスカス)に似たこちらの世界のハーブと、相性の良いハーブをブレンドして宿屋を出てくる前に作ってきた。
「まあ! きれいな赤色のハーブティーですね。あら? 温かくないけれど美味しい!」
レミさんは気に入ってくれたようだ。
この世界には前の世界と同じものはないけど、似たものがあるのでそれで作っている。一応味見はしているので、美味しいと思う。
「うん、美味しい」
甘酸っぱくて疲労回復効果がある。ほっと一息、ゆったりとした時間を過ごしていた。
『だ、誰か! 助けてください――!』
「ええっ!?」
「レン様、聞こえましたね『助けて下さい』と……」
顔を見合わせて頷いた。
「ルビー。ここにいて」
ルビーは寝ていたのでここに置いていくことにした。木の影なら踏まれることなく大丈夫だろう。
「行こう」
休憩していた場所から少し離れた所に林があった。そこから『助けて』と声が聞こえたので行ってみる。
木と木の間は広く、走りやすかった。人間の手が入っているのだろう。日差しが地面まで届いて明るい。
しばらく行くと、男性が座って後ずさりをしているのが見えてきた。
「レン様、魔物です」
レミさんが距離をとって止まり、俺に教えてくれた。
「大熊の魔物です。ボスではなさそうですが、強いので気をつけて戦いましょう」
「うん」
俺は弓を手に持って、弓矢を取り出した。今にも男性に襲い掛かりそうだった。
「レン様が弓矢を引いたら、私は大熊へ接近して戦います!」
「わかった!」
大熊が太い腕を振り上げた。このままでは男性はやられてしまう! 俺は弓矢を放った。
グオオオオオオ――! ツキノワグマより大きい熊の首辺りに命中した!
「離れて!」
レミさんは男性に言うと、大熊に切りかかった! 俺はレミさんたちに当たらないよう慎重に矢を放った。
バシュッ! バシュッ! バシュッ!
矢は全部命中した。
大熊に矢が当たり、ふらリ……としたところにレミさんが大熊の魔物に剣を突き刺した。
「すごい……」
レミさんが剣を抜くと、大熊の魔物はグラリと地面へ倒れた。急所を狙ったようだ。少し地面が揺れた。
大熊の魔物は消えて、赤黒い石になった。
「ふう。レン様、お見事でした!」
レミさんが赤黒い石を拾って俺の方へ歩いてきた。男性は震えて地面に座っていた。額を膝につけて頭を手で隠していた。
「もう大丈夫ですよ」
俺は男性に声をかけるとそっと顔を上げた。あんな大きな熊の魔物に襲われて怖かっただろう。無事でよかった。
「あ、ありがとうございました……」
まだ少し震えていたが、男性は立ち上がった。足にケガをしていた。
「ケガをしていますね。手当しましょう」
はい……と弱々しく返事をして俺達についてきた。
破けたズボンから、足に引っかき傷ができているのが見えた。ステータス画面みたいのが目の前に出て、男性の足を調べた。とくに異常状態にはなってなかった。幸い引っかき傷だったので、傷口を洗って消毒し傷薬を塗って手当をした。
「はい。これで終わりました。治りが遅いようでしたら、お医者さんへ行ってください」
手当を終えて片付けていた。その時、何かが俺の胸ポケットから落ちた。
「えっ……? これは彼女から俺に宛てた、手紙じゃないか?」
男性は落ちた手紙の宛名を見て、言った。
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