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35 まさか【クエスト2】
しおりを挟む「え? あなたはカンドさんですか?」
女性に聞いていた彼氏の名前を言った。
「ああ。俺の名は、カンドだ。彼女、セーラに頼まれたのか?」
手紙を彼氏に届けるように依頼したのは、セーラという女性だった。彼氏の名前は間違いなくカンド。
「そうです。セーラさんに頼まれました」
たまたま助けた男性が、依頼主の彼氏カンドだった。
「セーラがどうして手紙を……。開けていいか?」
「はい。あなたに宛てた手紙ですから。受け取って読んでください」
【クエスト2】
レンは、依頼主セーラから預かった手紙を彼氏カンドに渡した! クエスト2、クリアしました!
チャラチャラ~! チャチャ! クリア達成の音楽が、俺の頭の中だけに流れた。
これ……。この男性を助けないで、そのまま道を進んだら大変なことになったかも。男性は無事じゃすまないし、永遠に手紙はカンドさんに届かなかった。そうなると、どうなったのだろう?
もしかして、選択肢がこれからもあるってこと? 正しい選択肢を選んだのか。
「なんだって!」
カンドさんは手紙を読み終わって叫んだ。体がビクッとして俺とレミさんはカンドさんを見た。
「どうしました?」
俺は、カンドさんの手が震えているのが見えた。どうしたのだろう。
「子供が……」
手紙を握りしめながらカンドさんは、俺達に潤んだ眼で顔を向けた。子供?
「セーラに子供ができたって、知らせだ!!」
カンドさんは腕をあげて喜んでいた。子供ができた? いつの間にか俺とレミさんの手を取って、輪を作りグルグルと一緒に踊っていた。
「俺はセーラに色々贅沢をしてあげたくて、魔物狩りをしていたけれどもう限界だった。まったく魔物を倒せないし、赤黒い石を拾えなかった」
カンドさんはがっくりと肩を落とした。
「でも子供ができたっていうのなら、地道に働いてセーラと子供を養ってあげなきゃだめだ! ここで死ねない!」
カンドさんは、こぶしを握り締めて力説した。
「助けてくれてありがとうございました! 手紙も俺のもとに届けてくれたし、あなた達は恩人だ!」
そういって俺とレミさんの手を握って上下に振った。
「それじゃあ、俺はセーラの所へ帰ります」
帰ろうとしたので俺は、さっき手に入れた赤黒い石をカンドさんに渡した。
「これ、どうぞ。あげます」
手のひらに大きな赤黒い石を渡すと、カンドさんは口をパクパク開けて驚いた。
「いやいや! こんな高価なもの、受け取るわけには……!」
カンドさんは、いやいや! と言って顔を左右に振って遠慮していた。そこで俺はカンドさんにささやいた。
「これから子供が生まれますよね……。Gがあればセーラさんに美味しくて栄養あるものを食べさせられて、生まれてくる赤ちゃんの準備が、できるのではないですか――?」
「くっ……! 遠慮なく……いただいて、いいですか?」
やった。俺はカンドさんに赤黒い石をカバンにしまうように促した。
「もちろん!」
「……この御恩は決して忘れません! 何かあれば駆けつけますので!」
「あはは! そうですね、その時はお願いします」
カンドさんは、セーラさんの待つ宿屋を目指して帰っていった。
「赤黒い石を渡してよかったかな?」
俺はレミさんに聞いた。
「ええ。私は必要ありませんので」
俺達はお互い顔を見合わせて笑った。まさかこんな所で、クエストクリアするなんて思ってなかった。
「では戻りましょうか」
「そうだね。ルビーが起きているかも」
俺達は、林の入り口まで戻った。
木の影、日差しを避けてルビーはまだ、すうすう……と眠っていた。
「ルビー、そろそろ行くよ」
『ピィ……』
まだ眠たそうにしていた。小鳥ってこんなに眠るのかな? 起こすのもかわいそうなので、俺のポケットへ入れた。
「あの坂を上ると、二の塔が見えてくるはずです」
レミさんは小高い丘の坂の方を見て、教えてくれた。そういえばモフモフ(の生き物)……いるのかな。
「レミさん、あの塔に魔物はいるの?」
事前に知って、準備をしておきたい。弓矢はもっと持っていた方がいいのか。
「魔物……。いますけど、こちらが何もしなければ襲ってきません。ボスは別ですが」
こちらが何もしないと襲ってこないのか。でもボスはいるのか――。
小高い丘を上っていくと、一の塔と同じ形の塔が見えてきた。
「一の塔とそっくり! あ、でもてっぺんの色が【橙色】だ」
面白いな。いったい誰が何のために、あの塔を作ったのだろう?
俺はレミさんに話しかけながら小高い丘を下っていった。
「レミさんは一の塔と、二の塔を知っていたの?」
小高い丘を上ると見えてくる……と教えてくれたので、知っているのかと思った。
「ええ、調査で。中に入れませんでしたけれど、塔の前まで来たことがあります」
そうなんだ。塔の調査か……。
話をしていると、塔の前まで着いた。
一の塔では、俺の手が吸い込まれるように中へ入った。今回も、その辺の壁を触れば中へ入れるかな?
「ちょっと扉とか壁を調べてみるよ」
「お願いします」
調べて見ると、扉には鍵穴がなかった。
「鍵がかかってない? ……わけないか」
扉には取っ手もついてなかった。どうやって開けるのだろう。右手で扉を触ってみた。
「あれ?」
す……っ、とまた感触がなくなって、一の塔のようにすり抜けた。俺はそのまま歩いていった。
「レン様!」
レミさんは俺の肩を掴んで、一緒に塔の中へ入ってきた。
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