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1章 異世界転移
3,異世界 アトラクションか!?
しおりを挟む異世界・大賢者・勇者・黒いドラゴン……。
まだこちらに来て三十分も過ぎてない。情報の多さに、俺の頭はついていっていない。
そりゃあ……。少し憧れてはいたけど、異世界なんて物語の中の事と思っていた。
まさか、自分が(しかも家族全員!)異世界に来るなんて。
「さあさあ、皆様。ドラゴンに乗って下さい。横に縄のはしごがありますから、そちらからどうぞ」
大賢者さんが手を伸ばした先には、縄のはしごが黒いドラゴンの横腹に下がっていたのが見えた。
「仕方が無い。いつまでもこの場所にいてもしょうがないから城に行こう。すぐには帰れそうになさそうだからな。いいか? ジン」
そう言い、母は父を見た。
「ああ。行こう」
互いに見つめ合い、頷いた。
先に母が縄のはしごを登っていった。
「次、カケルが登ってごらん。大丈夫、落ちたら受けとめるから」
父が俺の肩にポンと叩いて言った。
「う、うん」
上を見ると母はスイスイと登っている。ちょっと怖いけど、登るしかない。
「縄で出来てる……」
握った手のひらに、縄がチクチクと刺さって痛い。足をかけると思ったより丈夫に出来ているのが分かった。
足に体重を乗せて行く。腕を伸ばして上の段を握り、足を上げて登っていく。
「うわ! 揺れるし、意外とキツイぞ」
「しっかり縄を握って、登って来なさい」
母の声が聞こえた。上を見ると母は、もう上まで登ったようだ。
目を凝らして見ると、黒いドラゴンの背中に人が乗れるように木で作られた “やぐら” があった。四方を頑丈な鎖で、ドラゴンの背中から腹にしっかりと取り付けられている。あれに乗るのか。
「カケル、よく登ってきたな。キツイのに、頑張ったな」
縄のはしごを登り切って、やぐらの手すりに手をかけた時に母が笑顔で言った。
「何とかね。へへっ」
ほめられた。少し照れる。
「愛里は? 無理っぽいけど、どうするんだ? ……え!?」
父と愛里がいる下を見てみると、父が愛里を抱っこしていた。小さい子供を腕に乗せる抱っこ。いくら愛里が軽いからって中学生だよ?
「まあ、仕方が無い」
母は、ぼそりと言ったのが聞こえた。
「え?」
母の方に振り返った時、やぐらの中に父と愛里が突然現れた。
「「えっ? ええっ!? 何で――――!?」」
俺と愛里は、同時に叫んだ。
「まあ、気にしなくていい。魔法を使っただけだから」
父が、肉に塩コショウを振ったくらいの、気軽い感じに答えた。
「「魔法!?」」
また、俺と愛里は叫んだ。だって、魔法!? を普段、のほほんとした父が息をするように使ったから、そりゃ、驚くだろう!
父はポリポリと、指先で頬をかいた。
「その辺もひっくるめて、城で話そう」
母が見かねて、口をはさんできた。
「分かった」
俺は、母に返事をした。ここで騒いでもどうにもならないし。
「ちゃんと教えてくれるの?」
愛里は心配そうに、聞いた。
「全部、話そう。いいな? ジン」
母は、父に聞いた。
「ああ。いいだろう」
父は腕組みをして、頷いた。
「では、皆さんそろいましたね? お城へ行きますぞ。しっかり掴まって下さい」
大賢者さんもいつの間にか上ってきており、やぐらの前の操縦席のようなところにいた。
魔法を使ったのかな? 見てなかった、残念。
やぐらにはベンチのような長い椅子が固定されてあったので、みんなで座った。
「念の為、腰に紐を結んでおくれ」
大賢者さんは、ほっほっほっ……! と笑いながら言った。何だか嫌な予感がするなぁ。
「ムニャムニャ、にゃにゃにゃ……。しゅっぱっつー!」
大賢者さんが何か呪文のような分からない言葉を発した後、ぐらりとやぐらが揺れた。
いや。『ドラゴンが動いた』と言った方が正しい。
「二人とも、しっかり掴まってて」
母がそう言っているうちに、ガクンとやぐらごと下がった後に体が引っ張れるほどの重力を体験した。
まるでジェットコースターの様に、落ちて上昇するような感覚。
「うああああああああああ!」
「きゃああああああああああ!!」
俺と愛里は絶叫した。――青空に響き渡っていた。
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