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1章 異世界転移

17,アリシア王女

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 銀色の綺麗な長い髪が肩から胸へサラリと流れた。
胸もとが大胆に開いたドレスを着ていて、つい、ジッと見てしまった。
ハッ! と気がついて目をそらし、愛里を見ると愛里もジッと見ていた。

 アリシア王女はにっこりと笑い、俺を見つめた瞳は深い青色で吸い込まれそう。綺麗な王女様だった。

「確か……。カケル様もお年が17才と、聞きました。わたくしも同じ年ですの。愛里様とも年が近いので、仲良くしていただけると嬉しいです」
両手のひらを胸の前で合わせて、はにかむ顔が可愛い。

「まあ……! アリシア王女! お友達が欲しかったので嬉しい!」
 愛里がアリシア王女に近づいて両手を握った。こういうときに愛里は、積極的になれるので羨ましい。
アリシア王女は、まぶたをパチ、パチと数回まばたきしてから愛里をみつめた。

「こら、愛里。王女様に馴れ馴れしいぞ?」
相手は王女。不敬になるかもと考えて、愛里に注意した。
「あ……っ」
愛里は王女の手を離して、しまった……という表情をした。

「いえ。……むしろそのように、親しげにしてくださる方は少ないので嬉しいですわ」
アリシア王女は、にっこりと微笑んだ。愛里もアリシア王女に微笑み返した。
周りの大人達は、微笑ましく二人を見ていた。

「こほん。話を戻していいかな?」
アデル王子は話の続きを促した。

「……この国を救ってくれ、とは?」
父がアデル王子に話しかけた。一瞬、皆が黙り込んだ。アデル王子が王に目配せして、頷き合ってから話し始めた。

「この間の報告で……。アカツキという者が、次の魔王と聞いた」
 父と母は頷いた。
「その影響か、魔物より強力な魔獣が現れ始めた」
 
 魔物より強力な魔獣。怖いな……。
「それで魔獣退治をして欲しい」
アデル王子が真剣な表情で俺達、家族を順番に見た。

「……騎士団がいるだろう? 部外者な私達が、魔獣退治をする理由がない」
 一口紅茶を飲んで母は、カチャッ! とティーカップをソーサーに置いた。

「理由はある」
アデル王子は両手の指を組み、ゆったりとソファに座り直した。
「君達が帰るには、魔獣の体の中にある【魔獣石】が必要だ」
「!」
「!?」
俺達、家族でお互いを見合った。

「こちらに呼ぶ時と還す時に【魔獣石】は必要だ。だが城に備蓄していた分が、この間の召喚の儀で無くなってしまった」
 アデル王子は続けて話した。
「どうだ? 魔獣退治をするがあるだろう?」


 ガタン! 父と母はソファから立ち上がった。
アデル王子の言い方に、俺もムカついた!
「お兄様! 酷いですわ!」
 アリシア王女が、兄のアデル王子に強く非難した。


「……【魔獣石】集めには、私も行きます」
「アリシア」
アリシア王女が立ち上がり、王に話しかけた。
 まさか王女が【魔獣石】集めに、魔獣退治をすると言うとは思わなかっただろう。王は驚いていた。

「アリシア」
「お兄様は黙っていて下さいませ」
アリシア王女は、アデル王子にピシャリと言った。

「私、これでも優秀な魔法使いですの」
 そう言って空中にパッと、魔法使いの大きな杖を出した。

「兄の無礼な物言いは、謝罪いたします」
 そう言って頭を下げた。王女なのに。
「勇者様とご家族様。騎士達と私。一緒に魔獣退治をすれば、早く終わりますわ」
 沈黙が訪れた。


 しばらくして母が話しだした。
「……仕方が無い。事態は思っているより進んでいる。……魔獣の動きが活発になっているのは、事実だ。下手をすれば近いうちに、この国全体に大量の魔獣が襲って来るだろう」
「……」
 母の言葉に皆がゾッとした。

アカツキ……という名の、次の魔王の力なのだろうか?

「いくつ、必要なんだ?」
母が問うと、王がパンパン! と手を叩いてメイドを呼んだ。
を呼べ」
「かしこまりました」
 メイドさんは頭を下げて部屋から出ていき、すぐに誰かを連れて戻ってきた。

「魔法使いのオンブルだ。賢者ドクトリングと召喚の儀をおこなった」

 グレーのローブに深くフードを被った、暗い感じの50才位の男性だった。やはり背の高さ位ある杖を持っていた。

「【魔獣石】は100、必要だ」
 オンブルと名乗ったお城の魔法使いは淡々と、魔獣石が100個必要だと言った。
「くっ……」
母は手を強く握りしめて、怒りをあらわにしていた。

 魔獣石が100個必要と言ったきり、沈黙した。俺は、オンブルという魔法使いを気味悪く感じた。

「……分かった」
母の、怒りを抑えた言い方に皆が注目した。

「サッサと魔獣を倒して、100個【魔獣石】を集めてこの世界から元の世界へ帰ります! いい? 私達はあなた達のために、犠牲になるつもりはない!」

 母の怒りを感じて、ピリピリッと全身にしびれが走った。
 言い終わると母は、部屋から振り返りもせず部屋から出て行った。
「お前達は、俺達家族をないがしろにした。すなわち勇者を怒らせた。恩知らず、と……覚えておけ」

 温厚な父もかなり怒っていた。
俺と愛里は、父の後について部屋から退席した。

 俺が部屋から出る時に振り返ると、アリシア王女が泣きそうな顔をしていたのが気になった。
 

 
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