ZODIAC~十二宮学園~

団長

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BATTLE IN TOKYO

極東決戦編その8

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コタン副宮長が急いで言葉を放った人を探したが多すぎて見つからない。魔力を感じなかったためファルクン・ナイツを撃ち落としたのは魔法ではなく携帯対戦車グレネードランチャーだろう。コタン副宮長は撃墜された上空の場所から推測して打った奴をスコープで探した。硝煙のあたりで銃をとろうとする男を見つけるとスナイパーライフルで右肩を正確に打ち抜いた。人が人の上に落ちてきて騒然としている会場では血が飛び散ると大衆は急いで北側出口に走り出し将棋倒しの様相になった。水無瀬水鳥がグラウンドで負傷者の手当をしようと人ごみの中に入ろうとしたが、人が多すぎて入れない。ハヤテが観客席から転落しそうになった人を風の魔法で助けた。しかし、グラウンドにさらに人が流れ込む結果となってしまった。出口は北に一つしかない。E-ウォッチからコタン副宮長の命令が入った。
「実弾と魔法を使っても構わん。魔力を感じたら殺せ。」
「正気ですか?人が多すぎますよ!」
すると大きな魔力が感じられた。
「風翔、一塁側四時の方向観客席の二段目!」
俺はアサトライフルで詠唱している魔法使いを見つけ右肩を狙って打ったが男は倒れ込んでしまった。殺してしまったのではないかと動揺が走る。
「三江!速くステージから離れるぞ。明、歩きにくいならヒールを脱げ。」
そう言っていつものスニーカーを光星明に渡した。そのとき、
「全員頭を下げろ!」
突然、コタン副宮長が命令した。舞台に伏せたとたん、水中結界はガラスが割れるように弾け携帯対戦車グレネードランチャーが掠めていった。コタン副宮長は三塁側の観客席に武装した男を撃ち殺していた。そのおかげで直撃を免れた。
「ここは危険だ。ドームから外に出るぞ。三江、聞いているか?」
「あっ・・・、うん。」
「くいな、舞台に上がって来い。」
水無瀬水鳥は救助を諦めて舞台にあがってきた。
「水中結界の札を貸してくれ。全員で結界に入ったままステージ袖まで移動する。」
「風翔、さっきと同じ場所!」
金さんにとっさに言われたが反応できなかった。水無瀬水鳥が水中結界で銃弾を弾くとハヤテが呪文を唱えた。
「風よ、我が力となれ。防風の矢(ストーミー・アロー)!」
疾風の勢いで一塁側半分の観客席は吹き飛んだ。それと同時に多くの人が空中に舞い上がりグラウンドに叩きつけられた。
「コタン副宮長、ステージ袖に移動するので援護してください!」
「メインステージの警備のものはどうした?」
「連邦軍と僧兵の姿が確認できません。」
「ハヤテ、あれ見て!」
警備していたはずの連邦軍の兵士が首のない姿で倒れ込んでいた。犯行グループは警備体制を把握しているのだろうか。そのとき、俺は脈拍上昇と過呼吸で動けなくなっていた。これが戦場なのだ。自分がどうしたらいいのかさっぱりわからない。ハヤテが背中の鞄から戦闘用ヘルメットを出して金さんと光星明に渡した。金さんはティアラを大切に懐にしまうと髪をほどいて戦闘用ヘルメットを被った。光星明も金さんを見て髪飾りを全て外してポケットにしまうと戦闘用ヘルメットをハヤテに助けてもらいながら装着した。さらに、光星明はケープを羽織、光の核石を隠した。
「三江、いいか。殺らないと殺られるのだ。ハンナを守ってやれ。」
南側にあるメインステージに向かって走りだした。観客が北口に向かっているのにこれはかなり目立つ格好である。水中結界に銃弾が当たるたびに衝撃音とともに怖気づいてしまった。一年訓練しても実戦は無理だと悟った。
「コタン副宮長、連邦軍に連絡してください!」
「E-ウォッチで無線に繋げ!許可する。」
全員でステージ袖に隠れるとハヤテが見張りはいった。ステージ袖には出演者のアイドルたちが怯えながら伏せていた。
「全員で何人いる?」
言葉が通じる通じない問題ではなく、俺たちを怖がっているようだ。
「私が数えるよ。・・・三十二人。明ちゃん、私たちは敵ではないと伝えて。」
金さんと光星明は敵意がないことを出演者たちに伝え、安心させようとしている。俺がE‐ウォッチでダイヤルを回しながら連邦の無線に繋ごうとするがなかなか、チャンネルがあわない。ようやく聞き取れる音が入ってきたが言葉が通じない。
「金さん、ククル貸してくれ。」
ククルの接続端子をE-ウォッチに繋いだ。自分に冷静なるように何回も念じた。落ち着け。落ち着け。落ち着け。自分に出来ることを考えるのだ。俺の命が危ない。
「東京の連邦軍総司令部ですか?こちら東京ドームの十二宮学園白羊宮です。援軍をだせますか?」
「これは訓練か?実戦か?応答せよ。」
「実戦です。今、東京ドームのコンサート会場で何者からか攻撃を受けている。一般人の出演者三十四人を四人で守っている。会場はパニック状態。軍を今すぐ出動させてください!」
「今すぐは無理だ。ファルクン・ナイツをスクランブルさせる。お前たちは今後、コードをAries(アリエス)とする。」
「風翔、そこら中から殺意を感じるよ。」
「ハヤテ、会場内に魔力は感じる?」
「メインステージにあがろうとしている人をコタン副宮長が撃ち落としている。今すぐ外に出るべきだ。くいな、裏口を見てきてくれ。」
水無瀬水鳥が外を一瞬覗いたと思うとすぐさま言い放った。
「みんな、伏せて!」
水無瀬水鳥が御札をとり水中結界を重ね合わせた。そのとき、爆発音とともに会場全体が振動した。ステージ袖から裏口まで壁を貫いて穴があいている。通常の携帯兵器ではない。
「コタン副宮長、外に戦車らしきものが見えませんか?」
「今、メインステージから目が離せん。ハヤテ、お前がメインステージを守れ。」
「了解。三江、アサトライフルを貸してくれ。」
ハヤテが呪文を唱えながら一人に一発ずつ致命傷を外しながら打ち抜いている。コタン副宮長は二階席から屋根の縁にすばやく飛び移り走りながら外の様子を眺めた。裏口の通り前に戦車を見つけスナイパーライフルで捕捉した。金さん、ハヤテと水無瀬水鳥はコタン副宮長の強大な魔力を感じた。
「大地よ、我が力となれ。大地の怒(イーラ・テッラ)!」
コタン副宮長がスナイパーライフルから放った銃弾は戦車を貫き戦車周辺の大地を隆起させた。
「ここから離れるぞ。」
コタン副宮長がすばやく地面に降りてきて穴の空いた裏口から言い放った。
「ラヒム一曹、そちらの状況を伝えろ。」
「一般人の避難をおこなっている。しかし、民兵が紛れ込んでいる。こっちは死傷者がいる。動くには風の魔法使いか装甲車がいる。」
「水無瀬副宮長、神風、三江、いいか出演者を八人の班に分けて移動する。二ブロック南の水道橋まで南下して神田川から秋葉原方面に向かう。敵は民兵だが、ためらわずに殺せ。一ブロックごとに順番に前と後ろの班を守護しつつ移動していく。光星、通訳を頼む。」
そう言って光星明は出演者に秋葉原まで向かう説明をして、金さんは笑顔で安心させた。ハヤテが最初の八人の先頭にたち裏口から走り出した。走り慣れていないのか、靴のせいもあってかなかなか街中を進めない。その間に通りに大勢の人々が押し寄せてきた。
「風翔、北西側に何か感じる。」
地響きのような音が聞こえてきた。コタン副宮長はすぐにスコープで確認する。
「六百フィート先にロボットじゃ。十数機おる。LAWS(自律型致死兵器システム)などいつの時代のものをつかっておるのじゃ。ん?」
「どうかしましたか?」
「ロボットの型がイデアル式じゃ。三江、応援はまだか?」
俺が慌てて無線で呼びかける。
「こちらアリエス、ファルクン・ナイツはまだ来ないのか?」
「制空権が確保できない。ドームの北西側にイデアルの対空陣地がある。」
「イデアル式のLAWSは攻撃しても構わないか?」
「任せる。」
「コタン副宮長、ぶっ壊していいそうです。」
「承知。大地よ、我が力となれ。大地の怒(イーラ・テッラ)!」
スナイパーライフルから放たれた弾丸は、一直線にLAWSの弱点である足を貫いた。そして、周りの民兵を巻き込んで大地が大きく刺々しく隆起した。
「なぜ民間人が私たちを狙っているのでしょうか?イデアルの魔法でしょうか?」
「考えるのはあとじゃ。速くこの場から離れるぞ。」
走っているが出演者を護りながらはかなり厳しい。水中結界に何発も弾丸が当たる。いったいどこから武器を入手しているのだろうか。壊れたオフィスビルの屋上や窓から射撃してくるのがわかる。俺は走りながらアサトライフルを撃ち続けた。撃っても次から次へと民兵があらわれる。デタラメに撃っているので訓練された兵士でないことはひと目でわかる。なんとか銃弾の中を秋葉原まで無事に全員たどり着いた。
「光星、地下アイドルたちに隠れられて、休める場所がないか聞いてくれ。」
光星明は息を切らしながら地下アイドルの人たちに聞いて回り昔に使われていた駅構内に案内してもらうことにした。道端に換気口と思われる蓋をハヤテと開けると階段が現れた。ククルが光を照らすと、壁には苔や羊歯植物がびっしりと生えている。駅表示には「万世橋駅」と書いてある。ねじれた線路の跡があり本当に昔、駅があったようだ。地下水がすぐ横を流れており飲み水になるか水質をE‐ウォッチで調べる。危険な化学物質と大腸菌が検出されとても飲み水にはならないことがわかった。水無瀬水鳥が水に近づき魔力をできる限り補充する。魔法使いは魔力を自然からもらわなければならないらしい。宝瓶宮いわく『マナ素粒子』という粒子が関係しているらしい。東京に着いてから大気汚染が酷く『マナ素粒子』が減っているようだ。白羊宮で魔法使いでもない俺には科学的根拠はさっぱりわからないし関係ない。
「神風、全員に食料と水を配れ。」
ハヤテは持っている食料の半分をさらに人数分に分けた。たいへん少ない量であるが我慢するしかない。コタン副宮長は俺に近づいて無線を使った。
「総司令部、司令をだせ。」
「名を名乗れ。」
「アシリレラ・コタン白羊宮副宮長だ。さっさと司令官をだせ。」
「アリエス、無線で本名は控えろ。こちら少尉だ。状況を報告せよ。」
「負傷者はいないが一般人が多すぎる。護りながら宗協連の本部に戻るのは不可能だ。」
「地図は手元に有るか。」
「L3、M5から6。援軍を求む。」
「東京の暴徒対処に連邦外務とイデアル外務が話合っている。こちらがイデアル側に発砲したと言っている。」
「愚か者!最初に攻撃を受けたのは宗協連のファルクン・ナイツだ。こちらも巻き込まれている。イデアル式のLAWSが民兵を連れていたぞ。」
「口を慎め、副宮長。事態は緊迫している。こちらも軍を極東に動かしている。」
「クソ。援軍の到着時間は?」
「まだわからん。」
コタン副宮長は何も言わずに立ち上がり、俺を冷めた目で見つめた。高身長なのでとても怖い。いや、俺ではなく少尉に対してだろう。駅のホームの端にいき煙草を吸い始めた。俺はハヤテと弾薬を分けたあと金さんに話しかけた。
「金さん、歌って踊って走ったから喉渇いたでしょ。俺の水もやるよ。」
「んあ~、何かキモイよ。でももらっておく。」
ハヤテと水無瀬水鳥は二人で何か話し合っている。幼馴染の二人は息もピッタリで心技体優秀な魔法使いである。こちらから見ているとカップルだと思われ、いい感じである。むしろ水無瀬水鳥がハッキリとハヤテのことが好きだと言ってくれればこんな複雑な想いにはならないだろう。そのとき、金さんがティアラを取り出してふと口にした。
「ウチらは、学園の欠陥品なのかな?前に進もうとしても進めない。進んでいるつもりだけど一歩も前に進んでいない。ウチらの位相空間は密着位相かな。」
「位相の公理って何だっけ?」
「んあ~、真剣な話しをしているのにそこから。空気読め。」
アホな自分が恥ずかしい。鞄から毛布を出すと金さんに差し出した。
「風翔は使わないの?」
「俺は見張りがあるからいいのだよ。」
不意に金さんが自分と俺を包むように毛布を掛けた。
「寒いからこの方が暖かい。それに安心するの・・・」
「二人とも毛布は下にも敷く方が暖かいのです。」
「水鳥、さすがの知識だな。それなら皆一緒に寝たほうがいいな。」
金さんの方を見ると既にそっぽを向いて横になっていた。俺がなんか気に障るような事したかな。その後、コタン副宮長、ハヤテと俺で見張りを交代でおこなったが敵は現れなかった。
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