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第二幕
ep.14 過去 (2)
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そこからは森を根城にしながら、適当に平原や街を行き来した。
負けて大怪我を負うこともたまにはあったが、飯の調達にはさして困らず、たまに密猟に来る者がいると運が良かった。
人間は武器さえ押さえてしまえば牙も爪もなく、殺すことは容易で、しかも生肉以外の食いやすいものを多く持っていた。
巡回に来た兵を返り討ちにしたことも数度あったが、集団を相手にすることは厄介だと学んだので、基本的には隠れてやり過ごした。
ある時、街がやけにうるさかった。
喧騒を避けるために路地裏に身を潜めていると、そこに黒い髪の少年が駆け込み、その後ろから武器を持った人間が数人追いかけて来た。
殿下、と呼ばれた少年がまさに殺められる寸前に、振り下ろされた剣を弾き返し、ルイーゼの爪が追っ手の首を裂く。
何か食い物を持っていないだろうかと屍体を漁っていると、ルイーゼの背後から、何をしているのか、と叱責の声があった。
「弱い。だから食う」
男の懐から取り出した干し肉を齧りながら、ルイーゼが答える。
そこに再び剣を持った人間たちが駆け込んできた。
転がっている死体よりも身なりの良さそうな男たちの顔を一瞥すると、少年は、一瞬悩んでからルイーゼの手を取り、その場から走り去った。
人気のないところまでやって来て、少年はようやくルイーゼを掴む手を離した。
「お前は、なぜあの者たちを殺した。助けて貰ったことには礼を言う。だが、まずは裁判によって裁かれるべきだった」
ルイーゼは最後の干し肉を飲み込んでから、少年へと振り返る。
「弱いから、殺された」
「ならばなぜ、私のことは殺さない」
「食べ物持ってない」
少年、クラウスは思い当たる。
ここのところ、魔女の森を巡回する兵が傷を負って帰ることが多く、食べ物を狙う獣人の賊が住み着いているのだという噂が城内ではしきりと囁かれていた。
「何故殺して奪う。生活が苦しいことは理解するが、それでは何一つとして現状を変えることは出来ない」
獣人差別について語る少年に、ルイーゼは興味なさそうな顔をする。親は、と問われ、親とは何かと聞き返した。
クラウスはようやく、ルイーゼの様相のおかしさに気がつく。
獣人だとばかり思っていたが、象徴ともいえる頭の上の獣の耳は、他の獣人よりも一回り小さい。
失礼する、と言ってヘドロのように固まった髪を何とか掻き上げると、隙間からは小さいが人間の耳が現れた。
汚れ切った前髪から覗く目は、血よりも深く赤い。
「お前は……混血か」
「それ、何だ?」
「私が世話になった方も、そうだった。近いうちに『運命に出会う』と言われたが、まさかお前ではないだろうな」
「腹減った、だから、もう行く」
少年はまた少し悩んでから、何かを決めたように頷く。
来い、と言って、立ち去ろうとするルイーゼの腕を掴み、そのまま彼の屋敷へと連れ込んだ。
屋敷の湯殿でクラウスがルイーゼの身を清める。
使用人には王族が何をするのかと悲鳴を上げられたが、クラウスは少しも取り合わなかった。
不愉快そうに唸り声を上げるルイーゼを繰り返し宥めながら、何度も血泥色の湯を流し、そこで初めて、彼女の髪が真っ白であることに気がつく。
清められた身で柔らかな衣装を纏わされ、大きな机に並べられた食事を見て、ルイーゼは目を瞬かせる。
すぐさま机上に飛び乗って食べ始め、またクラウスから叱責を受けた。
すっかり呆れ切った様子の使用人を黙らせて、クラウスは自室にルイーゼを連れ込む。
何とか話を聞き出して、彼女の身の上を理解した。
今にも窓から飛び出しそうなルイーゼの手を取って、クラウスは言った。
「今はそれでいいかもしれないが、その生き方ではいずれ必ず悲惨な死を遂げる」
「自分より強いものには食われる。それが道理……摂理?」
顔に掛かるさらさらとした髪を鬱陶しそうに払いながら、ルイーゼが答える。
クラウスは、ルイーゼの手を強く握り、彼女の目がこちらを見るのを待ってから、はっきりと首を横に振った。
「違う。強き者の力は、何かを守るためにある。申し遅れたが私はクラウス・フォン・シュヴァルツ。この国の王族だ。お前が良ければ、お前に私の、近衛騎士となって欲しい。お前にはあの路地裏で、命を救われた。その恩は返さねばならない」
「食べ物ならもらった」
「あの食事が、毎日食えるとすればどうだ」
「……どうすればコノエキシになれる」
クラウスが小さな笑い声を漏らし、ルイーゼの手を解放する。
父親を含む他の王族を何と言って説き伏せようかと、そのようなことを考えながら、書類が積まれた机の方へと足を向けた。
「そうだな、正直なところ障害は多いが……まずは理性を身に付けろ。怒りや欲望のままに他者を害するは、それこそ獣の所業だ。騎士でありたければ、まずは人間で在らねばならない。ああ、すまない、今の『人間』というのは、広義の『人』という意味であって、つまりお前には悪いが最低限の社会性を――」
クラウスの言葉の途中で、ぶちり、と何かが引き千切れるような音がした。
近衛騎士に関する書類を探していたクラウスは、振り返り、そして溢れんばかりに目を見開いた。
ルイーゼの頭にあった獣の耳の片方は無くなり、代わりに白い髪は真っ赤に染まっている。
赤が滴る髪と、その隙間から覗く赤い瞳は、伝承の魔女を彷彿とさせた。
呆然とするクラウスの目の前で、ルイーゼの血まみれの手が残された片耳に伸ばされる。
「っ、おい待――」
待てと、静止するために伸ばした手の先で、薄い耳には鋭い爪が突き立てられ、次の瞬間には肉が引き千切れる嫌な音が室内に響いた。
「何をしている‼︎」
クラウスは怒号をあげて、ルイーゼのもとへと駆け寄った。
「? 人間に見えないと、キシになれないと言った。これで人間に見えるか?」
引きちぎった耳を乗せた手の平を差し出しながら、ルイーゼが首を傾げる。
クラウスの手がその腕を掴み、強く抱き寄せた。
「すまない、私の説明が悪かったが故に、お前にそのような真似をさせてしまった。本当に、すまない……!」
幾度も謝罪を重ねる少年に、ルイーゼは、これで近衛騎士になれるのかと問いを繰り返した。
クラウスはそっと身を離し、ルイーゼの手を強く握って、彼女の目元まで流れてきた血を反対の手の指先で拭う。
「ああ、必ず。お前の正体が何であろうと、必ず近衛騎士として認めさせてみせる。そして、いつか私は、獣人と人間との共存を成し遂げる。お前がどのような姿であろうと、大手を振って生きていける国にしてみせる。二度とお前に、生きる為に他者や己を害させることはしない。いずれ、必ず。――ルイーゼ」
◇
死に戻りの魔力を発動しながら、ルイーゼはロズに見せた断片的な光景を、再び脳裏に思い浮かべる。
既に記憶には大きな欠損があったが、理すら異なるらしいこの空間では、彼の言葉、動作、匂いに至るまで全てが鮮明に思い出せた。
あの日、クラウスから名前と同時に、人間としての生を貰った。
初めは飯さえ食えればそれで良かったが、その辺りにあった草や花に名があることを知り、剣術を学び、世界の構造や改革の必要性を語られ、獣人の部下を任される頃には、すっかりルイーゼ・ヴァイスとして振る舞えるようになっていた。
敵の多い城内は、油断をすれば命を喰われることに変わりはなかったが、それでも前よりもずっと良いものであるようにルイーゼには感じられた。
漆黒の衣と重厚な鎧を纏い、ルイーゼ、とその名を呼ぶ男の姿を思い浮かべる。そのことだけで、口元には柔らかな笑みが滲んだ。
ふと、かつてこの空間でロズに、彼の為にどこまで出来るか問われたことを思い出す。
「ええ、愚問です。何でもです。たとえこの名を失おうとも、貴方との出会いが無くなろうとも、貴方が生きればそれで良い」
はっきりとそう宣言し、ルイーゼの姿は煙のように掻き消えた。
負けて大怪我を負うこともたまにはあったが、飯の調達にはさして困らず、たまに密猟に来る者がいると運が良かった。
人間は武器さえ押さえてしまえば牙も爪もなく、殺すことは容易で、しかも生肉以外の食いやすいものを多く持っていた。
巡回に来た兵を返り討ちにしたことも数度あったが、集団を相手にすることは厄介だと学んだので、基本的には隠れてやり過ごした。
ある時、街がやけにうるさかった。
喧騒を避けるために路地裏に身を潜めていると、そこに黒い髪の少年が駆け込み、その後ろから武器を持った人間が数人追いかけて来た。
殿下、と呼ばれた少年がまさに殺められる寸前に、振り下ろされた剣を弾き返し、ルイーゼの爪が追っ手の首を裂く。
何か食い物を持っていないだろうかと屍体を漁っていると、ルイーゼの背後から、何をしているのか、と叱責の声があった。
「弱い。だから食う」
男の懐から取り出した干し肉を齧りながら、ルイーゼが答える。
そこに再び剣を持った人間たちが駆け込んできた。
転がっている死体よりも身なりの良さそうな男たちの顔を一瞥すると、少年は、一瞬悩んでからルイーゼの手を取り、その場から走り去った。
人気のないところまでやって来て、少年はようやくルイーゼを掴む手を離した。
「お前は、なぜあの者たちを殺した。助けて貰ったことには礼を言う。だが、まずは裁判によって裁かれるべきだった」
ルイーゼは最後の干し肉を飲み込んでから、少年へと振り返る。
「弱いから、殺された」
「ならばなぜ、私のことは殺さない」
「食べ物持ってない」
少年、クラウスは思い当たる。
ここのところ、魔女の森を巡回する兵が傷を負って帰ることが多く、食べ物を狙う獣人の賊が住み着いているのだという噂が城内ではしきりと囁かれていた。
「何故殺して奪う。生活が苦しいことは理解するが、それでは何一つとして現状を変えることは出来ない」
獣人差別について語る少年に、ルイーゼは興味なさそうな顔をする。親は、と問われ、親とは何かと聞き返した。
クラウスはようやく、ルイーゼの様相のおかしさに気がつく。
獣人だとばかり思っていたが、象徴ともいえる頭の上の獣の耳は、他の獣人よりも一回り小さい。
失礼する、と言ってヘドロのように固まった髪を何とか掻き上げると、隙間からは小さいが人間の耳が現れた。
汚れ切った前髪から覗く目は、血よりも深く赤い。
「お前は……混血か」
「それ、何だ?」
「私が世話になった方も、そうだった。近いうちに『運命に出会う』と言われたが、まさかお前ではないだろうな」
「腹減った、だから、もう行く」
少年はまた少し悩んでから、何かを決めたように頷く。
来い、と言って、立ち去ろうとするルイーゼの腕を掴み、そのまま彼の屋敷へと連れ込んだ。
屋敷の湯殿でクラウスがルイーゼの身を清める。
使用人には王族が何をするのかと悲鳴を上げられたが、クラウスは少しも取り合わなかった。
不愉快そうに唸り声を上げるルイーゼを繰り返し宥めながら、何度も血泥色の湯を流し、そこで初めて、彼女の髪が真っ白であることに気がつく。
清められた身で柔らかな衣装を纏わされ、大きな机に並べられた食事を見て、ルイーゼは目を瞬かせる。
すぐさま机上に飛び乗って食べ始め、またクラウスから叱責を受けた。
すっかり呆れ切った様子の使用人を黙らせて、クラウスは自室にルイーゼを連れ込む。
何とか話を聞き出して、彼女の身の上を理解した。
今にも窓から飛び出しそうなルイーゼの手を取って、クラウスは言った。
「今はそれでいいかもしれないが、その生き方ではいずれ必ず悲惨な死を遂げる」
「自分より強いものには食われる。それが道理……摂理?」
顔に掛かるさらさらとした髪を鬱陶しそうに払いながら、ルイーゼが答える。
クラウスは、ルイーゼの手を強く握り、彼女の目がこちらを見るのを待ってから、はっきりと首を横に振った。
「違う。強き者の力は、何かを守るためにある。申し遅れたが私はクラウス・フォン・シュヴァルツ。この国の王族だ。お前が良ければ、お前に私の、近衛騎士となって欲しい。お前にはあの路地裏で、命を救われた。その恩は返さねばならない」
「食べ物ならもらった」
「あの食事が、毎日食えるとすればどうだ」
「……どうすればコノエキシになれる」
クラウスが小さな笑い声を漏らし、ルイーゼの手を解放する。
父親を含む他の王族を何と言って説き伏せようかと、そのようなことを考えながら、書類が積まれた机の方へと足を向けた。
「そうだな、正直なところ障害は多いが……まずは理性を身に付けろ。怒りや欲望のままに他者を害するは、それこそ獣の所業だ。騎士でありたければ、まずは人間で在らねばならない。ああ、すまない、今の『人間』というのは、広義の『人』という意味であって、つまりお前には悪いが最低限の社会性を――」
クラウスの言葉の途中で、ぶちり、と何かが引き千切れるような音がした。
近衛騎士に関する書類を探していたクラウスは、振り返り、そして溢れんばかりに目を見開いた。
ルイーゼの頭にあった獣の耳の片方は無くなり、代わりに白い髪は真っ赤に染まっている。
赤が滴る髪と、その隙間から覗く赤い瞳は、伝承の魔女を彷彿とさせた。
呆然とするクラウスの目の前で、ルイーゼの血まみれの手が残された片耳に伸ばされる。
「っ、おい待――」
待てと、静止するために伸ばした手の先で、薄い耳には鋭い爪が突き立てられ、次の瞬間には肉が引き千切れる嫌な音が室内に響いた。
「何をしている‼︎」
クラウスは怒号をあげて、ルイーゼのもとへと駆け寄った。
「? 人間に見えないと、キシになれないと言った。これで人間に見えるか?」
引きちぎった耳を乗せた手の平を差し出しながら、ルイーゼが首を傾げる。
クラウスの手がその腕を掴み、強く抱き寄せた。
「すまない、私の説明が悪かったが故に、お前にそのような真似をさせてしまった。本当に、すまない……!」
幾度も謝罪を重ねる少年に、ルイーゼは、これで近衛騎士になれるのかと問いを繰り返した。
クラウスはそっと身を離し、ルイーゼの手を強く握って、彼女の目元まで流れてきた血を反対の手の指先で拭う。
「ああ、必ず。お前の正体が何であろうと、必ず近衛騎士として認めさせてみせる。そして、いつか私は、獣人と人間との共存を成し遂げる。お前がどのような姿であろうと、大手を振って生きていける国にしてみせる。二度とお前に、生きる為に他者や己を害させることはしない。いずれ、必ず。――ルイーゼ」
◇
死に戻りの魔力を発動しながら、ルイーゼはロズに見せた断片的な光景を、再び脳裏に思い浮かべる。
既に記憶には大きな欠損があったが、理すら異なるらしいこの空間では、彼の言葉、動作、匂いに至るまで全てが鮮明に思い出せた。
あの日、クラウスから名前と同時に、人間としての生を貰った。
初めは飯さえ食えればそれで良かったが、その辺りにあった草や花に名があることを知り、剣術を学び、世界の構造や改革の必要性を語られ、獣人の部下を任される頃には、すっかりルイーゼ・ヴァイスとして振る舞えるようになっていた。
敵の多い城内は、油断をすれば命を喰われることに変わりはなかったが、それでも前よりもずっと良いものであるようにルイーゼには感じられた。
漆黒の衣と重厚な鎧を纏い、ルイーゼ、とその名を呼ぶ男の姿を思い浮かべる。そのことだけで、口元には柔らかな笑みが滲んだ。
ふと、かつてこの空間でロズに、彼の為にどこまで出来るか問われたことを思い出す。
「ええ、愚問です。何でもです。たとえこの名を失おうとも、貴方との出会いが無くなろうとも、貴方が生きればそれで良い」
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