旦那様は離縁をお望みでしょうか

村上かおり

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バーバラ

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 本の価値に気づいた私は、せっせと小物を作って売りました。けれど小物の売り上げ程度で本を買うことは出来ません。少しずつ貯めたお金で貸本屋に行って、本を借りればいいと私は気が付きました。

 けれどこういった生活は、結婚したらできなくなってしまいます。

 そう思っていた私は、できるだけ婚期を引き延ばして、引き延ばして、エリスが結婚しても、シルヴィアに婚約者が出来ても一人でいたのです。

 その事に後悔はありません。

 年に数回ある王家主催の夜会やお茶会で、どんなに陰口を叩かれてもあまり気にはなりませんでした。けれど、そのせいでしょうか。このような事になってしまったのは。

 この国の貴族の令嬢の婚期は、14歳から20歳くらいまでとされています。それを過ぎれば行き遅れと呼ばれ、身体に何か欠陥でもあるのではないかとか好き勝手に言われます。

 私は22歳になるまで結婚しませんでした。本当はもっと延ばせる事なら延ばしたいと思ったのですけれど、お父様に「そろそろ結婚しないか?」と泣きつかれてしまうと、頷かない訳にもいかなくて。

 そこで結婚相手として引き合わされたのが、リカルド・アルトワイス伯爵令息でした。

 リカルド様は伯爵家の次男という事で、伯爵家はお兄様が継ぐため十五の頃から騎士団に所属していたそうです。

 鍛えられた身体はとても逞しく、短く揃えられた鈍色にびいろの髪とセルリアンブルーの瞳が印象的な美丈夫でした。

 けれど初めて引き合わされた彼の表情は、不本意だとでもいうかのように憮然としており、私の顔も強張ります。
 愛想など振りまけるような空気ではなかったのです。

 私に結婚したいという願望はありませんでしたが、結婚とは、サーシャ姉様やエリザベス姉様のように、旦那様と一緒に協力して生活していくものだと、そう思っていたのです。

 しかしリカルド様の表情を見る限りだと、そうもいかないかもしれません。

 けれどこの結婚話は、アルトワイス伯爵家から申し出てきたものです。

 どうやらアルトワイス伯爵家は、領地が天災にあってしまい、借金をしなくては村や街などの復興もままならない状態だというのです。

 我が家はエリザベス姉様とお兄様のおかげで、この頃には生活にだいぶゆとりがありました。それにアルトワイス伯爵とルーベンス子爵である父とは、学友だったそうで、若かりし頃はよくやんちゃしたものだよ、などと二人して笑っていらっしゃいましたので、気心は知れているのでしょう。

 けれど互いに面識のない私とリカルド様には、結局のところ、私の持参金を目的とした契約結婚のようなものでしかありません。リカルド様は次男である自分が、そんな役目を課される事に納得がいってなかったのだと思います。


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