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王都にて
コリンナ 2
しおりを挟むあたしは、これでも村の中ではそこそこ可愛い方ではあったんですよ。
だから王都に行ってもきっと大丈夫。そんな根拠もない自信がありました。
今にして思うと、何でそんな事を思ったのかなって、ちょっと不思議な気もしますけどね。
あたしももうすぐ16才になるかって時に、王都に向かう隊商がやってきました。
その頃のあたしは、16才になったら村の男衆か隣村の男衆の誰かと結婚しなくちゃいけないって言われていて、でも、あたしはそれが嫌だったんですよ。
だからあたしは親に内緒で、働いて貯めた小金を持って、こっそり隊商の荷馬車に潜り込みました。
でも結局すぐに見つかっちゃいましたけどね。
そう言ってあたしが笑うと、バーバラさんもくすりと笑ってくれた。
多分この人も貴族のご令嬢なんだろうなぁ、とあたしは思っている。
着ている服は、今のあたしよりも質素だけど、庶民用の服よりは断然生地がいいもの。
それに凄い美人っていう訳でもないけれど、あたしよりも全然、綺麗だし。お上品だし、細いし、言葉遣いも丁寧だ。
そんな彼女の膝の上で眠っている男性は、鈍色の髪をしていて、どこかリカルド様を思い出してしまう。
リカルド様は今頃なにをしているんだろう?
あたしが食堂からいなくなったことは気が付いてくれてるんだろうか。
それともやっぱり結婚した貴族のご令嬢様と幸せに暮らしていたりするのかな。
そう考えると少しばかり悲しくなる。けれど、あたしはリカルド様に嘘をついたし、ここに連れてこられてもう何か月も経つけど、誰もあたしを探しているようには思えなかった。
だから、きっとそれが答えなんだと、あたしは諦めてる。
どうせ平民の娘の事なんて、リカルド様もお貴族のご令嬢の奥様を相手にしていたら忘れちゃうに決まってる。
うん、絶対にそう。
「それからどうしたの?」
バーバラさんは優しい人なんだろうなぁ。
あたしの話を聞いてくれようとしてくれてる。
この人たちが何でここに連れてこられたのかは、あたしにも分からないし、あいつらがやってくるのもまだ先のことだろう。だったら詰まらない話かもしれないけれど、あたしの話で時間を潰してもらえたらいいか、なんてこの時のあたしはそう思ったんだ。
それからは、仕事を探しても身元も保障されていない十五、六の小娘を雇ってくれるところなんて見つからなくて難儀しましたねぇ。一度なんて騙されてあやうく娼館に連れていかれそうになったんですよ。
あたしが娼館なんて言葉を口にしたら、バーバラさんは驚いたように目を見開いていた。
ああ、貴族のご令嬢様には刺激が強いのかなぁ。
でも、こんな事は平民にはよくある話だし、そう思ってあたしは話を続ける。
もう、相手の男を引っ搔いて嚙みついて逃げ出して、ひたすら走って、走って、気が付いたら自分がどこにいるのかもよく分からなくなったところで、ある食堂のおかみさんに出会ったんです。
きっとその時のあたし、よっぽどひどい顔してたんでしょうね。
あんたいったいどうしたんだいって、おかみさんが声を掛けてきてくれて。
着ている服なんて男に脱がされそうになったもんだから、ところどころ破れてましたし。まあ、それで事情は察してくれたんだと思うんですけど。
そうしたら、そこの食堂でご飯食べさせてやるし、自分のお古でいいなら服もやるから、おいでって。
騙されて娼館に連れていかれたときも、似たようなことを言われましたから、また騙されるのかなぁと少し不安には思ったんですけど、疲れてたしお腹減ってたし、騙されたらその時また逃げればいいかって。
でも、おかみさんはいい人でした。
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