旦那様は離縁をお望みでしょうか

村上かおり

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王都にて

コルシーニ 3

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 バーバラ嬢が戻っていないという知らせが入ってからの動きは素早かった。

 まずルチア嬢がテーブルの上に広げられていた書類を片付けたかと思えば、ルーベンス子爵令息が王都の地図を広げる。

 殿下が団長を呼べば、団長はすぐさま扉の外の控えさせていた伝令に小隊を呼びに走らせた。
 そして殿下がオレの名を呼ぶ。

「コルシーニ」
「はいっす」

 オレもすぐさまテーブルに近づいて、自分の見ている索敵の情報と照らし合わせて目標の場所を示せば、団長自ら飛び出して行った。

「リカルド! オレたちも行くっすよ!」
「お、分かった」

 オレが示したのはだいたいの位置だから、オレがいなくちゃ細かい場所が分からない。リカルドはそんなことも分かってはいないだろうけれど、声をかければすぐに行動に移すのは訓練の賜物だろうか。




 王太子殿下の直属の騎士団である第6と第7は1小隊20名で、6小隊120名ずつで構成されている。

 けれどオレっちのような索敵などの隠密行動が得意なものや治癒魔法が得意なものは、それほど数が揃えられないため別動隊として団長から直接指示を受ける。

 今回の場合であれば、第七の2小隊が目的の周囲を押さえ1小隊が突入することになった。

 もちろんオレっちとリカルドは、小隊の邪魔をしないように少し離れた場所で団長と共に待機している。

 現場の監督は副団長に任せた。なにせ副団長も半径2メル(=2キロ)程度の索敵ができる。それほど大きくない屋敷であれば、それで充分だった。

 場所としては神殿に近い公園の側の屋敷だ。
 貴族街からは離れ、庶民が多い地域ではあるが、どちらかと言えばこの屋敷は大店の商人が購入する類のもの。
 そして外から見る限りは、誰かが住んでいるようには見えなかった。
 もちろんオレっちが知っている限りでも、この屋敷はここ数年誰も買い手がついてない空き家のはずで。

 だけどマーキングはこの屋敷の中に人がいることを示していた。

 そしてあともう少しで包囲網が完成し、団長からの突入指示待ち、というところで、あちらさんに動きがあった。

 オレっちの着けたマーキングが家屋周辺では何も動きがないのに、真っ直ぐどこかへと向かって動いている。

「これは……地下があるっすね」
「この屋敷の図面はまだ手に入っていないか」
「四半刻(30分)前に商業ギルドに確認に行っていますが、まだ戻ってきていません」
「うむ、コルシーニ、どっちの方向に向かっている?」
「真っ直ぐなら森林公園の管理小屋の辺りっすかね」

 自分でそう口にしてみたけど、ちょっとばっかし納得がいかなかった。
 なぜなら森林公園の管理小屋までは結構な距離がある。
 地下通路でほぼ直線で進めたとしても、半刻(1時間)はかかるはずだ。

 何某かの手段でこの屋敷の周辺に人が集まっている事に気づいて逃げ出したとしたら、半刻もかかる場所を目指すだろうか。しかもマーキングは3つのままだ。
 という事は確実にバーバラ嬢と犯人が二人いることになる。それにルーベンス子爵令息の話ではリカルドの兄がバーバラ嬢と一緒にいたはずだ。

 現地点から左にそれれば貴族街の屋敷が密集している地区がある。そんな場所に逃げ込まれたら色々と面倒だ。だったらさっさと捕まえちまった方がいい。それに、じりじりと進む点の動きは緩やかだった。たぶん地下通路に灯りがなく、人質がいるせいで進みが悪いんだろう。

 だったら今、突入すれば捕まえることができるはずだ。

「……あー、団長今すぐ突入させてください。どこに向かうか考えるより突入して後を追った方が早いと思うっす」
「分かった。伝令!」
「はい!」
「第一小隊はすぐさま突入、犯人と人質をすぐさま確保せよ、第二小隊はその場で待機、第三小隊は念のため森林公園の管理小屋に向かえ」

 伝令は団長の命令を繰り返すとすぐさま副団長のところへと飛んで行った。

 そして伝令が伝わったと同時に、どんっと空き家の扉が突き破られ、第一小隊の20名と副団長が突入してく。

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