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しおりを挟む『主、待たせた、大丈夫か』
不意に聞こえた声と共に、するりとネコ科の動物のしなやかな身体が寄せられた。真っ黒な体躯に溶け込むような縞模様を持つ黒虎のリューイ。
『お待たせ、もう大丈夫よ』
瑠璃色の羽に極彩色の尾羽を持つ極楽鳥のシャンティは、黎明の魔女に引き合わされたフリートディートの使い魔だった。
だが、彼らに引き合わされた時の姿は黒猫と鴉だったはずなのに、フリートディートと契約した途端いまの姿になった。
しかも使い魔から精霊に格上げされたと喜ぶ二匹に、フリートディートもさすがに意味が分からなくて戸惑ったものだ。
『解毒は既にされてるみたいだけど、念のためかけるわね、キュアポイズン』
フリートディートにしか聞こえないように囁いたシャンティが、わざとらしく羽を広げて魔法名を唱えれば、柔らかな光がフリートディートを包みこむ。
そうするとすぐに身体の痛みは完全に引いていった。
さっきは自分で完全に解毒できたように感じたが、咄嗟にかけたせいで完全ではなかったみたいだ。
『主は少し休むといい、ヒール』
フリートディートがそんな事を考えていると、毒に犯された内臓や器官を癒すべく、リューイがヒールを唱えた。
いくら魔法で解毒や癒しを施したとは言え、失った体力はすぐには戻らないから正直ありがたい。
そして身体の方は限界だったのだろう。フリートディートの意識はすとんと眠りに引き込まれてしまった。
「シャンティ、リューイ、フリートディート様はもう大丈夫ですか?」
突然現れ主に寄り添う二匹の獣を、マーシアとその両親以外は遠巻きに見つめている。
もちろんその表情には畏怖が滲み出ていて、マーシアのようにフリートディートを心配している様子はなかった。
その事にリューイは溜息を一つ零すと、主の婚約者であるマーシアに大丈夫だと告げる。
『解毒と回復魔法をかけたからもう大丈夫よ、あとはお部屋で休ませるだけね』
パタパタとマーシアの傍まで飛んできたシャンティは、彼女の肩に止まると優しい声でそう伝えた。
ラベンダー色の髪と琥珀色の瞳を持つこの少女は、釣り目のせいかややきつい印象を与えるし、王子妃教育のせいで表情筋があまり仕事をしないのが気にかかるけれど、シャンティはマーシアの事は主の次に大好きだ。
そろそろシャンティの眷属である小鳥を一羽、彼女につけようかなんて考えているくらいには。
『あとは部屋で休ませればいいのだけれど……』
シャンティがぽそりとそう呟けば、すっと一人の侍従が彼らのすぐ側に現れた。
そう唐突にその場に現れたのだ。
彼らを遠巻きに眺めていた王族や婚約者たちは、声もなく驚く。
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