セクシャルマイノリティを異世界召喚するなんて正気か⁉

村上かおり

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CASE1 広瀬 海翔

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 俺、広瀬 海翔ひろせ かいとはゲイバーで働いている。

 店の名前は「マリアン」。

 ママさんの名前が真理央さんだから「マリアン」だって聞いた時には、安直なって思ったけれど、自分の店なんだから、どんな名前だって好きにしたらいいんだよな。

 それにこの店、ママさんの人柄なのか、明るくて楽しい空間だし、集まってくる人たちも、それなりに大人な人が多い。

 まあ、年齢層が高めとか、口さがない事を言われる事もあるけど、何もゲイバーの全部が出会い系の店なわけでもないし。

 俺も、人間関係で色々とあって、職場にゲイバレしたりして、引っ越してきた口。

 でも何が驚いたって、駅前にゲイバーがあったこと。

 驚くだろ? だってゲイバーが駅前にあるなんて、ノンケからの風当たりとか大丈夫なのかって。

 一応、最近は区によっては同性婚も認められるようになっては来たけど、それでもまだマイノリティなわけだしさ。

 気持ち悪いとか、オカマだとか言われて逃げてきた俺にしてみれば、なんだか凄く堂々としてていいなって思ったんだ。

 そして店に入ってみれば、壁面に色んな種類のウィスキーやカクテル用の酒が並んでて、メニュー表を見れば日本酒もワインも豊富。

 こういう店のカウンター席には高いスツールの椅子が付きものだけど、詰めれば何人でも座れそうなベンチだったり、店の奥まったところに一席だけあるテーブル席もコの字型にソファが配置されてて、1人や2人だけで楽しむような感じじゃなかった。

 そう思った俺の感覚は間違いがなかったみたいで、この店に来るのは常連客がほとんど。

 時たま俺みたいなのが、ふらりと現れては居着いたり居着かなかったり。

 それかママさんが、どこからか拾ってくる連中が、なんとなく居着く。

 犬とか猫じゃないんだからさ。拾ってくるなよとは思うけど、俺と一緒のシフトで入るトランスジェンダーの伊奈 薫いな かおる、源氏名キャロルちゃんとか、俺より10こ下のくそ生意気な女装子でジェンダーレス男子の沖田 誠二おきた せいじ、源氏名セシルとかは、拾われて喜んでたから、まあ、悪い事じゃないんだろう。

 ちょっとお人好し過ぎるかな、とは思うけど。

 ちなみに俺に源氏名はない。

 だって俺は別にキャロルちゃんみたいに心が女の子な訳でもないし、セシルのように女装が好きなわけでもない。

 ただ男の人を好きになってしまうってだけ。

 だけど、そう思えるまでには色々あった。

 それに、気持ちいいことは好きだけど、人の悪意にはめっぽう弱い。

 だから、前の職場から逃げ出した訳なんだけどさ。


 でも、この店でママさんと旦那さん、それと常連客と話すようになってから、少しだけ前向きになれた。それに、逃げてきたから仕事もない訳で。そんな俺を雇ってくれたママさんには感謝しかない。

 だから俺はこの店を大事にしたいと思ってる。

 もちろんママさんや旦那さんが大事にしている「出会いも必要かもしれないけれど私たちにも癒しが必要なの」という考え方も好きなんだ。

 恋愛なんて関係なく、美味い酒を飲んでわいわい騒いで。

 自分の好きな格好をして、自分の好きな事を話して、否定されることなんてなくて、自分以外の誰かにそれらを理解してもらえる空間。それがゲイバー「マリアン」なんだ。

 けれど今日のお客さんは、全く違う。

 というより時間潰しと興味本位ってのが実際のところだろうな、と俺は思っている。

 だって、金髪青目の外人と、その彼女さんだかなんだか知らないが、今どきの子っぽい明るい茶髪のゆるふわロングに、メイクもばっちりな女の子が友人を引き連れて店にやってきたからね。

 うちの営業時間は夕方の8時から翌朝の5時までだし、駅近だからか、ちょっとした居酒屋感覚で終電逃した奴らが来ちゃうんだ。

 だから、わざわざ紫色の地に黄色い文字でデカデカと「Gay Bar Marian」って書かれた看板出しているんだけどさ。

 カウンター席も、奥にコの字型のソファがあるテーブル席にも、外人の女の子やら男の子たちと、その子らの彼氏だか彼女だか、それとも狙ってるのかって子たちでいっぱい。

 この店は、せいぜい15人くらいしか入れないってのに。

 この子たちで席が満席になっているから、一見さんも寄りつけないじゃないか。

 その上、ビールやサワーの注文ばかりで、おつまみが少ないとか、食事メニューないのとか、とにかく煩い。

 ここは居酒屋じゃないっての。

 それに今日はママのマリアンさんと旦那さんはお休みで、俺がチーママなんだよね。

 せめてもう少し売り上げに貢献してくれないかなぁ。

「君かわいいよねぇ、ゲイバーで働いているってことは男の子なの?」
「そうですよ、僕、可愛いでしょ」
「じゃあさ、じゃあさ、この後デートしよーよ」

 こら、こら、こら。

 ここは出会い系のお店じゃないし。

 まあ、女装子でジェンダーレスの誠仁くん……いやセシルちゃんは、自分に似合う恰好をするの(それが女装らしい)と、褒めて貰うのが大好きなだけで、別に男の人が好きなわけじゃない。

 でも、そんな性癖も外の世界じゃ異端扱いなのは変わらなくて、街中で男の人に絡まれてたのをママさんに拾われたうちの一人。

 20歳になったばかりの誠仁君は、なんだかんだ言って週に1,2回アルバイトにくるんだけど、何故か俺を見ると子猫みたいに威嚇してくるんだ。

「自分が一番綺麗だと思ってるでしょ! 負けないんだから!」

 そんな事言われても、俺の顔が整っているのは、父親がハーフだったからってのもあると思うんだよね。

 でも、その父親というか家族とはーー大学の卒業を機に、家族にゲイだとカミングアウトしたら、母親は普通だったのに、父親の目の奥に浮かんだ嫌悪とか、弟にも気持ち悪いとか、俺に欲情すんのかとか、出て行けよ、なんて言われてさーーほとんど絶縁状態なんだけどね。

 それに男が綺麗でも、あんまり得する事ってないよ。

 変な親父にケツ触られたりさ、遊んでるんでしょって決めつけられたり、まあ、もう色々。

 それにゲイ界隈でも、嫉妬されたり、ビッチ扱いされたり面倒臭いんだよ。俺にだって選ぶ権利くらいあると思わない? 綺麗系より可愛い系がいいって言われる俺の気持ち分かる?

 でも、まあ、俺が思いのほかズボラだって誠仁君も分かったんだろうね。最近では、もっとスキンケアに気を遣いなよ、なんて言いながらコスメをお勧めしてくるようになった。

 うん、でも俺お化粧とかしないしね。興味ないんだって言っても、試供品とか渡してくるから、俺のバックにはやたらとそういう試供品が詰め込まれてる。



ーーーーーーーーーー


 久しぶりのBLです。よろしくお願いします。
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