セクシャルマイノリティを異世界召喚するなんて正気か⁉

村上かおり

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CASE1 広瀬 海翔

1-4

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 なんか、やたらと長い廊下を歩いたのに、誰ともすれ違わずに辿り着いた部屋は、どこのスイートルームだ、と思えるくらいに広々とした部屋だった。

 けれど、部屋の真ん中にあるのは豪華なソファセットではなく、天蓋付きのベッド。

 もちろん、部屋の隅の方にソファセットは置いてあったけれど、なんとなく嫌な予感がする。俺の脳裏にはヤリ部屋って単語が浮かんだ。

「さあ、少し話をしましょうか」

 しかし相手にそう言われてしまえば、黙って頷くしかない。

 何せ、ここがどこかも分かっていないし、薫君や誠仁君がどうなっているのかも気になった。

「ここはルクォーツ大陸といい、人族の国とエルフの国と獣人族、竜人族、妖精族、ドワーフなど幾つもの種族が集まっている大陸です」

 部屋の端にあるソファに腰かけたのはいいけれど、何故か男がぴったりと身体を寄せて座ってくる。

 俺としては、できれば離れて座って貰いたい。

 けれど最初から端に座らされているせいか逃げ場もないし、この男、俺の言うこと軽く無視するんだよな。

「もう少し離れてくれないかな」

 無視されると分かっていても、一応、言葉にしてみる。でないと後で合意だったみたいなこと言われても言い返せないからね。自衛大事。

 メーアと名乗った男が爽やかな笑みを見せながら軽く右手を振ると、目の前のローテーブルの上に、ふわりとカットされた果物(だと思う)が乗ったボウルが出てくる。

「え? 今どこから出てきた?」
「魔法ですよ」

 メーアは何でもないようにそう言って、カットされた果物を、これまたどこからか出した銀色に輝く二股のフォークで刺して差し出してきた。

 俺はそんな男をじろりと睨む。

「で?」
「人族には男女という性別の他に、アルファ、ベータ、オメガという第二の性を持っていまして、ベータは大勢いるのですが、アルファとオメガの数は少なく、特にオメガの数が近年減っておりまして」

 俺が食べる気がないと分かったのか、メーアは肩を竦めてフォークを皿の上に置くと口を開いた。

「オメガってなんだよ」
「オメガとはアルファの子を産むことが出来る優秀な人族と言っていいでしょう。ですが、オメガの素晴らしいところは、男性でも妊娠できるという事と、他種族の種でも孕めるというところでしょうか」
「は?」
「けれど、そのために人族のオメガは他種族からも狙われるようになりました。ただでさえ人族の頂点とも言えるアルファを産むことが出来る胎ですからね。長寿故に中々子供が生まれない竜人族やエルフ、ドワーフにとっても、価値がありました」

 まるで、余所事を話すかのようなメーアに、俺は少しだけ眉をしかめる。

 だって、今この男は竜人族とエルフと言った。

 俺はあんまりゲームとかファンタジー小説とかは読まないけれど、それでもエルフの特徴として美形だって事と、耳が尖っているってことくらいの知識はある。

「けれどオメガの数はとても少ない。特に王侯貴族に生まれたオメガは、大切に隠されて竜人族やエルフ、ドワーフの元に嫁いでくることはありません。けれど子に命を繋ぎたいと思うのは、彼らも同じなのです。そして、それはやがて火種となりました」

 俯いて悲し気に瞳を伏せるメーアに、俺は何だか身体がむずむずした。

 何故だろうとは思うが、いきなりメーアに手を握られて、その疑問は霧散する。

「オメガを巡る戦争が繰り広げられ、どの種族もその数を減らし、やがて妖精族から神託が下ろされたのです」
「あ?」

 さっきからこの男は、どんどん知らない単語を増やしている。

 ヨーセー族ってなんだよ。しかもシンタク? 信託?

「このままではルクォーツ大陸にいる種族すべてが滅びてしまう。諍いをやめよ。オメガが必要なのであれば増やせばよい。そのために異世界からオメガを召喚する陣を与えよう、と」
「……」

 真剣な表情でそう言われたが、俺にはメーアが何を言っているのか分からなかった。



ーーーーーーーーーー

 ちょっと短めです。
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