死配人ー視捜の狂ーさがしものは、あなたですー

不幸中の幸い

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落とし主を知りませんか

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午後3時を少し回った頃、
陽射しはやわらかく、風はぬるく、街のざわめきも遠く感じられる――
そんな、無害な日和だった。

僕は、知らない町のどこに繋がっているかも分からない道をゆっくり歩いていた。
数時間前までは出張のため、電車を乗り継ぎながら辺境の町に向かっていた。
途中でウトウトと居眠りをし、
ガクンという衝撃で目を覚ました時には
終点駅まで乗り過ごし、見知らぬ田舎町に着いていた。

(ここはどこなのか‥‥)

何かを考えているような顔をしてはみたが
頭の中は空っぽで、ただ無目的に靴音を芝生へと預けていた。

公園らしき広場がある。
ベンチが見える。
ベンチの前、しゃがみこんでいる男がひとり。

ジャケットを羽織っているのに妙に土埃っぽく、少し汗ばんで見える。
男は落ち葉をかき分けるように、地面を指先で探っていた。

その姿に、足を緩めた。

──何か落とし物でもしたのかもしれない。

そう思ったのと、男が顔を上げたのは、ほぼ同時だった。

「すみません……あのぉ…この落とし主、知りませんか?」

しゃがんだまま、男は聞いてきた。
柔和な表情ではあるが、目の奥は笑っていない。

手には、何かが握られていた。
古びた名札のようなもの。
写真は薄れていて、文字もにじんで読めない。

「いえ……誰のものかは……」

そう返すと、男は「そうですか」と言って小さくうなずいた。
その仕草は、諦めでも落胆でもなく、
何か“確信”のような空気を纏っていた。

「ここ、よく落ちてるんです」

男はそう呟き、名札をポケットに仕舞い、別の紙切れを取り出した。

その紙には、“ありがとう”とだけ書かれていた。
震えるような字で、でも整っていた。

「たぶん、見つかります」

男はそう言った。
その言葉にどう返していいかわからず、立ち去るタイミングを逃した。
反面心のどこかで、“この人を放っておけない”という感覚も芽生えていた。

ベンチの隣にしゃがみこむ。

「……何を探してるんですか?」

男は、微笑んだ。
その笑顔だけが、妙に人間らしかった。

「それが……まだ、わからないんです」

遠くで風が吹いた。
どこかで、誰かが笑った。

その日、公園には、ほとんど人がいなかったはずだった。
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