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31* 45年後の話のおまけ side ティレク
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アリウスが自分へ対しどれほどこじらせていたのかを完全に見誤っていた。
アリウスを食客として迎えた日の夕方、部屋の内装を見てほしいと言われた。自室に繋がっているからと、のこのことアリウスの寝室に行ったのが愚かだった。というのも、部屋の中を見渡しながらベッドの傍に立っていたアリウスへ感想を言おうとしたところ、真新しいベッドに押し倒されたのだ。
ふだんであればうまくさばけたが、アリウスの性格からすぐに手を出してこないだろうと高をくくっていたせいもあって完全に気が緩んでいた。
「部屋の内装を見せるんじゃなかったのか」
「今、お前がこの部屋に来てくれたことで完成したからな」
覆い被さるアリウスが青い瞳を細めれば、目尻にくっきりシワが浮かんだ。窓から差し込む夕日が昔より白っぽい金髪やほどよく蓄えられた髭を赤く染める。こうして間近に眺めるアリウスからは若き頃のような青臭さをまるで感じない。
アリウスは身をかがめると、つるりとしたティレクの顎を優しく撫でた。
「ティレク、久しぶりにお前を抱かせてくれ」
「歳を考えろ、馬鹿者」
最後に抱かれたのはもう四十五年前だ。しかし、年齢程度でアリウスの熱意が失われるわけないのは、ティレクが一番身に持ってわかっている。
アリウスの手を払うものの引く気はないのか、アリウスは若い頃より直線的になったティレクの頬へ唇を当てて囁いてくる。
「俺からすれば、昔も今も変わらない。むしろ、お前の美しさが熟成されただけだ」
「調子に乗るな。それにまだ夕方だぞ。時間も考えろ」
風通しのいい白いチュニックの上から腰に巻いている赤い布を解いた手をつねる。アリウスは眉を寄せるものの仕返しというように顔を寄せてくると、丸首のぞく鎖骨に唇をあてて、首筋にキスをしてきた。
「俺だって、夜まで待つつもりだったけど、どうせお前逃げるように寝るだろ」
「憶測で決めつけるな」
「じゃあ、今夜抱いていいんだな?」
アリウスは言質をとったと言わんばかりに口の端をつり上げて笑むとさらにのしかかってくる。年老いてもなお逞しい胸元を押しやるとジトッと睨んだ。
「そこまでいうなら受けて立ってやる」
「お前、ほんとそういうところ変わらねえな」
「ふん、私は貴様が嫌いだからな」
引っかかる物言いに目尻をつり上げて睨めば、アリウスはため息をつきつつも「まあ、そういうところがいいんだけどな」と言いながらティレクのこめかみに唇を押し当ててくる。
なんとか夕方から抱かれる状況を避けられたことにホッとしつつも、今晩抱かれることが確約してしまった。
ひとまずこのままだと、再び盛られかねない。アリウスにどくよう胸へ当てていた手をさらに押せば、ようやくアリウスが体を起こした。ティレクも体を起こしてほどかれた腰布を結び直していると、アリウスが当たり前のように腰に手を回してきた。
「おい」
「ところで、お前の着てる服、どうにかできねえのか」
「今度はなんなのだ」
ティレクが今身につけているフレア袖の白いチュニックと足首までの同色ズボンはティベルクでは伝統衣装のようなものだ。そして、王族がプライベートに着るものは白を基調したものと決まっており、そこに各々好きな色の腰布を巻いたり、宝石などで着飾るものもいる。
ティレクの格好もそれが踏襲されており、せいぜい一般に出回っているものと違う点は肌に触れる生地がサラサラとして心地よく、袖に金と赤の刺繍がされているぐらいだろう。
だが、アリウスの着眼点はどうやら違ったようだ。
「日が差すとかなり薄いけど、チュニックが透けて体の輪郭が見えるんだよ」
「それがなんだというのだ。貴様もティベルクに来て理解したと思うが、ティベルクは年中暖かく、さらに日中は乾燥している。これ以上に最適な格好はない」
日が差してくっきりと見えるならともかく、かろうじて見えるぐらいなら袖なしの薄手なロングカーディガンを羽織ればいいだけだ。そのうえティレクは鍛え続けているため、引き締まった体をしている自覚がある。それどころか、いまだに衰えない剣さばきや動きは若い兵士から度々年齢を疑われるのだ。
しかし、アリウスの意図はそうでないらしい。口をへの字にしてじっと見下ろしてくるアリウスを、ティレクは冷ややかに睨みあげた。
「言いたいことがあるならはっきり言え。さっきまで盛っていた威勢はどこにやった」
「だから、ようするにだな。その、体の輪郭だけとはいえ、ほかの奴らに知られるのが嫌なんだよっ!」
半ば怒鳴りながら告げてきた内容に、自然と眉間にシワがよる。顔を真っ赤にして唇を引き締めてうつむいたアリウスにため息がでた。
「私はこの格好をずっとしているんだぞ。今更にもほどがある」
「そりゃそうだけど、俺がここにいる以上お前の体がどんな形をしているのか、ほかの奴らにもう教えたくない」
突然つきつけられた独占欲にティレクは言葉を失いかけた。同時に目眩すら覚えるほどあきれてため息すら出なかった。
「この地で私に欲情する男はお前ぐらいだろう。ましてや、年老いた私に昔と変わらずいまだに欲情するとなれば、な」
「そんなのわからないだろ。お前は実年齢よりも若く見えるから、お前が気づかないだけでおかずにして抜いている奴は絶対いる。そもそも、お前は周りの視線を気にしなさすぎなんだよ」
「それを貴様がいうのか」
「昔はともかく、今の俺は誰かさんのおかげである程度気にするぞ」
なぜか自信満々にアリウスはフンと鼻を鳴らした。ティレクとしても、色つきの服が嫌ではない。ただ、それを着るにあたって、アリウスの要望を叶えることになるのが嫌なのだ。
甘やかせばその分だけつけあがり、ティレクの手綱を容易に引きちぎる。ティレクとしては、常にアリウスの優位に立っていたい。そして、アリウスを優位に立たせてやってもいいのはセックスの時だけと、はじめて抱かれた日、そう心に決めたのだ。
腰に回っているアリウスの手に力がこもり、耳元へかすれた声で囁いてくる。
「なあ、頼む」
祈るような声音はほんの少し震えていた。アリウスとしては本当に嫌なことなのだろう。けれど、ティレクはあえてはっきりと言い返した。
「断る。そもそも、体の輪郭ぐらいなんだというのだ。貴様はケニスさえ知らない私を知っているだろう」
「……!」
ティレクの言わんとしていることが伝わるなり青い瞳がこれでもかと見開かれ、ゆっくりと顔が赤くなっていく。その様に心地よさを覚えながら、ふっと鼻で笑ってやった。
「今晩だけじゃない。私の気が向いたら、貴様は好きなだけ私を知ることができるのだ。これでもまだ不満か」
「……余計不満だっつーの」
てっきり機嫌が直るかと思いきや、かえってアリウスの顔が曇った。言い回しに情緒が足りなかったと考えるものの、どうにもアリウスが相手となると直球な物言いになってしまう。とにかくこの会話を切り上げるためにアリウスの部屋から退散することにした。
幸い、今日は窓から吹いてくる風が心地いい。そんな日は窓際で読書をするに限る。ちょうど腰布を結び終えたのもあって立ち上がろうとしたが、まるでベッドに張り付いたみたいに立ち上がれなかった。
「おい、手を離せ」
「離したら部屋から出て行くだろ。お前が明日から日が差しても透けない服を着るっていうまで離さねえから」
そういうとともにさらに抱き寄せられれば、アリウスの胸に頭をぶつけた。せっかく結び直した腰布の下にアリウスが指を忍ばせ、薄いチュニック越しにティレクの薄く割れている腹の筋を撫でてくる。
「貴様っ、私との約束をもう破るつもりか」
アリウスの手が熱いのもあいまって、嫌でも意識してしまう。
本音を言えば、ティレクとて年老いてもなお、諦めるどころか、昔以上に求められるのが嫌ではない。跡継ぎや王位を含め――かつてケニスが告げた後押しもあって――互いの間にあった壁はなくなり、頑なである必要だってない。
それでも、凝り固まったプライドが簡単に屈したくないと思う一方で、今の自分はアリウスを受け入れるのに値するほど価値があるのかと最近思うことがあるのだ。
むろん、先ほどアリウスが伝えてきたように、アリウスからすれば、年老いた分だけ美しさが熟成されただけだろう。
けれど、ティレクからすると、アリウスは若く瑞々しい自分の幻影を追い求めているだけなのでは、と。そう考えてしまうのだ。
アリウスの手を掴んで力任せに引き剥がす。急いで距離をとろうとしたものの、アリウスの手がやや乱暴にティレクの顎を掴むとともに顔を寄せてきた。
「ん、ぐ」
昔よりもさらに無骨になったアリウスの手はそれだけ苦労をしたのだろう。アリウスの手を両手で掴んで離そうにもビクともしない。その間に腰へ回っていた片手がチュニック越しに腹を撫でるのを止め、直に触ろうと潜り込んできた。
「んん゛ぅっ!」
これでもかと目尻をつり上げて文句を訴えるものの、無防備な口内をはじめアリウスの舌がティレクの舌を味わうようになぞってくる。ベチャベチャとわざと音を立てて口内をまさぐられれば、お互いの唾液がさらに混じり合いティレクの口内を満たしていく。
「んぐ…ぅ……」
息苦しさに耐えきれず少しずつ飲み込めば、すっかり侵入しているアリウスの汗ばんだ熱い手がティレクの腰まわりをゆっくりとなで回す。こそばゆさと同時にジワジワと撫でられた場所から広がっていく痺れに、顔が熱を持ち、心臓がバクバクと早鐘を打って呼吸が乱れる。
「は、ぁ…、ん、むっ…」
アリウスの手を離そうとしていた手は、いつのまにかすがるように握りしめていた。それでもまだ離す気はないのか、いまだに逃げるティレクの舌を何度も捕まえてはねっとりと絡めてくる。その間も、もう片手はズボンの中に入り込み、ティレクの柔らかな茂みや汗ばんでいる太ももの感触を楽しむように撫でてきた。
なんとか冷静になってキスを止めさせなければと思っても、少しでも気を緩めると昔よりもずっと巧みな舌使いで理性がグズグズになってしまいそうだ。なによりティレクを見据える瞳は絶対逃がさないと告げていた。
太ももを撫でていたアリウスの片手は半分ほど熱を持ち始めたティレクの中心を優しく掴むと蹂躙に等しいキスとは真逆に壊れ物でも扱うように優しく扱いてくる。
「んんんぅう゛!」
久しぶりの刺激もあいまってビクンと体が大きく跳ね、腰をくねらせてしまった。当然その隙をアリウスが見逃すはずなかった。絡め合う舌の動きに合わせてねっとりと上下にしごかれれば、限界だった。
「んっ、ぅ…、~~~~ッ」
じわっと視界が少し滲むのを感じながら腰をそらすとティレクの中心から白濁の液が飛び散った。その様を見届けたアリウスはかすかに唇の端をつりあげると、ご褒美だと言わんばかりにぞりぞりと上顎を何度も撫で、ようやく唇を離した。
ついでに顎から手が離れれば、支えを失ったティレクは力なくアリウスの胸に頬を押し当てた。
「はっ、ぁ、はー……っ」
ほんの数分だけなのに、口内はいまだにアリウスの舌の感触がはっきりと残っている。けれど、そのことが嫌ではないのことに腹が立つのだ。
ひとまず文句を言おうと睨みあげたが、すぐに目尻が下がってしまうのがわかった。
「ぁ、この、ばかものぉ」
「お前が関わると俺は馬鹿になるんだからしょうがねえだろ」
自分でも驚くほど蕩けた罵声にたいしアリウスは青い瞳を嬉しそうに細めた。ティレクの中心をいじっていた指は無防備なティレクの秘部の中に沈められていた。
しかし、アリウスはすぐさま訝しげにティレクの顔をのぞき込んできた。
「なあ、お前。もしかして、俺を食客として迎えるって決めてからいじってたか?」
「いじるわけ、ないだろっ!」
嘘だ。ほんの少しだけほぐした。だが、そのことを教えた日には、調子に乗るのが目に見えている。けれどなにやら勘づいたアリウスは一度指を引き抜くと、ティレクをしっかり抱き寄せたまま枕元に転がっている荷物の中から小指ほどの小瓶を取り出した。
そして見せつけるように小瓶の蓋を開けた後、ティレクを優しく横たわらせた。
「じゃあ、時間をかけてたっぷりほぐさねえとな」
「ふざけるな! 続きは夜に」
「だからこそだろ? 夜になったらすぐ挿入できるように今から準備しような?」
気づけば、室内は薄暗くなっていた。
お互い素肌になっており、モザイクランプでぼんやりと照らされているティレクの体は乳首や首筋をはじめ目についたところから歯形をつけられていた。
何度も達した体は指先を動かすのすら億劫だ。そのくせギリギリのところで意識が飛ばないよう快楽を教え込んでくるアリウスの手腕が憎たらしいことこの上ない。
屈したと言わんばかり、仰向けになって足を広げ、ぐったりしている姿は普段のティレクを知るものなら信じられない姿だろう。
アリウスはそんなあられもないティレクのすがたを見て頬をこれでもかと緩めた。
「汗ばんだお前は昔からほんとエロいな」
モザイクランプで照らされて一段と艶めく小麦色の肌を愛おしいと言うように撫でていく。ついでとばかり、ツンと尖った乳首ごと胸に頬ずりをしてくる。
ザラついた髭の感触に乳首が固くなるのを感じながら、ティレクは喉を震わせた。
「ん、ぁ、はー…ぁ」
限界まで上り詰めた体には十分すぎる刺激だ。
アリウスはヒクンと震えた控えめなティレクの喉仏を舐め、肌に浮かぶ汗を吸った。
アリウスはふーっと息を深く吐くと、舌先で自身の唇を舐めた。
「それじゃあ、いれるぞ」
「んぁ゛っ」
ぬぽっと中に入っていた指を三本抜かれれば、アリウスがだらしなく開いたティレクの足の間に体を押しつけてくる。そしてティレクの腰を掴むと、ダラダラと先走りを垂らす高ぶりを秘部へゆっくり沈めてきた。
「くっ…、ん、ぅあ゛」
「大丈夫か?」
「ぁ、あぁ」
時間をかけてほぐしただけあって、痛みはない。けれど、やはり圧迫感はすさまじい。久しぶりにアリウスと一つになり、さらに深く繋がることに顔だけでなく全身が火照ってしょうがない。
ティレクも自然と息が上がり、腰を捕まれてなかったらもどかしさにくねらせていただろう。
「じれっ、たいぞ。さっさと、ぉくに」
「わかってるって」
アリウスはそれでもティレクを思ってか、ゆっくりと挿入していく。やがて最奥にアリウスの先端がとつっと当たれば、ぶわっと全身の産毛が総立ちしてしまう。ついで、じわぁっと下腹部に甘い痺れが広がっていった。
「ん! ぐぅ…あぁ……、はー…ッ、ァ」
視界が明滅し、自分の体ではないようにアリウスの高ぶりをぎゅうぎゅうと締め付けてしまうのがわかる。まるで子種を搾り取るよにうねる中をどうにか沈めたいのに、まるで制御が効かないのだ。
「ァ、ひっ、んっ、~~っ」
「ん……、中すげえ痙攣してんな。お前が気持ちよさそうでよかった」
アリウスは心地よさそうに息をつくと、ティレクの腰を掴むのをやめ、のしかかってくるなり、力強く抱きしめてくる。そして少しだけ腰を引くと、教え込むように緩急をつけて突き始めた。
「ぁ゛ああっ! んん゛ぅ! ま、てっ…こんな、はげし、ぃ」
すがるものがほしくてアリウスの背中に腕を回して爪を立てる。だが、密着したことで、アリウスと深くつながっているのがより鮮明にわかっただけだった。
「ぁりうす、あり、うすっ」
体をがっちり抱きしめられているせいか身動きができず、自由な足を宙に向けてこれでもかと突っぱね、時折爪先を丸めて与えられる快感を流そうとするものの、かえって蓄積されてしまう。ひっきりなしに口から飛び出る蕩けきったあえぎ声はまるで自分の声とは信じられなかった。
普段と違い、蜂蜜のようなドロリとした甘さを滲ませるティレクの様子にアリウスは目尻を下げると、ティレクの顔に顔を寄せてきた。
「なあ、ティレク。お前と出会ってから四十五年間経ったが、俺にとってこの世で美しく思えるのはやっぱりお前だけだ。ふだんの素っ気ない態度も、こうして歳をとっても俺にだけ体を許してくれるのも。俺、すごく嬉しいんだぞ」
「そういう、ことはっ、ぃま、ぁ! いぅ、なっ!」
「こういう時じゃなきゃ、お前きちんと聞いてくれねえだろ」
熱のこもったアリウスの唇が重なるとともに、ぐんっと突き入れられた。ついで体を抱きしめる腕に力がこもると同時に勢いよくアリウスの熱が注がれた。
「んぅ! ん、――っ、~~~~ッ!」
ドプッッドプッと中に絡みつくような吐精は長く、昔抱かれた時と同様、絶対に孕ませると言わんばかりだ。ようやく最後の一滴を出し切って落ち着いていくアリウスの高ぶりにホッと内心胸をなで下ろす。
久しぶりとはいえ、今日のセックスはこれで十分なはずだ。
それでも物足りないのかベチャベチャと舌を絡めてきた。そんなアリウスをあやすようにぎこちなく舌を絡め返せば、アリウスの体が大きく跳ねた。同時に落ち着いたはずの高ぶりが再び膨らんできているのが嫌でも伝わってくる。
アリウスから顔を背けて、無理矢理キスを終わらせると、ティレクは目尻をつり上げてすかさず怒鳴った。
「今日はもう終わりだ! さっさと抜け!!」
「あんな返しされて終わりにできるかよ」
ギラギラと青い瞳に欲情を滲ませながら真顔で言ってくるアリウスにはじめて背筋が凍る。だが、それも一瞬で、アリウスが腰をねっとりと引けば、ひくひくと中が期待に震えてしまう。
それをごまかすようにさらに声を荒げた。
「意味がわからん! いいから、ぬ、~~~~ッ」
言い切るよりも早く、どちゅんっとあえて乱暴に突かれてしまえば、思わずアリウスの腰に足を絡めた。
「ん゛ぅ! はー……っ、ぁ゛、あっ、ぅうう゛!」
ぎゅうぎゅとアリウスの高ぶりを締め付けながら絶頂していると、アリウスが一段と甘くかすれた声で囁いてきた。
「愛してる、ティレク。お前はどうだ?」
もうわかっているくせに言わせようとする意地の悪さに、ティレクは快楽でとろけつつもはっきりとアリウスを見据えて言い返した。
「私は、お前が嫌いだッ」
「知ってるっつーの」
ティレクの返答にアリウス嬉しそうに目尻を下げて口元をゆるめた。
昔と変わらずひねくれたティレクなりの返答だが、その中に込められた真意はアリウスにしっかり伝わったようだ。
けれど、いつまでも甘んじる気はティレクにだってない。今はまだ言葉で伝えない代わり、アリウスの腰へ絡めた足に力を入れて触れるだけのキスをした。
翌日、ティレクが人生初の腰痛になったのは言うまでもなく、そんなティレクをアリウスは嬉しそうに甲斐甲斐しく世話をした。そして、その翌々日からはティレクが白以外の服を着るようになったことは、しばし王宮で話題になったのだった。
アリウスを食客として迎えた日の夕方、部屋の内装を見てほしいと言われた。自室に繋がっているからと、のこのことアリウスの寝室に行ったのが愚かだった。というのも、部屋の中を見渡しながらベッドの傍に立っていたアリウスへ感想を言おうとしたところ、真新しいベッドに押し倒されたのだ。
ふだんであればうまくさばけたが、アリウスの性格からすぐに手を出してこないだろうと高をくくっていたせいもあって完全に気が緩んでいた。
「部屋の内装を見せるんじゃなかったのか」
「今、お前がこの部屋に来てくれたことで完成したからな」
覆い被さるアリウスが青い瞳を細めれば、目尻にくっきりシワが浮かんだ。窓から差し込む夕日が昔より白っぽい金髪やほどよく蓄えられた髭を赤く染める。こうして間近に眺めるアリウスからは若き頃のような青臭さをまるで感じない。
アリウスは身をかがめると、つるりとしたティレクの顎を優しく撫でた。
「ティレク、久しぶりにお前を抱かせてくれ」
「歳を考えろ、馬鹿者」
最後に抱かれたのはもう四十五年前だ。しかし、年齢程度でアリウスの熱意が失われるわけないのは、ティレクが一番身に持ってわかっている。
アリウスの手を払うものの引く気はないのか、アリウスは若い頃より直線的になったティレクの頬へ唇を当てて囁いてくる。
「俺からすれば、昔も今も変わらない。むしろ、お前の美しさが熟成されただけだ」
「調子に乗るな。それにまだ夕方だぞ。時間も考えろ」
風通しのいい白いチュニックの上から腰に巻いている赤い布を解いた手をつねる。アリウスは眉を寄せるものの仕返しというように顔を寄せてくると、丸首のぞく鎖骨に唇をあてて、首筋にキスをしてきた。
「俺だって、夜まで待つつもりだったけど、どうせお前逃げるように寝るだろ」
「憶測で決めつけるな」
「じゃあ、今夜抱いていいんだな?」
アリウスは言質をとったと言わんばかりに口の端をつり上げて笑むとさらにのしかかってくる。年老いてもなお逞しい胸元を押しやるとジトッと睨んだ。
「そこまでいうなら受けて立ってやる」
「お前、ほんとそういうところ変わらねえな」
「ふん、私は貴様が嫌いだからな」
引っかかる物言いに目尻をつり上げて睨めば、アリウスはため息をつきつつも「まあ、そういうところがいいんだけどな」と言いながらティレクのこめかみに唇を押し当ててくる。
なんとか夕方から抱かれる状況を避けられたことにホッとしつつも、今晩抱かれることが確約してしまった。
ひとまずこのままだと、再び盛られかねない。アリウスにどくよう胸へ当てていた手をさらに押せば、ようやくアリウスが体を起こした。ティレクも体を起こしてほどかれた腰布を結び直していると、アリウスが当たり前のように腰に手を回してきた。
「おい」
「ところで、お前の着てる服、どうにかできねえのか」
「今度はなんなのだ」
ティレクが今身につけているフレア袖の白いチュニックと足首までの同色ズボンはティベルクでは伝統衣装のようなものだ。そして、王族がプライベートに着るものは白を基調したものと決まっており、そこに各々好きな色の腰布を巻いたり、宝石などで着飾るものもいる。
ティレクの格好もそれが踏襲されており、せいぜい一般に出回っているものと違う点は肌に触れる生地がサラサラとして心地よく、袖に金と赤の刺繍がされているぐらいだろう。
だが、アリウスの着眼点はどうやら違ったようだ。
「日が差すとかなり薄いけど、チュニックが透けて体の輪郭が見えるんだよ」
「それがなんだというのだ。貴様もティベルクに来て理解したと思うが、ティベルクは年中暖かく、さらに日中は乾燥している。これ以上に最適な格好はない」
日が差してくっきりと見えるならともかく、かろうじて見えるぐらいなら袖なしの薄手なロングカーディガンを羽織ればいいだけだ。そのうえティレクは鍛え続けているため、引き締まった体をしている自覚がある。それどころか、いまだに衰えない剣さばきや動きは若い兵士から度々年齢を疑われるのだ。
しかし、アリウスの意図はそうでないらしい。口をへの字にしてじっと見下ろしてくるアリウスを、ティレクは冷ややかに睨みあげた。
「言いたいことがあるならはっきり言え。さっきまで盛っていた威勢はどこにやった」
「だから、ようするにだな。その、体の輪郭だけとはいえ、ほかの奴らに知られるのが嫌なんだよっ!」
半ば怒鳴りながら告げてきた内容に、自然と眉間にシワがよる。顔を真っ赤にして唇を引き締めてうつむいたアリウスにため息がでた。
「私はこの格好をずっとしているんだぞ。今更にもほどがある」
「そりゃそうだけど、俺がここにいる以上お前の体がどんな形をしているのか、ほかの奴らにもう教えたくない」
突然つきつけられた独占欲にティレクは言葉を失いかけた。同時に目眩すら覚えるほどあきれてため息すら出なかった。
「この地で私に欲情する男はお前ぐらいだろう。ましてや、年老いた私に昔と変わらずいまだに欲情するとなれば、な」
「そんなのわからないだろ。お前は実年齢よりも若く見えるから、お前が気づかないだけでおかずにして抜いている奴は絶対いる。そもそも、お前は周りの視線を気にしなさすぎなんだよ」
「それを貴様がいうのか」
「昔はともかく、今の俺は誰かさんのおかげである程度気にするぞ」
なぜか自信満々にアリウスはフンと鼻を鳴らした。ティレクとしても、色つきの服が嫌ではない。ただ、それを着るにあたって、アリウスの要望を叶えることになるのが嫌なのだ。
甘やかせばその分だけつけあがり、ティレクの手綱を容易に引きちぎる。ティレクとしては、常にアリウスの優位に立っていたい。そして、アリウスを優位に立たせてやってもいいのはセックスの時だけと、はじめて抱かれた日、そう心に決めたのだ。
腰に回っているアリウスの手に力がこもり、耳元へかすれた声で囁いてくる。
「なあ、頼む」
祈るような声音はほんの少し震えていた。アリウスとしては本当に嫌なことなのだろう。けれど、ティレクはあえてはっきりと言い返した。
「断る。そもそも、体の輪郭ぐらいなんだというのだ。貴様はケニスさえ知らない私を知っているだろう」
「……!」
ティレクの言わんとしていることが伝わるなり青い瞳がこれでもかと見開かれ、ゆっくりと顔が赤くなっていく。その様に心地よさを覚えながら、ふっと鼻で笑ってやった。
「今晩だけじゃない。私の気が向いたら、貴様は好きなだけ私を知ることができるのだ。これでもまだ不満か」
「……余計不満だっつーの」
てっきり機嫌が直るかと思いきや、かえってアリウスの顔が曇った。言い回しに情緒が足りなかったと考えるものの、どうにもアリウスが相手となると直球な物言いになってしまう。とにかくこの会話を切り上げるためにアリウスの部屋から退散することにした。
幸い、今日は窓から吹いてくる風が心地いい。そんな日は窓際で読書をするに限る。ちょうど腰布を結び終えたのもあって立ち上がろうとしたが、まるでベッドに張り付いたみたいに立ち上がれなかった。
「おい、手を離せ」
「離したら部屋から出て行くだろ。お前が明日から日が差しても透けない服を着るっていうまで離さねえから」
そういうとともにさらに抱き寄せられれば、アリウスの胸に頭をぶつけた。せっかく結び直した腰布の下にアリウスが指を忍ばせ、薄いチュニック越しにティレクの薄く割れている腹の筋を撫でてくる。
「貴様っ、私との約束をもう破るつもりか」
アリウスの手が熱いのもあいまって、嫌でも意識してしまう。
本音を言えば、ティレクとて年老いてもなお、諦めるどころか、昔以上に求められるのが嫌ではない。跡継ぎや王位を含め――かつてケニスが告げた後押しもあって――互いの間にあった壁はなくなり、頑なである必要だってない。
それでも、凝り固まったプライドが簡単に屈したくないと思う一方で、今の自分はアリウスを受け入れるのに値するほど価値があるのかと最近思うことがあるのだ。
むろん、先ほどアリウスが伝えてきたように、アリウスからすれば、年老いた分だけ美しさが熟成されただけだろう。
けれど、ティレクからすると、アリウスは若く瑞々しい自分の幻影を追い求めているだけなのでは、と。そう考えてしまうのだ。
アリウスの手を掴んで力任せに引き剥がす。急いで距離をとろうとしたものの、アリウスの手がやや乱暴にティレクの顎を掴むとともに顔を寄せてきた。
「ん、ぐ」
昔よりもさらに無骨になったアリウスの手はそれだけ苦労をしたのだろう。アリウスの手を両手で掴んで離そうにもビクともしない。その間に腰へ回っていた片手がチュニック越しに腹を撫でるのを止め、直に触ろうと潜り込んできた。
「んん゛ぅっ!」
これでもかと目尻をつり上げて文句を訴えるものの、無防備な口内をはじめアリウスの舌がティレクの舌を味わうようになぞってくる。ベチャベチャとわざと音を立てて口内をまさぐられれば、お互いの唾液がさらに混じり合いティレクの口内を満たしていく。
「んぐ…ぅ……」
息苦しさに耐えきれず少しずつ飲み込めば、すっかり侵入しているアリウスの汗ばんだ熱い手がティレクの腰まわりをゆっくりとなで回す。こそばゆさと同時にジワジワと撫でられた場所から広がっていく痺れに、顔が熱を持ち、心臓がバクバクと早鐘を打って呼吸が乱れる。
「は、ぁ…、ん、むっ…」
アリウスの手を離そうとしていた手は、いつのまにかすがるように握りしめていた。それでもまだ離す気はないのか、いまだに逃げるティレクの舌を何度も捕まえてはねっとりと絡めてくる。その間も、もう片手はズボンの中に入り込み、ティレクの柔らかな茂みや汗ばんでいる太ももの感触を楽しむように撫でてきた。
なんとか冷静になってキスを止めさせなければと思っても、少しでも気を緩めると昔よりもずっと巧みな舌使いで理性がグズグズになってしまいそうだ。なによりティレクを見据える瞳は絶対逃がさないと告げていた。
太ももを撫でていたアリウスの片手は半分ほど熱を持ち始めたティレクの中心を優しく掴むと蹂躙に等しいキスとは真逆に壊れ物でも扱うように優しく扱いてくる。
「んんんぅう゛!」
久しぶりの刺激もあいまってビクンと体が大きく跳ね、腰をくねらせてしまった。当然その隙をアリウスが見逃すはずなかった。絡め合う舌の動きに合わせてねっとりと上下にしごかれれば、限界だった。
「んっ、ぅ…、~~~~ッ」
じわっと視界が少し滲むのを感じながら腰をそらすとティレクの中心から白濁の液が飛び散った。その様を見届けたアリウスはかすかに唇の端をつりあげると、ご褒美だと言わんばかりにぞりぞりと上顎を何度も撫で、ようやく唇を離した。
ついでに顎から手が離れれば、支えを失ったティレクは力なくアリウスの胸に頬を押し当てた。
「はっ、ぁ、はー……っ」
ほんの数分だけなのに、口内はいまだにアリウスの舌の感触がはっきりと残っている。けれど、そのことが嫌ではないのことに腹が立つのだ。
ひとまず文句を言おうと睨みあげたが、すぐに目尻が下がってしまうのがわかった。
「ぁ、この、ばかものぉ」
「お前が関わると俺は馬鹿になるんだからしょうがねえだろ」
自分でも驚くほど蕩けた罵声にたいしアリウスは青い瞳を嬉しそうに細めた。ティレクの中心をいじっていた指は無防備なティレクの秘部の中に沈められていた。
しかし、アリウスはすぐさま訝しげにティレクの顔をのぞき込んできた。
「なあ、お前。もしかして、俺を食客として迎えるって決めてからいじってたか?」
「いじるわけ、ないだろっ!」
嘘だ。ほんの少しだけほぐした。だが、そのことを教えた日には、調子に乗るのが目に見えている。けれどなにやら勘づいたアリウスは一度指を引き抜くと、ティレクをしっかり抱き寄せたまま枕元に転がっている荷物の中から小指ほどの小瓶を取り出した。
そして見せつけるように小瓶の蓋を開けた後、ティレクを優しく横たわらせた。
「じゃあ、時間をかけてたっぷりほぐさねえとな」
「ふざけるな! 続きは夜に」
「だからこそだろ? 夜になったらすぐ挿入できるように今から準備しような?」
気づけば、室内は薄暗くなっていた。
お互い素肌になっており、モザイクランプでぼんやりと照らされているティレクの体は乳首や首筋をはじめ目についたところから歯形をつけられていた。
何度も達した体は指先を動かすのすら億劫だ。そのくせギリギリのところで意識が飛ばないよう快楽を教え込んでくるアリウスの手腕が憎たらしいことこの上ない。
屈したと言わんばかり、仰向けになって足を広げ、ぐったりしている姿は普段のティレクを知るものなら信じられない姿だろう。
アリウスはそんなあられもないティレクのすがたを見て頬をこれでもかと緩めた。
「汗ばんだお前は昔からほんとエロいな」
モザイクランプで照らされて一段と艶めく小麦色の肌を愛おしいと言うように撫でていく。ついでとばかり、ツンと尖った乳首ごと胸に頬ずりをしてくる。
ザラついた髭の感触に乳首が固くなるのを感じながら、ティレクは喉を震わせた。
「ん、ぁ、はー…ぁ」
限界まで上り詰めた体には十分すぎる刺激だ。
アリウスはヒクンと震えた控えめなティレクの喉仏を舐め、肌に浮かぶ汗を吸った。
アリウスはふーっと息を深く吐くと、舌先で自身の唇を舐めた。
「それじゃあ、いれるぞ」
「んぁ゛っ」
ぬぽっと中に入っていた指を三本抜かれれば、アリウスがだらしなく開いたティレクの足の間に体を押しつけてくる。そしてティレクの腰を掴むと、ダラダラと先走りを垂らす高ぶりを秘部へゆっくり沈めてきた。
「くっ…、ん、ぅあ゛」
「大丈夫か?」
「ぁ、あぁ」
時間をかけてほぐしただけあって、痛みはない。けれど、やはり圧迫感はすさまじい。久しぶりにアリウスと一つになり、さらに深く繋がることに顔だけでなく全身が火照ってしょうがない。
ティレクも自然と息が上がり、腰を捕まれてなかったらもどかしさにくねらせていただろう。
「じれっ、たいぞ。さっさと、ぉくに」
「わかってるって」
アリウスはそれでもティレクを思ってか、ゆっくりと挿入していく。やがて最奥にアリウスの先端がとつっと当たれば、ぶわっと全身の産毛が総立ちしてしまう。ついで、じわぁっと下腹部に甘い痺れが広がっていった。
「ん! ぐぅ…あぁ……、はー…ッ、ァ」
視界が明滅し、自分の体ではないようにアリウスの高ぶりをぎゅうぎゅうと締め付けてしまうのがわかる。まるで子種を搾り取るよにうねる中をどうにか沈めたいのに、まるで制御が効かないのだ。
「ァ、ひっ、んっ、~~っ」
「ん……、中すげえ痙攣してんな。お前が気持ちよさそうでよかった」
アリウスは心地よさそうに息をつくと、ティレクの腰を掴むのをやめ、のしかかってくるなり、力強く抱きしめてくる。そして少しだけ腰を引くと、教え込むように緩急をつけて突き始めた。
「ぁ゛ああっ! んん゛ぅ! ま、てっ…こんな、はげし、ぃ」
すがるものがほしくてアリウスの背中に腕を回して爪を立てる。だが、密着したことで、アリウスと深くつながっているのがより鮮明にわかっただけだった。
「ぁりうす、あり、うすっ」
体をがっちり抱きしめられているせいか身動きができず、自由な足を宙に向けてこれでもかと突っぱね、時折爪先を丸めて与えられる快感を流そうとするものの、かえって蓄積されてしまう。ひっきりなしに口から飛び出る蕩けきったあえぎ声はまるで自分の声とは信じられなかった。
普段と違い、蜂蜜のようなドロリとした甘さを滲ませるティレクの様子にアリウスは目尻を下げると、ティレクの顔に顔を寄せてきた。
「なあ、ティレク。お前と出会ってから四十五年間経ったが、俺にとってこの世で美しく思えるのはやっぱりお前だけだ。ふだんの素っ気ない態度も、こうして歳をとっても俺にだけ体を許してくれるのも。俺、すごく嬉しいんだぞ」
「そういう、ことはっ、ぃま、ぁ! いぅ、なっ!」
「こういう時じゃなきゃ、お前きちんと聞いてくれねえだろ」
熱のこもったアリウスの唇が重なるとともに、ぐんっと突き入れられた。ついで体を抱きしめる腕に力がこもると同時に勢いよくアリウスの熱が注がれた。
「んぅ! ん、――っ、~~~~ッ!」
ドプッッドプッと中に絡みつくような吐精は長く、昔抱かれた時と同様、絶対に孕ませると言わんばかりだ。ようやく最後の一滴を出し切って落ち着いていくアリウスの高ぶりにホッと内心胸をなで下ろす。
久しぶりとはいえ、今日のセックスはこれで十分なはずだ。
それでも物足りないのかベチャベチャと舌を絡めてきた。そんなアリウスをあやすようにぎこちなく舌を絡め返せば、アリウスの体が大きく跳ねた。同時に落ち着いたはずの高ぶりが再び膨らんできているのが嫌でも伝わってくる。
アリウスから顔を背けて、無理矢理キスを終わらせると、ティレクは目尻をつり上げてすかさず怒鳴った。
「今日はもう終わりだ! さっさと抜け!!」
「あんな返しされて終わりにできるかよ」
ギラギラと青い瞳に欲情を滲ませながら真顔で言ってくるアリウスにはじめて背筋が凍る。だが、それも一瞬で、アリウスが腰をねっとりと引けば、ひくひくと中が期待に震えてしまう。
それをごまかすようにさらに声を荒げた。
「意味がわからん! いいから、ぬ、~~~~ッ」
言い切るよりも早く、どちゅんっとあえて乱暴に突かれてしまえば、思わずアリウスの腰に足を絡めた。
「ん゛ぅ! はー……っ、ぁ゛、あっ、ぅうう゛!」
ぎゅうぎゅとアリウスの高ぶりを締め付けながら絶頂していると、アリウスが一段と甘くかすれた声で囁いてきた。
「愛してる、ティレク。お前はどうだ?」
もうわかっているくせに言わせようとする意地の悪さに、ティレクは快楽でとろけつつもはっきりとアリウスを見据えて言い返した。
「私は、お前が嫌いだッ」
「知ってるっつーの」
ティレクの返答にアリウス嬉しそうに目尻を下げて口元をゆるめた。
昔と変わらずひねくれたティレクなりの返答だが、その中に込められた真意はアリウスにしっかり伝わったようだ。
けれど、いつまでも甘んじる気はティレクにだってない。今はまだ言葉で伝えない代わり、アリウスの腰へ絡めた足に力を入れて触れるだけのキスをした。
翌日、ティレクが人生初の腰痛になったのは言うまでもなく、そんなティレクをアリウスは嬉しそうに甲斐甲斐しく世話をした。そして、その翌々日からはティレクが白以外の服を着るようになったことは、しばし王宮で話題になったのだった。
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