ティベルクの使者は末王子の技師と愛を紡ぐ

天霧 ロウ

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外出2*

「それにしても、意外にロマンチストなんだな」
「そうか?」
 
 せっかくだからと、ケイブラムはヴィルスに手を引かれて森の中にある水辺にきていた。草の上で横に並び、湖を見ながらパンを食べる。久しぶりの食事はなんだか不思議な感じがした。
 ケイブラムが半分ほどグワパオを食べた頃には、ヴィルスは買ったパンをすべて平らげており、瓶に入っている水を飲んでいた。

「そうだろう? 私だったら、さっきの模様とか気づかない」
「風景とかに興味ないのか?」
「そういうわけではないが……」

 グワパオを食べ終えて包みをきれいに畳んで紙袋の中に入れる。
 ヴィルスがスッと差し出してきた真新しい瓶入り水を受け取る。ちょうど飲みたかったのもあり、「ありがとう」と礼を述べ、一口飲む。

「私はそういった光景に気づくほど余裕がなかった。いつだって、祖国と陛下と弟のために動いてきたから」
「じゃあ、これからは余裕ができるな」
「それはどうだろうな」

 ふっと鼻で笑い、水を一気に飲み干す。
 仕事から解放されたという意味では余裕ができただろう。その代わり、今度はいつヴィルスに組み敷かれるかと思うとおちおち寝ていられない。
 
「そういえば、この後現場に行くのか?」

 仕事がない時のヴィルスは王族とは思えないほど、質素なワイシャツとズボンを身に着けている。けれど、今日のヴィルスの服装は着慣れたベージュ色のつなぎだ。

「その予定だったけど、連れて行きたい場所が増えたからそっちに行く」
「一応聞くが変な場所じゃないだろうな」

 念には念を押して聞いておく。
 ヴィルスはケイブラムの方を向かないまま「大丈夫だ」と短く答えた。話す時は必ず目を合わせてくるヴィルスにしては珍しい。同時に、目線を合わせないことに違和感を覚える。

「おい、本当に変な場所じゃないんだろうな?」
「問題ない」
「だったら、私の目を見て言ったらどうだ」

 どすっと脇腹を肘で突くが、ヴィルスはびくともしない。
 ヴィルスは一度瞬きをした後、湖からケイブラムの方へと顔を向けた。そして、ケイブラムの手を両手で握りしめ、まっすぐに見つめてくる。

「大丈夫だ。きっとあんたも気に入る。だから、俺を信じてついてきてほしい」

 真剣な顔つきに、不覚にもドキリとした。
 隙あらばなにかとケイブラムを襲っているヴィルスだが、今日はまだおかしなことはしていない。けれど、そういう時に限って、必ず限界だと言わんばかりに襲ってくるのもまた事実だ。
 黙って睨んでいると、ヴィルスはさらに続けた。

「もし、あんたが嫌だと言ったらすぐに違う場所に行く」
「本当に私が嫌だと言ったら、移動するんだな?」
「ああ」

 ぎゅうっと手を握られ、誓うように唇を押し当てられる。
 あまりにも真面目な顔つきにケイブラムは少しはヴィルスを信じようと思った。かすかに手を握り返せば、腕を引かれて立ち上がる。
 どこに連れて行かれるのかドキドキしながら手を引かれれば、王都の中心街へと戻った。雲行きが怪しくなっている気がしたが、ケイブラムはまだ変な場所と決まったわけじゃないと自分に言い聞かせる。
 だが、ヴィルスがやがて足を止めた場所は、体格のいい男が二人なんとか通れるくらいの狭い路地の奥だ。目の前にはどこかの店の窓があり、店内の様子が見えた。

「おい、変な場所につれてこないんじゃなかったのか」
「変な場所じゃない」
「じゅうぶん変な場所だろ! 帰る! こんな場所………っ」

 嫌だといいそうになった唇をヴィルスの唇が塞いでくる。そのまま、窓に体を押し付けられた。
 必死にもがくがそれも虚しく、ヴィルスの手はあっさりとケイブラムのベルトを解き、ズボンを下着ごと下ろす。
 
「ん゛ー!! ンぅっ…、んっ、んんぅっ!!」

 力いっぱいヴィルスの胸を叩いて抗議するが、ヴィルスはまったく気に留める様子もなかった。あらわになった双丘を撫で回し、秘部に指をいれた。

「んんんっ!! ン――ッ!」

 先ほどの窓からだとケイブラムの秘部が丸見えだ。それどころか、まるで店内にいる客に見せつけるように人差し指と中指を入れて、ケイブラムの秘部を広げてみせる。
 幸い、ケイブラムの背にある窓際席やその近場には誰も座っていない。だが、その安堵も虚しく、窓越しに子連れの家族の声が近づいてくる。
 ぎょっとしてヴィルスを見るが、ヴィルスは空色の瞳をすうっと細めた。そして、人差し指と中指で激しく抜き差しを始めた。

「んっんっ! ぅ…、っ! んんんぅううう――っ」

 指の刺激と指でいやらしく秘部をいじられる姿を見られていると思った瞬間、背徳感による快感が全身を駆け巡る。口内も秘部の中も好き勝手に弄ばれる恥辱はやがて強い快感となってケイブラムを支配していく。

「ン、ん…ッ、んぅ――ッ!」

 我慢できずに絶頂を迎えてしまえば、くたりと体から力が抜けて、唇も離れる。
 ぐったりと窓にもたれている間も、カチャカチャとベルトの外れる音が聞こえる。だが、抵抗したくても体はすっかりヴィルスを受け入れる準備に入っていた。

「ほら、あいつらにあんたのいやらしい姿を見せてやれ」

 腕を引っ張られ、背中から抱き抱えられる。
 その際、ズボンと下着が地面に落ち、あらわになった足を広げさせられる。ケイブラムの中心からはとろりと透明の雫が糸を引きながら地面に垂れた。
 日中でも十分恥ずかしいのに、無垢な子供たちにこれから起こるであろうことを見られると思うと、浅ましい興奮に理性が塗りつぶされていく。
 耳元にヴィルスの熱い息づかいがかかるや否や、勢いよくヴィルスの高ぶりが秘部の中へと入ってくる。

「~~~~ッ! ァ、あぁっ…、だっ、めぇっ…、まって、まってぇっ」

 最奥まで一気にヴィルスの高ぶりで埋め尽くされる。
 パチパチと目の前に星が弾ける。だが、ヴィルスは容赦なく突き上げる。その度に雄の機能を放棄したケイブラムの中心が上下に揺れ、プシプシと潮をあたりにまき散らかした。

「ン、くぅっ! っ、ふ…ッ、ンっ!」

 少しでも子どもたちに聞こえないよう必死に唇を噛み締め、荒い息づかいで耐える。けれど、耐えれば耐えるほど、場所をわきまえず、はしたないことをしていると自覚してしまう。
 しかし、ケイブラムの努力も虚しく、窓際席に座った子供がケイブラムの方を向き、そして、指差して笑った。その瞬間、全身がこれでもかと熱く火照っていく。
 
「ぁ…、み、みないでくれ……っ」
 
 泣きそうになりながら絞り出した願いが届くことはなかった。
 子供の声にもう一人の子供がやってきてケイブラムの方を向いた。じっと物珍しいもので見るかのように、無垢な瞳がケイブラムのとろけきった顔を映した。

「あっ、あっ…、も、もう――っ」

 嫌だと言おうとすれば、再び唇をふさがれる。同時にヴィルスの高ぶりが最奥を押しつぶし、上も下も深いキスをするはめになる。
 息を弾ませながら舌と舌を絡ませ、最奥はヴィルスの先端に吸い付き、とろけた柔肉で全体を包み込む。

「んむぅ、ぁ、ん…、はっ…、ふ……」

 ふだんではまずありえない状況もあいまって、快楽に理性を飲み込まれたケイブラムは淫らな姿を見られていることに羞恥よりも快感を覚え始めた。
 唇が離れると、ヴィルスが子どもたちに見えるようにケイブラムを抱えた。
 
「ほら、もっとあんたのやらしい姿を見せつけてやれ」

 ゆっくりと高ぶりを引き抜かれ、浅い場所で抜き差しされる。そうすれば、秘部の周りはぐっしょりと濡れ、ピクピクと震えた。
 子どもたちは食い入るようにケイブラムの秘部を見つめていた。

「あっあっ、見られてるぅ…っ、だめっ、イくッ、イッちゃぅううっ――ッ」

 最奥をぐうっと押しつぶされた瞬間、ケイブラムの体は大きくのけぞり、窓に向かって勢いよく潮を吹く。
 足の先をぎゅうと丸め、搾り取るようにヴィルスの高ぶりを締め付ければ、ヴィルスがかすかに声を漏らす。

「締めすぎだ――ッ」
「だって、だってぇっ! ァ、あああっ、すごいぃ…っ、奥、奥っ、……~~~~ッ!」

 叩きつけるように吐き出される熱に、だらしなく飛び出た舌の先から唾液がしずくとなって胸に垂れる。
 犯されることを喜ぶ雌に成り下がったケイブラムは先ほどまでの恥辱はもう感じてなかった。それどころか、無垢な子どもたちに犯されて喜ぶ姿を見せつけている状況にゾクゾクと薄暗い快感が背筋を駆け抜ける。

「はぁっ、ぁ、はふっ………」

 ずるりと中からヴィルスが引き抜くと、大きく開いた秘部からびちゃびちゃと音を立てて白濁の液が漏れる。ぐったりとヴィルスにもたれていれば、子供の親がやってきた。
 少しだけ戻ってきた理性がさすがにまずいと思ったものの、ヴィルスにがっしり抑え込まれているため逃げようがない。
 子供になんてものを見せているんだと叱られるかもしれない。そんな怒号がくるのをぎゅうっと目をつぶって耐えていたが、届いたのはなんてことのない言葉だった。

「ママ、向こうのショーウィンドウ見て!! 機械鳥がさっきから求愛のダンスをしてるんだよ!」
「あら、ほんと。きっと道行く人が素敵な機械鳥を連れていたのかもね」

 ほのぼのとした会話にケイブラムはぽかんとした。
 そして、ヴィルスが子どもたちからケイブラムたちの姿が見えないのをあえて黙っていたことにフツフツと怒りがこみ上げてきた。

「貴様っ! こっちの姿が向こうに見えてないことを黙っていたな!!」
「先に言ったら壁に向かってセックスしてるのと変わらないだろ」

 ヴィルスはカラクリがばれたからなのか、ケイブラムを下ろした。そして、そのまま窓ガラスに手をつけさせ、腰を突き出すような姿勢を取らせる。 
 もがこうとすれば、すかさずヴィルスの高ぶりが中に潜り込んできた。途端に体は抵抗する気が削がれていく。
 
「ふっ、ぅううっ……」

 姿が見えないとわかっていても、目の前にいる無垢な子供に気づけば、見られていると錯覚してしまう。
 ヴィルスがぴったりとケイブラムに密着し、ヴィルスの手がケイブラムの汗ばんだワイシャツの中に潜り込んでくる。そのまま尖った乳首のまわりをくるくると指先で撫でてきた。

「中はすぐとろつくようになったし、次はこっちだな」

 きゅっとヴィルスの硬い指先が乳首をつまむ。親指と人差指でこすり、先端を指の腹で撫で回される。

「んんぅっ! ばかっ、いいかげんにしろ……っ。ほかの人に見られたらっ、どうするんだっ」
「ここは日が当たらなくて、昼でも暗いんだよ。あと、東の家は寒さから耐えるために基本的に内外の音が聞こえない作りになってるから安心しろ」

 ぐちゅ、ぐちゅと腰をゆっくりと回され、固くなった乳首を乱暴に押しつぶされる。

「そういう…ッ、問題じゃない……っ! せっかくっ、少しは見直したっ、のに――っ」
「だけど、外でやるのもいいだろ? ケイブラムだって、さっきまでノリノリだったくせに」

 ここぞとばかりに名前を呼んだヴィルスはちゅっと耳朶や首筋に唇を寄せる。そして、ぐいっと強く乳首を引っ張った。
 痛みに思わず眉を寄せるものの、指先で突起の先をくすぐられれば、痛みよりもむず痒さが上回る。

「もう、ぬけぇ…っ、ぬけったらぁ……っ!」
「胸でイッたらな。まあ、いきなりは無理だから、きちんと中も刺激してやるから安心しろ」

 なにが安心だと肩越しで睨めば、ヴィルスがかすかに頬を上気させながらキスをしてくる。
 キスをしながら、甘えるように最奥や乳首をこすられているうちに、体はどんどん高みに近づき、最奥が再び甘く疼き始める。
 こんな場所で発情したら駄目なのに、回数を重ねるほどヴィルスの抱き方は甘さを増していく。
 ぐうっと最奥を深くキスされ、唇が入れ替わりに離れていく。その切なさにケイブラムは耐えれなかった。
 
「ァ、…っ、ちゅー、もっとちゅーして」
 
 唇が離れるのが名残惜しくて、舌をだらしなく出してねだってしまう。
 ケイブラムの貴重なおねだりに、ヴィルスは空色の瞳にギラギラと欲望を揺らめかす。
 そんな強い欲情を見せつつも、与えられるキスは腰がくだけそうになるほど優しかった。

「あっ……、ふっ、ぅ、ん。んむっ、ァ、はぁ……」

 乳首を揉み込まれ、最奥にぴったりはまっている高ぶりをきゅうっと締めつける。頭の中は外であることを忘れ、ただヴィルスとのセックスが気持ちいいでいっぱいになる。

「はぅっ、ァ…、ンっ、んんぅ……っ」
「……っ、やけに吸い付いてくるな」

 唇を離し、心地よさそうにヴィルスは呟く。
 肩甲骨の形がわかるほど汗を吸って張り付くワイシャツにヴィルスは顔を寄せる。そして、そっと祈るように肩甲骨の間に唇を押し当ててくる。
 触れるだけの愛撫ですら、ケイブラムはとろんと目尻を下げて鼻にかかった声を漏らす。

「ヴィルスっ、もう、いいからッ…早く……ッ」

 熱を受け入れる準備が出来上がってしまった最奥はちゅうちゅうとヴィルスの高ぶりに吸い付き、中に出すように促す。
 ごくりとヴィルスは口に溜まったつばを飲み込むなり、密着し直した。背中にヴィルスの体温と逞しい体つきから雄を感じ取ってしまう。
 ケイブラムができるだけ体から力を抜くと、それを合図にぐんっとヴィルスの高ぶりが最奥を押しつぶした。同時にぎゅうっとケイブラムの胸を強くつまみながら、ぶるりと体を震わして最奥に熱を注いた。

「あぁっ、きたぁ……っ、奥っ、奥にっ……! ァ、あぁっ、熱いぃ…っ! 奥っ、やけどしちゃぅう――っ!」

 濃度もさながら、今までにない熱さに最奥がビクビクと激しく震える。
 ポタポタとヴィルスの額から流れた汗がうなじに落ち、耳元にフーフーと荒い息づかいを感じる。
 契りをしていないため孕めないにも関わらず、ヴィルスの熱は絶対に孕ませると言わんばかりの粘度と濃さをもっていた。たっぷりだしきったヴィルスは大きく息をつくと、つまんでいた乳首から指を離した。
 ずっとつままれていた乳首は芯を持って真っ赤に尖り、ヴィルスの指から解放された途端、ジンと痺れた。
 ヴィルスのものが抜けて、ずり落ちそうになったケイブラムをヴィルスの腕が支えた。下腹部は小さく膨れ、とろとろと秘部から漏れ出た白濁の液が太腿を伝って、靴や石畳みの床を濡らしていく。

「あんたからのおねだり最高だった。また、ここでやろうな」

 興奮がこもったヴィルスのかすれた声が耳に届く。
 絶頂の余韻に呆然としていれば、ヴィルスの指が反応を返せと言わんばかりに秘部の中に指を入れ、白濁の液をかきだしはじめる。
 その刺激に甘い声が漏れ、とろけながらも目尻を吊り上げてヴィルスを見上げる。

「ここでっ、やるの、もうやだ……っ」
「なら、次はもっと緊張感のある場所でやるか」

 ちゅっちゅっとキスの雨を降らせながら、適当に白濁の液をかきだし終えたヴィルスは秘部から指を引き抜く。体を愛撫され、何度もキスしていくうちに、強烈な快感はほどよい疲労感と心地よさに変わっていく。
 服装を整えてもらったおかげで落ち着いたケイブラムの頭は現状を少しずつ整理していく。そして、冷静さを完全に取り戻すなり、目尻をこれでもかとつり上げて、ヴィルスを睨んだ。

「貴様っ、こんな場所に連れこんでまでセックスとか、セックスしか頭にないのかっ!」
「好きなやつを見て、やりたくならない方がおかしい。それにやりたい盛りなんだから当たり前だろ」
「はっ、はああぁぁ?! 貴様の事情など知るか!! 貴様を少しでも見直した私が馬鹿だった!」

 唾を吐きかける勢いで怒鳴り散らすものの、ヴィルスはなにが問題なのかわからないと言わんばかりに不思議そうな表情を浮かべる始末だ。
 その表情が余計にケイブラムの神経を逆なでする。

「もう我慢の限界だ! 嘘つきでセックスしか脳のない貴様なんて大嫌いだ!! 責務を果たし次第、離婚だ、離婚!!」
「あんたが嫌いでも、俺は好きだ」

 落ち着いた声音で繰り返し告げられた「好き」という言葉に言葉が詰まってしまう。
 その隙をヴィルスは見逃さず、身をかがめてケイブラムの唇を塞ぐ。目を合わせようとするヴィルスにケイブラムはぎゅっと目をつぶった。
 けれど、ヴィルスはケイブラムが目を合わせるまでやめる気はないのか、触れるだけのキスを何度もしてくる。
 怒りはまだ収まらないが、しつこいキスに痺れを切らしたケイブラムはそっと目を開いてヴィルスを映す。そうすれば、ヴィルスはかすかに瞳を細めて、唇が離れていく。
 だが、続いた言葉はまたもやケイブラムの怒りを買うものだった。

「キスしたら、もう一回やりたくなってきた」

 興奮の色をにじませ、着せた服を脱がそうとするヴィルスに、ケイブラムはヴィルスの頭をげんこつで殴った。このままではらちがあかない。なにか効果的な言葉を必死に頭の中で探る。
 そうして出てきた言葉は、我ながら最低な言葉だった。

「今度、今日みたいなことをしてみろ。いくら私でも浮気するからな」
「それは駄目だっ。許さない、嫌だ」

 凛々しい眉を寄せ、今まで見せたことのない焦っている姿に、少しだけ胸の内がスッキリする。
 ケイブラムを壁に押しつけて覆いかぶさってくるヴィルスを見上げ、ついっと半目で睨む。

「なら、また私を組み敷いて言うことを聞かせるのか? 名前を呼びあうと決めたときからまるで成長してないな」

 ふんとそっぽを向けば、ヴィルスは落ち着かなげにそわそわとした後、ケイブラムから離れる。けれど、ためらいがちに肩を掴んで、ケイブラムの額に額を擦り寄せてきた。

「わかった。今度からあんたの許可なくキスもセックスもやらない。我慢する。だから、ほかのやつに気を持つな。俺の、俺だけのケイブラムでいてくれ」

 捨てられるのを怯える子犬のごとく、いつもは凛々しい眉が下がり、空色の瞳が陰って大きく揺れる。
 どうせ鼻で笑い飛ばされるだろうと思っていただけに、効果抜群な様子にかえって戸惑ってしまう。だが、これは今までにないチャンスだ。
 じっとケイブラムを見つめてくるヴィルスにふっと息を吐き、額をこすりつけた。

「なら、今度こそきちんと約束守れよ」
「ん……」

 ケイブラムの呆れ混じりの声にヴィルスは空色の瞳を細めて、額をすり返してきた。
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